十三話
俺たちはその後無事に海を渡って東の港町、トリムについた。
「…昨日の会議の通り、俺たちは今日のうちに隣町に向かう。皆、準備はいいな?」
「…ごめん、ちょっと休ませて…。まだ船の揺れが体に残ってて…」
「一応買い物だけはここで済ませておくか。これから長い旅になるからな」
そうして俺たちは、買い物に向かった…。
「やあ、タルス」
武器屋が並ぶ商店街で、後ろから声をかけられた。
「おお、オリュシオンか。…傷は大丈夫か?」
「いや、僕の怪我なんて大したことじゃあないから。それよりタルス。君の剣はもう限界ではないか?」
「…やっぱわかるか」
この剣は半年以上酷使し続けている。しかも前の戦いで無理やり鎧を砕いたりしたので、流石にガタが来ている。
「そろそろ新調するか」
そして、その辺にあった武器屋に入った。
「いらっしゃいませー!」
その店は、正直普通の店だった。
ハルバード、剣、盾、チャクラム…様々な武器が置いてあるが、そのどれもが普通である。
その中の数人の客が、あーでもないこーでもないと武器を手に騒いでいる。
「…ふむ、親父さん。ここで一番いい剣見せてくれ」
「ああん!?てめえいい度胸だなあ!そんなに俺の最高傑作がみてえのかい!?見せてやるよおい!」
怒っているのか上機嫌なのかわからない親父さんが、二階に駆け上がっていき、そのままの勢いで戻ってきた。
「おら!こいつが俺の最高傑作!名剣「茜雲」よ!」
黒い柄にそして、特徴的な湾曲をした剣。
「異世界から転がってきた「カタナ」ってえ剣らしい。細え剣だが切れ味は抜群よお!」
「…茜雲、ね。ちょいと借りていいか?」
「おうさ!この剣の切れ味、たーんと味わえよ?」
黒い柄を掴み、俺の剣よりもだいぶ軽い茜雲を抜く。
紅い、片刃の刀身が顔を出す。
「…綺麗、だな」
「…斬っていいものはあるか?親父さん」
「へっ、奥に藁人形がある。好きなだけぶった斬りな」
「ありがとう」
そうして、俺は奥の練習場でもう一度剣を抜く。
「…行くぞ」
「はあっ!」
まずは目の前の藁人形を横薙ぎに。
「そりゃっ!」
剣を返し、左の藁人形を左上に向かって斬る。
「うおおおおっ!」
そのまま回転を利用して、右上から斜めに最後の藁人形をぶった斬る!
ごとん。と重い音を響かせながら、藁人形の残骸が地面に落ちる。
「…いい切れ味だ」
「た、た、タルス…?じ、冗談だよなそれは…」
「おいおい…マジかよ。この兄ちゃん、鋼入りの人形ぶった斬りやがった!」
その瞬間、店が大きくざわつく。
「おいおい、あの兄ちゃんまじかよ…」
「まさか、冗談だよな?」
「だが、あの親父さんは冗談言う人じゃないだろ?」
「じゃあ…」
「「「本当にぶった斬ったのか!?」」」
…え?
「…とりあえず、この剣買います」
「…何もいうな兄ちゃん。こいつは、お前さんが持ってけ」
「そうは言っても…」
「この刀はあんたが持つべきなんだ!持ってってくれ!」
「親父さん!せめて少しだけでも…!」
「いーや!一銭たりとも俺は受け取らん!」
「…結局、貰ってしまった…」
「その浮いたお金で、僕の鎧を新しくしてくれたじゃないか。ありがとう」
…あの後、貰っただけでは申し訳ないので、オリュシオンの鎧、俺のガントレット、後はコルネイアのために矢をいくつか買った。
「俺が元々壊しちまったやつだからな。気にするな」
「いや…こんなものを貰ったのは初めてでな。とても嬉しいよ」
「ははは。大袈裟だなあ」
そう言いながら、俺たちはコルネイアたちの元へ急いだ…。




