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Day9. 狩人×どきどき×なろう男

2026/09/23 21:30より前にDay7を読まれた方は、少し内容が被ります。

おっちゃんが踵を返す。

でっか……

なんというかすべてがデカい。

2mは超える体躯に、丸太のような腕。

背中に背負われている弓もまるでバリスタかよってくらいデカい。

それに合わせて矢筒はもはや樽だし、

矢も木の棒をそのまま打ち出してるみたいだ。


あんなもの撃ち込まれたら形も残らないんじゃ……

おっちゃんがそのまま何も言わずに、ずんずんと奥へと進んでいく。


あまりのスケール感に俺が唖然としていると、

「リスケ」

ロニアの声で我に返った。

杖を渡され、受け取る。

ついて行っていいものかと考えてると、

ロニアが俺の袖を軽く引っ張る。


どうやら安心していいみたいだ。

前を見ると、おっちゃんはもうずいぶん先を歩いていた。

荷物を持っているにもかかわらず、

まるで平地を歩くように軽々と進んでいく。


あのデカい背中が普通のサイズくらいに見えた。

これ、もしかしてかなりおいてかれてる??

すごく遠いんじゃ……


早くしないと見失う!と慌てかけたが、

あれだけデカいのを見失う方が無理か……

と、すぐに冷静になった。

見失ったらもはや神隠しだな……

ゆっくりと、あとを追いかけた。


上に行くにつれて家の数が減ってきた。

どうやら下の方が賑わっているらしい。

かといって家が一切ないわけじゃない。

家と家の間隔が、少し広くなったくらいだ。


前を歩いていたおっちゃんが消えた。

なんだ、神隠しか!?

とは、さすがにならない。

おそらく坂が終わって平地になってるんだろう。


もうすぐ頂上か……

上り切ったらどんな景色になってるんだろうな。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

いや、坂道長いな……

もう終わりのはずじゃ……

おっちゃんが消えたから、すぐそこだと思ったらまだまだあった……

相当離されてたらしい、どんだけデカいんだあのおっさん……


体調が万全でもなかなかきついぞこれ。

隣のロニアは息切れひとつしていない。

それどころかこっちを気遣う余裕すらある。


「うそ、私の体力なさすぎ……?」

前を見ると、坂の切れ目が見える。

やっと坂が終わるらしい。


坂を上り切ると、少し開けた広場のようなところに出た。

ここまで歩いてきた村と雰囲気が違う。

下は賑やかって感じだったが、ここは張り詰めた感じがする。

とても静かで、森の環境音だけが聞こえる。

同じ村の中なのに、空気まで変わったように感じた。


そうか、そういうことか。

ここは家とか生活の場所じゃない、作業場なんだ。


視界の端に、いくつか建物が見える。

右の方を見ると、生き物の皮が吊るされ、棚には肉が置かれてる。

机の上には野生の動物が置かれ、鉈など解体道具が備えられていた。


ロニアが出してくれた肉もここで用意されたんだろうか。

なんて考えていたら、

カンッカンッ

甲高い金属音が響いてきた。


どこから聞こえてきたんだ?

音の元を探す。

すると、奥の方に金槌を振るう女の人が見えた。


あれは……鍛冶場か?

女の人のすぐそばには、炎が煌々と燃え盛っている。

女の人の顔が、炎で赤く染まる。


滴り落ちる汗をぬぐいもせず、

金槌を振り下ろし続けている。

その表情は真剣そのものだ。


その光景になぜか目を奪われる。

「リスケ!」

ロニアに呼ばれた。


振り返ると、おっちゃんが左側の建物に入っていく。

他の二か所は雨よけがあるくらいだったが、

ここは家のような作りになっている。

入口がかなり大きい。

あのおっちゃんに合わせて作られたみたいだ。


入口に立つと、改めてデカいな……

デカすぎて遊園地のゲートみたいだな……

フリーパスで中へ入る。


中の作りは普通の家とそう変わらなかった。

ただその壁には弓が立てかけられている。

おっちゃんが背負ってたバリスタみたいな弓だけでなく、

俺が扱えそうな普通サイズの弓なんかも置かれている。


部屋の隅に矢筒が並べられ、すぐそばには矢が山のように積まれている。

どれがおっちゃんサイズかはひと目でわかる。

どうやらここは、狩人の詰め所らしい。


ドカっと荒い音が聞こえる。

机に俺がもらった荷物が置かれたらしい。

すごい量だ……

よく落とさずに持ってたな。

と我ながら感心する。

……帰りどうすんだこれ。


おっちゃんが椅子に座り、弓を見ている。

なんだろ、点検かな?

大柄な見た目から予想ができないほど、

細やかな手つきで弓を整備していく。


あっという間に手入れを終え、弓を壁に収める。

「――!」

ロニアがおっちゃんに駆け寄っていく。

「ロニア!――!!」

豪快な笑い声をあげながらロニアの頭を撫でてる。

ロニアが目を細め気持ちよさそうにしてる。


おお、ロニアが懐いてる。

仲がいいみたいだ。

今日だけで俺が知らない色んなロニアが見えたな。


その光景を眺めていると、

「ロニア」

入口から声がする。


振り返ると、さっき鍛冶場で金槌を振ってた女の人がいた。

頭に巻いていた手ぬぐいで汗をぬぐっている。

革の前掛けはもう外したらしく、さっきよりずいぶん薄着だ。

……その、なんだ。

ちょっと刺激が強すぎるな……

さっきまで鍛冶をしてたから薄着なのはわかるんだが……


「――!」 

ロニアの顔がパッと笑顔になる。

女の人の方へ駆け寄り、そのまま抱き着く。


「ロニア!――!」

どうやら汗のにおいが気になるらしい。

ロニアを離そうとしている。

が、ロニアはお構いなしにほおずりしている。

薄着はいいけど、そこは気にするんだな……


なんだか安心したな。

家にロニアしか居なかったので気になってたが、

どうやら杞憂だったらしい。

こんなに仲がいい二人がいるんだから。


微笑ましい光景を眺める。

「リスケ!座る!」

詰め所の奥からおっちゃんの声が聞こえる。

どうやら席に促されてるらしい。


声に従い、席に座った。

ロニアもぱたぱたと走ってきて隣に座る。

女の人がおっちゃんの隣の席に着く。


なんだろう、すごくきれいな人だな。

美しいって感じじゃなく、こう、しなやか?

アスリートや武人のような、立ち姿や動作から出る美しさだ。


「リスケ、――」

ロニアが二人を指さし、弓を構えるようなポーズを取る。

これはわかりやすいな。

二人とも狩人ってことなんだろう。

ロニアが表情までなりきってるのを見て頬が緩む。


狩人?

倒れる前の最後の光景が、頭をよぎる。

矢が刺さりおぞましい悲鳴をあげ倒れるゴブリン。

駆け寄ってくる人影。


……もしかして。

俺を助けてくれたのってこの二人なのか??


「ロニア」

俺は二人を指さした後に、自分を指さし、

弓を構え撃つ動作をした。

俺がそんなに深刻そうに見えたのか、

ロニアも笑みを収め、真剣な表情で頷く。

自分でも気が付かなかったが、手が震えていた。


そうか、そうなんだ。

この人たちが、俺を助けてくれたんだ……

そうわかった瞬間、目頭が自然と熱くなる。


俺は居ても立っても居られなくなり、

二人の前で片膝をついた。

食事の前と同じように両手を握りしめ、頭を垂れる。

今の俺にできる、精一杯の感謝だった。


「ありがとう、本当に……ありがとう」

声が震える。


そんな俺をみて、

狩人の二人は目を丸くしお互いの顔を見合わせている。

が、どうやら意図がわかったらしく、


「がっはははははははは」

まるで爆発したような音が響き渡った。

大柄なおっちゃんがどすどすと近寄ってきて、

バシンッと俺の背中を叩く。


あまりに重い一撃が身体の芯に響いた。

弾き飛ばされ、床を転がる。

肺の空気が全て押し出され、息ができない。


俺……死ぬのか……?


「――!」

女の人が慌てて駆け寄ってきて、背中をさすってくれる。

呼吸が整ってきた。

あまりの衝撃で、死ぬかと思った……


ふわっといい香りがする。

横を見ると、鍛冶場のお姉さんが俺に密着している。

ちょ、ちょっと近すぎやしませんかねぇ!お姉さん!!


鍛冶場のお姉さんは、そんな俺を気にした様子もなく起こしてくれる。


「――!!――!!」

背後からロニアの声が聞こえる。

聞いたこともない勢いで声を荒げてる。

振り返ると、あれだけ大柄な男が見る影もなく、

肩を落とししょげている。


「あっはははははは」

小柄な彼女と大柄な男のあべこべな姿に思わず笑ってしまう。

笑う俺に気付いたロニアはやれやれといった感じにため息をついてる。

おっちゃんはバツが悪そうに後頭部を搔いている。


「あー、――、リスケ、――」

おっちゃんがゆっくりと右手を差し出してくる。

……なんだろう。

何を求められてるんだ俺は。


俺に伝わってないことがわかると、おっちゃんは顎に手をあて考えだした。

しばらくして、自分を指さし、

「ジェルグ」

と、一言。

続いて女の人をさす。

俺も続いてそちらを見る。

「シェイラ」

と、告げると女の人がひらひらと手を振る。


ジェルグとシェイラ。

おそらく二人の名前だろう。


「ジェルグ、シェイラ」

口の中で反芻する。


俺は改めてジェルグの方を向く。

その顔を正面から見て、

「ジェルグ」

と、呼ぶ。

ジェルグと目が合う。

ジェルグは満足そうに、ゆっくりと頷いた。


俺はそのまま女の人の方を向き、

「シェイラ」

と、呼ぶ。

シェイラと目が合う。

シェイラが微笑みながら頷く。


ジェルグが俺に指をさし、

「リスケ?」

と聞いてくる。

反射的に、ああ、そうだ、と答えようとして、やめた。

そのかわりゆっくりと頷く。


その様子をみて、ジェルグがぽりぽりと頬を掻く。

なんだろう、困ってるみたいだけど。

その後はっとした表情をしてから、

「――」

と、首を縦に振る。

すぐに、

「――」

と、首を横に振る。

ジェルグが何かを伝えようとしてるのはわかる。


なんだろう、はいといいえか?

俺は試しにジェルグを指さしシェイラと呼んでみる。

「違う」

と、ジェルグが首を横に振る。

次に俺がジェルグと呼ぶと

「そうだ」

と、ジェルグが首を縦に振った。


やっぱりそうか。肯定と否定だ。

俺の表情を見て、ジェルグが俺を指さしながら、

「リスケ?」

と聞いてくる。


今度は自信を持って答えられる。

「そうだ」

と首を縦に振る。

ジェルグが満足げに頷く。

なんだか照れくさいな。


……もしかして、さっき手を差し出した時に言ってたのは……

間違っててもいい、試してみるか。


俺は右手を出し、あの時のジェルグの言葉を真似する。

「ジェルグ、よろしく」

ジェルグが意表を突かれたのか、驚いた顔をしたが、

「がっははははははははは」

すぐに豪快な笑い声と共に俺の手を掴む。

「よろしくな!リスケ!」

大きくてごつごつとした手は、すごく優しかった。


ふとロニアの方を見る。

耳をぴょこぴょこ揺らしながら、なんだか泣きそうな顔で笑ってる。

そんなロニアを見て、つい頬が緩む。

シェイラが俺とロニアを見て、楽しそうに笑っていた。



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