↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/20

Day6. なろうの夜

カチャ……カチャ……


昨日と同じ音で目が覚める。

昨日と同じ景色だ……

「夢……じゃなかったのか……」

ホッと胸をなでおろす。


身体を起こそうとする。

「いってててててて」

痛みは夢であってほしかった。


なんとか起きることができた。

昨日より回復してるらしい。

「……ん?」


トントントントン……

小気味よくなにかを叩く音がする。

部屋の外からロニアの鼻歌が聞こえる。

どうやらご飯を作ってるらしい。


部屋中にいい香りがする。

窓から見える太陽が既に高い。

「完全に寝すぎだな……」

身体がバキバキだ、二重の意味で。

だけど、頭がかなりすっきりしてる。

久しぶりに熟睡できた気がするな。


隣の部屋からロニアがぱたぱたと駆け寄ってくる。

「リスケ!」

俺のことを呼んでる。

どうやらうまく発音できず、その形に落ち着いたらしい。


「おはよう、ロニア」

おはように引っ掛かったのかロニアが軽く首を傾げる。

が、あまり気にした様子もなく、

「――!リスケ!」

とロニアがニコニコと話しかけてくる。


……おはようとかなのかな?

俺は同じ発音でロニアに返してみる。

「――!リスケ!」

伝わったのかロニアが満面の笑みで返してくる。


合ってたらしい。

明日また試してみるか。


ロニアが食事を持ってきた。

申し訳ない気持ちになる。

が、まだ身体を起こすので精一杯だ。

ありがたく受け取っておこう。


「ありがとう、ロニア」

ロニアに分かりやすいように、にこりと笑いかけ、皿を受け取る。

ロニアが嬉しそうに駆けていく。


さて、いただくとするか。

と、スプーンに手を掛けたところで、

ロニアが戻ってきた。


手には皿を持っている。

どうやらここで食べるらしい。

ロニアが椅子に座る。

そのまま皿を自分の膝に乗せる。


あれ、食べないのか。

不思議に思い、スプーンを皿に置く。


ロニアはそのまま自身の両手を握り締め、

軽く頭を下げている。

その表情は昨日見たどの表情とも違う。

静かで、厳かで慈愛に満ちたような。

まるで祈ってるみたいだ。


……この世界のいただきますなのかな?

俺もロニアに合わせて、目を瞑り、祈るポーズをする。


隣から顔を上げる気配がする。

「――!リスケ!」

ロニアが嬉しそうにしている。


ってことは合ってたのかな?

ロニアが食べ始めたので俺もスプーンを手に取る。

お互い言葉もわからず、会話もない。

けど、昨日食べたご飯よりおいしく感じた。


「ごちそうさまでした」

手を合わせ、感謝する。

「――?」

その仕草を見てロニアが不思議そうにしている。


どうやら食べ終わったときは特に何もしないらしい。

俺は皿を指さしてからグッと親指を上げる。

「――!」

嬉しそうにニコニコしてる。

どうやら伝えたいことは伝わったらしい。


さて、食後は恒例の……

包帯の交換だ。

昨日のことと、ロニアにしてもらうことを考えると、

少し気が重い。


ロニアが包帯をほどいていく。

血で張り付いた包帯が……ってほどではない。

随分マシになったみたいだ。

けど調子に乗って動こうとすると、まだ痛む。


やれやれだな。

元に戻るまで、まだまだかかりそうだ。


◇◇◇


「……暇だ。」

面倒見てもらって、飯食うだけで何様なんだ!!

と思わなくもないが……


身体も動かせず、ベッドにいるだけ。

さすがに暇である。

「どうしたものか……」

頭を抱えそうになったところで、

「そうか!」

我ながらいいアイディアだ。


「ロニア!」

ロニアを呼んでみる。

居たらいいんだけど……

「――?」

ロニアが不思議そうに寄ってきた。

よかった、いたらしい。


俺は椅子を指さし、

「これなんていうんだ?」

と聞いてみた。


「――?」

ロニアが首を傾げる。

そりゃそうか。

「えーっと……」

俺は椅子を指さした後に、

手を口の前でグッ、パーと開いて閉じる。


「――!」

ロニアに何が言いたいか伝わったらしい。

ウサギの耳がぴょこぴょこ跳ねてる。


俺は改めて椅子を指さす。

するとロニアが、

「――!」

と返事する。

俺は椅子を指さしたまま、

同じように発音してみる。


「――!」

ロニアが嬉しそうにうなずく。


そのまま桶を指さす。

「――!」

ロニアが答え、俺が真似する。


また椅子を指さし、

「椅子」

さっきの発音を真似してみる。

「リスケ!椅子、――!」

ロニアがはしゃいでる。


よし!合ってるらしい!

これならいける!

俺は次々に指をさしてロニアに聞いていく。

ロニアは嫌な顔せず付き合ってくれる。


部屋のモノを一通り聞き終えた。

「よし、行くぞ……」

真剣な顔でロニアを見る。

ただならぬ気配を感じ、

ロニアがこくこくと真剣な顔で返してくる。


「ふぅー……」

呼吸を整え、ゆっくりと目を閉じる。

意識を集中させる。

ここだ!!

カッ!と目を見開き、

「椅子!机!桶!ベッド!枕!」

次々と指さしながら答えていく。

ロニアも一つずつコクコクと頷いている。


さっき確認したもの全てを答え終わった。

「――!リスケ!――!」

ロニアがぴょんぴょん飛び跳ねている。

どうやら全部あってたらしい。

よかった……

これなら言葉もなんとかなりそうだ。


◇◇◇


日が暮れて、窓から見える景色はすっかり真っ暗だ。

部屋の外ではロニアが晩御飯を作っている。


ロニアのご飯はかなり美味しい。

今日の昼に食べたスープもそうだ。

大きめの肉が入ってたんだが、柔らかく、臭みもない。

丁寧にしっかりと仕込みがされていた。


ロニア本人もそうなんだが、

温かみがあるというか、優しさにあふれている。

コンビニとか外食ばっかで過ごしてた身体に染みる。


ロニアが食事を運んできた。

両手に料理を持っている。

その顔には、面倒くささとか微塵もなく。

にこにことしている。


「リスケ!椅子、――!」

えっと……今椅子って言ったよな?

両手がふさがってるから椅子を引いて欲しいのかな?


俺は片手でロニアが座りやすいように椅子を動かす。

「リスケ!――!」

嬉しそうにしている。

どうやら正解だったらしい。


ロニアが楽し気に椅子に座る。

食事の前の祈りを捧げる。

俺はそのロニアの横顔をじっと見つめる。


最初こそ、嬉しかったが……

その、なんだ。

さすがに申し訳なさが勝ってきたな……

ロニアが計算とか一切ないのがまたな。


祈り終えたロニアがこっちに気付く。

俺の内心なんざおかまいなしに、

ロニアは嬉しそうに笑ってる。


感謝だけでも伝えたいな。

そう思い、ふとロニアに祈りを捧げてみた。

祈りも感謝みたいなもんだろ。


ロニアから首を傾げる気配を感じる。

だが、意図が伝わったのか急にロニアが声を出して笑い出した。

「リスケ!――!」

バカ受けだ。

そんなにおかしかったのか??


ロニアがふいに俺の手を掴む。

「リスケ、――。」

ああ、なんとなくわかった。

この言葉自体は分からない。

けど、伝えたいことはわかる。

これは、ありがとうだ。


「ロニア、ありがとう」

ロニアがにっこりと微笑む。


いつか、元気になったら。

ロニアに、なにか返したいな。


この世界で初めてやりたいことができた。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。