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14/20

Day 14. できるようになろう!!

ロニアとひとしきり笑った。

そろそろ食べ始めるか。

せっかくのご飯が冷めてしまう。


今日のご飯は、いつもより量が多い。

それだけじゃなく、品数も多く豪華だ。


子供のころのお祝いの日を思い出すな。

まぁ、今日はなんでもない日なんだけど。


……もしかして、ロニアの誕生日か?

いや、それならもっと村の人たちがロニアに詰め寄ってたはず。

シェイラも普通にしてたしな。


もっとも、この世界に誕生日があるのかどうかわからないが。


皿の肉を切り分け、かぶりつく。

うん、うまい。

仕込みの手が込んでて、いつも以上にうまい。


かなり気合が入ってるなこれ。

ロニアの方を見てみる。

ロニアも一口食べるたびに、にこにこと身体を揺らしている。

どうやらご満悦らしい。


俺も次々と料理を食べ進めていく。

手が止まらないなこれ!


――あっという間に食べ終わってしまった。

息を吐きながら、背もたれに体重を預ける。

ロニアの方を見てみる。

目をキラキラさせながらラストスパートをかけている。

どうやらロニアも、もう食べ終わりそうだ。

いつもより早いな。


ロニアが最後の一口を口に入れ、

静かに目をつぶり上を向いた。

楽しんでるなぁ。

俺も思わず頬が緩む。


ロニアが目を開けた。

俺と目が合う。

俺がにやけて見てると思ったのか、

布で口を拭いながら、じとっとした目で見てくる。

少し顔が赤い。


べつに気にしなくていいのに。

ふふっと笑ってしまった。


気を取り直したロニアが、両手を目の前で合わせた。

俺も一緒に両手を合わせ、

「「ごちそうさまでした」」


自分が食べた食器を流しまで持っていく。

そしてそのまま、しれっと皿を洗おうとする。


「リースーケー?」

いつもと違う声に、肩が跳ねた。

俺はおそるおそる声の方を振り返った。


ロニアがにっこりとこちらを見ている。

笑顔なはずなのに、全然笑ってる感じがしないのはなぜだろう。


俺は手に持っていた皿をゆっくりと流しに置き、

そのまま椅子まで後ずさり、静かに座った。

熊に会った人ってこんな感じなのか。


ロニアがため息をひとつつき、洗い物を始める。

まぁ、朝止められたのに、夜ならオッケーとはならないよな。


贈り物の整理も終わってしまったのでぼんやりとロニアを眺める。

長い耳がぴょこぴょこしながら食器を洗っていく。


皿洗いくらい問題なくできるんだけどなー。

と、ぼーっと考えてると視界がぼやけてきた。

頭も霞みがかかったみたいにまとまらない。

けど、不思議と嫌な感じはしないな――


「リ――」

ん?なんだ?

「リ――ケ」

声が聞こえる?

「リスケ!」

うお、なんだ!


びくんと椅子の上で跳ねる。

横を見るとロニアが苦笑いしながら立っていた。


「ロニ、ア?」

いまいち状況がつかめない。


食器を洗っていたはず。

と、流しの方を見ると洗い物が全て綺麗に終わっている。


どうやら寝てしまってたらしい。

あー、完全にやらかした。

皿洗いくらいできるのになって言っててこれか。

我ながら恥ずかしい。


寝てる俺を見て、心配して起こしてくれたんだろう。

「ありがとう、ロニア」

ロニアに素直に礼をする。

身体もまだ本調子じゃないしな、ちゃんと横になろう。


ロニアが満足そうにうなずいた。

俺は椅子から立ちあがり、自分がずっと寝てた部屋に向かう。


「リスケ」

部屋に入る前にロニアから声がかかった。

ん?なんだろう。

ロニアの方へ振り向く。


「――」

と、言いながら手を振ってくる。

このタイミングで言うならあれしかないだろうな。


俺はロニアの真似をしながら、

「ああ、おやすみ、ロニア」

と返した。


ロニアが嬉しそうに部屋に入っていく。

俺も自分の部屋に入り、ベッドに横になる。


ああ、今日はなんだかんだ色々あったな。

俺は今日あった出来事を思い出そうとして、

ふわりとした感覚に意識を明け渡した――


――日の光が瞼に差し込む。

ゆっくりと目をあける。

朝だ。

かなり頭がすっきりしている。

熟睡してたらしい。


身体を起こそうとして異変に気付く。

なんだ?身体が軽いな?

昨日の疲れが残ってるかと思ったが、

むしろ昨日より調子がいい。


痛みももうほとんどない。

自分のもちもちの肌触りを堪能する。

身体が若いと、回復まで早いのか。

若いってサイコーだな!!


ベッドから起き上がる。

問題なく普通に立ち上がることができた。


身体を捻ったり、肩を回したりしてみる。

「おお~」

こっちへ来る前より、スムーズに動く。


その後も一通りチェックしてみたが、

日常生活を送る分には大丈夫そうだ。

ただ、激しく動いたりはまだできなさそうだから、

そこだけは注意しないとな。


自分の身体に巻かれてる包帯が目に入る。

包帯も替えとくか。

身体も拭きたいし。

これくらいなら自分で出来るだろう。


自分の部屋から出てあたりを見回す。

ロニアはまだ起きてきてないらしい。


俺は隅に置かれた桶を手に取り、流しに向かう。

そのまま蛇口らしき栓をひねって桶に水を溜める。


これくらいでいいか。

桶を部屋まで運び、

昨日仕分けた雑貨箱から手ぬぐいと包帯も持ってくる。


手ぬぐいを水に浸し、包帯を解き始める。

スルスルと解けていく、もう張り付いたりしないみたいだ。

解き終わり、手ぬぐいを手に取る。


「冷たっ」

そりゃそうか、水なんだし。

ロニアに拭いてもらうと温かかったのは、

わざわざ一度温めてくれてたんだな。


あー、想像以上に冷たいな……

一度温めるかどうか悩んでいると――


「リスケ、おはよう」

入口の方から声がする。

ロニアだ。


ロニアの方を向き、

「ああ、おはよう、ロニア」

と返事をする。


笑顔で挨拶してきたロニアの表情がゆっくりと変わっていく。

キョトンとした顔になり、はっとした顔になる。


「あー!リスケ!」

ロニアが詰め寄ってくる。


マズい、バレた。

俺は咄嗟になにか言い訳をしようとしたが――

バレたってなんだ、もうほぼほぼ治ったんだから言い訳の必要はないはず。


だが、そんな俺の内心など知るはずもないロニアに、手ぬぐいを没収された。

あ、そんなー!

それでもまだ詰めてきそうなロニアを、必死になだめる。


どうどうどう、おちついてくれ!

詰められこそしなくなったが、表情はまだ不服そうだ。


俺は肩を回し、治ったと必死にアピールをする。

ぐーるぐーる、ほーら健康だよー


俺に掛かっていた圧が少し弱まった。

お?どうだ?

ロニアを見ると、顎に手を当てながらむむむ!と聞こえてきそうな顔でこちらを見ている。


まだ、足りないか。

どうしたもんかと悩んでいると、

「リスケ」

ロニアから声が掛かる。


ロニアの方を見ると、両手を真っ直ぐ耳の横まで上げ、そのまま肩の横まで真っ直ぐ下ろし、身体の横まで下ろした。

ラジオ体操の動きだ。


そのままこちらをじっと見ている。

やれってことか?

ロニアの動きを真似てラジオ体操の動きを繰り返す。


うん、動作自体は問題ないな。

高速でキビキビしろって言われたらまだ難しいけど。


何回かやってみせたが、

ロニアの目はまだ厳しい。


どうしよう、もう打つ手がないぞ。

いよいよお手上げかと諦めかけてると、

ロニアが身体をぺたぺた触ってきた。

いつもより強めにグッグッと押し込んで確かめている。


うーん、痛くはないな。

むしろ軽いマッサージみたいだ。


ロニアがこちらの表情を伺いながら触診していく。

俺が顔色一つ変わらないのを見て、ロニアがそっと離れた。


お、なんとかなったか?

ロニアがため息をつきながら、手ぬぐいを差し出してくる。

ほんとにもうって聞こえてきそうだ。


よし!許して貰えたみたいだ。

これでロニアに身体を拭いてもらう、嬉し恥ずかし生活から卒業だな。


俺は手ぬぐいを受け取ろうとして――

ロニアにひょいっとすかされた。


え?なんでだ?

俺が卒業証書貰って終わりなはず……


俺がロニアの方を見ると、ちょいちょいと背中を指さしてる。

……背中?

そのまま背中を拭くような動作をロニアがしている。


ああ、背中が拭けるのかってことか。

おいおい、舐められたもんだな。

背中を拭くくらい余裕だっての。


やれやれ、見せてやりますか、

と背中に手を回そうとして――

動きが止まった。


なんだ!?か、身体が、動かん!!

背中に回そうとした腕が、一定の位置からビクとも動かない。


なんだ、これ!?何をされているんだ俺は!?

ロニアが俺を見てにやにやと笑っている。


まさか……ロニア?

ロニアになにかされてるのか俺は。

邪眼かなにかか??


腕を背中に回そうとするが、

「いててててててててて」

身体が!痛い!


ロニアが呆れ顔でこちらを見ている。

どうやらシンプルに、俺の身体がまだそこまで治ってないらしい。

なん……だと……?


ロニアからスっと、包帯を差し出された。

まだ身体拭き終わってないぞ?


ロニアがぐるぐると包帯を巻くジェスチャーをしている。

巻けるか、試してみろってことか?

こんなの、巻けないわけが――


巻けませんでした。

俺の腕には無惨にぐちゃぐちゃになった包帯が巻かれていた。


包帯巻くのって、こんなに難しいのか……

ただ巻くだけだろって思ってたら緩かったり、しっかり巻けてなかったりで散々だった。


ロニアが深く息を吐きながら包帯と手ぬぐいを回収し、向こうの部屋へ準備に向かった。

どうやら卒業はまだ先らしい。

とほほだな……


ロニアが戻ってきた。

水を温めてきてくれたらしい。


寒くはないとはいえ水だと流石に冷たかったからな。

ありがたい。


自分で拭ける箇所は自分で拭き、無理そうなところはロニアに頼んだ。

身体を拭き終わり、包帯が出された。


少し独特の香りがする。

そういえば、薬草かなにか塗り込んでたな。

すっかり忘れてた。

自分でやってたら気づかなかったろうな。


ロニアがササッと包帯を巻いていく。

手際がいい、自分がさっきやってたことと同じとは思えない。

あっという間に巻き終わってしまった。

……ロニア様々だな。


「ありがとな、ロニア」

ロニアが満足そうに耳を揺らし、跳ねながら部屋を出ていった。


ロニアが部屋から出るのを見送り、俺は分厚い布を引っ張り出す。

昨日もらった贈り物にあった服だ。

手ぬぐいや包帯を持ってくるついでに、一緒に持ってきといた。


目の前で広げてみる。

質感は麻なのかな?少しざらっとしてるな。

深い緑で首元に切れ込みだけが入ってる。


もう一つの布を見る。

こっちはズボンか。

こっちの色は茶色で、材質は同じみたいだ。

腰と左右の裾に紐が付いてる。


それと……なんだこれ?

茶色い帯みたいな紐が一本ついてた。

何に使うんだ??


俺はとりあえずもらった服に袖を通してみた。

「おおー」

サイズかなりちょうどいいな。

袖は肘より少し長いくらいか。


ズボンは脛ぐらいで、袖もズボンも7分丈って感じだ。

どっちもかなりゆったりしてる。

材質はともかく楽でいいなこれ。


ぐるっと一周回ってみたり、服をあちこち眺めてみる。

そんな風に俺が着替えに感動してると、ロニアがひょこっと入口から顔を覗かせた。


着替えた俺を見て、ぱちぱちと拍手をしている。

おお、なんか照れるな。

頬が少し緩む。


「……ってそうだ」

ロニアならわかるんじゃないか?


俺はその辺に放りだしそうになってた茶帯を持ち、

「ロニア、これなんだけど……」

と、謎の茶帯に指をさす。

そのまま首を傾げて、意味が分からないよ!と伝えてみた。

頭にでも巻くのか、これ??


ロニアが苦笑いしながら寄ってきた。

ダメな男子を見るときの目だったな、悲しい。

帯を俺から受け取り、ウエストを絞るように巻いていく。


おお、服がダボつかないように巻くのか。

浴衣の腰ひもみたいで、見た目もそれっぽくなったぞ。

村人リスケの誕生だな。


俺が年甲斐もなく服ではしゃいでると、

「リスケ、食事?」

ロニアが控えめに聞いてくる。


俺そんなに浮かれてたのか……

「そうするか」

俺が頷くと、ロニアがぱたぱたと台所に向かっていく。

俺もその後に続いて台所へ向かう。


ロニアが準備を始めようとしている。

今日という今日は俺も手伝わせてもらうぞ。

激しくなければ問題ないし、嫌とは言わせないからな。


俺は鼻息荒く、一歩前へ出て、

「ロニア」

と、呼びかけ、自分の腕を軽くたたく。

俺にもなにかやらせてくれ。


ロニアが少し悩んで……ため息を吐いた。

まだダメなのか……?

流石にタダ飯食らいは、きつくなってきたぞ。


俺が肩を落としかけた、その時、

「リスケ、鍋」

と、声を掛けられた。

ロニアはコンロらしきところを指さしている。


これは、もしかして……許されたのか?

俺は鍋を言われた場所に持っていく。


その後もじっとロニアを眺めていると、

「野菜、肉」

と、指示が飛んできた。


とうとう手伝いが許されたらしい。

俺はうきうきでロニアの指示に従う。

初めてお手伝いする子供かよ。


俺はロニアに指示されたものをどんどん運んでいく。

指示に従って準備を進めてると、

「リスケ」

と、ロニアからお呼びがかかった。


俺が忠犬よろしく駆け寄ると、ナイフと野菜を指さしてる。

切れってことなのか?

俺が手で切る動きをするとロニアがコクンと頷く。


よしきた、任せろ。

ナイフを手に取り、野菜と向き合う。


まな板には見本みたいに、野菜が一切れだけ切ってある。

なるほど、この大きさに切ればいいんだな。


その間にロニアが別の準備を進めている。

おお、本当に手伝えてるな。


その後も、鍋をかき混ぜたり、食器を用意したり、

指示に従いながら料理を手伝っていく。

そんなに大それたことはできてないが、

待ってるだけより断然いい。


ロニアから受け取った皿を、机に並べていく。

いつもより早く完成したな。

俺が手伝った料理が、並んでる。

なんか、ちょっと食べるのが楽しみだ。





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