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13/19

Day 13. なんでもない日になろう!!

よかった。

どうやらシェイラにお礼を受け取ってもらえそうだ。


シェイラが手を伸ばし、野菜っぽいものを2、3個だけ掴んだ。

ん……?

待て待て。

まさかそれだけで帰ろうとしてないか??


シェイラが距離を置こうとする気配を感じる。

やっぱり、帰ろうとしている。

そうはさせるか。


「シェイラ!」

俺の呼びかけに意表をつかれ、きょとんとしている。

その隙に、シェイラが受け取った野菜を回収し、

「ロニア」

後ろのロニアに声を掛けた。


俺は指で袋のような形を空中で描く。

そこにものを入れていく動作をする。


ロニアの耳がぴょこんと反応した。

どうやら意図をわかってもらえたらしい。


パタパタと走って行き、小さめの袋を持って帰ってきた。

よし、いいぞ。


ロニアから袋を受け取り、食べ物を詰めていく。

2、3個とりあえず受け取りました。

で、帰してたまるか。

俺の感謝を思い知らせてやる。


袋を渡したあと、じっと見ていたロニアも、

俺のやろうとしてることに気付いたらしい。

にやっと笑い、俺の横に駆け寄ってきた。


ロニアが荷物の山からよさそうな食べ物を選んで傍に置いていく。

おお、わかってるな!ロニア!

そして俺がそれを袋にどんどん詰めていく。


あっという間の出来事に置いてかれてたシェイラが我に返る。

後ろから動揺してるのが伝わってくる。


「リスケ、ロニア」

後ろから戸惑ったような声がした。

くそ、思ったより立て直しが早い……!

まだ、袋の中には半分くらいしか詰まってない。

この袋を食べ物ではち切れさせてやるんだ。


俺は即座にロニアに目配せをする。

ロニアが一も二もなく頷く。

阿吽の呼吸だ。


ロニアが即座に荷物から離れ、シェイラのところへ歩いてく。

そしてそのまま――

「シェイラ、――、――、――?――!――」

怒涛のごとく、シェイラに話しかける。

マシンガンのような口撃だ。


「――、――?――……」

後ろからシェイラの困ったような反応が聞こえてくる。

いいぞ、ロニア、そのまま抑えといてくれ。


ここぞとばかりに詰めていく。

あとちょっと……今7割くらいか……?


「リスケ!」

まずい、シェイラがしびれを切らした声がする。

足音が近づく。

頼むロニア!!


手元の袋を見る。

袋にまだ余裕はある。

そして山はまだ高い。

俺とロニアで食いきれるか、こんなん!!


もう真後ろに気配を感じる。

……ダメか!!

諦めかけたその時――


「シェイラ?」

今までの勢いが嘘みたいな、しおらしい声が聞こえた。


俺の肩に伸びてた手が下がる。

シェイラが振り返ったらしい。

俺もゆっくりと振り返った。


ロニアが上目遣いでお願いするような体勢でシェイラを見つめている。

「ぐっ」

シェイラが思わずたじろいでいる。


おいおい、それは反則じゃないか、ロニア……

ロニアにあんなふうにされたらそりゃ断れないよな。


シェイラの肩が大きく下がる。

どうやら勝敗は決したらしい。


食べ物攻防戦、俺ロニア連合の勝ち。

決まり手はロニアの禁じ手だな。

俺は思わず苦笑し、袋に食べ物を詰めていく。


パンパンってほどではない。

少し余裕がある程度まで詰め終わった。

ロニアの禁じ手に、少し同情してしまったからだ。

まぁ、袋が破けても困るしな。


俺は詰め終わった袋を手に、シェイラの方を向く。

シェイラはやれやれと言わんばかりに頭に手を当てている。

その後ろでロニアは嬉しそうにニコニコしてた。


気持ちはわからなくはない。

俺も同じ立場だとそうなるだろう。

助けてもらった礼、というには少ないけど、

運んでもらった礼だとしてもこれくらいは渡してもいいだろう。


「シェイラ」

俺の呼びかけに、シェイラがこちらを向いた。

シェイラの目をしっかりと見て。

「ありがとう、シェイラ」

袋をシェイラに渡す。


シェイラがため息をひとつつき、

「ああ」

と、袋を受け取った。


「じゃあな、ロニア、リスケ」

「じゃあね!」

「ああ、じゃあな」

袋を受け取ったシェイラが手をひらひらとしながら挨拶をする。

俺とロニアもそれに応える。

シェイラが踵を返し、ドアの方へ歩く。


ちらちらと袋の中を見て、困ってる。

……ちょっと多すぎたか??

少し反省した。


シェイラがそのままドアに手を掛け、外へ出た。

俺とロニアはシェイラの後ろ姿を見送る。


――パタン。

ドアが閉まり姿が見えなくなった。


俺とロニアは顔を見合わせて――

「いえーい!」

お互いハイタッチをした。


ロニアは耳をぴょこぴょこさせながら跳ねてる。

俺も不思議と達成感を感じる。

袋に食べ物詰めただけなのにな。


俺は息を吐きながら椅子に座った。

今日はいろいろあったからか、少し疲れたな。

動いたの自体が久しぶりだしな。

けど、心地いい疲労感だ。


「リスケ、食事?」

ロニアが首を傾げながら聞いてきた。

「ああ」

俺は頷き、何か手伝おうとして――

視界の端に積まれた山が映った。


「あー、俺はこっちの整理でもしてるか……」

下手に動き回るよりこっちのがよさそうだ。

俺は山に向き合い、切り崩すことにした。


分けるならいくつか箱があったほうがいいな。

「ロニア」

俺は料理の準備をはじめようとしていたロニアに声を掛け、

荷物の山を指しながら

「箱」

とだけ伝え、指を3本ほど立てた。


ロニアはそれだけで伝わったらしく箱を持ってきてくれた。

「ありがとう、ロニア」

俺が伝えるとロニアがにこっと笑い、準備に戻っていった。


「さーて、やりますか」

俺は山を崩れさせないように、慎重に1つずつ取り出す。

まずは、ぱっと見で見当がつく食べ物らしきものから分けていく。


「これは、野菜だな」

「こっちは肉か」

それぞれ別の箱へと入れていく。


いやー順調、順調。

これなら意外と早く終わるかもな。


「リスケ」

ロニアがひょこっと顔を出してきた。

どうしたんだろ。

俺が不思議そうに見ていると、

ロニアが箱に入ってた野菜を二つ手に取り、見比べ始めた。


あれ、俺もしかして何か間違えたか??

そのままロニアを見ていると、

片方を箱に戻し、もう片方を机に置いた。


そしてそのまま、別の野菜を二つ取り、見比べている。

その表情は真剣だが耳がぴょこぴょこ揺れている。


これは、あれか、品定めしてるのか。

その後もロニアは野菜をいくつか見繕った後に、肉も選んでいった。

一通り決まったらしく、嬉しそうにキッチンへ跳ねていった。


俺も仕分け続けますか。

このままだと机が狭いし、

ロニアがご飯作り終えるまでに終えないとな。


俺は再び山に手を伸ばす。

「これは野菜」

「これは肉」

「これは……雑貨かな?」

次々と箱に放り込んでいく。


――そうやってしばらく仕分けを続けたが……

いや、多い。

結構やったつもりなんだが終わりが見えない。


息を吐きながら、椅子にもたれかかる。

ロニアの方を見ると、肩を横に揺らしながら楽しそうに料理してる。

食材が多くてご機嫌らしい。


ロニアのあの感じを見てると、今日のご飯はいつもにも増して、

美味しくなりそうだ。

気分よく食べるためにも頑張らないとな。


再び贈り物の山に向き合う。

手を伸ばし、俺の主観で雑に分けていく。

野菜、野菜、肉、野菜、肉、野菜、野菜。


まあ、当然、野菜の方が多い。

けど肉が思ったより多かった。


畑がメインで狩りがおまけくらいのイメージだったんだけど、

思ったより肉も普通に食うのかもしれないな。


分け続けていると雑貨も出てくる。

これは……油か?

こっちはロウソク。

ランタンに使ったり、灯りのためのものか。

雑貨行き。


手を伸ばすと、紐でまとめられた草の束が出てきた。

なんだこれ?

雑草……ではないか。

丁寧に紐で束ねてあるもんな。


顔を近づけて匂いを嗅いでみる。

お、いい匂いだ。

ハーブか何かかな。

うーん、肉の箱でいいか。


次は……四角い、少し黄ばんだ塊。

なんだこれ?

何に使うのかわからない。


「ロニ……」

ロニアに聞こうとしたところ、使い方がわかった。

料理中のロニアが、似た塊で手を洗ってる。

石鹸かよ、これ。

雑貨箱に放り込む。


他には……布や手ぬぐい。

俺の血で大分汚しちゃったからな。

ありがたくはあるんだが……

なんだか引き出物みたいなラインナップだな。

雑貨行き、次だ、次。


少しぶ厚めの布が出てきた。

広げてみる。


これは……服か!

たしかに、着の身着のまま放り出されたから着替えがない。

下着とか服がいくつか入れられてる。


ありがたい……!

完全に盲点だった。


服を体に当ててみる。

サイズは……マジか。

ちょっとはサイズが違うと思ったが、どうやらピッタリそうだ。

たまたまなのか、きちんと用意されたのかはわからないが。

すごいな、どうやって用意したんだ?


今、一番うれしいかもしれない。

妙に気の利く奴もいるもんだ。


……って感心してたら、なんだこれ。

狼フェイスのマッチョ人形だ。

木彫りで、妙にクオリティが高い。

その手先の器用さを別のことに使えよ……


雑貨……いや、なにになるんだこれ……後回しにしよう。

こんなんに手を止めてたらいつまで経っても終わらない……


仕分け仕分け、仕分けに仕分け。

――ようやく荷物の山の底が見えた。


「おわった~!」

椅子にもたれかかり大きく伸びをする。

思ったより大変だった。


けど、これだけのものをみんなくれたんだよな……

歓迎されてるってことなのかな。

……いい村だな。


席を立ち、箱を片付けていく。

「リスケ」

ロニアの方を向くと、ちょうど料理ができたらしい。

こっちも箱の片づけが終わったとこだ。


ロニアから皿を受け取り机に並べていく。

一通り並べ終わり、お互い席に着く。


さて、それじゃあ、いただきますか。

といつもの祈りをしようとしたらロニアがぼーっと一点を見つめてる。

ん?どうしたんだ?

ロニアの視線を追うと――

狼フェイスのマッチョ人形が、

まるで自分のお立ち台かのように、机に鎮座していた。


あ、こいつだけ片付けるの忘れてた!!

ロニアの方へゆっくりと視線を戻す。

ロニアも同じようにこっちを見た。


「ぷっははははははははは」

どちらがはじめともなく、ふたりで噴き出した。



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