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12/20

Day12. 帰り道

村がオレンジ色に染まっていくのを眺めていると――

「リスケ」

隣から呼ぶ声がする。

ロニアだ。


思わず、見惚れてしまっていたが、

そろそろ降りた方がいいみたいだ。


後ろを振り返ると、星が追いかけてきている。

もうしばらくすると、日も落ち切るだろう。

街灯もなにもないこの村では、真っ暗になるはず。

いくら坂道が整備されてるとはいえ、それは危ない。

そうなる前に降り始めた方がいい。


俺はロニアに頷き、反対側にいるシェイラの方を見た。

シェイラもコクンと頷き、歩き始めた。


さて、俺らも行くか。

ロニアに視線を送る。

ロニアが俺の手を取り、耳をぱたぱたさせながら歩き出す。

今日はやけにご機嫌だな。


今日だけで俺の知らないロニアが随分と見れた。

出会ってから間もないが、

それなりにわかった気でいたんだが……

流石に、わかった気になるのは早かったな。


坂を下っていく。

やけにゆっくりだ。

ロニアとシェイラが気を遣ってくれてるんだろう。


もう少し早くても大丈夫なんだが……

まぁ、否定する意味もないし、素直に甘えておこう。


右側を歩くシェイラの方を見る。

キリッとした目つきに、長いまつげ。

狼らしい顔のフォルム。


凛々しいという言葉が人になったような佇まい。

この世界の価値観はわからないが、

十中八九、美人だろう。

え、むしろこれが美人じゃないことあるのか??

狼っぽい顔つきだがモデルみたいだぞ??


そういえば、ロニアとは違うんだな。

ロニアは普通の人にうさぎの耳が生えました、

といった感じで、俺との差はあまりない。


村も、普通寄りの人、獣寄りの人がまばらに居て、

獣人は獣っぽいフォルム!ってわけではないらしい。


それにしても……

シェイラを改めて見る。

俺が万全の状態でも重いであろう荷物を、

涼しげな顔で運んでいる。


ジェルグはまだわかる。

あのデカさと筋肉ならこれくらい余裕だろう。


けどシェイラはわけがわからない。

俺より細いんだぞ??

もしかしてロニアも……

と、なりかけたが、さすがにそれはないだろう。


ロニアのあの性格なら持てるなら真っ先に持ってる。

どうやらみんながみんな、あの感じではないらしい。


よかった……

全員があの感じだったら、俺はこの村で過ごしていく自信がない。

村基準で赤ちゃん水準になるところだった……


「リスケ?」

ロニアから声がかかる。

不思議そうにこちらを見ている。

どうやら俺が馬鹿なことを考えてるのが気になったらしい。


我ながら馬鹿なこと考えてたなと息がこぼれ、頬が緩む。

「いや、大丈夫だよ」

右手の杖を脇に抱え、頭を撫でる。


ロニアは不思議そうにしてたが、まんざらでもなさそうだ。

あまり人のことじろじろ見るのも失礼だしな。

この世界でもそうかはわからないが。


シェイラに視線を戻さず、降りていく道に視線を置く。

俺が歩いてきた景色が自然と目に映る。

行きはわたわた、帰りは不思議って感じだな。


ぽつぽつと家の窓から明かりが灯り始めている。

村の人も家に戻り始めてるんだろう。

煙突から煙が上がっている家。

美味しそうな匂いが漂ってくる家。

それぞれの生活の気配を感じる。


向かい側から人が上がってくる。

畑仕事を終えた人、露店から荷物を抱えて歩いている人。

色んな人がいる。


けど、この光景自体は見たことがある。

元居た世界で、いつも見ていた景色だ。


仕事を終えた人が家に帰り、

生活のために買い物したり、出かけたりする。

なんてことはない、日常の風景。


……なんだ。

こういうところは、同じなんだな。

懐かしい気持ちになった。


しばらく坂道を下っていく。

他の人たちは、ほとんどが坂道を上ってくる。

まぁ、上には作業場しかないからな。

その作業場も俺たちしかいなかったし。


そんなことを取りとめもなく考えていると、

「シェイラ!」

シェイラを呼ぶ声がする。

なんだろう。


向かいの方の子供たちが呼んでるみたいだ。

子供たちがシェイラの方へ駆け寄ってきた。

「シェイラ、――!」「――!」「――、――?」

シェイラは慌てる様子もなく、

話を聞いたり、褒めるように頭を撫でたりしている。


どうやら子供たちにずいぶん慕われているらしい。

まるで我先にと言わんばかりにシェイラに詰め寄っている。

そんな子供たちを、慣れた様子でなだめている。


村のお姉さんなんだな。

そんな印象を受けた。

子供たちの中にはロニアの方に来たそうにしてる子もいたが……

俺が気になるんだろう。

ちらっとこっちを見るだけで寄ってこない。


まぁそうだよな、得体が知れなさすぎるよな。

と苦笑いする。


「――!」

後ろの方から声がする。

子供たちの1人が顔を上げ、声の方に手を振ってる。

どうやら親に呼ばれたらしい。


「――!」

シェイラの方を向き手を振り、坂を走って上っていった。

「――!」「――!!」「――」

他の子どもたちも後を続くように、シェイラに手を振り、駆け上がっていく。

これは多分、さよならとかまたねかな。

子供たちの楽しげな顔から想像がつく。


「またな!」

シェイラも手を振りながら、子供たちの後ろ姿に投げかける。

子供たちがくるりと振り返り、改めて手を振って駆けて行った。


その光景がなんだか微笑ましい。

シェイラがこっちの視線に気付いたらしい。

こちらを振り返った。


口元に手を当てて、

「ん、んん」

と、咳払いをする。

どうやら気恥ずかしいらしい。

顔が少し赤く見える。


恥ずかしがることないのにな。

ロニアの方を見ると、目が合う。

どうやらロニアも同じことを思ったらしい。

ふたりとも自然とふふっと笑った。


再び道を下っていく。

シェイラはその後も、

「じゃあね」「またな」

と、道すがらすれ違う人と挨拶を交わしていく。


なにか話したそうにしてた人もいたが、

荷物と俺たちを見て、そちらを優先してくれたみたいだ。


ちょっと申し訳なさはあるがありがたい。


「リスケ!」

グンッと腕を後ろに引っ張られる。

考え事をしてる間に家の前を通りすぎそうになったみたいだ。

ロニアに引き留められた。


家を出たときは気づかなかったが、

ロニアの家は道の中腹にあたるらしい。

まだ下に降りようと思えば降りられる。


え、上まであの距離で真ん中なの??

どうやら、思ったより体力が落ちているらしい。

それか、こちらに来る前の体力のままなのか。

こりゃリハビリが大変そうだ。


ロニアがドアをあけ、中に入っていく。

それに続き、シェイラが入り、俺も後に続いた。


シェイラが机に荷物をそっと置いた。

家の中で見ると、改めてすごい山だ。

落ち着いて見ることがなかったが、

中身はほとんどが食料で、ちょくちょく小物や何に使うかわからないものが入ってる。

狼フェイスのマッチョ人形、お前だよ。


「――」「――、――」「――」

シェイラとロニアがなにか話してる。

うーん、会話になると、何言ってるのか流石にわからないな。


ロニアとひとしきり話した後に、シェイラが

「じゃあな」

と、家を出ようとした。


待て待て待て。

荷物を運んでもらってはい、さようならは流石にない!

いくら何でも申し訳が立たない。


「シェイラ!」

俺はシェイラを咄嗟に呼び止めた。

シェイラは不思議そうにこちらを振り返った。


俺は慌てて、なにか言おうとするが、言葉が出てこない。

えーっと、なにかないか、なにかないか。

俺がわたわたしてるのを、シェイラが怪訝そうに眺めている。


あ、そうだ!!

俺はハンドジェスチャーでここにいるように頼み、

荷物の山へと振り返る。

山から食べられそうなものをいくつか見繕っていく。


こんだけあっても俺たちだけじゃ食べきれないかもしれない。

だったら少しくらい渡しても罰はあたらないだろう。


見繕った食べ物を、シェイラに渡そうとするが、

「ダメだ」

と、シェイラが首を振って受け取らない。


ええ、なんで!?

施しか何かかと思われてる??


まずい、このままだとシェイラが帰ってしまう。

何とかして感謝だと伝えないと。

考えろ、無い頭ふり絞れ……


その時にロニアと目が合った。

ロニアも不思議そうにこちらを見ている。


そうだ!ロニア!!

「ロニア!」

呼びかけるとロニアが肩を跳ねさせる。

どうやら思ったより声が出てびっくりさせてしまったみたいだ。


それは後で謝る、それよりも。

俺は慌てて食べ物を机に置きなおし、片膝をついた。

両手を組み祈るような体勢を取る。

軽く頭を下げ、すぐにロニアに向けて口の前で手をグッ、パーと閉じて開く。


ロニアが意図を察してくれたようで、

「――」

と返ってくる。


俺がもう一度、祈るような動作をした後に、

「ありがとう?」

と、ロニアに確認すると、ロニアが頷いた。


よし!!

俺はすぐに立ち上がり、机に置いた食べ物を手に取る。

シェイラに向き直り、目を見据えた。

「シェイラ、ありがとう」

と、伝えながら食べ物を差し出した。


シェイラは目を丸くして驚いている。

一瞬、ためらうような素振りを見せ――

俺から食べ物を受け取る。

「ああ、リスケ、ありがとう」

シェイラが俺に優しく微笑んだ。


執筆が追いつかず、更新がまばらになるかもです。

がんばります

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