事実は小説よりも奇なり
小説には本当に現実で起こりうることも混ざっているのかもしれない。
――俺たちの物語にはいつしか確実な終点が存在ある。その終点まで俺はまだ、死ぬわけにはいかない。本当の真実を見つけるまで、
「はっ。」
目が覚めると目の前にはクモの巣があるボロい天井が見えた。
「そうか、あれから俺は春休みに入って、ええっと?」
寝ぼけているのか正確には思い出せない。
「まあ、とにかく起きるかぁ」
そう意気込みを一言、季節は春に差し掛かり外の桜の木がつぼみを開き、ここらではもう花びらがついているという季節となってきたこの頃。
俺は何をしているのかというと、
休日を満喫している。
「いやぁ、いいねぇ。休日ってのは、最高かよ。」
物静かしさを自分で振りほどきたく、独り言をつぶやく。
「でも、これは逆に暇だな。でも、ほんと最近はいろいろあったな。初めは親友にすら思っていなかった男が親友になったり、よくわからん事件を多く解決した気がする。それにほかにも学園長に直々に依頼されて、調査した結果にはあの爆弾魔がいて、俺実際に一回死んでたり、ほんと、」
でも.......。
ピンポーン!
家のチャイムが鳴らされた音がした。
「は!?誰だよ」
ピンポーン!
「おい、待ってくれ。まさか、」
トントントン。
「永和いるかぁー」
クソ。
やはり奴だ。
病院を退院してから断るごとに俺の家にくる奴。
ここは穏便に裏口から逃げねば。
「あれ?今さっき声がした気がしたんだけどな?」
よし。気づいてない。
「今のうちに」
俺は裏口から逃げた。
だが、
「おお!やっぱり永和いるじゃん!」
はあぁ、見つかってしまった。
こいつ。
犬飼に。
「なんだ犬飼。今日は用事があって無理だ。それじゃ。」
3つ言葉で俺はその場を逃げようとするも。
「え?でもお前今日予定ないって前に言ってなかったか?」
「ええっと?何のことだ、」
とぼけた。
これしか俺にはもう方法が残されていないのだ。
「とぼけても無駄だぞ。というか永和俺が退院する前に言ってただろ」
クソ、墓穴を掘った。
「ああ、そんなこと言ってたかな、」
「そうだよ。言ってただろ永和」
ごまかせなくなった、しょうがない。
「それで何の用だ?」
「おい、永和聞いてなかったのか?今日が黒咲が用意した探偵事務所に行く日だろ。まったく。」
「いや、お前それあと3時間後だぞ。」
「へ?」
さす犬。
時間の把握すら脳が追いついていなかったというのか。
まったく流石だ。
「デデデデモ、オレノメモチョウニカイていたはず。」
「見せてみろ。」
「は、はい。」
「おいこれ、お前嘘だろ。」
真偽を問うものだった。
俺ですらありえないことなのだ。
「何がだよ?」
「これお前、12時って書いてあるんだが、集合時間は12時だろ。お前のメモは合っている。つまり言うと、」
そんなバカな。と思い俺は少し考えてみることにした。
いや明白だった。
こいつは長針と短針を読み違えて12時に長針が差し掛かる前に来たのだ。
いや、どんだけ焦っていたんだよ。
よく見たら犬飼の髪の毛はいつものセットしたものに比べ、ぼさぼさになっており、いたるところに寝癖があるように見える。
「さてはお前、焦ってきたな。いや、正確には今さっき起きてきただろ。」
「イ、イヤ、イヤ!、イヤ!」
「おい、某小さくて可愛いキャラになってるぞ。」
「そ、そうです、多分。」
「だろうな。」
そんなことだろうと思った。
でも、ここからどうやって時間をつぶしたものか。
「永和!せっかくだしこの3時間楽しもうぜ!」
「いや、結構です。俺は家で寝ているので、後はご自由に」
「そんな悲しいこと言うなよ。さあ、行くぞ。」
「は?どこに?」
そんな疑問すら犬飼は待ってくれず、自転車置き場まで俺の腕を引っ張り無理やり連れていかれた。
そこで俺は思った。
あとでこいつ見てろよ。と。
―そこからは思っていた通りだ。
もちろんサイクリングだった。
俺はヘルメットをしっかりと装着し、犬飼の後ろにつき少しでも風の抵抗を減らそうと努力する。
もちろん犬飼のはサイクリング用の自転車のせいか俺のママチャリの方がスピードが遅くなる。
犬飼はそのため配慮かスピードを落としてくれているように見える。
そんな中、目の前を通り過ぎていくのは桜の木の数々、横には河川敷があり、いつの日かここで犬飼と俺が本当の親友になった場所の近くだった。
他にも桜の木の下で宴会や、お花見をしている人も大勢いるように見受けられる。
そんな桜の花びらが俺の肩に落ち、次第に目に被る。
でも木々の隙間から見える太陽がその花びらを照らし、とてもその光景は美しく見えた。
「よーし。永和!とりあえずここら一周しようぜ!」
「いや遠慮しておく。」
「まあ、そんなに恥ずかしがらずに、」
いや、本当に無理なのだ。
俺は今でも以前の先頭のせいで筋肉痛が続いている、それなのに今そんなに運動したら....。
考えるだけでも恐ろしい。
「どうせだし、少し、いや2時間ちょっと早いが喫茶店に向かおう。」
「ええっ。もう向かうのぉ。」
「当たり前だ。」
そうして俺たちは例の喫茶店に向かおうと、自転車を漕いだ。
「おい、犬飼。道ちゃんとわかるんだろうな!」
犬飼は元気よくかなりのスピードで走っている。
そのせいで、風で声がうまく届いているのかわからない。
「おお!もちろん!」
俺は不安に包まれながら犬飼についていくことにした。
そして......。
もちろんというべきか、なんというか。俺たちは道に迷った。
「おい、大丈夫かって聞いただろうが」
「え?いつ?俺には永和が肉まんウマい店あるか?って聞いてきたように聞こえたけど。」
こいつ何が「おお、もちろん!」だ。
こいつに任せた俺が馬鹿だった。
「それで、ここお前知ってるのか。」
「おうよ。知ってますとも!」
胸を叩き、自信気に犬飼は答える。
「それなら、問題です。この町の名前は?」
おそらく方向的に町と町の境らへんと見える。
「は!?え、ええっと。ほらあれだよ。あれ。ええ?」
「はい、わかってないな。」
「はい、」
今度は自信を無くしたように犬飼は答える。
こいつ感情豊かだな、そんなことを思ってしまった。
「じゃあ、スマホで確認するか。最悪俺の能力で、じゃあ、犬飼。ほいスマホ」
俺は犬飼に向けて手を伸ばす。俺にはスマホを買うお金もないのだ。
「へぇ?」
ん?まさか!こいつ!
「おい、まさか嘘だよな。スマホ持ってくるの忘れたのか、」
「そう、みたいです。」
しばし俺と犬飼の間に沈黙が生れた。
「おい、どうするんだよ」
「ええ、まあ、ほら。最終手段の永和の能力が。」
「ふざけんなよ!」
「は、はい。」
しょうがない。出来れば能力を無駄に使いたくないが、
<検索>以前犬飼と行った喫茶店までのここからの経路。
〈回答〉【ここから、反対側に直進1㎞先。その後交差点の信号を左側に直進です。】
つまり、それって、俺の家から直進でほとんど行けた道をなぜか反対方向に進んでここにいるってことか?
【はい。】
へー。
なるほどねぇ。
「おい!犬飼!」
「はい!」
「お前反対方向になぜか行っていたみたいだなあ」
「え?なんで?」
「俺にもわからんが、ここから反対側に直進1㎞先。その後交差点の信号を左側だとなあ」
「よ、よし!行くかぁ」
「そうだな、もし今度間違えたら首絞めてやる」
「え、こわ」
そうしてまたしても俺たちは無駄な徒労をした後に自転車を漕ぎ、喫茶店に向かった。
―「よし!やっと着いたな!文句ないだろ永和」
「ああ、お前があの後3度も道に迷い、最終的に時間的にやばいから先頭を俺に代わってやっと着いたっていう前提は今回だけ不問にしといてやる」
「何のことかな?」
こんな会話をしながらようやくついた喫茶店は俺たちが前に来た喫茶店だった。
自転車を店の駐輪場に置き、店内に入るとそこは至福の時間というべきか、
まだ春が始まり肌寒さを感じる頃のはずなのに汗でびしょびしょの俺たちにマスターが喫茶店の奥の部屋に案内してくださり、おまけに冷房までかけてくださった。
「あああ、極楽ぅ」
「そうだなぁぁ。ここだけはお前と同意見だぁぁぁ」
そうして黒咲を待っていると、意外な人というか、見るもめずらしいお客さんが来ているのを目撃した。
「すみません。アップルティーをもらえますか?」
そのお客さんは透き通った夏の風を香るような声でそうマスターに言う。
「かしこまりました。少々お待ちください。」
マスターはそう言って、あらかじめ冷蔵庫から取り出しておいたリンゴの皮を丁寧に包丁で剥き、実を切り、その芯と皮をティーポットにティーバックとともに入れ、熱湯を注いだ。
そうして3,4分蒸らし、軽くゆすり、少量の隠し味にはちみつを入れ、可愛いくまさん柄の彫刻が入ったティーカップに注いだ。
そしてそのティーカップをトレンチに乗せ、運んでいく。
「おい、永和見たよな今の技術。すげえな。」
「そうだな。だが、それより俺はあの客の方が気になる。」
「どうした?恋か?」
犬飼が真面目顔でそう言う。
「黙ってろ」
俺は犬飼の口を押えながら再度見る。
運ばれたティーカップをその客はつかみ、華麗に飲んだ。
そしてマスターと何か話しているようだ。
ここからでは聞き取れなかったが、俺の手が口から離れた犬飼は口を開く。
「それにしてもさ、あのお客さんすげえな。こう、なんていうか上品だよな。それに何と言っても背が小さい。」
「おい、失礼だろ。」
でも、内心俺も思った。幼女というわけでもなく小学生?というわけでもないように見えるのだ。
オーラというかなんというか気品さがあるように言える。はて、いいとこのご令嬢様だろうか?
「まあ、いいや。あんまり人をじろじろ見るもんじゃないしな。おい、お前もいい加減見るのをやめろ」
「ええっ。もう少しだけ、もう少しだけでいいからぁ」
「ダメだ。」
まったくこいつはあの子と違って精神年齢小学生だからな。
いや、そう考えたらしょうがないのか!
そんなバカなことを考えつつ、俺の助言でもやめない犬飼を見ていると喫茶店の扉が開き、鈴の音が店内に響いた。
「久しぶりだね。元気にしてた?」
「お、おう」
黒咲がようやく来たようだ。そのおかげで犬飼の言動が落ち着いたように見える。
流石黒咲パイセンさまさまだな。
「それで、少し気が早いかもだが、探偵事務所ってどこにあるんだ?」
俺は素朴な疑問を黒咲に投げかける。
「ここ。」
ん?
「なんだって?」
「だから、ここ。」
なるほど。ここかぁ。
確かに扉があり、ちゃんと客室のまって感じがして、冷房も完備されており、実は思っていたより広い。
大体学校の校長室くらいの広さだろうか。
「確かに打ってつけの場所だが、」
「何が問題なの?」
「それは......。」
俺は犬飼に目を運ばせる。
犬飼あと頼んだ。.......え?俺?そんな感じで読み取った犬飼は言葉を発した。
「ここはぁ、その。な。いろいろやばくないかな?」
俺は再度犬飼に目を運ぶ。
(もっと決定的なことを言え!)
「ええっと。そうだなぁ。ここはさすがに俺たちの荷が重いと言いますか。」
「どういうこと?」
黒咲は低い声で可愛く首をかしげる。
「つまり、、、(言え!)ここはさすがに俺たちが使うにしては綺麗すぎるというか、めっちゃ新しくないかな、ここ。」
よし!!
「確かにそうだね。使うにしては新しすぎる。でもここは昔私のお父さんがやっていた探偵事務所の跡だから。そこをここのマスターがリフォームして喫茶店にしたの。」
「「え!?」」
俺と犬飼は一斉に大きな声とともにびっくりした。
それにしても黒咲のお父さんということは学園長ってことで、つまり学園長は昔ここで探偵事務所を営んでいたということだよな?
「黒咲のお父さんってことは学園長だよな」
俺は念のため確認を黒咲に取る。
「うん。そう。」
淡々と黒咲は答える。
「だからあのとき黒咲の尾行を許してくれたのかぁ」
犬飼がそんなことをぽつっと言う。
そこで俺は気づいた。
マズい。
よく考えたら黒咲を尾行していたことを黒咲自身に伝えてなかった。っていうことは.....。
「え?尾行?」
「い、いや。尾行、ベーコンの聞き間違えだろ、なあ、犬飼!」
俺はわかりやすく目配りをする。
だが、犬飼には伝わっていなかったようで、
「え?何言ってんだ永和?俺たちは黒咲の尾行しただろ?」
ああぁ。終わった。
俺はそう悟った。
「え!?尾、、、行?あなたたち、もしかして、あのとき尾行していたもう一組の気配って.......!!」
状況に応じて判断することが得意な奴と苦手な奴という者はこの世の中にごまんとしている。だが、きっとこのとき最も恵まれず、無駄なことを状況がつかめず判断し、発言してしまった男はこいつだろう。
そう、そいつの名は犬飼 利通。
「え?」
その言葉を最後に犬飼は座っていたはずのソファーの下に、まるで殺人事件でも起きたのかのような姿勢で頬を赤くし、横たわっていた。
今回は平和でしたね。
犬飼と黒咲、そして永和この3人がようやくなんというかちゃんとそれぞれを認め合えた気がします。
そして今回は思ったより重要な話かもしれません。要チェックを。
今回も少しでも面白いと思ってくださった方、また、今後も読みたい!と思ってくださった方がいれば僕たちの励みになります。よければコメントもどうぞ。それでは、




