群青の夕日
今回が1章最終話です!楽しんでもらえると光栄です!
「希望は、あるのか...」
「ああ、もちろんだ?」
春から夏に変わりゆく季節のそよ風が入りカーテンが揺れる中、今俺たちは教室で放課後に会話をしている。
「で、なんの話だっけ?」
「はあ?お前が振ってきた話だろ」
こいつと来たら、ここまでの長い長い会話時間を返してくれ、
これじゃあ、すっとぼけ超えて、馬鹿超えて、そろそろ脳無しになりそうだな、
「もう一度言うぞ、お前は、俺のことがうらやましいと、本当に言うんだな。」
「お、おう!も、もちろんだ!それで、ちゃんと場をセッティングしてくれたんだよな!」
「何回言わせるんだ、するわけねえだろ!!」
こんな意味も分からない会話をしているのには少し時を戻す必要がある。
それも春休みが終わり、新学期が始まった日のことだ。
――その日は新学期の登校ということもあり、多くの学生が春休みでの休みボケで、話に対し苦痛な顔を浮かべていた。
そして午前中で学校自体は終わった。
そんな中今俺が何をしているかというと。
「どうして俺がまたしてもお前の探偵ごっこに付き合わなければいけないんだ、」
「そんなの永和がいないと、」
「いないとぉ?」
「何も始まらないからだ、ろ!」
さす犬。
毎度のおなじみかのように他人を頼り、自分の利益にするところ、さすがだ、まあ、そんな行動も今となると案外犬飼らしいけどな。
「で、今回の依頼は何なんだ?」
「そうそう!よくぞ聞いてくれました!!今回の依頼はぁあああ!」
やけにテンションが高いな、女子か、、どうせ女の子のことだろうな、、、
「本場の探偵直々の依頼でーす!!」
「はぁ?」
言葉は放課後の多くの生徒が部活に向かっており、人の少ない教室に響き渡った。
少なくともまだ部活動に移行していない多くの人はこちらを見ていただろう。
「おい、声が大きい。」
「あ、ごめん」
「それで、その探偵様が学園一のパチモン探偵になんの依頼だ?」
「学年一!いや、パチモンって、最近永和ひどいよなぁ、まあ、いいけどさ。」
「それでもらった依頼ってのは、どんなのなんだ?」
犬飼がポケットからぐしゃぐしゃになった一枚の紙を取り出した。
「う、うっわぁ」
「で、だな。今回の依頼はそれも、その探偵様の下で雑務をこなしたりする助手に任命したいっていうものなんだが、」
「それ依頼って言えるのか?それに助手?どういうことだ?」
目の前のそれはもう、依頼というよりかは、バイトに近しいものに俺は聞こえた。そのせいで犬飼のその言葉にかすかな違和感と、不安感を抱いてしまった。
それよりも、なんで、助手なんだ?探偵様は別の探偵という助手を指名で?
「これ、喫茶店の事務所の方に依頼されたやつみたいなんだけど、どうも依頼主をマスターが教えてくれないんだよ。」
「それは、不自然だな。それで、やるのか?」
「それも悩んでいてなぁ。だって俺探偵だよ!なんで探偵なのにほかの探偵の下につくんだよ、おかしいだろ!!」
多分こいつ、その探偵が女性だったらホイホイついていくだろうなぁ。
「いや、それはなんの不自然もないと思うけど、とにかく後で俺もマスターに聞いてみるよ。」
「わかった!じゃ、俺先に事務所行くな!」
「はぃはぃ、」
こうして犬飼と一旦別れ、その後も俺は部活動に行って誰もいなくなった教室で一人考えていた。
詳しくは知らされていない依頼なんて、そんなもの依頼と言えるのか、それに、どうやら探偵様はあいつを指名するとは、なかなかに目が腐っていらっしゃるらしい。
よい眼科をもし会ったときは教えてあげよう
「さて、俺も向かうかね」
「よっこらしょ、」っと立ち上がり、校内の昇降口前まで続く階段をゆっくりと下りてゆく。
そうして、毎回使用権のじゃんけんで勝ち続け、今回で28連勝中のグラウンドを独占しているサッカー部を眺めながら、校門に向かう。
「にしても、あの依頼....。」
なにか俺はあの依頼を以前も見たことがある気がした。
きっとデシャブというやつだろう、そうに違いない。
そうして校門を抜けた瞬間、目の前に一人の少女?
背丈は低いし、まるで小学生のようなやけに大人びた格好をした女の子が現れた。
「君、どうやらかの有名な学園探偵の犬飼君の助手らしいね」
「は、はい、そうですけど。」
その言葉に少しばかりの恐怖とともに、その見た目と声のギャップに驚きながらどう立ち去るか考えを練り始める。
なんだこの子、待ち伏せしてたのか。
「どうだい、僕のところで助手として僕の姿を見て、【探偵】について学ばないかい?」
突然のその言葉に俺はまたしても驚愕した。
その驚きに殉じて、改めて目の前の少女を見るが、容姿は整っており、髪は長髪のきれいな茶髪をしている。まつげは長く、夕日に照らされて、その美貌をもう一層輝かせている。
というかまさか、指名されていたのは、俺だったのか、とにかく断らないと。
でも、断りたいと思っているのに、ものすごく断りずらい。
「いや、俺前に犬飼君に知らない人には絶対についていくなって言っちゃたから、自分で言っておいてそのことを破るのは....」
まずは小手調べに、いつも犬飼以外に絡まれたときの常套句だ。
今までこれで抑えられなかったものは、粘着質の悪徳商売以外は、いない。
「え、ぇ、あれ、想定していた返事と違うな、、、、。」
困惑した表情を一瞬浮かべるが、諦めまいといった顔を見せる。
俺は........。
「じゃあ、俺は帰りますね。」
目の前の少女の横をフル無視で通っていく。
「ま、待ってくれ、もう少し僕の話を、、」
裾をいきなりつかみ、俺の方を向き必死に言葉を口の中でもにゅもにゅしている。
一体どこの燃えシュチュだよ。
流石に俺もなりふり構っていられなくなり、優しく握った指を外し、さっさと立ち去ろうとした。
その途端、俺が一体何をしたというのか、いきなり少女が泣きだしてしまった。
「なんで、、、、そんなこと言うんだい...。君は僕のことが嫌いかい?ただ僕は君と紅茶でも一緒に飲もうと思って、ほかにも君の、そのぉ、犬飼君と一緒にいるときの考え方が知りたいだけなのに....」
いきなりの泣き出しに俺は困惑してしまった。
それにこの状況は非常にまずい。
目の前には小学生くらいの女の子、俺は中学生。明らかにいじめ現場にしか見えないだろう。
その予想が的をつくように、いつのまにか周囲の帰りがけの学生の多くの注目の的になっていた。
「い、いや、いまのは「しかも君はそういうけど、この町には僕くらいしか能力が存在することなんて知らないんだよ....」
は?
今この子、確かに【能力】って。
でも今はそんなこと考えている場合じゃない。
だんだん人が多くなってきている、ちょうど部活終わりの学生が増えてくる時間帯なのだろう。
「わかりました、行きます。でも、それなら俺からも行くにあたって条件があります。」
「なんだい、」
「まずは腹ごしらえにしませんか?今さっきからあなたのおなかがなっていることと、今この現状に俺が耐えられそうにないので、」
ため息交じりに言う俺の言葉に、少女が気まずそうに目を左側にそらす。
「手持ち金が、いま、なくて、、」
「わかりました。今回は俺が出します。」
「ありがとう、」
こうして俺は謎の少女との突然の食事になった。そしてその背後には、微かにあいつの匂いがした。
――近場のファミレスというものは夕方に立ち寄ると案外混んでいるものだ。
そして俺は混雑が苦手だ。
とりあえず、ファミレスの端側の窓際の席に座り、先ほど中断された会話を始める。
「それで、あなたはなにが目的なんですか?」
「それは.....。」
気まずそうに少女は顔を下げ、恥じらい交じりに言葉を発する。
「僕は探偵では一流なんだけど、生活面が、ちょっとね。」
自分で一流って、どうなってるんだよ。
「最近食べたものは?」
素直に気になった言葉を問いかける。
一瞬の間が開き、その後にもぞもぞもと言葉を発し始める。
「喫茶店の紅茶と、クッキー」
「それだけ?」
「それだけ、、」
この子、本気で言っているのか。
俺でも1か月もやし生活はあるが、そこまでひどいことになったことないぞ。
一瞬外を見ると、ファミレスの窓から見える空はだんだん暗くなっており、時が過ぎていくのを示しているように思える。時刻はすでに19時を回っていた。
「お金がないとかですか?」
「い、うぅ、好き嫌いが激しくて、、、」
「それは自己責任ですね!はい!これで話はおしまい、俺帰りますね。」
席を立ち、そそくさと鞄を取り帰ろうと準備を始めた。
会話をするだけ、無駄だったと思い知らされたのだ。
「待って!!」
俺が席を立ちあがり、帰りのドアめがけて歩いていくと、いきなり背後から甲高い声が店内に響く、響き渡るその声を無視し、ドアに向かうのに俺の良心は自然と痛まなかった。
「おい、今大事な話の最中だろうが!!」
だが、俺は怒りをぶつけるように背後を向き、怒鳴った。
「なあ!犬飼!」
俺が向いている先には犬飼が突っ立っており、いきなり怒鳴られたことに唖然としている様子だった。
「お、おう、悪かった。この通りだよ」
手でごめんと表現をしているようだが、俺は許さない。
絶対、墓までもっていってやる。
「はぁ。で、なんでお前がこう都合よくここにいるんだ?」
「ああ、それはだなぁ、あの後一回は帰ろうとしたんだが、言い忘れていたことがあって、コンビニでアイス買って食べながら学校に向かってたら、運よく当たりが出てな、それでまたコンビニにもどって、」
「あぁ、はいはい、わかったわかった。もういい」
「えぇ」
オーバーリアクションにしょぼんとしている犬飼を横目に俺は少女にもう一度話しかけた。
「あなたが俺を指名したのには何か理由があるのか?」
「それは、君が今までなしてきた事件解決数を見込んでだ。それと、君は犬飼君の助手をしている。それなら僕の助手もできるのでは、と思い。」
その考えを聞いて腑に落ちた。
きっとこの人は俺が今まで事件を解決してきたことをちゃんとわかって、俺のことを指名してくれたんだ。
そしてそれは、初めて俺は誰かに認められたってことだ。
そのことに少し感極まって言葉を出すことが少しの間できなかったが.......決心がついた。
「わかりました。俺があなたの私生活を何とかして見せます、俺にやらせてください!」
俺は頭を下げ、威勢よく声を出した。
「はい、よろしくお願いします!」
「いえ、こちらこそ、」
「すみません、相談を持ち掛けているのは私の方なのに、まだ名乗ってすら、いませんでしたね。」
「私の名前は涼風里亜と言います。よろしくお願いしますね!」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
ファミレスだということを、とうの昔に忘れている俺たちは慌てている犬飼を知りもせず、お互いに探偵と助手というなかなかハードな契約を結んだ。
――さて、こうして現在に至るのだが、
「それで犬飼、お前はなんで里亜を口説こうとしているんだ?」
「そりゃあねぇ、永和だけ夢の生活なんて送らせるわけにはいきませんよぉ、ふざけんな!!なんで永和があんな可愛い子の助手なんだよおかしいだろ!確かにさ、紹介したのは俺だけどさ、俺だってさ、可愛い女の子とキャッキャしたいのに、なんでだよぉぉおおお!!!」
「いや、別にキャッキャとかh、、、」
あれ?案外していたかもな、マズい。こいつに反論できなくなったら俺のアイデンティティが、
「なんで言葉に詰まるんだよ!!」
大きな声で俺に必死に訴えかけているイケメンは顔を真っ赤にして悔しがっている。
やはり、イケメンが目の前の可愛い女の子を逃した時のダメージは大きいのか、
「とりえずイケメンよ、滅しろ。」
「なんでだよ!」
「それで、それはそうとして、お前の能力どうにかしないといけないだろ。」
あれもこれもと多くのことが俺には降りかかってきている中で特大イベントが2つも、考えるだけで頭が痛くなってくる。そしてそのすべてに俺が関わっている。
はぁ、なんで俺が、、、
「いや、いきなり話変わりすぎだろ。あと、さらっとディスったよね。まあいいけどさ、そうだなぁ、でも、やるにしても俺の能力をフル活用できるほどの重症ってまずないぞ。」
「でも、呪いは蓄積は日々しているんだろ、」
前の喫茶店での初の事務所お披露目のときに、犬飼が失神から起きて黒咲にも話したが、こいつはいずれか暴走する、それも勝手に。どこから能力何て持ってきたのか、厄介ごとを増やしやがって、
「前に考えていた依頼の中で能力を多用してどうにかするってのも、無理そうだしな。」
「そうだな、また別の方法を探さないとな、」
「でもさ、いいよ。」
「何がだ?」
放課後の教室に、いつもと同じ、いや、ほんと数か月前には思いもしなかった出来事を顧みて、それでも生きて、それで今ここにいる俺が夕日に反射した窓に映っていた。
そこにはもちろん、親友もいる。
「それはだなぁ、」
きっとまだあの爆発事故までは気も抜けないし、今目の前にあることにピリオードを打たないといけない。
「もったいぶらずに言えよ」
それでも、今俺たちはこの瞬間を、今を、普通から変わってしまったとしても、この日々を、
「お前が親友でよかった!」
きっと愛している。
それはきっとまだ、なにも変わっていないこの現状に唯一の季節だけではない変化を囁いていた。
「俺もお前が親友でよかったよ。」
今回もご愛読ありがとうございました!
1章最終話らしくすっきりとした終わり方にしたかったのですが、なんだか曖昧な終わり方になってしまいました。ですが、この1章の1話から10話の中で、きっと永和の人生について伝えられたと思います。
そして今後とも、これからも可変の探偵をよろしくお願いします!!




