(1-04)不思議な能力2
「不思議な能力?」
「はい」
「超能力とか?」
「ええ、まぁ……」
「あ、美香さんもしかして昔テレビでやってた超能力捜査官みたいなやつ?」
岸田が横から割り込んできた。
「あ、いや……あんな大それたものじゃないんですけど」
美香は困ったように笑った。
「私の同級生で、そういう子がいたんです」
「そういう子?」
村上も少し興味を持ったらしい。
椅子を回し、美香のほうへ体を向ける。
「どんな子なの?」
「えっと……私がまだ小学生の頃の話なんですけど……」
事務所の空気が少しだけ静かになった。
美香は言葉を探しつつ続ける。
「ある時、同級生の男の子がいなくなっちゃったんです」
「いなくなった?」
「はい。次の日は学校にも来なくて。朝、先生がクラスのみんなに話してくれました。何か知っていることがあれば、どんな小さなことでもいいから先生に教えてほしいって」
美香は、当時の教室を思い出すように目を細めた。
「子供だったのでもう大騒ぎでした。休み時間になるとみんなその話ばっかりで……」
「それで?」
岸田が身を乗り出した。
「友達の莉理が何も言わずに帰っちゃったんです」
「ん? 友達が帰った? 学校を?」
「はい。その話を聞いてすぐ」
「え? どういうこと?」
村上が呟く。
「実は……莉理は家に帰ってその男の子を探す準備をしてたんです」
「探す準備?」
「はい」
美香はそこで少し迷った。
「……探す準備というか……儀式というか」
「儀式?」
岸田の声が一段高くなる。
「あ! なんか超能力というよりオカルトみたいな話ですか?」
「え? あ、うーん……ジャンルは私にもよく分からないんですけど」
美香は少し困った顔をした。
そして一度息を吸う。
「霊というか……魂を呼び出して会話する、みたいな感じなんです」
「魂?」
村上が聞き返した。
「はい」
「……それは、本人の魂ってこと?」
「たぶん……」
美香自身も記憶は曖昧だった。
小学生だった自分には、莉理が何をしていたのかは理解できていなかった。
「それで……その男の子はどうなったんだ?」
村上が訊いた。
「莉理が帰ってから、けっこう早く見つかりました」
「え?」
岸田が声を上げた。
「どのくらい?」
「朝のホームルームで先生から話しを聞いて、莉理はそのまま授業を受けずに帰りましたから……」
美香は指を折る。
「それで、給食前にはもう『見つかった』って連絡がありましたから……二、三時間くらいでしょうか」
「二、三時間?」
岸田が目を丸くする。
「すご……」
「なんだその話……」
村上は呆れたように言った。
だが、声には笑いがなかった。
荒唐無稽。
確かにそうだ。
小学生の頃の記憶なのだから、何か別の事情があった可能性もある。
たまたま見つかっただけかもしれない。
それでも、村上は完全には笑い飛ばせなかった。




