46.『水忍』弐
ケンダマの先端と槍とがぶつかり合った。
「お互いに一歩も譲らずの現状。どちらかが崩れれば総崩れします。何とか食い止めていてください。」
互角の状況。再び水を繰り出せる槍を持った怪物と対峙する。
一方で、カゲトとハロミトは再び水忍と相対した。
パリッ。
足元が凍って動けない。
動けない私の元へと槍が飛んできた。
ケンダマの糸が怪物に絡まり、槍が届く前に怪物は投げ入れられた。それが氷に当たり、私を動けなくした氷が砕けた。
「ランッ!」
氷の槍に肩を突きつけられているルイラン。彼女は凍らされていた。
「命に別状はないっ。けど、もう戦線には復帰できないわ。」
ルイランの敗北。
氷の槍を扱う怪物がこちらに流れ込んできた。
「……。次の武器ルーレットまで、暫し時間がかかる。それまでは耐えてくれ。」
怪物二体の攻撃。防戦一方だ。
私の所に氷の槍の怪物が襲ってくる。何とか避けていく。
少し距離を置いた。
怪物の動きが止まった。何やら力を溜めているように見える。
もしかして、大技が来る。
「……。大技が来る。」
ルイランが対峙していた水の槍の怪物も同じように大技を放つために力を溜めている。
二体はお互いの場所へと移動し、槍と槍を重ね始めた。その矛先が私達に向かう。
水の波動――氷の世界。
【時空!】
怪物の前方に白く濁る透明な氷の塊ができた。
私達はその中に閉じ込められた。
「……。助かったのか。」
私達二人は氷の塊の中にできた両手を広げたぐらいの広さの空洞の中にいた。
時空で攻撃を逸らしたお陰だ――。間一髪、発動できて良かった。
だけど……。
能力が切れた。
今いる場所から戦線復帰するには、この分厚い氷の壁を破壊しなきゃならない。しかし、私にはもう破壊する力は残されていない。
「……。重火器お願い。」
「ごめんなさい。休憩しなきゃ、使えないみたいです。」
少しだけ息も上がりかけた。
無言のルイレン。ちらっと顔を見た。何の感情もなく、ただ真っ直ぐを向いていた。
「あれ? ルイレンさん?」
「あっ、ごめん。……ぼーっとしてた。」
嘘でしょ!?
こんな状況でボーっとできるの!?
「……。武器ルーレットができるようになったから、それを使う。八のハンマーか十の神器が出たらしゃがんでて……。危ないから。」
武器【ルーレット】!
この隙間にルーレットが現れた。
八か十に入ればいいみたいだ。
ボールは……八に――
入るかと思いきや跳ね返って七に……
いや、六に入った。
六――ダガー。
数本のダガーナイフが現れた。
これで氷の壁を壊せる気が全くしない。
ガリッ。ガリッ。
ルイレンはナイフで氷を削っていく。
「……こうなったらヤケクソしかない。……何してんの? 一緒にやるんだよ?」
二人でガリガリと地道に削っていく。
削って、削って、削っていく。
あー、焦れったい!
早く戦線に戻らなきゃならないのに。
それなりに削ったはずなのに全然先が見えない。
「こんなん無理だって!」
「……。もう、いいよ。……。ここまで削れれば戦闘のルーレットが回せる。」
戦闘【ルーレット】
三十七のポケット。
ボールは黒の二十九に入った。
「……。」
「それはいい効果なの悪い効果なの?」
「……。」
「いや、なんか言ってよ!」
彼はダガーナイフを氷にぶつけた。すると氷はヒビが入り、前方側だけ崩れていった。これで外に出られる。
「黒の二十九……。一度だけ、強烈な一撃必殺レベルのパワーを得る。」
ようやく戦線復帰だ。
状況を確認した。
「えっ――?」
変わらずルイランは戦闘不能。
カナリンはダメージを負っていて戦線から外れている。フェルナも能力は解けてしまい戦線離脱。
四体の怪物をカゲトとボーニーで何とかやり繰りしている。たまにハロミトが隙を抜って攻撃を仕掛けるも、ハロミトは足が縺れかけていてまともに動けそうではない。相当疲労が溜まっているのだろう。
その隙を抜って、余裕のある水忍が【遠雷】で雷攻撃をしかける。何とかそれを躱し、迫り来る四体の敵と戦っている。
これ程までに強い敵とは。
カゲトもボーニーも焦りの色が見え始めている。どれだけ二人が強くても、やはり、敵の方が一枚上手なんだ。
さっきまでの間に能力は回復した。私も早く戦わなければ。
武器【ルーレット】!
ルーレットが回される。
カラ、カラ。……カラン!
ポケットに入ったのは十だった。
十――七支刀。
「……ようやく来た。……。お待たせ。」
え――?
"火使用――焔の火剣"
強烈な炎を振りまく突き一閃。穿つ一撃が、炎の槍を持つ怪物を消滅させた。……いや、足元で少しずつ復活している。それでも、復活までには相当な時間がかかりそうだ。
さっきまで戦っていた三人は相当な疲れが溜まっている。それでも動いていく。
"金使用――宝玉の金刀"
剣が巨大な黄金の剣に変化し、雷の槍を持つ怪物を木っ端微塵にした。
【遠雷】
エリアの中にいる水忍が放った雷がルイレン目掛けて飛んでいく。
"木使用――森林の木刃"
剣から大木が生えてくる。その木はまるで全部が鋭い刃のような鋭利な形をしていた。
木と雷がぶつかり、木は消えた。
「……。互角か。これは厄介だな。」
よく見ると七支刀は四つの刃のみになっていた。大技を使用する度に七支刀の枝分かれしている刃が消えていくみたいだ。
【自分自身】【重火器】【重力】
私も戦わなければ。エリアの中にいる水忍目掛けて攻撃をしかける!
「上手く息を合わせましょう。」
「隙があったら、俺も攻撃するっす!」
私の他にカゲトとハロミトも戦線に加わる。
【液体操作】【液体窒素】
凍らされた水が武器となる。鋭い戟――フォークみたいに三本の槍が先端付近で枝分かれしている槍――が作られて、それを振り回してきた。
「忍法【影分身の述】!」
多人数で襲う攻撃。しかし、戟で容易く影を壊された。
重火器で殴ろうとしても、素早い戟捌きで軽々と受け止められてしまう。それに、当たっても全く効いてない。
「こっちも限界が近いでござる。倒しきれないでござるか?」
四体の怪物と戦うルイレンとボーニー。倒しても倒したも復活するため、手こずっているみたいだ。
「使うでござるよ! ルーレット!」
もう、これに賭けるしかない。
ボーニーの代弁にしっかりと頷く。
「対象は水忍でござる! 赤が出た瞬間、一気に決めるでござるよ!」
戦闘【ルーレット】
ルーレットが回った。
カラン。
カラン。
カラ。
入ったのは黒の零ポケットだった。
「それだけはまずいっ。それは全能力を倍増させる特大大当たり。逃げて!」ルイレンらしくない焦った声。
圧倒的な黒いオーラが、水忍から放たれる。
それを直で感じたせいで体が動かない。
あっ、石像の手が私の目の前にある。
あ、終わった。そう思った瞬間、体が一切動かなかった。
膨大な水が蠢いていった。
――。




