45.『水忍』壱
カゲトとフェルナらから提供された情報を今一度確認する。
最強の五人が一人『水忍』のエポン。
彼は最強の補助員と呼ばれている。しかし、戦闘面でも強者の一面を見せるらしい。
基本的に行う技は"エリア"。
エポンの半径数メートルにエリアを設けて、その中にいる存在を回復することができる。つまり、倒し切るには一撃必殺か、エリアの外に出して削らないといけない。
そして、最も厄介な技――衛星。
エリアの外に現れる四体の氷の怪物。その姿は獣と人間を融合したような見た目をしているらしい。それぞれ氷、炎、水、雷の性質を持った槍で戦ってくると言うこと。
エポンをエリア外に出さないと回復されまくって倒せない。もしエリア外に出しても衛星四体との乱戦になるので、簡単には倒せない。
これは一筋縄では行かない戦いだ――。
永久の町の外れ。山の窪みに溜まった水を踏んで進んでいく。
パルパルはお留守番。ここにいるのは私、カゲト、カナリン、ボーニー、ハロミト、フェルナ、ルイルイ兄妹の八人。
全ての攻撃が無効化される石像が目の前にある。封印を解けば、無効化はなくなるが強い敵が襲ってくる。
「いい? 覚悟を決めて!」
カナリンは石像に触れた。
【自分自身】【重火器】【重力】
私は大砲を手に持った。
ハロミトは剣を引き抜いた。
【刀】――【木刀】
カゲトやボーニーは刀を取り出した。
【フェニックス】
フェルナは伝説の鳥に姿を変えた。
【ルーレット】
二――双銃。
ルイレンはランダムで選ばれた二丁の拳銃を手に持った。
ルイランはヨーヨーのストリングスを中指にはめた。
「準備はいい?」
はい!!!!!!!
「いくわよ!」
【解除――!】
カナリンが触れていた石像が封印から解かれていく。石の体が空へと浮いていった。
そもそもエリアや衛星を使われる前に倒せば問題なし。
「火遁【火球】爆炎!」――フル【フレイム】!
カゲトとフェルナの速攻攻撃。早速二方向から進んでいく圧倒的質量の炎。
【抉る!】
――え?
空間が歪んだ。一瞬にして、炎は消滅していた。
「空間ごと技を抉り取って消し去ったみてぇだな!」
引き金を引いた。大砲が放たれる。ルイレンの早撃ち。【ボール!】――ボーニーの波動弾。
行けっ!
敵が……消えた?
いや、真下の水の張る地面に一瞬にして降り立ったんだ。すぐそこにいる。
圧倒的風圧が現れる。
足が勝手に後ろに進んでしまう。
【エリア!】
水忍を囲む、周りにできる不思議なオーラでできたサークル。これが例の回復効果を放つエリア。
そこに向かってハロミト、ルイランが飛び出す。
"フォワード・パス!"
ヨーヨーが放たれ、ハロミトは剣を振り下ろす。
「土遁【瓦】手裏剣!」「……。一気に決める!」
カゲトが瓦の手裏剣で援護射撃。さらに、ルイレンも銃を放つ。
【液体操作】
石像の周りに操られていく水が集まっていく。
【液体窒素】――凍結!
突然できる氷の壁。薄い壁だったのですぐに割れるも、威力はだいぶ落とされた。こんなんでは倒しきれない。
【衛星――!】
ついに発動されてしまった。
"エクスプローラー"
雷を纏う槍を持った怪物が現れた。
その槍を帯電させ、溜まった雷エネルギーを下に向けて下ろそうとした。――このままじゃ感電する。
【ボルト!】
黒い棒で示した雷を纏う刀の線。それが槍とぶつかりあった。
あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!
ぶつかった衝突で、放電した雷が水を通って私達の所までやってきた。正直、ボーニーの妨害もなしにあの電撃を喰らってたらヤバかったと思った。
「こいつは拙者に任せるでござる!」
一体目の怪物とボーニーがやり合っていく。
"東方紅"
炎を纏う槍を持つ怪物だ。
「クラッシュ【フラッシュ】!」
フェニックスが不思議な炎を放ちながらその怪物にぶつかりに行く。
眩い光が目の前を支配する。
あまりにも眩しくて手で隠す眼。少しして目を開けるとそこには炎が舞う。
「この衛星はうちに任せて。」
二体目の怪物はフェルナがやり合っていく。
"スプートニク"
冷気を纏う槍を持った怪物だ。その氷の槍を地面に突き刺そうとしている。辺り一面を凍らす気だ。
"ブレイクアウェイ!"
ヨーヨーの紐が槍に絡まった。槍の動きが止まる。
「ここはあたいに任せな。」
ルイランが攻撃をしかけたみたいだ。
三体目の怪物はルイランがやり合っ――
一気に槍を持って詰め寄る怪物。このままだと腹に突き刺さる。
【回避――!】
間一髪の所で攻撃は当たらなかった。
それもこれもカナリンの技のお陰だ。
「カナリンも一緒に戦うわ!」
三体目の怪物はルイランとカナリンの二人でやり合っていく。
"おおすみ"
水が垂れ流されていく槍。
目の前にいる怪物。こいつは私がやるしか無さそうだ。
襲ってきた。
あれ、意外と早い――?
もうすぐで槍で貫かれる……?
パン。――パン!
二発の銃声。怪物が動きを止めた。
「……助太刀するよ。」
何とか助かった。
四体目の怪物は私とルイレンの二人でやり合っていく。
残る本体はカゲトとハロミトに任せるしかない。
集中――。
怪物の槍は素早く振られるが、集中さえしていれば避けられないものじゃない。
そして、避けていれば……。
怪物の顎元に当たる銃。至近距離で引かれる引き金。ルイレンのアクロバティックな動きから放たれた一撃は怪物の体勢を大きく崩した。
すぐに彼はその場を離れる。
今だ!
ドガァァン!
重火器の砲弾が怪物の頭を吹き飛ばした。
頭が欠けた怪物。
「……。急いで本体の方に戻ろう。」
私達はすぐに石像の元へ……と?
「待って!」
欠けた頭が少しずつ復活していく。まるで不死身の生き物だ。
再び槍を振ってきた。
「倒しきれなくても、木っ端微塵にすれば時間は稼げそう。……。」
早撃ち。しかし、怪物には倒し切る程の威力は与えられない。
「……少し時間が欲しい。ルーレットを回す。十が出れば……簡単に行動不可にできる。」
私はそれに承諾した。
【十手!】
威力はなくても近距離戦ができて、敵の隙を作りやすい武器――十手。それで槍と撃ち合う。あわよくば、鉤に引っかかって武器を奪えることを狙う。
【ルーレット!】
ルーレット版が現れた。版と玉が回り出した。
スゥ――。
カッ。
勢いが止まっていく。ボールは十のポケットに――
入ったかと思ったら、そのまま弾かれて横の九に入ってしまった。
九――ケンダマ!
現れたのはケンダマだった。
こんな武器じゃ……もう戦うとかできるレベルじゃない。それも数分間は武器を変えられないと言う。
「やばいじゃん!」
「……。問題ない。それより大砲だして。」
言われるがまま、十手を消して【重火器】を出した。
槍が振られる。
攻撃が止んだ。槍を持つ腕が、ケンダマの糸で絡まって動けなくなっているみたいだ。
そのまま彼の方へと引き寄せられる怪物。ルイレンのケンダマの尖った部分が腹に突き刺さる。
相当な鋭さを誇るみたいだ。腹が貫通した。
パキッ!
背中を思いっきり蹴る。ケンダマに絡まった腕が取れた。氷の断面が見える。
「これ、いらない……。」
腕が落とされ、足で強く踏み潰される。
いつの間にかケンダマの糸で身体を巻き取られる怪物。それを投げ捨てるように重火器の方に投げてきた。
重火器の先端に怪物がくっついた。
「早く……撃って。」
ハッ。引き金を引いた。至近距離から放つ大砲の威力。その怪物は木っ端微塵になった。
「時間はない。……助太刀に行くよ。」
「あ、うん!」
「あいつの重さを減らして。」
「分かった。」
ハロミトとカゲトが水を操る水忍と張り合っている。やはり、技を当ててもすぐ回復されるためか倒しきれないみたいだ。彼らの攻防で水忍には余裕がない。その隙を抜って近くに忍び寄る。
私達は二人に向かって軽く会釈した。カゲトは会釈し返した。私達の狙いに気づいたみたいだ。
ついに、私は水忍の近くへとやってこれた。私は石像に触れた。
【重力――!】
触れた物質の重さをゼロにする。石像は物質。これで軽くなったはず。
ケンダマの糸が石像に絡まった。
そのままエリアの外に投げ入れられる。
「水忍は勇者様の攻撃を二発と少々の攻撃を受ければ倒せると思われます。エリアから出ればすぐに二発与えられるでしょうから、それまで支援をお願いします。」
「硬すぎるのが仇になったみたいっすね。"あべこべ"の剣の力を思い知るっす。」
その後ろからカゲトが忍び寄る。
「少しでもダメージを与えなきゃいけませんからね。火遁【火炎】烈火!」
炎を纏う刀が振られる。
一撃目と少々の攻撃――。
ハロミトとカゲトの攻撃が同時に当たりかけた。
【エスケープ!】
攻撃は宙を空ぶった。
焦った顔が目に映る。
いつの間にかエリア内にいる水忍。
「エリア内に戻られた。これじゃもう全回復じゃないっすか。」
「あの中でダメージを与えたとて、瞬く間に全回復されてしまうのがオチでしょう。まさか瞬間移動の技を使えるとは思いもしませんでした。これはなかなか厄介な戦いになりそうです。」
水忍の石像はエリア内で蠢く水に囲まれていった。
そして、私達が相対していた四体目の怪物が復活した。




