43.ルイレンとルーレット
「ルイレンさん。実は、私達、『水忍』の石像の解除許可を貰いに会いに来たんです。」
飄々と立つルイレン。
「……。いいと思う? 知らないけど。」
ん? いいんじゃない?
知らんけど!?
「いや、なんで許可を出すアンタが知らないのよ!」
「俺……なのか? 『水忍』の親族がいいなら、いいと思うが。」
「今度は、親族かっ!」
今度は誰を探しに行けばいいの?
「町役所に行けば分かると思う。……一応、着いていく。」
今度は石像の親族探しをすることになった。
中央にある役所に行く。主忍のルイレンもいたお陰がスムーズに物事が進み出しそうだ。最終的にカゲトが窓口にて情報を受け取る。
カゲトがこちらにやって来た。
「親族の方が分かりました。『水忍』エポン様の権利については、孫に当たる前主忍フェルナ様の許可が必要とのことです。」
フェルナを見た……。
「あー、うん。水忍はうちのおじいちゃん。」
「アンタかよ! 早く言ってよ。もういいよ、このやり取り。飽きたよ!」
巡り巡って、許可を頂くことができた。
絶対にすぐ終えられたのは気のせいだろうか。いや、絶対に気のせいじゃない!
「なんか……疲れた。」
「そうですね。石像については明日、気を取り直して、行いましょうか。」
今日は一旦休みで、石像は明日に持ち越しだ。
「うちも手伝います。」
「……。じゃあ、俺も。」
新旧"永久の町"の主忍も戦力に加わった。
しかし、このルイレンさんは役に立つのだろうか。強いとは聞いてるけど、直接見てないからよく分からない。
「ガガガゴゴ……ガッ!」
町に現れる岩で包まれた魔族だ。手足が生えたまん丸のボディが印象的だった。
「魔族の"ストーン岩"でございますね。特徴はなんと言っても、その岩の体。生半可な攻撃は通じませんのでお気をつけて。」
とりあえず、岩の体。明らかに遅そうだ。ゆっくり準備してからでも……。
「す……す、【スピード】ォ!」
凄く早く移動してきた。
「早っ!?」
そして、飛び上がって回転していく。
「す、す……【スクリュー】!」
ドリルみたいな攻撃をしだした。
一直線にこちらへと向かってきている。
「ここは俺に任せるっすよ!」
ハロミトが剣で受け止めた。余裕そうな表情だ。
そして、攻撃が終わり隙ができたストーン岩を斬りにいく。
ストーン岩が破裂した――。
「普通、岩に剣は効かないっすけど、あべこべの剣は逆に効くっすからね!」
自慢げにこちらを見てきた。とりあえず、お疲れとだけ労った。
少しだけ近くの場所から戦いの音がする。
その方角に向かって進んだ。
少しだけ開けた土地。そこに山賊と思しき人達が数人屋根に乗り、道には先程の魔族ストーン岩が数体存在している。
それらと戦っているのは永遠姫とその子分二人だった。しかし、三人ともボロボロで今にも死にそうだ。
「……。」
飄々と前に進むルイレン。
「……どうなってる?」
「町の崩壊を聞いてやって来た山賊崩れだ。あいつら、Zプリンセス山からストーン岩を町に流し込みやがった。ほんと面倒くせぇ。」
「山賊か……。最近、よく聞くな……。」
「そりゃ、そうだろ。元々、山賊貴族ゴンディが山賊をまとめあげて締め上げてたんだからな。ゴンディがいない今、こいつらを締める舵はいねぇからな。」
その言葉を聞くと、少し後ろめたい気持ちになる。
「ん……。そこにいるのは……。」
ふと、永遠姫ルイランが私達に気づいた。ボロボロの身体に鞭打って無理やり立った。
「てめぇ、ぶっ殺す!」
「待って。ってか、それどころじゃないよね! 今!」
「関係ねぇ。あたいはお前らを許しちゃねぇ。」
「後ろ後ろ! 山賊と魔族が襲いにかかってる!」
「あんなん、馬鹿兄貴がいりゃ、一瞬だろ。」
【ルービックキューブ!】
私達の足元に向けて投げられたルービックキューブ。バラバラになった色が目に映る。
「……。これで身を守っといて……。」
ルイレンが雑に渡したソレ。何のために渡してきたのだろうか。
それをルイランがさっと持って、遊び始めた。
絶対に今、遊ぶ時間じゃないでしょ!
「す、すす【スクリュー】」
ストーン岩がドリルのような攻撃を仕掛けてきた。警戒態勢を取る。
カンッ!
見えない壁に阻まれたみたいだ。
そのまま後ろに倒れた。
「何が……起きたの?」
「一面完成――」と言う彼女。
三下が口を開く。
「ルイレンさんのルービックキューブは、一面揃えると一面だけ結界が張られるです。四面で前後左右、六面だと上下も含めてバリアが張られるんです。」
「六面完成――!」ルイランは適当にルービックキューブを地面に落とした。
私達をバリアが囲う。
「武器【ルーレット!】」
ルイレンの発動する能力。突然、地面から巨大すぎるルーレット版が現れた。
「【ルール】ルーレットが周り終えるまで手出し禁止!」
ルイランがルイレンに向かって技を放った。その途端、山賊や魔族達の動きが少し止まった。
一から十まである回るポケット。その周りを玉が巡る。
欠伸が聞こえる。ルイレンはどこか余裕さえ思わせる。
ボールが八番のポケットに入った。
"八――ハンマー!"
「……。魔族は処分。山賊は……どうしようかな。」
ルーレット版は消え、代わりにそこに大きなハンマーが現れた。
そして、山賊も魔族も再び動き出す。
シュ――。
ハンマーが振られる。一発でストーン岩が吹き飛ぶ。
シュ――。
いつの間にか次の魔族の横にいるルイレン。次々とハンマーで魔族を葬っていく。
圧倒的な火力を持ったハンマー。それなのに、あのスピードは異次元すぎる。
「これは相当お強いですね。ここまで強い方がおられたとは……。」
「馬鹿兄貴は"無限回廊"の住人だ。主忍に選ばれちまったせいで、今はマジで何もしてねぇが、魔族殺しなんて日常茶飯事だろうな。」
あっという間に魔族が全部破壊された。
「後は……山賊だけか。流石に可哀想だし……。特別に、戦闘のルーレットでも発動しようか。」
彼は地面に向かって手をかざした。
「戦闘【ルーレット】!」
一体何が始まるのだろうか。
再び現れるルーレット版。今度は零から三十六の三十七までポケットがある。そして、交互に塗られた黒と赤の色。
回っていくボール。
それが、二十三の赤ポケットに入った。
「効果……"脱水症状"!」
山賊がぐったりとして倒れた。「水ぅ!」と干からびた声を上げている。
瞬く間に決着が着いてしまった。
強い……。あんなボーっとしてる人なのに、いざ戦えば、相当な強さを誇る人だった。
凄い……。そんな感想しか思いつかない。
やっぱり彼は紛れもなく……主忍!
ふとルイレンの方を見ると、彼もまた倒れていた。
「み、水……。」
彼もまた干からびた声を上げていた。
「あんたもかい! あんたも喰らってるんかい!」
「はぁ。全く馬鹿兄貴――。」妹によって水が飲まされていく。
「……。復活した。」
そこに残されたのは今にも干からびて死にそうな山賊だけになった。
もちろん、彼らの行先は牢屋だ。
◆
町の外れに作った隠れ家へと向かっていく。
歩いている中で、カゲトは少しだけ困ったような顔をしていた。
「どうしたの?」聞いてみることにした。
「ルイレン様の能力がとても頭を悩ませるものでして……。」
「どういうこと?」
「ルイレン様は主に"ルーレット"を使用するのですが、効果がランダムなのです。まず武器ですら十種からランダムに一つ選ばれますし、選ばれたら数分は変更不可、ダガーやバックラーが選ばれたら威力が出ない――つまり、役に立てない不安定さがあります。なにより、問題なのは"戦闘ルーレット"でして……。」
確か、山賊を一瞬にして戦闘不能にした技だ。
「対象は敵味方単数複数問わず自由に選べるのですが……。効果はランダム。プラスの効果とマイナスの効果が半々だそうです。つまり、かけ方次第では、味方にマイナスの効果を与えたり、逆に敵側にプラスの効果を与えたりする可能性もあると言うことです。」
本当にギャンブルな技だなぁ。
「ルイレン様からは、自分一人か我々も含めるか、敵にかけるか、などの相談を受けまして。効果が効果ですから――」
「じゃあ、基本的に自分一人でやって貰おう。それで、もし私達がピンチになった時に、なんか超パワーに縋りたいって時に、私達みんなか敵のどっちかに技をかけて貰おうよ。」
「そうですね。それが安定した択でございますね。では、そのようにお伝えします。」
『水忍』の石像討伐は明日。カゲトよりも断然強いと聞いてる。ただし、こっちにはボーニーや二人の新旧主忍がついてる。
きっと、勝てるよね――。
誰も失うことなく勝てるよね――。
そう脳内で呟きながら夜になっていく空とそこに映る輝かしい星空を見ていった。




