42.ハロミトと永遠姫
ストリングスに指を引っ掛けた。
"フォワード・パス!"
前方に向けて放たれたヨーヨー。そのヨーヨーは棘だらけになった。
ひとまず避ける。
「ヨーヨーが棘だらけになったんだけど。」
"ブランコ!"
ヨーヨーを下ろして、紐で三角形を作り、その上側からヨーヨーのある残りの糸を垂らす。そして、軽く前後させる。
「このヨーヨーはあたい専門に作って貰った特別性。回ってる時のみ棘が出る最強の武器さ!」
カッコよく手元に戻してから、足元を狙った攻撃を仕掛けてきた。
"クリーパー!"
地面を勢いよく進むヨーヨー。足元にしか攻撃がこないので横に飛んで避けれる。
【パイプ椅子!】
手下がパイプ椅子でハロミトの頭をぶん殴った。彼の足がふらつく。
そりゃ、柄で押し出しただけだし、まだ倒しきれてないか。
そんなことに気を取られてたら、重力を解いてしまった。
重力で潰れてた手下も戦いに戻ってきた。
先に手下をやらないと……。
"アラウンド・ザ・ワールド!"
永遠姫が大きくヨーヨーを回す。ギリギリで避けれた。けど、そこに手下の攻撃が来る。
【重火器!】【重力!】
重火器を振り回して、襲ってきた手下を吹き飛ばした。
"ループ・ザ・ループ!"
やってくるヨーヨーの連続攻撃を重火器で防いだ。
「何度も何度も、仲間をぶっ倒しやがって。」
ハロミトはまだ相手の手下と殴り合いをしている。つまり、この永遠姫は私一人で相手するしかなさそうだ。
「こっちも本気で、やらねぇとなぁ!」
ヨーヨーを垂らした。今度はそれを空高くに上げた。
"ロケット!"
「ここからはあたいの能力を見せどころさ。」
何やら技を放つポーズを取り出した。
【ルート!】
有り得ない軌道で進み出すヨーヨー。空中を自由自在に駆け巡ってきた。
まるで追尾ロケットみたいに追っ手攻撃してくるみたい。……にしては、無駄も多い。
ヨーヨーは独りでに動いて、ハロミトの周囲をぐるぐると周り出した。
【ループ】・ザ・ループ・ザ・ループ!
「これでお前は身動きを取れない。少しでも動けば棘ヨーヨーの餌食さ!」
ハロミトと戦っていた手下が今度は私の方に向かってきた。永遠姫は二本目のヨーヨーを取り出した。
放たれたヨーヨーは軌道を変えて、彼女が張る糸の上へ。その糸をトランポリンのように扱い、ヨーヨーを発射してくる。
"ムーンサルト!"
その攻撃は後ろに下がって簡単に避け……
【パイプ椅子!】背中に向かって振り回される一撃。
痛い。痛すぎる。
けど、負けてたまるかっ!
そして、許せない。
「うりゃっ!」
重火器を振り回してその手下を吹き飛ばした。
「パイプ椅子で殴ったお返しだよ。」
そのお返しはパイプ椅子じゃなくて大砲だけど。
とりあえず、ヨーヨーが邪魔で近寄り難い。
なら――
重力を解除して。ある程度、技を溜めて……
【磁力!】
永遠姫に引き寄せられる重火器。
「なっ!」
ついに、重火器と彼女が密着した。
"能力解除!"
重火器に潰された永遠姫。ハロミトを囲むヨーヨーは落下した。
カラン。
勝利の音が響いた。
――――――。
正座で座るヤンキー三人組。
私達は立って話を始める。
「もう弱い者いじめはやめるっすよ。」
「ちっ。」
意固地になってしまっている。ハロミトの言葉には耳もくれないみたいだ。
もう何言っても聞く耳持たないだろう。相手する方が損だ。
「私から質問いい? 私達、ルイルイ兄妹って言う人を探してるんだけど、何か知らない?」
鋭い目つきでこちらを見てきた。
「はぁ? あたいに何の用だ?」
「ん? え? どういうこと?」
「あたいがルイルイ兄妹の妹、ルイランだって言ってんの。そんぐらい理解しろよ。」
「はー!?」
この漫画とかの最初の方に出てきそうなカマセ的な敵が、あの主忍……!?
信じられないんだけど――。
「こんなに弱いんだ……。ちょっとショック。」強くてカッコイイ人達の集団だと思ってたから、弱くて人間性も難ありそうなこの人が主忍なんだ……。
「勝手にショック受けんな!」
「まぁ、いいや。石像の解除の許可が欲しいんだけど、主忍の許可が必要みたいで、許可してくれない?」
何故かため息を吐かれた。
「あたいは主忍じゃねぇよ。つーか、お前ら前主忍が何故か知らねぇけど一緒にいるんだから、そいつに認めて貰えばいいじゃねぇか!」
私達はフェルナの方を見た。
「……。流石にもう権限ないし。駄目かなぁって。」
「律儀か!」
「ルイランって主忍じゃなかったんだ……。」
「いや、知っとけよ! 前主忍だろ、お前! いや、まぁ、馬鹿兄貴が何も仕事しねぇから、庶務全般ラン一人でやってるから間違えるのも仕方ねぇのか……?」段々、早口になってきていた。
「まぁいい! 新主忍はあたいの馬鹿兄貴だ! どっかにいるんじゃねぇか。勝手に探してろ!」
ぶっきらぼうな言い方だ。
「馬鹿兄貴……ルイレンについてちょっとだけ情報をやるよ。馬鹿兄貴は、見りゃ一発で分かる。まじで何もしてないような雰囲気をしてる奴がそいつだ。それとムカつくけど、馬鹿兄貴はランよりも相当強ぇから覚悟しな!」
彼女らは解放された。「次会ったらぶっ殺してやるから覚悟しな」なんて捨て台詞を吐いて去っていった。
私達は主忍を探しに町を進むことになった。
散歩中のおじいさん。簡易的な服を着た杖を着いたおじいさんだ。
「新しい主忍ってどこにいるか分かりますか?」
うーんと頭を悩ませて、結局分からずじまい。
続いて、ベンチに座っていたヤンキーっぽい服装をしたお兄さん。真ん中が緑色のメッシュの黒髪が印象的だった。
彼は「ごめん、ボーっとして聞いてなかった」と言い、「とりあえず人探し手伝うよ」と言って、私達と同行してくれることになった。
ゆっくりと歩く夫婦。
お兄さんによると違うみたい。
大工のような見た目の人。
彼も違うようだ。
あっ、ホームレスの男がいる。ほんとに何にもしてなさそう。
お兄さんは違うと言い切った。
新しい主忍はどこにいるんだろう。
「……。」
ちらっと後ろを見た。もう一度見た。このお兄さん、寝ながら歩いてる……。
「……寝てた。」
「いや、寝ながら歩けるってすごくない?」
このお兄さん……色々な意味で只者じゃない。
相当歩きまくった。相当時間も経った。これだけ探し回って見つからないって一体どこにいるんだろう。
一時的に休憩。お兄さんは寝てるようにも見えない。表情を変えずに真っ直ぐだけ見てる。
「……。」
手を近くで何度も翳してみるけど、反応がない。
「……ボーっとしてた。」
すごい個性的すぎる。まぁ、私達のために人探しを手伝ってくれてるし、変なことを思うのは良くないよね。
しかし、このお兄さん、見た目は着崩した服と整った顔。どこからどう見てもイケメンなのに、なんか性格が……ボーっとしてるからちょっと勿体ない。
フェルナが自動販売機の前に立ちながら、彼に話しかけた。
「ルイレンさんは何、飲みますか?」
「……じゃあ、水。」
「了解。」
自販機のボタンが押された。
……。
あれ? 今、ルイレンって言った?
「あの、この人ってもしかして……新しい主忍の……ルイレンさん?」
「はい。そうですけど」とフェルナ。
「いや、早く言ってよ!! 何、今さっきまでの時間。結構、歩き回ったんですけど!?」
「……。あ、自己紹介……まだだった。俺、ルイレンって言う……。この町の新主忍になったんだ。よろしく。」
「名乗るの遅いよ、遅すぎだよ! 滅茶苦茶無駄な時間を過ごしたんですけど!? 絶対に要らなかったでしょ、この時間!」
顔色を一つも変えないで水を口に含むルイレン。この人が新主忍で――そして、ルイラン曰く相当強い人……。本当に強いの?




