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死亡=現実でも死のバグ世界、お嬢様と執事の生存・脱出戦略~『詩忍にくちなし』~  作者: ふるなゆ☆


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38/50

37.教祖の兄の三番目の息子の嫁

 地下――。


 そこは天井に穴が空き、光が射し込んでいる場所。

 そこはそこそこの大きさのある一室。


 そこには一人の女と、それを囲む国の忍達がいた。


【ルゴプス!】


 女の体は変形して、大きな恐竜へと変貌を遂げた。まるでティラノサウルスのような圧巻さを持ち、けれども素早そうな体型をしている。何よりも頭の(しわ)が印象的な恐竜だった。


 雄叫(おたけ)び――。


 その迫力はその場を凌駕(りょうが)する。



◆◆


 シーン――カゲト。

 対――『???』。


◆◆



【前方後円墳――】


 小さな墓が現れ土地が隆起する。それでバランスを崩しかけるが、すぐにバランスを取る恐竜。


絶縁体(ぜつえんたい)


 恐竜を囲むように置かれる薄い壁。


「カゲトさん。今です!」


 忍の合図に反応する。


雷遁(らいとん)(かみなり)霹靂(へきれき)!」


 強烈な雷の線が合間を抜って進む。

 眩い光――。

 絶縁体が周りへの被害をなくす。恐竜だけを襲う雷撃。


「効かない……ねっ。」


 尻尾一振で絶縁体は吹き飛ばされる。


 

 ガシュッ――。



 忍が()われた。

 残る忍は数人。


「火炎【火球】爆炎!」


 炎が恐竜を襲うが、炎を振り払ったソレはまるで無傷。


 勢いよく振られた尻尾と壁に挟まれ忍の灯火がまた一つ消える。


 ガブ……ガシュリ。


 さらにまた一つ消える。


 

《何……この絶望的な状況……。》


《あの恐竜は《変身系》の恩寵で、さらに肉体的頑丈さを手に入れているような感じだな……。カゲトは様々な属性の技を使える。手数の多さで負け知らずの実力を誇るが……。どの属性攻撃も通じないとすると話が別。助太刀したいが……。拙者には二人を守らねばならないし……。》


《心配なんでしょ? 行ってこれば。私達はここにいるから大丈夫。》


《しかし、二人に何かが起きるかも知れないし……。》


《大丈夫っすよ。何があっても何とかするっすから。》

《ボーニーが修行を付けてくれたお陰で私も戦えるようになった。だから、守られなくても大丈夫。私……戦えるから。》


《行っていいのか?》


《もちろん!》


 ボーニーはモニターのある部屋を出て、カゲト達が戦っている場所へと向かった。


 

 そして、肝心の対ルゴプスの状況――。



「カゲト様。鏡をお願いします。」

「えぇ。もちろんですとも――。」


 カゲトは両手の指を合わした。


水遁(すいとん)(かがみ)】迷宮。」


 恐竜の周りに現れる鏡。その下には姿を反射する水が浮かぶ。


【ビーム!】


 ビームが鏡に反射し、幾度も恐竜を突き倒しては進んでいく。



 パリンッ。



 鏡が破壊され、そのまま頭突き。ビームを放った忍は大きく吹き飛ばされた。


 大薙刀を持って攻撃を仕掛けた忍は吹き飛ばされ、他の忍二人も巻き込まれて吹き飛んでしまった。


「まさかここまで強い敵がこの世に名を(とどろ)かすことなく、こんな所に潜んでいたとは……。想像していませんでしたね。よくその強さで今まで埋もれていましたね……。」


「ヒエンマらと共に無限回廊に籠ってたか、教会の裏に潜んでいたかのどちらかだらかね。あたしは目立つ気、さらさらないし。」



 刀と尻尾が衝突し合う。()は恐竜の方にあるようで、カゲトが少しだけ後ろに動かされた。


 

「風遁【鎌鼬(かまいたち)】旋風――」



 斬撃が襲う。


 しかし、恐竜はそこまでダメージを負っていない感じに見える。


 恐竜の牙が喰らいに来る。

 刀が向けられる。


 ガキッ――!


 刀は軽々と粉々に砕かれた。


 隙の出来たカゲトに向かって大きな口が開く。 


鉤爪(かぎつめ)


 カゲトの手にクローが装着され、下顎に突き刺す。その勢いのまま、恐竜の股を潜り抜けた。


 振り向く恐竜。


【刀】再び刀を手にするカゲト。刃が敵に向く。


 

「水遁【(かすみ)朧月(おぼろつき)



 視界が真っ白になった。

 スッ――。


 その間に切り裂く刀。


 

 グルルルルルルゥ!


 恐竜の方向にて、轟く咆哮(ほうこう)。ただ叫ぶだけで、霧が吹き飛ばされる。


 恐竜は全くの無傷みたいだ。



 ガッ――!



 恐竜がカゲトを噛み砕く。


《嘘でしょ……。》


 信じられなかった。


 目を疑いたくなった。


 カゲトはそこにいなくなっていた……。


 

《……って、もしかして。》


 口を開くと、そこから零れ落ちるのは木の破片だった。


「偽物……?」


「【身代わりの術】ですよ――。」


「面倒な技っ!」


 割れた天井。空高くから降りてくるカゲト。その勢いに任せて刀を振るう。


 

「火遁【火炎】烈火――!」



 炎を纏う刀筋。その刀が恐竜の(くび)を真っ二つに斬り裂く。



「嘘っ。こんな所でっ!」



 恐竜――ルゴプスは光になって消えていった。


 つまり、カゲトの勝ちである。


「全威力を太刀筋に込めて生物の弱点――頸を斬る。それで(ようや)く殺せました。今まで戦った中で、上位に入る程の強さでした。畏敬(いけい)として記憶しておきましょう。」



「助太刀に来たでござる!」



 そこに棒人間のボーニーが降り立った。

 しかし、敵のいない今、その姿を見て静まり返る。


「敵なら、今しがた討伐しましたよ。して、あなたはお嬢様と勇者様の護衛をしてるはずではありませんか?」


「いや、戦いのモニター見ていて、アンタがピンチでいても経ってもいられず……。」


「これでお二方に何があったらどうするんです?」


「それは……。」



 ――――――。



「まったく……。過保護なんだから。」


 私はそんなことを呟いた。


「これで終わり……かな? けど、あの天道様にトドメをさしたのって……。」


 天道様は小さな槍で殺された。しかし、今の敵は恐竜になるだけ。槍を使う敵が他にもいる? その人が真の……黒幕?


(すご)いよね。天道教の黒幕を倒したもの。彼女は、地位に(こだわ)らず、裏で全てを操っていた元凶。権力者の嫁としての立場を利用してたの。あの人は、教祖様の兄上様の三番目のご息男の嫁に当たる人。」


 後ろから私の肩に触れる誰かの手。

 そして、その声を私は何度か聞いたことがあった。


「おめでとう。残る天道教の幹部は私だけだよ。じゃあ、最後の舞台に行こっか。」



 振り向く間もなく――。



【テレポート!】



 私とその女は未知の空間にいた。

 電球のみがこの部屋を照らす。どこかの地下の部屋なのは分かったが、どこの部屋かは全く分からない。


手槍(てやり)――】


 二本の取っ手が小さな槍を繰り出す。あの槍こそ、まさしく天道様を殺害した槍で間違いない。

 燃ゆる秋色のローブが揺れる。首にぶら下げた楽しそうな仮面が違和感を放っている。


「自己紹介がまだだったね。私はね、ティナって言うのよ。私は天道教の生粋(きっすい)の信者。ある日、私の力に目をつけたヘイム様により、"アンチギルドの幹部――『紅一点(こういってん)楽面(らくめん)』"となり、この教会において勝手に『力の代行者』として()え置かれた――。」


 緊張が走る。

 緩やかに流れる異様な空気感に気圧されそう。


「勇者の処刑が上手く行かなかったのはあなたがいたから。勇者があなたとの繋がりがあったから。そして、あなたは『忍刀』のカゲトとボーニーとも繋がりがある。もし、あなたがいなくなれば繋がりは脆弱になり、関係性は瓦解する。そうなれば、今度こそ勇者の処刑が成功する。天道教も息を吹き返す。」


 槍の先が私に向く。


「あなたを殺す理由は十二分にあるでしょ。だから、ここであなたを殺すわ。」


 閉ざされた空間。


 アンチギルド幹部かつ力の代行者。そんな実力者が私の首を狙っている。


 すぐに察した――。


 殺しに行かなきゃ――殺される。



 不気味な空気が揺れた。

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