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死亡=現実でも死のバグ世界、お嬢様と執事の生存・脱出戦略~『詩忍にくちなし』~  作者: ふるなゆ☆


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35.畜生対決、伝説鳥対妖怪

 生きたまま氷漬けにされ封印されし町――永久の町。

 その元凶が町に降り立っていた。


「この町を()てて明け渡すべきだと思いません? この町は破壊され尽くした後に、"天道教"のものとなるのですから。」


 細雪の中、薄ら笑いを浮かべる女だった。


《彼女は『畜生道』でござるな。拙者の調べた情報によると、陸道の中で一番強いのがあの女でござる!》


 その事実に震える。


 そこに、永久の町の主忍――フェルナがやってきた。


「ごめん。あの……流石に、破壊とか止めて欲しいんですけど……。」


「貴女に拒否権はありませんわよ。もはや貴女達の交渉に応じる気はありませんので。」


《フェルナならきっと勝てるはず……。》


《ジュリちゃんは、あの人を知ってるんすか?》


《そっか。ハロミトはいなかったもんね。この(シャドウ)に向かう時に一緒に同行したんだ。》


 敵は氷を扱う。

 フェルナは炎を扱う。


 氷と炎――どちらに分があるのか。戦ってみなきゃ分からない。


 

◆◆


 シーン――フェルナ。

 対――『畜生道』。


◆◆


「とりあえず邪魔ですわね。――死んで下さらない?」


雪女(ゆきおんな)――】


 氷のベールに包まれた。

 凍てつくオーラを(まと)っていく。


「……。えぇ……。戦うしかない感じ? マジ?」


不死鳥(ふしちょう)


 炎が溢れ出している。

 燃えるオーラを纏っている。



 伝説の鳥と――幻の妖怪。



雪氷(せつひょう)(つぶて)!」



 空中に現れる大きな(ひょう)。それらが不死鳥目掛けて進んでいく。


 ヒュンッ、ヒュンッ――。


 炎の体をすり抜けたりぶつかっては炎によって消えたりしていく。


 不死鳥が飛んだ。


「逃がしませんわ!」


 飛ぶ鳥目掛けて放たれる雹。それに当たりまくる不死鳥。しかし、ダメージを受けている感じが全くしない。


 高い位置から滑空して突撃する攻撃。雪女目掛けて進んでいく。


幽霊(ゆうれい)化……】


 攻撃がすり抜けた。


 そのまま空に向かって軌道を変えて飛ぶ不死鳥に、追い討ちをかけるように雹が放たれていく。


《あんなにダメージを受けてたらやばくないっすか?》


《いや……多分、大丈夫だと思う。》


《どうしてっすか?》


《それについては拙者が説明するでござるよ。フェルナの不死鳥の能力は『回復』でござる。ダメージを負った時点で回復が始まるため、生半可な攻撃は無傷に等しいんでござる!》


《何それ。強すぎじゃないっすか!》


《そうでござるよ。ただし、大技と即死には弱いのでござるが……。しかし、基本的に、フェルナの不死鳥は最強の"タンク"――防御専門職なのでござるよ。》



 雪女が浮き始めた。


 不死鳥を追いながら、雹を操り攻撃を仕掛けていく。しかし、どれも決定打にはならず永遠に倒せずにいる。


「もういいですわ……。今この町にはもう我々"天道様"の信者もいないですもの。下級地域に近いこの町に残る人間は醜いフィロ人に違いありません。」



 雪女が止まった。

 そこは迷えば永遠に出られないと呼ばれる迷いの森と接続するエリア。普通に春町から進めば自ずとと最初に踏み入れるエリア。


 彼女は何かボタンのようなものを取り出した。


 不死鳥が相対する。


「ごめん。何しようとしてんの?」


「信者の方がせっかく設置してくれたのですから、使わなければ勿体(もったい)ないと思いませんでしょうか?」


 ポチッ――。ボタンが押された。



 爆発。



誘爆(ゆうばく)――!】



 その一区画に巻き起こる爆発。それが氷を破壊しながら辺り一面を消失させる。


 真っ平らになった焼け野原の一区画。


 そこには鮮やかで仄かな細かな粒が舞っていた。


「人がまだいたと言うのに――。」


「わたくし達の(たっと)い犠牲になりましたわ。畜生共の彼らは、きっと必要とされる犠牲に喜んでいるに違いありませんわ。」

 

 彼女は何とも思っていない顔で、何とも思ってないような口ぶりを見せていた。


《ひどい。ひどすぎる。私、許せないかも。》



「この町の北西部に学校がありましたわのね。そこの体育館は確か市民体育館も併設した施設で、今は多くの人が避難しているみたいですね。」


「え……。」


「そこには爆弾を仕掛けました。」カチッ。


 何か嫌な予感がする――。


「後数分で爆発しますわ。そこの畜生共はわたくし達の理想の世界の実現のための礎になるのです。もし助けたければ、爆弾は体育館の屋根にありますので助けてあげて下さい。ですけど、今度は貴女の命はないと思われますけど。」


 クスクスと微笑み笑い。その笑いは本心からの笑いだ。


 吐き気がするぐらいの邪険な性格。

 鬼畜すぎる性格に怒りが込み上げる。モニター越しで見るしかできないのが、すごく焦れったい。心が苦しい。


 不死鳥が体育館に向かって飛ぶ。


 屋根につけられた爆弾を引き()がして空高くへと飛んだ。



 ボムブ!


 強烈な破裂音が空高くから響いていく。綺麗な空を台無しにする強烈な爆発だった。



 落下していく不死鳥。

 地面に墜落した。


「あらぁ。しぶといですわね。せっかく用意した殺傷爆弾ですもの……流石(さすが)に死んで貰わないと。」


 不死鳥は姿を変えて人へと戻った。


「やはり、相当のダメージがおありのようで。では、トドメをさしてあげましょう!」


 地面に膝を付くフェルナの元へと畜生道が近づく。


 そこに農具を武器に見立てて持った六人の男が現れた。

 一人はフェルナを連れて建物の片隅へと運ぶ。

 残りの五人が畜生道に武器を向けた。


「俺達の町は奪わせねぇ!」


「薄汚い畜生が……。その面を見せないで頂けます?」


 あまりにも嫌悪した表情を向けていた。


 一人が攻撃に仕掛ける。その男はもう目の前へと来ていた。



 スゥ――。



 すり抜ける体。その後、そのまま突撃した男の周りに氷のようなものが現れる。


雪原の(アイス・)雪結晶(クリスタル)――。結晶に封印されておきなさい。」


 その男は仄かな桃色の色がついた氷のクリスタルに閉じ込められた。


「くそぅ。(かたき)ぃっ!」


 今度は薄い黄色の結晶が閉じ込める――。


 残された三人は圧倒的強敵を前に諦めない。

 ひたすら攻撃を加える――。


 が、歯が立たずに色のついた結晶に閉じ込められた。


 そこに二人が戻ってきた。


「何……これ?」

「見て分かりませんでしょうか? 氷漬けにされた先程の(くず)共です。」笑みが浮かぶ。


 横にいた男が走り出して(くわ)を振り下ろす。


 が、(もてあそ)ばれるように軌道を変えられ、鍬は結晶へとぶつかる。


「壊れやすいので注意してくださいね。」


 結晶にヒビが入った。


 パリンッ。


 粉々に砕け、そこには色のついた氷の粒がひらひらと舞い落ちた。

 もうどこにも人間の姿は存在しない。


「凍った人間はもう結晶に同化してしまいましたわ。結晶を壊せば人間諸共(もろども)壊れますわね。」やはり彼女は愉悦(ゆえつ)(ひた)って笑っている。


 スゥ――。


 その男もまた凍らされて結晶に変わった。



「変身すれば、ここにある結晶は全て破壊しま――」


【フェニックス――!】


「話は最後まで聞きましょう。――雪氷(せつひょう)(つぶて)!」


 そこにあったクリスタル全部、中の人間諸共、破壊され美しくも(はかな)い粉となって散った。


「とりあえず、黙ってて欲しいんだけど。」


 赤いオーラがフェニックスに集まる。


 

「エル【ファイア】!」


 

 火炎を吹き飛ばす攻撃。

 しかし、氷の壁で防がれた。氷の壁は炎の熱で溶けていく。


 突撃――!


 高く浮遊することで避けられた。そのままフェニックスから逃げるように空中を進んでいく。


 雹が放たれる。


 それを避けながら進む。


「フル【フレイム】!」


 強烈な火球が雪女を襲う。

 雪女は氷の壁で対抗するも、氷の壁は軽々しく突破される。身を横によじって攻撃を避ける。


 炎の攻撃は止むことを知らない。



《あれ? さっきよりも好戦的っすよね。》


《さっきは不死鳥だったけど、今はフェニックスだからね。》


《それ……なんか違うんすか?》


《ではお待ちかね、ボーニーによる説明の時間でござる。不死鳥は『体力(・・)の回復』の能力だったが、このフェニックスは『技の消費(・・・・)の回復』なのでござる。通常、技を使えば使う程に疲労が溜まり、威力が落ちたり発動できなくなったりするものだが、フェニックスは技を消費した時点で回復するため、幾らでも技を発動できるのでござる!》


《何それ……強すぎじゃないっすか?》


《そうでござるよ。もちろん体力は回復できない弱点もあるが、攻撃に転じれば負け無しなのでござる。フェルナのフェニックスは最強の"中遠距離砲台(ほうだい)"――魔法使い職的な存在のでござるよ!》



 フェニックスの動きが止まった。

 それを見て、雪女の動きも止まる。


「体力切れでしょうか? もう降参して首を差し出してくれてもよろしいのですわよ。」


「いや、ようやくあの技が使えるから止まっただけなんだけど……。」


「あの技……?」


「うん。」


 雪女が周りを見渡す。

 そこは開けた場所だった。


 爆弾で辺り一面を吹き飛ばしたことによって、もう遮蔽物(しゃへいぶつ)だとか建物だとか何もなくなってしまった真っ平らな一区画だった。


 つまり――


《ここなら大技を撃っても、もうこれ以上の被害は出なさそうね。》



 危険を察知した雪女が氷の力を身にまとって強烈な吹雪をしかけた。



「イモータル【フレア】!」



 真っ赤に光るモニター。辺り一面を炎で包み込んだ。


 あまりにも膨大な威力で、長く続く炎の塊。

 そこに残されたのは何も無い真っさらな土地だけだった。



 その炎が雪女諸共――消滅させたのだ。


 

 雪女の置き土産――。その町には細雪が虚しく降っていた。

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