32.地獄での鬼退治
カゲトの映像はただ敵を探す状態になった。そう、動きが捜索一辺倒になった。
一方、他に動きがある映像を発見した。
桃太郎だ。
ヒエンマ――『地獄道』と対面していた。
「桃太郎は"岡山大河町"の主忍。探索探知が得意とする捜索タイプ。だからと言って、弱いわけではなく、戦闘も真っ当な実力を誇るのでござる!」
私達は彼の戦闘を見ることにした。
◆◆
シーン――桃太郎。
対――『地獄道』ヒエンマ。
◆◆
まるで地獄のような景色。
所々、片田舎の風流な景色が断片的に見えるが、殆どは火に包まれている。
「こりゃあ許されんことじゃな。この責任、命をもって償わせよう。正真正銘――鬼退治じゃ!」
「鬼退治だと? 馬鹿馬鹿しい。我が貴様を地獄の底に突き落としてやろう。」
桃太郎が剣を抜いた。
地獄道はペンチのような物が先端に着いた鉄パイプみたいな武器を手に取った。
【燃えよ!】――【火をまとえ!】
燃えだした桃太郎の剣。同様に火をまとい始めた地獄道の武器。
衝突――。周りに火の粉が舞っていく。
もう一度。さらにもう一度。何度も。鉄の武器同士がぶつかっていく。
《桃太郎の剣筋は基礎を突き詰めたスタイルなのでござる。普通なら、ここで終わってるが……。敵もなかなかやるでござるな。》
一時的に距離が置かれる。
シュッ!
剣が真っ直ぐ投げ入れられた。
「わざわざ武器を投げ捨てるとは、馬鹿らしいな。」
体を少し捻って剣を避ける。
彼の背後にて投げ入れられた剣を猿がキャッチしてそのまま剣を横に振る。
カキィィィン!
攻撃に気付いた彼が即座に武器で防ぐ。
軽やかなステップで猿は動き剣を刻む。
「ただの猿が、我が邪魔をするなっ!」
大ぶりの力強い攻撃が猿諸共吹き飛ばす。
「がら空きだ。死ぬが良い。」
【戻れ!】
パッと桃太郎の元に剣が現れる。猿から彼へと武器所有が戻ったみたいだ。
「それ、こちらの台詞じゃ。横がぼっけぇがら空き!」
犬が彼を喰らいに襲いかかった。
【飛行――】
しかし、地獄道は能力で空中に浮き、攻撃を避けた。
「空中もわしのテリトリーじゃ!」
雉がどこからとも無く飛んできて地獄道に突撃した。突撃攻撃を受けた彼は地面に向かって飛ばされていった。
《強い。これが……桃太郎の戦い。初めて見た。》
《基礎を固めた純粋な強さに加え、犬、猿、雉との連携……。これがアイツの強さでござるよ!》
剣を構えながら走り出す桃太郎。
追撃を加えに進む。
そこにいるのはダメージを受けてるはずなのに泰然自若な様子の地獄道。
振るう剣。しかし、彼も対応して武器を振る。
【モーション!】
有り得ないような唐突な動きをする桃太郎。その不規則な動きから武器で守ることはできずに、少しだけ切り裂かれる。
斬られる時に後ろに倒れたことで致命傷を防いだようだ。
《このまま倒せそう!》
体勢の崩れた敵は格好の的。連続攻撃が襲う。地獄道は何とか守りに徹することでその場をやり過ごしている。
「こうなれば……地獄に差す天からの【光】!」
観てるだけの私達ですら眩しくて目を瞑った。
目を見開くと形勢は逆転していた。
桃太郎が体を動かせなくなっていたのだ。手をぶらーんと垂れ落としている。
地獄は武器を顔の付近に向けている。
これは……私が受けた最悪な攻撃。
罪意識に反応して、舌を引き抜き、一撃で殺す罪悪感を募らせてくる攻撃。
「貴様は人を殺したことがあるか?」
「戦ってる最中じゃ。それ、今、関係ある?」
猿が如意棒で殴りに来た。犬が噛みつきにきた。雉が嘴で滑空しながら刺しにきた。
「【氷結】地獄!」
彼の周りに氷の防御が現れ、攻撃を防ぐ。
武器のおお振り。氷を破壊しながら振られる一撃。桃太郎は後ろに退いて避ける。
「つれない男よ。だが、攻撃は見切った。貴様の負けじゃ。」
飛びつく犬を軽く武器で一蹴する。
剣で切りにかかる桃太郎。
ガンッ。武器同士がぶつかり合う。
しかし、圧倒的パワーの攻撃を前に桃太郎が吹き飛ばされる。
地面に突き刺されるペンチのような武器。
「【火炙り】の刑じゃ!」
地面が炎で包まれていく。
「こりゃあまじい。来いっ!」
飛び出す雉に手を伸ばし、空へと飛んでいく。燃える地面から離れた。
【飛行――!】
「隙だらけだな。」
こちらも飛び出す地獄道。あっという間に彼の元へ。そして、真下に振り下ろす一撃。
片手で持った剣で防ぐも、地面に強く叩き落とされた。
「しぶとい奴だ。だが、もう終焉だ。地獄の沙汰も我次第。」
《やばいっ!》
《大丈夫でござる。》
《なんで?》
《桃太郎は必殺技をまだ使ってないからでござるよ。》
《必殺技……むっちゃ、かっこいいっすね。ってか、なんでまだ使ってないんすか?》
《発動時間と発動回数の制限があるからでござる。何より、どの技にするか見極めが必要な技でござるからね。》
《見極め……?》
《そうでござる。三種類の中から、どの技を使うか……。使い方次第で使えるも使えないも変わってくるのでござる。》
《で、どんな技っすか?》
《見てのお楽しみでござるよ!》
地獄道の一撃を剣で受け止めようとするも受け止めきれず、さらに後ろに吹き飛ばされる桃太郎。
「貴様の物語はここで終幕。晴れて地獄に名を刻め。」
「そうとも限らんよ。」
桃太郎が手で何か手遊びのようなポーズを取り始めた。
【モンスター化!】
突然、猿が巨大化し始めた。その大きさは古民家分の大きさをしている。これまた大きくなった如意棒を振り回していく。
地獄道も武器を振り回して対応するが、その攻撃力に耐えきれず吹き飛ばされた。
「そりゃ進め。そりゃ進め。一度に攻めて。攻め破り。潰してしまえ。鬼の王。」
凶暴化する猿の攻撃に追い込まれていく地獄道。
燃える家々を破壊しながら飛ばされていく。
一気に高いジャンプで距離を詰められ、振り下ろされる一撃。地獄道は武器で何とか防ぐので手一杯に見える。
凶暴猿と地獄道の戦い。
地獄道にとっては防戦一方。守りきれずに負傷しているのが見える。
ダガァン!
地獄道の息が上がっているように見える。
猿に向けて武器を向けた。
一瞬、空気が揺れ、時間が止まったように見えた。
「桃太郎さん。桃太郎さん。お腰につけた鬼火断刀。一斬り試しに。やらせてつかぁせぇ!」
地獄道の背後から斬り捨てる燃える一刀両断、水平切り。
「そんな、馬鹿……な!」
地獄道は光となって消えていった。
猿は元通りになり、桃太郎の元へと駆け寄る。
「ようやったよ。みんな。」
犬も雉も同じように近づいた。
彼は半焼半壊した町を見渡してカメラ目線になってから口を開いた。
「このまで悲惨な現状じゃと、戻れんなぁ。観とるかな、ジュリネさん、ハロミトさん、ボーニーさん。後は任せたよ。」
彼からの一言。
私達はその言葉を胸にしまって、別の映像を見ることにした。
――――――。
――――――。
太陽の下、真っ暗な背景の中、ついに戦闘が始まりそうな二人を見つけた。
私達は今度はそれをモニタリングすることにした。




