31.ハロミトとジュリネと
竜の咆哮――
影の一つは巨大なドラゴンだった。口から放った強烈なブレスにより崩落する天井は吹き飛ばされた。
「おい。お前ら。何でこんなとこにいるんだ!?」
竜は他の影の方を向いた。
「どの口で言よーるん? うちゃ任務で来とるけど、おめぇらは違うじゃろ?」影の一つは桃太郎だった。
「うちは自分の町がやられたから、責任取って犯人を倒しにきただけだった気が。ってか、なんでみんないるの? 自分の町、守らないの?」フェルナが声を出す。
「お前もこの町の主忍じゃないだろ!?」ドラゴンがツッコミを入れた。
「宣戦布告されたんだぁ。喧嘩売られたら返すに決まってんだろ?」
突然現れた影の一つ。馬に乗った渋めの男が帽子を抑えながら声を出していた。
「血気盛んね。まぁ、仕方ないわ。漆黒に燃ゆる血は誰にも止められないのだから。」
最後の影は、まるでモデルみたいな美しい女性だった。だけど、眼帯や黒い羽が少しもったいない。それとこの人をどこかで見かけたことがあるような気がする。
「主忍が勢揃いですね……。今のうちに、ハロミトを救出致しましょう。」
「そうね……。」
我々の味方である主忍が大暴れ。その間にハロミトの所に行き、拘束を解いた。
胸が撫で下ろされる。ちょっと安心する。
「助かったっす。死ぬかと思ったっす。マジで。まぁ、無事助けられたんで一件落着っすね。」
まだ、ここから脱出しなきゃならないんだって……。
なんでこんな緊迫した状況下で、殺されるかも知れない恐怖感を感じていいはずの中、こんなにも場違いな雰囲気を出せるのか……。
ほんとに――ハロミトは……
「どうしてあんたはハロミトなの?」
「ハロミトだから、ハロミトっす。」
ほんと私はなんでこんな馬鹿げた質問したのだろうか。
「カゲト。教祖はこの階段を下ってったぞ。」
「ありがとう。では、ボーニー。お嬢様と勇者様をお願いします。」
「任せろ!」
カゲトはそこに小さく開かれていた地下へと続く階段を降りていった。
会場は大混乱に陥っている。
ここから出入口に戻ることは難しそうだ。
近くに留守の一室があった。無味無臭のような簡素な部屋だった。そこに一時的に避難する。ボーニーもいるからちょっぴり安心してる。
そこに桃太郎もやって来た。
「カゲトから話しは聞いとる。お疲れ様じゃな。ひとまずここにおりゃあ安心じゃ。後はワシの能力でことの行く末を確認しよう。」
【モニタリング】【モニター】
部屋の壁に現れるプロジェクトマッピングのような画像。まるでテレビでも見ているようだ。
そこにはカゲトが地下を進む様子が映されていた。
「これを見りゃあ状況は一目瞭然。他の状況にも画面を変えられるぞな。」
この画像はカゲトだけではなく、教会の様子も映し出してくれていた。
ドゴォォォン!
地面が揺れる。まるで大爆発でも起きたみたいだ。
「何事じゃ!?」
そこに国の忍がやって来た。
「桃太郎様。緊急の報告です。現在、"天道様"の者によって、中級地域の各町村が襲撃されています。」
「なんじゃと?」
「現在、他の主忍は急ぎで担当する各町村に直行しておりますが……。」
「分かった。わしも行く。」
彼は私達の方を見た。
「モニターはワシやワシの家来、カゲトや主忍達の状況の映像を見せれるんじゃ。それを見て戦いの参考にしてくれ。」
教会内の映像が途絶えた。代わりに、他の主忍達を映し出した映像が現れた。
【門】
壁に門が現れる。
「これはワシと拠点の岡山大河町の二点を結ぶゲート。帰りしか使えん技じゃ。ここでわしゃ失礼する。」
桃太郎はその門をくぐった。後を追って犬と猿と雉もくぐった。
部屋に残された私達は映像で各々の状況を確認することにした。最初に見るのは現在のカゲトの映像だ。
◆◆
シーン――カゲト。
対――天道様。
◆◆
暗い地下を走っていく教祖とそれを追うカゲト、加えて国の忍。
「土遁【瓦】手裏剣――」
瓦の手裏剣が敵の足元を切り刻む。
その攻撃で足元が崩れ倒れていく。
《カゲトの方はもう終わりそうね。》
《流石のカゲトだ。拙者も誇らしいでござるよ。》
倒れた所にすぐに駆け寄り、他の忍と共に囲んだ。これで逃げ場はない。
ふと教祖は両手を上げた。
「私の負けだ。大人しく投降をしよう。」
「油断を見せて隙を作り反撃を窺っているのかも知れません。ですので、その言葉が本意なのか分かりかねます。」
刀がゆっくりと首筋に向かっていく。
「これは本意だ。私はもう疲れたのだ。私にはこの教団の中で『三つの顔』がある。今となっては、もう私はどの役からも逃げられなかった。だからこそ、無理やり連れて牢獄でも何でも入れて終わらせてくれ。」
【枷――】
教祖は突然現れる錠により身動きが取れなくなる。ただ、刀は依然と向けられている。
「少しでも怪しい動きをすればすぐにでも斬ります。」
「安心なさい。私は戦いの分野は門外漢。怪しい動きすらできない。」
「すぐ分かる嘘を――。このような反勢力の団体、さらには陸道を従えていますね。以前敵対したことがありますが、何方も癖のある猛者でした。少なくとも数人は、力のない者に従うとは到底思えませんけどね。」
「それは問題ないんです。私は外見だけの空っぽの器ですから。ただ三つの顔を演じてるだけでいいのです。」
「三つの顔とは?」
《そうそう。三つの顔って何? って思ってたのよねー。ようやく言ってくれたわ。》
《こっちじゃ見てるだけで伝えられないっすもんね。その気持ち、なんか分かるっすよ。》
「一つは『教祖様』――。元は私の兄が教祖でした。しかし、過激な活動により命を落とし、兄の子に受け継がれるも次々と死んだ。そこで、弟である私に光が当たった。亡き兄や甥っ子を思うと教祖様を引き継ぐ以外道もなく、投げ捨てることもできない。自ら投降するなんて論外だろう?」
つまり、自ら投降したのではなくて、無理やり捕まったって体にして欲しいという念押しだ。
カゲトの質問には答えきれていない。
「二つ目は『勇気の代行者』――。私は戦えない。だが、私には言葉がある。民衆を奮い立たせ、仲間に引き込む演説が得意だ。今の私には多くの信者がいる。その紛れもない事実や私の思いに触発された信者ら……彼らが従う理由にはなるだろう?」
「いえ、まだ何も納得行きませんね。」
「では、これならどうです? 最後は『陸道の天道様』――。陸道の代表として据えられてるが、実態はやはり空の器。私はただ命令に従って動いているだけでしたからね。」
「つまり、貴方を命令している人がいる……と?」
「はい。私は本当の見かけ倒し。三つの顔を見せているだけの空の器。やっていることは喋っているだけなのですから。」
「では、その命令してる方を教えて頂けましたら、処分を軽くしても良いでしょう。」
トップである彼が操られているだけの存在なら、今から発せられるのは……
そう――黒幕の存在。
「それは、私のお――」……。
グサッ!
教祖に突き刺さる小さな槍。持ち手が手から肘までぐらいしかない小さな槍だった。
気配がない。再び、それがもう一つ突き刺さる。
教祖は光になって消えてしまった。
何者かによって殺されたのだ。
カゲトがすぐに槍が来たと思しき方向に進むも、そこには誰も見つからなかった。
しかし、投げた犯人は必ずいる。
じゃあ、一体……誰――?
その地下は謎に包まれていて、まだ事件は解決してはいなかった。




