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死亡=現実でも死のバグ世界、お嬢様と執事の生存・脱出戦略~『詩忍にくちなし』~  作者: ふるなゆ☆


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24.陸道の地獄道

 落ちた矢には紙が括り付けられている。

 拾って中を見た。


『こいつ()危険すぎる。逃げろ。逃げ切れなさそうなら、これだけ覚えておけ! 嘘を(・・)つくな(・・・)! 悪気を(・・・)感じ(・・)るな(・・)!』


 後半の意味は分からなかったが、とりあえず警告を報せるものだった。


 さっき人を殺した巨漢がこちらを見た。


一期(いちご)一会(いちえ)出逢(であ)いに感謝を。我が名はヒエンマ。"天道(てんどう)教"に所属する者(なり)。」


 そして、着実と近づいてきた。私達は身を構える。

 確か天道教は危険な宗教団体だと国の人が伝えてくれた。そして、勇者を狙っている言っていた。


 少しだけハロミトを(かば)うように移動。


「天道教の理念は、人間と魔族の共存。そして、この歪んだ社会の破壊と再構築(さいこうちく)。貴様に問う。そこの低級魔族とやらをペットとして飼っているのか?」


「パルゥ?」指さされたこの子が鳴き声を発した。


「飼ってるけど、それがどうかされたんですか?」


「では、今すぐ野に放せ。魔族を奴隷から解放するのだ。魔族は苦しんでいるのだ。」


「嫌よ! それに、この子は苦しんでないっ! どうしてそんな無責任なこと言えるわけ?」


「貴様の自信は自己優越(ゆうえつ)感からか? 我は悠久(ゆうきゅう)の時間を地獄と呼ばれる無限回廊にて過ごした。魔族しか現れない過酷な場所だ。そこで過ごすうちに魔族の心を理解したのだ。現世(うつしよ)に戻った時、気付かされた。奴隷化する人間と、苦しむ魔族が蔓延(はびこ)ることを! だからこそ、命令する。魔族を解放せよ! 野に放せ!」



 圧が半端ない。

 けど、そんなもの屁理屈(へりくつ)にしか聞こえなかった。私の意思を曲げるに値しない!


「嫌だね。あんたの勝手な理想で、この子の居場所を奪われてたまるか!」


「そうか。では――」


 ヒエンマの持っていた先端が(つま)みになっているパイプのように長い鉄の棒を地面に打ち付けた。


 空気が凍る。

 ヒリヒリとヒリつくこの空気感は身の毛もよだつような感覚を与えてくる。


 呼吸が浅くなっていく。心臓の音だけがやけに大きく響く。 


 

「我は"天道教"より『地獄道』の名を受け(たまわ)った者也。地獄の主の代理として、貴様を裁くことにしよう。さて、罪の精算の時間だ!」


 

【刀】カゲトが刀を構えた。


 

「お二方はお下がりください。そして、カナリンさんはパルパルを連れて避難を。」


「いえ、私もやるわ! 人手が多いに越したことはないでしょ?」


「相手は相当なやり手と見受けられます。お嬢様を危険に(さら)す訳にはいきません。」


「守って貰ってばっかりじゃ、弱いまんまじゃん。私はやるよ。強くならないといけないからさ。」

「俺もやるっすよ。これで三対一っす。これで負け無しっすよ。」


 

「では、お二方は他の(・・)敵のお相手をお願いします。この相手は私一人で行います。後ろ(・・)は頼みましたよ。」


 

 周りを見渡した。しかし、敵っぽい敵はいない。

 しかし、彼の言葉に嘘偽りはないような気がする。つまり、誰かが潜伏している?


「ハロミト。とりあえず警戒。」

「らじゃー!」


 警戒しながらもカゲトの方を見る。


「貴様が相手か……。『忍刀』忍術のカゲト。敵として立ち塞がるのならば容赦はせぬぞ!」


「それはお互い様ですよ。」


「では、問おう。貴様は人を殺したことがあるか!?」


 まるで(なぎ)だ。その言葉が周りに重い重力をかけていくみたいだ。



「ええ、ありますとも。当然、忍者ですから。」



「そうか。ならば!」


【火を(まと)え!】


 燃え上がる鉄の棒。男はそれで殴りかかった。


「火遁【()炎】烈火!」


 燃え上がる刀。それで対応する。


 二つの燃える鉄の武器がぶつかった。周りに炎を()き散らしていく。


 ヒエンマは大きく後ろに高く飛ぶ。

 落下しながら地面に向かって鉄を突き刺そうとしている。


「貴様は【火炙(ひあぶ)りの刑】じゃ!」


 武器が地面に触れた瞬間、その場所からこちらへと向かって炎が沸き立っていく。


「水遁【川】流水!」


 現れる大量の流れる水。それらが火を軽々と消し去る。


「【氷結(ひょうけつ)】地獄!」


 水が凍った。その場所はまるで雪国の世界みたいだ。



 カキンッ!

 再び武器が衝突した――。



「誰が来るっす! 警戒!」


 ハロミトの言葉を聞いて、私は視線を戻した。


 近づいてくる明治浪漫(ろまん)の服を着た男。長い髪を揺らしている。


「これはこれはカゲトさんじゃないですか。しかし、地獄道さんが戦っていると言うことは、今は敵ってことですかね……。」


 その男を(さえぎ)るように立つ。


「ここは任せられてるんすよ。行かせないっす。」


「うーん。退()いてくれませんかぁ。まぁ、オヌシら殺気立っていますからね、力づくで行きましょうか……。」


【自分自身】【重火器】【重力】


 私達は武器を構えた。

 剣が明るく光り、大砲が黒く輝く。

 任されてるんだ。しっかり仕事を果たさなきゃ。


【トンファー】


 彼の使う武器は腕に沿うように伸びる太くて長い鉄パイプ的なもの。所謂(いわゆる)、トンファーという武器。


 あっという間に懐まで移動してきた。


(とげ)


 トンファーから現れる棘が突き刺しに来る。何とか一度目は避けられた。

 

 彼は回転しながら次の攻撃を……。


 早い!


 このままじゃ避けきれない。



【時間――】



 対象に触れていれば五秒間、触れていなければ両手を広げた位置にいる条件下で二、三秒程度、時間を止められる。

 それで何とか避けることができた。


 重火器は邪魔――。


 時間を遅める早めるならさらに長く発動できる。身軽になった今、次は遅めてやり過ごす。


 棘が現れるトンファーをギリのギリッギリで避けた。



 グサッ――。



 今度はハロミトへの攻撃。トンファのお腹に穴が空く。


【突風――!】


 強烈な風っ。


 うっ。木に強く打ち付けられた。反対側、ハロミトは遠くに吹き飛ばされてしまった。



「カゲトさん。覚えてます? ハイヒロの()ラリュウです。」


 トラリュウと言う男がカゲトの後ろを取り、攻撃を加える。


【変わり身】


 丸太にトンファーの棘が突き刺さった。


 高くから刀を振り下ろすカゲト。しかし、攻撃は避けられてしまった。



 いつの間にか一対二になっている。こうやってうかうかと見ている場合じゃない。早く私も復帰しなければ。


【重火器】


「ごめんっ、カゲト。すぐ挽回(ばんかい)する!」



 先を敵に向けた。



「『地獄道』さん。カゲトさんはワシが相手しても?」


「構わん。地獄に差す天からの【(ひかり)】!」


 これ程かと思う程の眩い光。

 思わず目を閉じる。



 ……。


 目を開く。

 体が動かない。


 ヒエンマがすぐそこに立っていた。彼が突き刺すペンチの武器が私の目の先鼻の先にある。


 動けない……。


「では、小娘。問おう。貴様は人を殺したことはあるか?」


「ない!」自信を持って言える。私は人を殺したことなんて……ない。


 ……。


「なん……だと。ない……だと? 我が知っている情報だと……。いや、合点(がってん)承知(しょうち)。なるほどな。」


 彼は独り言を呟いた後、すぐに私の方を見た。その顔はどこか(おぞ)ましいものがある。


「では、もう一つ問おう。貴様は人を殺す助けを行ったことがあるな。」


「ない!」これも自身を持って答えた。



「本当に……か? 我の知る情報だと、『曇天怒面』の殺害に一躍買ったとあるが、それは(まこと)ではなく(うそ)なのか?」


 曇天怒面……。つまり、ゴンディのことだ。


 私は彼を殺しはしなかったがギリギリまで追い詰めた。それを桃太郎が代わりに殺した。つまり、間接的に私は――。



 舌が勝手に動いていく。

 ゆっくりと舌が外に出ていく。それをペンチで掴もうとしてくる。



「よく()け。この"()き抜く"という技は、強力が故に制約が厳しい。何故ならば、『重大な罪を犯した事を認めた時』か『嘘をついた時』に、無意識下で発動される。」


 掴まれる前のギリギリの所で舌が止まった。しかし、舌を戻せないせいで、ピンチには変わりない。


「もしそれが(まこと)とするならば、貴様の罪は殺人幇助(ほうじょ)罪だ。自らの手を汚さず殺人を成立させるために動く。間接的な殺人だ。立派な重大な罪とは思わぬのか?」


 私は――


 間接的に人を殺した?

 私は知らず知らずのうちに人を殺していた?


 罪を犯していた……?


 彼の言葉は間違いじゃない。何も間違っていない。だからこそ、私のやったことの事の大きさが身に染み渡る。



 技の説明は、きっと今の私の罪意識を感じさせた状態にするために敢えて説明したのか……。まんまと策の中に引っかかってしまったみたいだ。


 罪を意識した瞬間、私の舌が再び動き出していく。



「図星だな――。」

 


 ガシャンッ!



 私の舌はさらに伸びて、その舌を彼の武器で(つか)まれた。

 冷たくてひんやりとしている。

 罪の意識だけが頭に回って、もう何も考えられない。

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