22.ジュリネとパルパル
扉を開く。
二階へと上がり、そこからドローイングルームへ。そこには招かれていないはずの富豪がそこにいた。
「雑魚め。やられおって。これでは、魔族売買が台無しだ。」
檻の中に入っている艶やかなスライム、丸っこい生き物、大型犬ぐらいの大きさのちょっぴり燃えてるヒヨコ魔族。
「魔族売買って?」
「一部の魔族――低級魔族はペットとして所持可能なのですが、取引については国が行います。しかし、裏では密売が横行し、特に希少魔族はその対象とされやすいのです。希少魔族はそれ故に、取り尽くされ数を減らしており、さらに売買禁止を上げておりますが……。この通り、魔族売買は裏で行われているようですね。」
つまり、動物愛護法で取引しちゃ駄目なものを取引してるみたいなことかな?
「誰も住まわなくなった空き巣と思い占拠してしまった。謝ろう。そこで、だ。ここにいる魔族を無料で上げよう。その代わり、ワシを見逃してくれ。」
「なんか都合良すぎない?」
「こちらも相当妥協しておるのだ。見よ、この低級魔族を!」
檻から出されるスライム。
「これは純スライムと呼ばれる激レア個体。普通は砂やゴミが混じるが、この個体は外部の塵芥を受け付けない。滅多に出現しない激レアな存在。ダイヤや真珠よりも高価で、多くの貴婦人が欲しいと言えど手に入らない。オヌシも欲しいだろ?」
その問いかけが私に行われる。嫌な気持ちになりかけてくる。
ちょっぴり苦い味を感じる気がする。
檻から出される丸っぽい生き物。
「これは裏でも出回ることのない幻の生き物――パルパルだ。上級地域のさらに奥地にあるという前人未踏の地に生息すると言われるが、誰もそこには辿り着けず、この生き物もその地から出ることはない。故に幻。だが、あろう事が偶然、この一体だけはその地から離れた地で見つかった。これを手にできるのは今しかない。希少過ぎて価値を知る者は少ないが、少なくとも裏商人に売れば死ぬまで贅沢三昧できるぞ。」
――可哀想っていう気持ちが襲う。なんか彼の言葉を聞けば聞くほど吐き気を催しそうになる。
檻から出される大きいヒヨコの魔族。
「お馴染みヒョッコバトルとして人気のヒョッコだ。手持ちのヒョッコで倒し合う人気の遊びだが、このヒョッコは相当レアな巨大個体。さらに、滅多に存在しない属性を持った個体。巨大個体かつ属性持ちはここしか存在しない。使えばヒョッコバトルで負け無しになり、皆の衆の人気者間違いなしぞ!」
可哀想……。胸が苦しいような。そんな気持ちで胸がいっぱいになる。
「欲しいものはどれかね?」
憐れみの目で三体を見た。
「ねぇ、カゲト……。」
「如何されました?」
「あの魔族が一番幸せになる方法ってあるかな。例えば、元の生息地に戻せたりしないかな。私さ、あの人が売ったところで幸せになれるビジョンが持てないんだよね……。」
「なるほど。ご最もでございますね。それなら国に預ければ、彼よりかはペットの幸せを考えて動いてくれると思います。」
「ありがと。」
私は一息吸って、呼吸を整えた。
「その交渉は断るわ! それと違法なんでしょ? なら、その三匹は国に返すべきよ!」
「駄目ですか……。易々と逃がしてはくれませんか?」
「……駄目!」
「仕方ありませんねぇ。だから、ガキは下賤の民は嫌いなのだ!」
【ウォンバット】
まるでネズミのような生き物。ちょっぴりコアラみたいな見た目もしている。
ずずず……。
ウォンバットが人間大まで巨大化した。これがウォンバットの《変身系》特殊能力。
巨体で体当たりを仕掛けてきた。
【自分自身】【重力】
ウォンバットの周りに重力がかかる。彼は動けなくなった。
だが、頑張って這いずりながら彼の周りにかかる重力のバリアを抜け出そうとしていく。
やばい。ものすごく力が強い。もう少しで重力バリアを抜けられてしまう……。
「ていっ!」
そんな時に、ハロミトがちょっとだけちょんっと剣の平たい部分で叩いた。杓で叩くみたいな感じだ。
すぅ。
ウォンバットの姿が人間に変わっていく。
彼はその場の床に倒れて気絶してしまっていた。
「一件落着っすね。」
◆
馬車に入れこまれる四人の"枷"をつけられた賊達。
国の遣いの忍者が彼らを見張る。
次に来た馬車には魔族を乗せていくことになっている。
「こちらで大切に預からせて頂きます。」
その誠意から来る言葉が安心感を与えてくれる。
スライムもヒョッコも中に入る。
しかし、パルパルだけは逃げ出すようにトコトコと反対側へと進んでいく。
そして、私の足元にしがみついた。
しゃがんで、優しく撫でる。
「行っておいで。」
しかし、一向に離しはしない。
挙句には優しく微笑んで手を伸ばす遣いに首を振ったり威嚇したりする始末だ。
「懐かれてしまいましたね。」
その事実は嬉しいことだけど……
「私は危険な旅に出ないといけないから、一緒には行けないの。だから、行っておいで。」
それでもその言葉は、仕草は聞き入れてくれない。
「良かったら、ペットにして、一緒に旅してはどうでしょうか。我々もこの子を預かったり大切にしてくれそうな方にお渡ししたりすることはできても、住処に返すことはできませんから。」
「どうしてですか?」
「その子の住処は危険区域により、我々の行けない場所にあります。カゲト様から聞きました。魔王城を目指すようですね。それならば、その道中、少し寄り道になるかも知れませんが、その子の住処に立ち寄れるはずです。」
つまり、王国の方では行けない場所にこの子の住処はあるが、魔王城を目指す私達ならそこに立ち寄れるかも知れないということか。
「分かりました。私、この子をペットにします。」
「パルパルゥ!」
その状況下を汲み取ったパルパルが愉しそうに返事した。
「よろしくね。パルパル。」
「パルゥ!」
微笑ましい時間が流れた。
「では、我々はこれにて失礼します。最後に、近頃、天道教と呼ばれる怪しい宗教が台頭してきております。その団体は魔族主義的思想があると噂されております。勇者様は立場柄、狙われやすい立場にございます。くれぐれもお気をつけて。」
ピンとは来なかったが、ひとまずその申告を飲み込んだ。
馬車が都に向かって進んでいく。
その後ろの様子を見送った。
――――――。
「さて、ペットにするのならばやらなければならないことがありますね。」
カゲトの言葉に首を傾げる。
「あれっすよ。ペット化アクセサリーっすよ。」
「ごめん。ちょっと知らないんだ。」
「我々はペットにできる魔族を低級魔族と呼んでおります。下級魔族の中でも比較的安心で、人への危険度が非常に低いと認められたものが低級魔族に分類されます。」
低級魔族のみペットにできるということね。
「そして、ペットにする場合、ペット化アクセサリーを装着しなければなりません。そちらを着けるとペット判定をされる他、持ち主の判断などの機能も得られます。逆に、着けておりませんと、ペット判断がなされないため、その状態で討伐されても何も言えなくなってしまいます。」
そうか。魔族は魔族。ペットか倒すべき魔族かを判断するのがそのアクセサリなのか。
「じゃあ、早く付けなきゃ!」
「はい。では、買いに行きましょうか。」
春町にあるペットショップでアクセサリーを見た。
リボン、ボンボン、カチューシャ、チョーカー、ベルトなどなど様々なタイプがある。
「じゃあ、これにするね。」
私はリボンを購入して、早速パルパルに装着した。とってもベリーキュートだ!
「これで持ち主の確定が済みましたね。一度装着したアクセサリーは装着者――つまり、ジュリネお嬢様以外が外すことができないようになっております。」
簡潔に言えば、横取りされないってことかな?
とりあえず、
「これからよろしくね。」
「パルパルゥ!」




