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死亡=現実でも死のバグ世界、お嬢様と執事の生存・脱出戦略~『詩忍にくちなし』~  作者: ふるなゆ☆


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19.ハロミトと闘技場

「勇者の剣が情けない男の者になった今、我々が強くなる方法は敵を倒して経験値を稼ぐ方法のみとなりました。」


「ねぇねぇ、ちょっと~、情けない男って言わないで欲しいっすぅ~。」


 私は強くなれなかった。代わりに勇者の剣を手にしたハロミトが仲間入りしたが、彼は雑魚のスライムに負けるぐらい頼りなかった。ため息が出そうだ。

 カゲトはそんな頼りない男を無視して言葉を続ける。


「選択肢として次の二つがございます。一つ、西大山へ行き、地道に努力を重ねる基礎を固める方法です。お嬢様は一度修行されておりますので、想像にかたくないと思われます。」


「そうね……。」


 ボーニーと共に行った修行の日々。確かに成長した実感もある。悪くはない。


「もう一つは、"中級地域"に進んで必然的に負荷をかける実践練習的な方法です。敵も進めば進む程に中級魔族が増えていきます。今のお嬢様達なら背伸びすれば勝てる程度の敵です。相当な負荷となりますから相応の経験値を期待できます。」


 ふと気になるワードが二つ。「その中級地域ってのと、中級魔族ってのは何なの?」


「まず中級魔族から説明しましょう。簡単に言えば、下級魔族よりも強い魔族のことです。区分として、【能力(・・)】を扱える比較的弱めの魔族のことを指します。例えば、お嬢様を襲った"狼"は中級魔族でした。ちなみに、比較的強い魔族は上級魔族と呼ばれます。」


 そう言えば、ゴブリンだとかスライムだとかは能力を使ってこなかったけど、初期に私を襲ってきた狼は"踊れ"や"多くなる"と言った技を使ってきた。あのような魔族を中級魔族と位置づけるのか。

 少し理解。


「魔王城に向かって北上していくと魔族の強さが上がっていきますが、中級魔族が比較的多くを占める地域を《中級地域》と呼ぶのです。"春町"から北へと進めば、中級地域となります。」


 なるほどね。北に進む程、魔族は強くなる。今いる南側が下級で、その上に中級と続いている訳ね。


 

「それでお嬢様、西大山で地道に修行するか、中級地域で実践を積むか、どちらがよろしいでしょうか?」



「カゲトはどっちがいいと思う?」


 

「質問に質問で返すなんて、賢さが足りて無さすぎなんじゃないっすかぁ? アイキュー低いか幽波紋(スタンド)持ってないと出ない発想すよ!」

 横から変なのが入り込んできた。


五月蝿(うるさ)い。ってか、幽波紋って何?」


「幽波紋は……。なんかの漫画で見た奴っす。詳しくは知らないっす。使い方だけは知ってるって奴っす。」



 気を取り直してカゲトが口を開く。


「アンチギルドの幹部を一人で倒したと耳に入れましたが、戦いを見ておりませんので、その実態は分かりません。それ故、どちらがいいのか決められません。」


 彼は私とハロミトの方を見た。


「お嬢様と勇者様で模擬戦をして見るのは如何でしょう?」


 私達は顔を見合せた。





 下級地域、古の都――。

 バトルコロッセオ――。


 その中のフィールドで死んでも、特殊な能力でリスポーンされるから死なないらしい。


 つまり、問答無用に戦える、戦うための施設だ。



 私とハロミトで広い闘技場の中で対面する。

 殺風景に広がる真っ平らな硬めの地面が戦いの意欲を加速させる。


「やるからには全力じゃなきゃ意味無いし、負けたくないもの。全力でやるよ。」

「そりゃ当たり前っすよ。ということで、勝っても負けても恨みっこなしっす。」


 彼が剣を持って走ってくる。


【自分自身】【重火器】



 ドガァァァン!



 先手必勝の砲撃。それを刀を盾にしていた。

 火薬の黒い煙で前方が見えない。


 煙から人が出てきた。そして、大砲の先口に手を着いてクルリと飛び越えてきた。

 

 振られる剣。頭を下げればぶつからない。


 大砲を掴む。


【重力――】


 大砲を振り回す。当たればひとたまりもない。だからこそ、ハロミトは避けるのに集中しなければならない。つまり彼は防戦一方。


 うりゃあっ!


 大きく横振り――。


 が、避けられて後ろに距離を空けられる。

 じゃあ、お次は……。


 砲撃――ドガン!


 ギリギリの所で横に飛んで避けていた。体制が崩れたまんま剣を振るってきたが、その距離じゃ当たりもしない。何をしているんだ?



 ……?

 ――!?



 気づいた時には、すぐ横に彼の剣がある。大砲で受け止めるが、あまりの威力に横に大きく吹き飛ばされる。

 距離の感覚がおかしすぎる。

 私は大きな負傷を負った。大砲は上下真っ二つに割れてしまった。


 何その威力。

 ってか、何で攻撃が届いてるの?


 痛む体を動かして彼の方を見る。

 彼の持っている剣の頭身は果てしなく長い。よく見れば、剣の長さが二倍になっている。もはや片翼の天使セフィ〇スもびっくりの長さだ。


「この剣、普通に使うと使いにくいんすよねぇ。」


(はん)分】


 剣が再び元の長さに戻った。


「俺の技で半分にしないと使えないポンコツ武器なんすよ。」


 彼が走り出した。

 そのまま剣を構えながら進む。


 反射的に「ちょっと待って」と出るも、その言葉は簡単にかき消される。


 ひと時の静寂――。


「これで終わりっすよ。」


 再び頭身が長くなる剣による穿(うが)ち。 

 貫く一線。剣が私の手のひらと肩を貫いた。



「あれ? ……痛くない。」



 まるでダメージがないみたいだ。

 ぎゅっと貫いた剣を掴む。これでハロミトを逃がしはしない。


【重火器】


 私達の間に現れるバズーカ砲弾の口が彼の方を向く。


「ちょっ、待つっす。」

「え~。さっきは待ってくれなかったじゃん。」



 ドガァァァァン!



 辺り一面に襲う一撃。

 黒い煙で周りは見えなくなった。

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