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死亡=現実でも死のバグ世界、お嬢様と執事の生存・脱出戦略~『詩忍にくちなし』~  作者: ふるなゆ☆


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17.ハロミトとスケート

 春夏秋冬――。


 違う!

 春は花粉が舞い、次に夏が来る。短い雨が通り過ぎればその夏よりも暑い灼熱の夏。秋はどこにいったのか瞬で寒い冬が来る。つまり、現在の四季と言えば――


 粉夏(ふんか)灼冬(しゃくとう)――。


 イーストブルーは夏に当たる。今から行く所――岬は次の四季である灼熱の夏である。


 

「暑っついわね……。」


 ただでさえ汗が出てきて嫌になるのに、気を抜けば紫外線が襲ってくる。こんな時に晴雨兼用の"(かさ)"を召喚できるカゲトは本当に優秀過ぎて感謝しか思えない。


 一面平らな草っ原が広がる土地。そこをブレードの付いた靴でまるで滑るように移動している人が何人もいる。


 何この空間……。


 そんな人達を横目に人工的に刈り取られて砂利道となったであろう道を進んだ。


「お嬢様、ここから先は忍者の歩行が必要になります。ご準備を。」


 忍者の歩行? 何それ?


 つるんッ。


 足を滑らせて転んだ。

 それだけ済まない。何故か前方にツルツルと滑っていく。草原のはずなのに、まるで氷の上にいるかのようにツルツル滑っていく。


 上り坂。


 少しだけ上に、すぐに反動で元きた方向へ。


 すぅ。


 カゲト達のいる所まで戻ってきちゃった。


「何これ。……何、これ?」


「ここは草原のスケートリンクでございます。まるで氷上のようにツルツルと滑れる地面(ゆえ)にスケートリンクとして使われている草原なのです。」


「嘘でしょ。こんな猛暑の中で、スケート!?」


 けど、先程の信じられない光景も納得はいく。まさか猛暑日の夏空の草原でスケートしてる姿が見られるとは……。

 スケートって涼しそうなスポーツだと思ってたから、私の常識がぶち壊されて本当に新鮮だ。


「移動方法は二種類でございます。一つが忍者の歩行です。忍の(あし)使いで行けば滑らずに進めますが、習得までに数年かかる難易度。私も五年程習得に費やしました。」


「五年!? 駄目じゃん!」


「もう一つが、イーストブルーにて専用のスケート靴もしくはソリをレンタルする方法です。つまり、あの村へと直接(おもむ)き、直接購入しなければなりません。」


「うわぁ、まじかぁ。」


「では、諦めますか?」


「ううん。行くわ。……はぁ。」


「お嬢様。ため息を吐きたいのはこちらでございます。自分がやったことは自分で責任を負う。ああ、お嬢様には十年早かったでしょうか。」


「最後の一言余分だっつうの!」


 

 私達はイーストブルーの村に戻った。

 そして、村のショップにお邪魔した。


 店員さんが写真の載った紙を見せてきた。そこには私達の顔がばっちり写っている。


「安心しろ罪には問われてねぇ。が、この村じゃブラックリスト入りしとる。この村で買えるもんなどないと思え!」


 追い出された。

 追い出されてしまったのだ。


「勝手に家に侵入して壺を割ったのは悪いと思うよ。それだけで追い出されるかな。そんなに悪いことしたかな……。」


「ええ、もちろんでございます。さらには、弁解なども何もせず逃げ去ってしまいましたね。当然の報いでございますよ。」


 正論の槍が心を貫いた。ぐさっ!


「もう行く方法ないじゃん!」


 どうしても行く方法が見つからない。

 考えれば考える程に疲れてくる。


「疲れた。こうなったら――」


「何か思いついたのでしょうか。」


「現実逃避よ!」


「……。」「……。」


 カゲトもカナリンも無言だった。

「……」だけで話してきているような感じがした。





 夏と言えば……流しそうめん。山。スイカ割り。そして、海。


 村から少し離れた海沿いの、さらに隅っこの砂浜にパラソル(傘)を打ち立てて広大な美しい景色を眺めていた。


 

「隠れ家に入ってすぐ横にシャワー室作ったから」と言われた。


 改装された隠れ家は更衣室もシャワー室も完備。……完璧だ。


「お嬢様はジュゴンになって遊ばれるのかと思いました。ジュゴン……お似合いですので。」


 素でそんなことを言う。もう少し執事として言葉を慎めっつうの!


 さざめく波で心を安らげてから、

「まぁ、いいわ。せっかく海に来たんだし、カゲトも付き合いなさいよ!」と私はビーチボールを持った。


 海に浸かる足元。

 砂浜をサンダルで踏みしめる。

 カゲトは相変わらずクールで、飛沫をあげる海ですら彼には敵わない。


 さっきまでの気持ちも吹き飛んだ。


 少し疲れてパラソルの元に移動。



「ねぇ、姉ちゃん。めっちゃ可愛いじゃん。俺と遊ばないっすか?」


 

 金髪のちょっとチャラそうな男だった。少しは鍛えていそうだが、カゲトとか人間の姿のボーニーとかと比べてしまうと頼りなさがある。まあ、あの二人と比べるなという話だが……。

 

 初めての出来事。ちょっと動揺しかけてるけど、何とか表に出さないように心がけている。


「実は俺、あなたに一目惚れしたんす。これは本当っす。」


「へぇ、どんな所が良かったの?」好奇心に身を委ねて聞いてみた。


「やっぱり可愛いルックスっすね。評判で聞いた性格。そのギャップが俺に恋心を感じさせたんす! これマジっすからね。」


「評判で聞いた……性格?」


「他人の家にズカズカと入り、勝手に器物損壊をするその図々しく破天荒な性格なのに、守りたくなりそうな可愛い見た目。そのギャップに心打たれたんす!」

 


「もう黒歴史を掘り返さないでっ! 破天荒な性格のことは忘れてっ!!」

 

 

 心からの叫びだ。もう何度掘り返されれば済むのだろうか。……マジで。

 

「お嬢様……。この男は誰でございますか?」


 そこにカゲトがやってきた。


「げっ、連れがいたんすか。」


 ナンパされたことを軽く伝えるとその男は軽くつまみ弾かれた。


 ……可哀想に。

 心の中で、見る目はあるなって褒めて上げた。まあ、伝わらないから意味ないけど。





 気分転換もしたし、行く方法を考えよう。私達は着替え終わって林へと足を踏み入れた。


 ……。なんか視線を感じる。

 

 ガサガサガサ。

 木の影からナンパして来たチャラ男が身を乗り出した。


 着いて来た……のか?


「奇遇っすね。これはなんかの縁かも知れない。あんな無感情の男なんか見捨てて、俺に乗り移ってはどうっすか?」


 髪をかきあげていた。きっと自分でそれをカッコ良いと思っているのだろう。

 すぐにカゲトに見つかり、首の(えり)(つか)まれ足は空中に浮いた。


「アンタはこの姉ちゃんの何なんっすか?」


「私はただの執事でございます。お嬢様の危険になる人は排除致します。」

「あたしは一緒に旅しているカナリン。あたしも排除、手伝うわ!」


 慌てまくる彼。「待って。待って下さいっすぅ。」どこか情けない。


「まあ、少しだけ話を聞いて上げましょう。」


 なんか可哀想な感じがして、どこか同情してしまいそうだ。



 海辺から少し離れた林の中、彼は正座をして私達に向いて口を開いていた。


「俺の名前はハロミト。イーストブルー在住の十七歳っす。」


 思ったよりも若いな。大学生ぐらいの歳かと思ってた。


「前にその子を見た時に一目惚れして、奇遇にも今日見かけたから頑張って声をかけたんす!」


 思っていたよりも情けない感じがしたからだろうか。それとも若いからだろうか。なんか害は無さそうな感じがする。

 

 ふと、あることを思い付く。


「ねぇ、少しだけ一緒に冒険しない? この二人も一緒に、だけどね。」


 カゲトたカナリンが、こいつマジかみたいな顔で私の方を見てきた。ごめん、思いつきで(しゃべ)った。


「そうするっす。よろしくお願いするっす。」


「じゃあ、最初にやって欲しいことがあるんだけど……。」


「何っすか?」





 草原に置かれるソリ!


「よくやったわ。ハロミト。」

「朝飯前っすよ。」


「まるで犬みたい……」「私めは召使いに見えました」と外野がガヤガヤ言ってるが、彼の耳には入っていなさそうだ。


 みんなでソリに乗った。ソリは縦と横にしか進めないらしい。斜めは不可能とのこと。


 スゥ~。


 一直線に進む。目の先には岩みたいな形の四角い置物が置かれていた。

「ぶつかるっ!」


 トン。

 

 衝突はするも何事も無い。置物はクッションのような感触で、ぶつかっても何事も無いようになっている。


「ソリで行く場合は草原に至る所にある置物を利用して進むんすよ! 階段に直接辿り着けないと戻されるんで、階段目指して進むっすよ。」


 ソリが九十度回転した。そっち方面に先を向き、内蔵された直線移動装置を利用して真っ直ぐに進む。


 時に、戻りながらも進む。


「迷ったっすね~。」


「なにやってんの! イーストブルーの人間じゃないの?」カナリンの突っ込み、ごもっともだ。


弘法(くうかい)も筆の誤りっすよ。ははは。」


 ははは、じゃないんだが……。


「どうしよう……。」


 どうしよう、じゃないんだが……。


 

 今いる位置を達観視できれば、何とか進む経路を見いだせるかもしれない。

 一つ、いい技を思い出した。


【自分自身】【自撮り】


 チェキで撮ったみたいにすぐに写真が現れる。それはパワーアップした私の能力で、高い上空から私達を撮った写真だ。


 これで向かう階段。置物の位置。私達のある場所が分かった。


 まるでRPGの氷のダンジョンに出てくるギミックみたいだ。岩を利用して真っ直ぐに進めない氷結の床を、直接体験してるみたいだった。

 まぁ、氷とは違って、真夏の暑い中、草原という不可解な状況だけど。


 何度も何度も確認しながらゴールの階段へと辿り着いた。



 目の前には石版に突き刺さったいかにも(ひじり)な剣がそこにある。



「これが……"勇者の剣"。」

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