16.球速と休息
カゲトとボーニーは『土忍』討伐の主体として特級勲章が与えられた。
討伐の活躍によりカナリンには一級勲章。
別件にて、アンチギルドの幹部『曇天怒面』の討伐により私も一級勲章を貰った。
一級勲章は賞状と給与が渡される。一級の活躍で数年は働かずに贅沢生活ができるレベル。それが一級二人と特級二人と言うチーム。もう金には困らない。
「『土忍』は私達三人に加え、主忍二人の力添えがあって倒せました。一方で『土忍』自体の得意分野は駒を操る軍師。直接的な戦闘は他と比較すれば苦手な部類に入るでしょう。今回は運が良かったのかも知れませんね。」
そんな振り返りに、なんか弱気だなーって思ってしまう。
「石像の正体は『五忍』で間違いないでしょう。魔王討伐のために封印を解き戦わなければならないのですが、相手が『五忍』となると、時間をかけて着実に力を身につけてから達成するのが確実でしょうね。現に『土忍』相手に我々は手一杯でした。もしお嬢様が来ていれば私達はお嬢様を守りきれなかったどころか、さらに敗北も濃厚と考えています。」
「簡単な道じゃないんだね。……じゃあ、私も頑張らなきゃね。」
「はい。その通りでございます。」
私はブーツを脱いだ。
そして、新たに運動靴へと履き替えた。服装も動きやすい服にした。
「じゃあ、ずっと気を張ってたら休めるもんも休められないでござるし、今日はしっかり遊ぶでござるよ!」
私達は都にて、スポッ〇ャ的な遊戯建物へと来ていた。
球は選んだ。
これは――ボウリングだ!
一投目。真っ直ぐ投げたボールが真ん中のピンに直撃した。「よしっ!」と思ったら、端っこのピンが離れて二つ残った。
「無理でしょ……。」無理だろ……。そんな雰囲気が漂っていた。
二投目。一ピンでも倒せば……。狙いすぎてガーター。やっぱ駄目かぁ。
「さて、まだ始まったばかりですよ。」
まあ、その通りだ。まだ始まったばかりだ。
カゲトのターン。
投げたボールが回転しながら弧を描いて真ん中へと当たり、ピンを吹き飛ばしていく。
「えっ、カゲトってスピンかける人なのっ!?」
ストライク!
私達はハイタッチを交わした。
続いて、ボーニーのターン。
一本線の細い腕でボールを持って構えている。
腕を振り下ろし……。
ボトンッ。
……。床にボールが落ちて傷ついた。
「指からすり抜けたでござる。」
気を取り直してもう一度。
ボトンッ。
「持てないでござる……。」
「変身解けばいいじゃんっ!!」
結局、ボーニーは変身を解くことはなく秘密兵器を取り出してきた。
象(の絵の台)が力強く床に立っている。
象の鼻の上を滑り台を滑るが如く転がしてピンを倒しにいく!
「波動砲でござる!!」
そんなカッコよく言わなくても。
ガーター――。
悔しながら床を叩いていた。
「ごめん。次、私の番だから……邪魔。」
カナリンはボールすら持てないので応援のみ。これは私達三人での勝負だ。
七回ぐらいまで来た。
スペアは取れてもストライクは取れない。点数も百点は余裕で超えそうだけど、それ以上は残りの点数次第。
一方で、カゲトは私の倍以上を余裕で取っている。逆に、ボーニーはパッとしない所が、投げ方が象で、点数も二桁に収まるレベルであり、何てコメントすればいいか分からない。
突然真っ暗闇になる。
ネオンライトの光だけが照らしていく。
「何っ、何が起きてんのっ!」
謎のゲームが始まった。今から一斉にボールを投げ、ストライク及びスペアを取ると景品が貰えるっぽい。ちなみに男性はストライク、女性はスペアで景品らしい。
ここでのチャレンジャーは……
ボーニーだ!
「終わった……。」
暗闇の中に置かれる象さんの台。ストライクなんか取れる訳ない。希望もない。期待しない。
カランカランラン。
「ストライクでござる!」
「嘘でしょ!?」
なんか奇跡的に一球で全ピン倒してた。
ボウリングが終わった。
受付で小さなピンバッチを貰う。そして、記念撮影をするみたいだ。
私達は写真の中に収まった。
ハイチーズっ!
写真を見た。
「象が邪魔っ!!」
ボーニーがどうしても象の台も一緒にって言うから用意したけど、とっても邪魔だ。しかし、撮り終わったからには仕方がない。
私やカゲト、カナリン、ボーニーの映る記念の一枚だ。大切に隠れ家へと送り込んだ。
四人でのスポーツ――ダイジェスト。
『テニス』
浮いてるカナリンがとっても技巧派。ロブショットとかバンバン打つ。ボーニーに関しては独特過ぎる動き。個性的過ぎるでしょ。テニ〇の王子様とかマリオテニ〇かと思ったわ……。
『スタックライン』
初めて見た。タイミングよく技【ジャンプ】使うと綺麗に飛べた。"ジャンプ"にこんな使い道があったとは。
他にもセグウェイだとかビリヤードだとかローラースケートとかして楽しんだ。
「楽しかったでござるな!」
あっという間に一日が終わっていた。
夜の匂いが広がっている。
「これからオヌシらはどうするんでござるか?」
「まだ決めてはいません。」
「じゃあ、せっかくだし、秘宝"勇者の剣"にチャレンジして見たらどうだ? もし抜ければ相当な戦力アップだ!」
「いい提案ですね」と頷き「お嬢様、これからの予定として"勇者の剣"を抜きに行くのは如何でしょうか。もし剣を手にすることができれば、即戦力となる程、強くなることができますよ」と伺ってきた。
秘宝――。勾玉は弱い能力だと言われていたが、アンチギルドの最悪な使い方で最も強烈な武器に化けた。この"勇者の剣"とやらの秘宝もそれなりの強力さがあるに違いない。
「いいね。じゃあ、その勇者の剣とやらを手にしに行こう! それでその剣はどこにあるの?」
頭の中に地図を思い浮かべていく。
「都の東側、イーストブルーよりさらに東に進むと草原があります。草原地帯を抜けると"勇者の剣"が埋まる岬がございます。」
なるほど、村のさらに奥側に進めば、その剣とやらはあるのか。
「はぁ、またイーストブルーに行かなきゃあけないのかー。」ちょっとため息が出た。
「お嬢様……。自業自得でございます。」
何にも言い返せなかった。
「まー、頑張るでござるよ。離れた所から手にするのを祈ってるでござる!」
あれ? その言いぶり……。
「ボーニーは一緒に行かないの?」
「拙者は敢えて別行動するでござるよ。アンチギルドの動きが見えない以上、襲われた時に共に被害に遭い、最悪全滅するよりも、別行動をしてすぐに動く方がお互いのためになるでござる。大丈夫でござる。ピンチの時は必ず駆けつけるでござるから!」
行動は別にして、けど同じ仲間として存在する。助っ人のような仲間。
「その時はよろしく頼むね!」
「任せるでござる!」
彼はサムズグッドサインを繰り出した。
新たな幕開けの夜風が吹いてきた。




