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死亡=現実でも死のバグ世界、お嬢様と執事の生存・脱出戦略~『詩忍にくちなし』~  作者: ふるなゆ☆


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15.曇天怒面

 カゲトの扱う鏑矢は特別性で、使うと空間を揺らすみたいな音がする。

 カゲト達は石像討伐に向かった。


 その鏑矢の音が右手側から響く。ついに石像との開戦の幕が上がったみたいだ。


「何の音だぁ?」


 何にも知らないゴンディは不思議そうな表情だ。だからこそ、教えてあげる。


 

「あんたが負ける戦いの開戦の音――。」


 

「調子に乗ってんなぁ!」


 彼は首や手をボキボキと鳴らし始めた。表情も険しい。


大抵(たいてい)の奴ァ、一発殴りゃ、ゆうこと聞くもんだよなぁ。」


【ゴリラ!】


 ゴリラに姿を変えていた。

 こちらだって、

【自分自身!】と技を発動する。


「何も変わってねぇじゃんか。」


 圧倒的な筋力により一瞬にして距離を詰められる。そこからスイングパンチが放たれる。


【時空――】


 パンチが逸れて、体の横を通った。何とか攻撃を外させた。その間に少し距離を取る。


「これは私が、私の力で戦うための能力。内なる私は強いのよ!」


戯言(たわごと)を!」


 再び殴りに来た。


【重火器――。】


 上を向くバズーガ型の大砲が現れて、パンチの壁になる。圧倒的な重みが攻撃を防いだ。


「殴るんじゃなかったの?」


 大砲の先が前側に移動する。

 それを見て、ゴリラは真後ろに下がる。


 それは遅い――。

 引き金を引いた。


 ドバァァァァン!


 高火力の砲弾。圧倒的な威力が直撃した。


「危ねぇなぁ。俺様じゃなきゃ死んでたな。……知らねぇけど。」


 ゴリラが木を()(かか)えた。そして、木を引っこ抜く。


「簡単には殴らせてくれねぇみてぇだなぁ。なら、乗ってやるよ。てめぇの戦い方によぉ。」


 木を振り回し始めた。

 大きく振りかぶっていく。振ったら、すぐに反対側に振り直す。パンチと違って隙がない。動かない重火器の盾じゃ守りきれない。


 何とか気合いで避けていく。

 大木が武器じゃ"時空"で避けることもままならない。"磁力"だと発動が遅いから避けきれない。


 ここは――

 避けて、避けて、避けていく。


 キリがない――。


「一か八か。やってみるしかないみたいね。」


 敵の攻撃が来た。木が振られてくる。


【重火器】【重力】


 木と重火器がぶつかり勢いが相殺される。


「おまっ。嘘だろ。前から思ってたんだが、てめぇゴリラかよ!」


「ゴリラなのはアンタでしょ! ってか、そもそもアンタ、ゴリラじゃん。」


 重火器を振り回す。木よりも小回りが効くから、彼よりも早く攻撃ができる。単純に重いから威力も高い。

 ゴリラは木を投げ捨てて逃げるのに専念した。

 今度は私の番だ。


 振って、振って、振りまくる。


 しかし、どれも避けられてしまった。

 一度"重力"を解除する。私が重火器を持つ時にかかる重みをゼロにすることで振り回していたけど、今は重くて持ち上げられない。


 ゴリラが手を止めた私を見て、立ち止まった。彼は警戒して体を強ばらせながら様子見をした。その時間がありがたい。


「能力の燃料切れか?」


「さあ、どうでしょう?」


【磁力!】


 重火器がゴリラに引っ張られる。それを(つか)んでいる私も引っ張られる。いつの間にかゴリラの(ふところ)に潜り込めた。


「ドカン。」引き金を引いた。



 ドォォォン!



 爆風で私は軽く吹き飛ばされた。ただ、敵はそれ以上のダメージと共に吹き飛ばされたはずだ。

 砂の粉塵(ふんじん)が激しく舞う。

 

「とりあえず勝った……かな?」


 砂煙が収まった。

 ゴリラの姿はなかったが、人の姿はそこにあった。彼の表情は彼の持つ仮面と同じ状態だった。


()めやがって。やめだ。やめ。てめぇは生け捕りぐらいにしてやろうと思ったが、もうやめだ! もういい。殺してやるよ。」


 

【ゴーレム!】



 巨大な岩で埋め尽くされた怪物が私の前に立ち塞がる。

 その圧倒的な大きさに怖じ気づいてしまいそう。


「跡形もなく潰しちまうが仕方ねぇよなぁ。てめぇが俺様を怒らせたんだからなぁ!」


 私を簡単に潰してしまう程の大きな腕が振り下ろされる。


 出遅れた――。


 今からじゃ走っても間に合わないし、"磁力"を使っても間に合わなさそう。"時空"で避けられるレベルでもない。このままじゃ潰される。


 あの技を使うしかない。


 

【ジェット――】



 ()ったぁ~。

 

 制御不可能な一直線に進む加速。思いっきり木にぶつかった。制御不可能で必ずと言っていいほど何かに衝突して、体を痛めるからあんまり使いたくなかった。

 ……なんて言ってる場合じゃないか。


 地面に埋まる拳。引き上げるのにも時間がかかっている。今がチャンスだ。


【重火器】


 ドバァァァン!


 背中に直撃した。

 が、何事も無かったかのように振り向いてきた。


 再び殴りにきた。今度は反応が遅れなかったから間一髪で避けられた。

 ゆっくりと拳が戻されて、反対側の腕が振り下ろされる。それも間一髪で避ける。その隙を抜って重火器で殴ってもビクともしない。もちろん放ってもビクともしない。


「やばいな……。」


 避けれると言っても、振り下ろすスピードが速いから間一髪だ。外側に飛び込んで何とか避けれる程度のギリギリ。

 攻撃後の動作は遅いからそこが攻撃チャンスなんだと思うけど……やはり決め手に欠ける。


 攻撃方法が見つからない。なのに、逃げるのに体力を使う。――ジリ貧だ。

 今の能力だって、もうそろそろ枯渇(こかつ)しそうだ。枯渇する前に何とか倒しきらないと。



 考えろ――私。



 再び拳が地面に突き刺さる。

 至近距離からの大砲をお見舞いしてやる。


 突き刺さった拳に乗り移って、ゴーレムの腕をひた走る。拳が動き始める。何とか落ちないように進む。その間に"磁力"を溜めておく。


 よしっ、もうすぐ顔面だ。現在二の腕当たり、ここなら磁力が発動できる。


【重火器】【磁力】


 脳天(のうてん)ぶちまけたる!

 これで――。


「これで終わりだよなぁ。……てめぇがな。」


 真下に見える腕。既に攻撃は見切られていて、それを見越してアッパーをお見舞いする算段だったみたいだ。まんまと引っかかった。

 現在、空中、避けきれない。


 終わった――。



 いや、まだ終わらなせない。

 閃いた――倒す方法。

 私は磁力を消した。代わりに発動するのは【重力】だ!

 


轟速(ごうそく)】【強力(ごうりき)



 目に見えない程の速さで襲う強烈なアッパー攻撃。私は重火器の盾で守られながら、その勢いのまま空高くへと飛んでいっていた。


 普通なら凄まじい圧力を受けて潰される。だけど、重力を受けない状態になった私は風を切って高く高くへと飛んでいる。



 透き通る水色。私の下では雲がほんのりと牛歩で歩む。クリアな世界が神秘的だ。

 ゲーム世界の中だからだろうか。ただ、息を飲むような美しさがそこに広がっていた。


 余所見(よそみ)している場合じゃないな。


 この攻撃が決まればきっと岩でできた怪物も倒せるはず。ただ、外れる可能性は高く、一度外れれば容易く見切られてしまうから次はない。


 この一撃に()ける。



【重力――!】超過。



 さっきまでは重力を軽くする使い方。今度は重火器にかかる重力を私の持てる分の力だけかけていく。

 豪速で一直線に落下する重火器。

 それはまるで隕石が落ちるかの如く。


 つまり、

 


 ――メテオ。



 遠くにいて小さく見えるけど直撃した。後は降りるだけだ。

 無重力を解除した私が落下していく。

 地面近くで重力を無くして何とか落下ダメージを減らさないと。


 もう能力が限界を迎えそう。


【重力――】


 駄目だ。力が足りない。勢いを弱めても、完全には殺せなかったから、ぶつかった時にダメージが来る。そのダメージは未知数。……ヤバい。


 地面が近づいてくる。



 キィー。



 (きじ)が私を(つか)んだ。滑空していく雉に連れられて、無事に地面に辿り着いた。

「なんかよく分からないけど、助かった。ありがとね、雉さん。」


 すっ――。


 能力が切れた。もう限界だったみたいだ。それもそうだ。ここまで激しく戦ったのは初めてだ。


「調子こいでんじゃねぇぞ、おら。」


 ボロボロの体で姿を見せるゴンディ。まだ倒しきれていなかった。

 もう能力も使えない。能力を使い過ぎて動くのすらやっとだ。今は歩くことぐらいしかできないと言うのに。


「俺様の能力は切れちまったが、てめぇも同じで燃料切れだろ? こっからは純粋な生身での肉弾戦だぜ。コラァ!」


 彼は腰髄に手を伸ばす。そこにあった大きなナイフを取り出した。


「こっちゃあ、武器(ドス)を使わせて貰うがな!」


 彼が襲いかかりに近づいてきた。

 もう私は、動けない。


 

 ガルルルルルルル。



 大きな狼――いや、大きな黒い毛皮の犬が飛び出してきた。犬がゴンディの体に喰らいつく。

「なんなんだ、こいつぁ!」

 (くわ)えたまま森の中へと入っていった。「やめろぉ!」という声が響いた。その後は、森のさざめきが聞こえた。


 ガサガサガサ。


 ゴンディが連れて行かれた方角にある草むらが揺れる。


 そこから出てきたのは――猿だった。


 何故か猿はゴンディが持っていた怒りの仮面を手に持っていた。遅れてさっきの犬もここへと来る。


 私は雉と犬と猿に囲まれてしまった。


 敵意はあるのかないのか。分からないが、今のところ襲ってきてはいない。ひとまず警戒だけしておく。

 

 猿が地面に仮面を適当に投げ捨てる。

 地面に投げ捨てられたお面。ここにやってきた一人の男が刀で落ちた仮面を貫いた。仮面は真っ二つに割れた。


 

「横取り失礼。あの男は責任を持って殺した。遅れてすまなんだ。ひとまず一言いいか……お疲れ様。」


 

 そこにいたのは正真(しょうしん)正銘(しょうめい)、桃太郎将軍だった。


  

 割れた仮面が風で虚しく揺れていた。

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