14.『土忍』弐
国をたった一人で容易く滅ぼせる力を持った彼女の名前はネヌ。
その強さの真骨頂は対軍隊の時に発揮される。彼女の戦い方は繰り出した死霊人を突撃させる軍師タイプ。そして、そこで出た死者はすぐに死霊人に成り果てる。
敵の駒を奪い取れる。それだけで強いのに、その奪い取られた駒は、敵の動揺を誘う。さっきまで味方だった人間が襲いかかる。少しでも躊躇えば死霊人の餌食である。
人間はどうも心が弱い生き物だ。
ほとんどの人が奪われた駒に躊躇する。故に、新たな駒と化す。その繰り返しで軍隊はいとも容易く崩壊するのだ。
一度でも対峙した軍は必ず崩壊する。
彼女についた肩書きは『土忍』――。轟かせる最強の一角は故郷の土地の名前すら、土忍のいる島――土島と変えてしまう程だった。
小さな黒い烏の足に捕まって、土忍の石像がいる土島の上空へとやってきた。烏の上には妖精が乗っている。
後々、ドラゴンとフェニックスが目の前の敵を片付け次第、増援に来る。が、俺の見込みでは手一杯で増援は期待できないな。
今はこの三人で最強の一角を倒すんだ。
いざ――参る。
◆◆
サイド――ボーニー、カゲト、カナリン。
棒人間、執事、妖精の三人で最強の一角、土忍ネヌ討伐の巻。
◆◆
黒い烏が人の姿に変わる。そして、俺らは石像に向かって手を翳した。
【化学爆弾】――【ボム】
石像の『土忍』付近へと向かって放たれる二つの爆弾。
やったか――?
近くにいた死霊人は爆風で退けた。肝心の石像は――?
彼女を守る土が爆風から身を守っていた。
「やっぱり一筋縄では行かないよな。」
「久々の共同作業……。気を抜かずに行きますよ。」
【鏑矢】
カゲトが引く弓矢。
放たれる一線。
【粘土】【念力】
現れる粘土が念動力によって壁に変わり、攻撃を防ぐ。それと同時に鏑矢の大きな大きな音が辺り一面に響いていった。
決戦の開幕の合図だ――。
【刀】――【木刀】
ただ懐に潜って、斬るのみ。
土忍は持っている杖を前へと振る。
【粘土】【念力】【燃焼】
粘土は幾本の槍に姿を変える。それが炎を纏って襲いかかってきた。
まっ、当たりはしないが。俺、棒人間だし。
【回避】カゲトもサポートを受けて攻撃をすり抜けた。
【巣穴】――。地面から死霊人が現れてきた。
さらに、せっかく爆発で追い払った死霊人も、もうすぐそこまで来て囲んでいる。
【ボール!】
球状の波動を幾つか出して空中で自由に操る。それに触れれば爆風が現れて吹き飛ばす。
近くの敵を吹き飛ばしてから、
【暴投】
右手を敵の方角へと向けて、手の先から巨大な波動の玉を生み出し、放ってぶつける。
やはり、粘土の壁で防がれた。
【粘土】【念力】【粘着】
粘土が俺の足に触れた。まるで蜘蛛の糸にかかった虫になったみたいだ。全く抜け出せない。
【貫通】
粘土からすり抜けた。
「助かった。」
「気を緩めないで! 次はくらわないようにして。技は有限よ。」
今度はカゲトが刀を振るう。
「風遁【かまいたち】旋風――」
砂煙と共に、無数の斬撃を前方を襲った。
乾いた空気の中、砂煙が消えるのを待つ。
敵は倒せてない。
そもそも当たっていない。
土忍は空中へと移動して、空中にて漂っていた。石像に見下ろされている。
地上では死霊人がうじゃうじゃ湧いて出てきていた。
「空中は……厄介ですね。これは少し策を考えなければ。」
「いや、問題ない。奴は"念力"(※言霊系)で浮いてるだけ。そして、奴の系統は《変身系》で、《言霊系》じゃない。ずっと浮くことはできないはずだ。」
「では、降りるまで、死霊人狩りですね。」
二人の刀が地上に湧き出る敵を切り伏せていく。
斬っ。斬っ。斬っ。
真っ二つに斬った体は泥になって溶けていき、時間が経つとそれが再び死霊人として蘇る。
斬る。繰り返し。
こんなもんじゃ俺らは殺れやしない。
ふっ――。
土忍が地上に降りた。
「奴は任せたぞ。」
「承知しました。」
【僕を見ろ!】
死霊人が俺だけを狙って攻撃しに来る。その隙を抜い、カゲトが直接本体を叩く。
この役割を担ったからには、全力で切り伏せるのみ。
激しい攻撃の効果音を聴きながら、俺も必死で刀を振るう。俺も負けじ斬る音で周りに響かせてやる。
あまりの数に潰されてしまった。
一度潰されると他にも覆いかぶされて身動きが取れなくなる。
まっ――問題はない。
【ボルト――】
その束を吹き飛ばす程の雷撃。使った直後の刀はまだ電気を纏っている。
喰らえっ、雷の斬撃。
斬る斬る斬る――。
縦横無尽に駆け回り。それなりに敵を減らした。
そこにカゲトがやって来た。
「こっちは一通りは倒した。そっちは?」
「防御壁に使われる技――"粘土"と"念力"を出し切らせることができましたよ。後はトドメですが……。」
カゲトの向く先を見た。
それなりに空いた距離。その間に死霊人が沢山いる。
「カナリンさんの"加速"を使って、速さを威力に変えて一撃を決めたいのですがね……。」
一撃を決めるには、道程の死霊人が邪魔過ぎる。
空には二匹の神獣が飛んでいる。
「俺らが倒すのが遅いのか。アイツらがすげぇのか。どっちなんだろな。」
「一つ言えるのは、あのお二人が凄いのは確かですよ。死なずにいるどころか、まだ戦える状態で援軍に来ていますからね。」
「――俺……拙者らの前の奴らを一網打尽にしてくれっ!」
「承知したっ!」
ドラゴンが口から炎を吐き出した。戦場が炎で包まれる。
「《変身系》特有の備わった特殊能力と素のポテンシャルだけで、ここまで破壊し尽くせるなんて、やっぱすげぇな。」
フェニックスが翼を交差させた。
――フル【フレイム】
炎が辺り一面に広がった。死霊人は炎に巻きこまれて消え去った。
「もう一つの《変身系》の在り方。変身して、別の能力体型の技を使う。それを無限に使えるなんてすげぇよな。」
あっという間に焼け野原となる土忍との間の空間。熱気が広がっていく。
「全くさ、《変身系》のエキスパートとしては負けてられねぇよな!」
俺は所々で火が燃えている焼けた土地を踏みしめて前へと進む。
刀に全ての力を込める――。
【加速】カナリンの能力で凄まじいスピードを得たカゲトがあっという間に俺の横に来る。
俺とカゲトが土忍の目と鼻の先、すぐ目の前にて同時に刀を振るう。
「喰らいな。俺らの本気の一撃――。」
【暴風雨】――風遁【風】波動砲
激しい風が周りに広がる。地面に取り残された火は全て風に吹き飛ばされて消えた。
一直線に伸びる抉れた地面。まるで道のように成り果てた直線は都の壁へと続いている。詳しくは見えないが、確かにそう確信した。
まだ残っていた死霊人が土に帰っていく。
風が吹き荒れていた。




