♥20 みっしょん・いん・ちょこれ~と
静かで乾いた銃声が無数に重なる。
サイレンサー仕込みの小型マシンガンの反動を巧みに抑え込み、戦場 來夢は鉄骨で組まれた足場のボルトを正確に打ち抜く。
崩れた鉄骨の山には、先ほどまで新型の電気銃を向けていた屈強な男たちが倒れていた。
「死んでは、いませんよね。流石にそれはマズいので」
銃口から立ち上る硝煙が空間に尾を引く。
來夢が先ほどまで立っていた場所には、新たな電撃が撃ち込まれていた。
ザザーー「こちら來夢。エイザ。そっちは大丈夫?」
ザザーー「こちらエイザ。問題ないけど、やっぱりあの銃は厄介デス!」
やはりそうか、と來夢は小さくため息をつく。
敵は、国籍は不明だが明らかに海外の組織だ。
一介の高校生に従っているところを見ると、金で雇われた傭兵か何かか……。
「……まったく。あれさえなければ白兵戦はこちらに分がありそうなのに」
來夢はコンテナの影に隠れながら敵の腕と足に狙いをつけて応戦する。
殺害ではなく、無力化を選択しているのは阿良々木 愛彩の心労を慮っての行動だ。
「お嬢様の心の清らかさに感謝しなさい」
一瞬、頭部に合わせた照準を腕へとずらし、來夢は引き金を引く。
逃げながらの戦闘に、息を切らしながら來夢は雲がかかった夜空を見上げた。
「少し急いでくださいよ、天音、唯優」
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「唯優ちゃん。どう? 何か分かった?」
「――うん。あの電気銃、――やっぱり遠隔で電力を共有されてる」
「それじゃあ、その大元を潰せばあれは無力化できるのよね?」
「――その場所を割り出すのは、――もう少し待って」
暗いコンテナの中を、佐繰 唯優が操作するディスプレイの光が照らす。
ガンガン、とコンテナを叩く音が少し距離がある場所から聞こえた。
光が投影する影の一つが、大きく動いく。
「唯優ちゃん。そろそろここも見つかりそう。移動するわよ」
緊張が伝わる声色で、小伏 天音振り返る。
「――ん。――あともう少し」
「だーめ! さ、行くわよ」
粘ろうとする唯優を小脇に抱えて、天音はコンテナの外に出た。
音もたてず、軽やかに迅速に、コンテナの裏へ回りこむ。
「さて、次はどこに行こ――」
ドン、と曲がり角で何かにぶつかる。
無機質な鉄製のコンテナとは明らかに異なる肉体の感触。
確かめる時間など、不要だった。
來夢やエイザだったら、この一撃はすんなりいなせるだろうし。
この物体が獅子堂 彰である可能性は皆無だった。
「お嬢様の匂いが、しません!」
鳩尾への正拳一打。
屈強な傭兵は声を上げる間もなくその場に崩れ落ちた。
ふぅ、と息を吐きながら天音は突き出した拳を戻す。
「――あんまり、――揺らさないで」
「あら、ごめんなさい」
「――別に。――それより、供給源が場所が分かった」
唯優の言葉を聞き、天音はすぐに近場のコンテナへ身を隠す。
先ほど伸した男も隠ぺいのために引きずり込んだ。
「で。どこなの? 唯優ちゃん」
ん。と、急かす天音に応えるように唯優はパソコンのディスプレイを突き出す。
「――この港の沖合。――といっても、結構近くだけど。――その海上から出てる」
「船の上ってことね。それなら、さっき一隻見たわ」
「――船の上、敵一杯いるかも。――天音が壊すのは難しそう」
そんなことはない、と天音は反論しない。
來夢やエイザならともかく、自分にはそれほどの戦闘力はないことを、天音は理解していた。
変に気を遣わず、淡々と事実を述べてくれる唯優の存在がありがたくさえ感じる。
「それじゃあ、どうすればいいかしら」
「――パスワードを、――入手してほしい」
「パスワード?」
「――ハッキングの準備はできた。――パスワードがあれば、――無力化できる」
「つまり、盗んでくればいいのね」
コクリ、と唯優は小さく頷いた。
「――これは、――天音が一番勝率が高い」
ああ、そうだろうとも。
唯優がはっきりそう断言するのだから。
「任せなさい! それに――」
ちらり、と天音は伸びている傭兵に目をやり、いたずらっぽく笑った。
「――神様も味方してくれてるみたいよ?」




