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めいど・いん・みっしょん  作者: 阿月 結希


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19/26

♥19 みっしょん・いん・ちょこれ~と

 「おい! 大丈夫かよお前ら」


 獅子堂《ししどう》 彰《あきら》が崩壊した倉庫の入り口から飛び込んできた。


 「え? 獅子堂先輩……。どうして?」


 阿良々木《あららぎ》 愛彩《めい》は目を見開きながら声を上げる。


 「どうしてって、お前が攫われたから追ってきたんだよ。まぁ、助けたのはそっちのメイドさんたちだけど」


 「いえ――」


 獅子堂の言葉を、平利《ひょうり》 エイザは短く否定する。


 「獅子堂様があの場で私を諫めていただいていなければ、私は単独でこちらに乗り込んでいたことでしょう。お嬢様の身に危害が及ぶ可能性が高かったと思います」


 そこまで言うと、エイザは直立の姿勢のまま、深々と頭を下げた。


 社交挨拶としてではない。


 「獅子堂様、本当にありがとうございました。あなたのおかげで、お嬢様は今、こうしておられます」

 

 それは、エイザという一人の人間として、獅子堂に向けられた謝辞と謝罪の表れであった。


 「いや、だから俺は何も……」


 「――! みんな、伏せろ!」


 戦場《いくさば》 來夢《らいむ》が、叫ぶ。


 エイザは愛彩に覆いかぶさるように倒れ込み、來夢は獅子堂を抱えて瓦礫の後ろへと身を隠した。


 先ほどまで彼女たちがいた場所を、数本の青白い光が通過する。


 バチッと剥き出しの鉄筋が突如として帯電し、それに触れていた小伏《こふく》 天音《あまね》は急いでその手を引く。


 「痛っ! 何なの、あれ」


 「――おそらく、最近発表された――新型兵器。――高電圧の塊を飛ばすタイプ」


 佐繰《さぐり》 唯優《いゆ》の頓狂な発言に、一同は半信半疑に顔を見合わせる。


 「はっはぁー! 見たかよ。僕たちの新型兵器の威力! 観念して出てきたらどうだぁ!? 全員まとめて黒焦げにしてやるぜぇ」


 愛彩たちが身を隠す瓦礫の向こうで、酒々井《しすい》 幸一《こういち》は興奮気味に叫んだ。


 「どうやら、答え合わせは済んだようだが……。どうするよ、メイドさ……ん……」


 言いながら振り向く獅子堂の語尾が、か細く消える。


 彼の目の前には、殺気をみなぎらせる獅子が四体。


 「ほう。お嬢様を黒焦げに……ですか」


 「うふふ。これはこれは……」


 「マジで、あいつもう一回ぶん殴ってやるデス」


 「――死刑」


 メイドたちに気圧される獅子堂が視線をずらす。


 その線は同じく小刻みに震える愛彩と重なった。


 パンパンパン!


 突然響いた音の正体は、來夢が手を叩いた音。


 瞬間、四人のメイドらは激しくアイコンタクトを走らせる。


 ――手拍子三回は、「作戦立案、実行の合図」


 広い倉庫内に広がった手拍子の残響が消えるよりも早く。


 彼女たちは意図を理解し、行動に移した。


 「獅子堂様。どうやら敵は危険な武器を装備しているようです」


 「あ、あぁ。そうだな」


 急に來夢から話しかけられた獅子堂は、何とか薄い返事を返す。


 「――私たち、――対応で精一杯」


 「でも、お嬢様も守らないといけなくってぇ」


 「獅子堂さま、ここはひとつ、お力をお貸し願いたいデス」


 メイドたちは矢継ぎ早に言葉をつなぎ、最速で話を結論へ持っていく。


 「「「「お嬢様を、どうかよろしくお願いしますっ!!!!」」」」

 

 ブンッ、と。

 

 先ほどの青白い光が再び放たれる。


 「お嬢様! 失礼いたします」


 「へ? え? きゃっ!」


 來夢は愛彩の体を抱き起すと、獅子堂の下へ軽く背中を押した。


 咄嗟に、獅子堂は愛彩の体をその胸に収める。

 

 「獅子堂様! ――走って!」


 「お、おう! 任せとけ。お前らも気ぃつけろよな」


 來夢の有無を言わさぬ号令に、獅子堂は腹を括る。


 愛彩の手を握り、倉庫から全力で外に出た。


 「ちっ! 逃げやがった。おい、外の奴らにも連絡しろ。必ず、阿良々木 愛彩を僕の下に連れて来いと」


 「生死は?」


 「アライブ オンリーだよバカ!」


 狼狽する酒々井の言葉を背景に、來夢は静かに告げる。


 「さて――。それでは、オシオキを始めましょう」


 きらり、と。


 八つの眼光が炎を宿すように美しく輝いた。

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