♥17 みっしょん・いん・ちょこれ~と
(……ったく。あいつら、どこに行こうってんだ)
獅子堂 彰は学園の門へ向かう一団を追いかけていた。
途中、彼の追跡を阻むために何名かが襲い掛かってくる。
そのすべてを叩き伏せながら、獅子堂は足を止めない。
(この先の門。部外者にはセキュリティ上開けることができねぇはず……。手こずってる隙に追いついて――)
ギギギギ
獅子堂の目の前で、ゆっくりと門が開く。
その出来事は、獅子堂に驚きとある事実を突きつけた。
「……おいおい。まさか――」
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「学園内部の者の犯行でしょうね」
銃火器と重火器のメンテナンスをしながら、戦場 來夢は整然と述べる。
「んー。そうかしらぁ? 案外、学園のセキュリティなら、部外者も侵入できそうだけど……」
「――システムの誤作動。――起こすの、簡単」
「お前たちの常識で語るな。並みの組織じゃ普通はできん」
小伏 天音と佐繰 唯優の抗議を、來夢は一蹴する。
「それより、唯優。お嬢様の位置は特定できているのか」
「――問題ない。――エイザの報告通りの方角に――動いてる」
來夢と唯優の会話を横で聞いていた天音は小さく首をかしげる。
「お嬢様にGPSって……。それ、許可取ってるの?」
「――成長記録だから。――許可、いらない」
「そんなわけないでしょうに……」
呆れながら唯優の横顔に天音が呟くと同時。
ジャコン、と來夢が銃器の動作確認を終えた。
「さて、それじゃあそろそろ向かうとするか」
不意に、三人は体を後ろに押し付けられるような感覚を覚える。
最新鋭のヘリは、前のめりに速度を上げながら夜空の下を駆けた。
「――ん」
唯優が、小さく声を漏らす。
「――お嬢様の信号――速くなった。――多分、車」
「ということは、学園の外に出たってことねぇ」
「内部犯で決まりだな。しかし、一体どこに向かっている」
來夢と天音は唯優が操作する画面をのぞき込む。
そして、目的地の手がかりが無いと悟るや、小さく首を振った。
「――この道を――この方角に――その先の分かれ道は――」
両脇の二人を意に介さず、唯優は画面に向かいブツブツと独り言を漏らす。
ここは唯優の専門分野だと言いたげに、來夢と天音は、自分たちの武器を磨くことに専念することにした。
「――あ」
「唯優。どこに向かえばいいのか分かったのか」
「どこなの? 唯優ちゃん」
前のめりに詰めてくる二人に、唯優は簡潔に答える。
「――GPSの信号――消えた。――衝撃で壊れたか――気づかれたか」
「目的場所の特定は?」
來夢の問いかけに、唯優は静かに首を横に振る。
「――分からない」
唯優の手が小刻みに震える。
自分の力でお嬢様を救い出せるハズだった。
それがなんだ、たかだか車の揺れ一つで、簡単に見失ったかもしれない、だと。
それ以上に、もしGPSが発見されていたら、お嬢様の身はますます危険に――。
そっと、温かな感覚が手を包んだ。
俯いていた唯優が、顔を上げる。
赤と青のオッドアイ。
その双眸は優しく微笑む天音だけを捉えた。
「唯優ちゃん、落ち着いて。私は貴女を信じてるわ。その洞察と観察と考察の才を」
天音はチラリと來夢を見る。
唯優の背に向かい、來夢は力強く頷いた。
「だから、唯優ちゃん。私たちはどこに向かえばいい? ――貴女を、信じるわ」
――――――――――――。
唯優の脳が熱を帯びて動き出す。
まず想起するのはこの街の全形。
そこに主要道路から微かな私道までを網羅的に重ね合わせる。
(――この時間の交通量。追跡を恐れて渋滞は避けるルートを選ぶはず。)
(――市街地は発見のリスクの割に逃走経路が少ない。相手がすでに追手の存在を認知しているならなおさら、真っすぐ市街地への道は通らない)
(――となると、脇に逸れる道を走る。それは二本。でも、逆方向。山中への道か、海岸への道か)
(――どっち? ――どっち?)
パンッと唯優は自分の両頬を強く叩く。
決意を込めた眼差しで、彼女は來夢を見つめた。
「――來夢。――お嬢様が向かったのは……」
ガバッと、唯優の言葉を聞いた來夢は自動操縦がかかった運転席へ飛び移る。
「信じるぞ、唯優! 共にお嬢様を救い出そう!」
來夢は力いっぱい、ヘリの舵を切った。




