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呪術師は勇者になれない  作者: 菱影代理
第5章:悪魔竜
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第506話 蚊帳の外の無職達

「おい、何か大聖堂の方が大変なことになってるらしいぜ」

「ああ、そのようだ」

「わぁあ……」


 清浄殿潜入のための露払い、という楽なお仕事を終えた僕らは、半ドンで切り上げ管理局へと帰還した。そして戻って来た頃には、シグルーン大聖堂の大騒ぎは、西のサウスバロン支部にも伝わっており、噂話と緊急速報で大いに盛り上がっていた。


 嫌でも話は耳に入って来るので、何事かとメンバー達も話し込んでいる。なんだかんだで、君らも仲良くなったよね。


「とりあえず、お昼食べに行こうよ」

「もしかしてボスぅ、大聖堂の件に一枚噛んでるんすか……?」

「僕らずっと一緒にいたじゃん。一体どうやって、ダンジョンの中から地上の出来事に関われるって言うんだい」

「だが……フーマ、もう一人お前がいたな」


 通路で本物の僕とすれ違ったのはわざとだ。そろそろ顔見せもしておこうと思って。


「まぁ、その辺もゆっくり食べながら話すよ」


 そうして騒がしい管理局を素知らぬ顔で後にして、シルヴァと出会った行きつけの大衆食堂へと向かう。安さと量で勝負の底辺向けの店だけど、このジャンクな味付けも嫌いじゃない。フライドされたチキンとポテトとオニオンがあれば、みんなハッピーなのさ。

 昼時で混雑している店内は、それなりに騒々しく、聞き耳を立てられる心配はない。聞かれても困らない範囲でしか話はしないけれど。


 各々の注文が届き、ひとまず腹を落ち着かせたところで、僕は彼らに説明を始めた。


「端的に言うと、向こうが本隊で、僕らは別動隊ってとこ」

「そうだろうとは、思った。もう一人のお前と、それについていた二人……とても尋常な気配では無かった。少なくとも、俺達では手も足もでない格上だ」

「マジか、アイツらそんな強ぇのかよ」

「お願いだから喧嘩しないでね」


 身内同士で潰し合いなんて御免だよ。

 しかし、やっぱりシルヴァは見る目が鋭いな。リザもジェラルドも、僕が気にするなと言ったから警戒感はかなり抑えていたけれど、それでも二人の強さを察している。


「ダンジョンの内部から潜入するような場所と言えば、限られる。そして、ちょうど大聖堂で起こった騒ぎ……フーマが発見した、あの隠し通路は、そこに繋がっていたということか」

「えっ、そうなの!? 秘密の隠しエリアじゃねーのかよ!」


 ウラガ、図体は立派になっても頭の方は……いやまぁ、これで彼は15歳の少年で、おまけにロクな教育も受けずに育った典型的なスラムのガキだ。むしろ、底辺育ちとは思えないほど、しっかりした倫理観を持った、真っ直ぐな少年である。

 御母上の育て方が、よほど良かったと見える。


「実のところ、この『ジョブレス・オブリージュ』を結成した目的は、今日の仕事で果たされたんだ。もしも君達がこれ以上、僕と関わり合いになりたくないと言うなら、二度とこの『風魔』は現れないと約束しよう」


 レムと呪物の奪還は成功。それにアルビオンへの帰還もついに成し遂げた。

 ここまで来れば、『ジョブレス・オブリージュ』は必要不可欠な駒ではない。と言うよりも、情が湧きすぎてしまった自覚がある。ハピナの夢を応援するのと同じだ。

 ここから先は、彼ら自身の冒険を自由にしてゆく権利がある。

 僕が与えた呪印の力も、黒髪教会を頼れば補給できるし、トーナがもう少し成長すれば、自前での維持だけでなく、多少のカスタマイズすることもできるだろう。


 だから、彼らが望むならば、と思ってそう切り出した。


「フーマ、前にも言ったはずだ。俺はすでに、お前に剣を預けた」

「そうだぜボス、そんな薄情なこと言うなよぉ! 俺バカだけど、力は強くなってっから!」

「わあぁ……うぃ……っです」


 シルヴァ、ウラガ、トーナ、僕の見出した才能の原石は、そう強く応えてくれた。

 本当は僕だって、もっと見たいさ。君達を磨いて、磨いて、磨き続けて、どれほどの輝きを放つか。


「分かった、それならしばしの間、契約は更新という形にしよう」

「ふっ、随分とツレない言い方だな」

「逃げ道はいつも用意しておくものさ」


 これからの状況次第で、別動隊でも危ない橋を渡ることはあるかもしれないし。本当にいざとなった時、僕とは関係を切ってどこへでも逃げられるよう、準備もしておくのさ。

 彼らは僕が巻き込んだ。だから覚悟なんて問わない。ただその意志がある限り、僕と一緒に歩んでくれればそれでいい。


「それじゃあ、次の目的は、ハピナを『勇星十字団ブレイブクロス』に入れるだけの成果を上げること。だから、明日からはより深層にも挑戦していくよ。頑張ろうね」

「望むところだ」

「しゃあ、やってやるぜぇ!」

「おぉーぁ……」





 ◇◇◇


 ヴァンハイトでのフルヘルガー攻略を終え、第四階層の探索が進む、ある日のことである。

 ニューホープ農園の表向きの主たる会長マルコムは、多忙を極めていた。


 元より、エレメンタルマウンテンはアストリアでは名の通ったコーヒーブランドである。それを継ぐだけでも大変なことなのだが、農園は今やディアナ人達の手によって、大農場と錬成工房と秘密の軍事基地が組み合わさった、カオスな場所と化していた。


 それでいて、そのどれもが上手く回っているから不思議なものだ。

 泥芋やら泥豆やら、ゴーマ由来の謎の作物を栽培し始めた時はどうなることかと思ったが、信じられない生育速度と収穫量を誇り、増え続ける一方のディアナ人解放奴隷達の食料を支えている。

 農園のディアナ人が全員で毎日腹いっぱい食べても消費しきれないだけの備蓄が早々に積み上がり、これ以上どうするのかと思えば、家畜用の飼料に転用するだけでなく、ショートブレッドのような携帯食料を筆頭に、商品開発が進み、出来上がった頃には『ピクシーマート』とかいう小売店が勝手に開店していた。


 このピクシーマートは、マルコムがオーナーではない。『黒髪教会』という小太郎がヴァンハイトで立ち上げたクランの経営である。

 しかし農園もクランも、どちらも小太郎の支配下だ。

 小太郎が農園で次々とモノを生産し続ける一方、それらの生産物を商品としてアストリアで売り出すための卸先を、自ら用意したのだと気づいたのは、実際に大量の商品が農園から最初に発送された時だった。


 そして、配送業者も自前であった。

 馬の代わりに火牛が巨大なコンテナを引く、立派な貨物牛車が何台もやって来たものだ。彼らが駅まで、あるいは現地まで輸送を担当する。

 尚、火牛の輓獣という特徴がありながら、名前は何故か『白猫ムサシの特急便』で、コンテナには生意気な目つきの白猫のマスコットが大きく描かれていた。


 そうして、イーストホープ・ヴァンハイト間は自前の配送と貨物列車の利用によって、滞りなくピクシーマートへと商品が供給される体制が整えられていた。

 ピクシーマートは大衆向けの小売店であり、一応メインとなるのは、小太郎の独自レシピである量産型ポーションである『リポーション』を筆頭とした、各種医薬品。

 ならば薬屋かと言えば、それだけとも言い切れない。

 何故なら店には、泥芋泥豆由来の食料品からコーヒーなどの嗜好品、錬成工房での流れ作業で次々と出来上がって来る日用雑貨、なども置かれている。農園で作っていない商品を、他所から仕入れたりもしているようだが……結果的に、一般人が生活するのに必要なモノが一通り揃えられた。


 豊富な品揃えの小売店は、あれば便利に決まっているが、よほど力のある大店でなければ実現できない。そして作ったとしても、一等地に大きく建てた複合型大商店となる。

 勿論、そんな洒落た大型店はイーストホープなどという東のド田舎にはない。東部ではヴァンハイトを始め、幾つかの都市にだけあるようなものだ。


 しかし中型の店舗、かつリーズナブルな価格帯で、生活必需品を一通り揃えることが出来たのは、仕入れが実質タダ同然のニューホープ農園があってこそ。

 ここで働くディアナ人はすでに奴隷ではないが、賃金は支払われていない。生活の全てが補償されている、と言えば聞こえはいいが、実態は待遇がいいだけの奴隷に過ぎない。


 それでもディアナ人達が小太郎を御子様と崇め奉り、奴隷時代とは打って変わって誰もが熱心に日々の仕事に打ち込む士気の高さは、ただの宗教的権威だけではありえない。

 マルコムの目から見ても、小太郎の人心掌握は悪魔的であり、御子の立場を存分に使って人心を慰撫し、それでいて美味な食事と、菓子や酒の嗜好品も用意し、定期的な休息日も設定し、さらにはたまに催し物なども開催し、不満の出にくい生活水準を維持させている。

 正直、最近ずっと仕事に忙殺されているマルコムから見ても、明るい未来への希望を抱きながら、ただ目の前の仕事に打ち込み、ほどほどの時間で切り上げて美味い飯を食って寝る、そんな生活をしている彼らの方が幸せなのではないか、と思う気持ちもある。


 そう、小太郎がピクシーマートという、コーヒー以外の売り上げが新たに生み出されたことで、仕事の量は激増したのだ。

 すでにヴァンハイトでピクシーマートは好評を博しており、商品の供給を滞らせるワケにはいかない。もう農園内で消費するだけだから、何の責任も負わずに好きなように作っていれば良い環境では無くなったのだ。


 一度、軌道に乗った仕事は維持されなければならない。売上が好調ならば尚更。モノによっては早急な増産も必要となってくる。

 最早、マルコム一人で全てを管理するのは不可能な業務量となっていた。


 その管理がパンクする寸前に送り込まれてきたのが、仕事は出来るがやけにガラの悪い連中である。

 酒場にたむろする冒険者崩れのような風貌ではなく、シグルーンの暗黒街で跋扈していそうな、身なりだけはやたらといい、いわゆるインテリギャングのような奴らだ。


 実際、聞けば連中の半分はギャングで、もう半分はギャング相手に商売していた違法な闇商人だという。そして全員、ヘマをやらかしたり、ライバルに陥れられたりして、落とし前をつけさせられた過去を持つ。

 地位と信用に手足など体の一部を失い、這い上がれる余地も無くスラムの闇に沈んでいた、この世の最底辺というべき者達を掬い上げてきたのが、黒髪教会の御子だ。


 彼らは小太郎に恩がある。そして何より、いつでも与えられた手足を失わせることもできる。五体満足の体を望む限り、彼らは裏切れない。

 そして小太郎は、経歴は真っ黒でも、それなりに学問を修め商売の経験とアストリア社会の知識を持つ人材を、遊ばせるはずがない。黒髪教会が抱える貴重なインテリ層を、マルコムの下へ送り込んだのだ。


 お陰様で、ニューホープ農園は事業規模を拡大しながら、回り続けている。小太郎の見立て通り、彼らは仕事が出来た。

 ただしガラは悪い。一目で堅気じゃないと分かる、派手なスーツとか着ているし。懐には当然のように拳銃を忍ばせ、首筋や袖からは呪印のタトゥーが覗く。

 かつてはウィンストン一家が住まう、典型的な大農園のお屋敷といった風情だったのが、今ではどんなギャングの大ボスが住んでいるんだ、という雰囲気。いつドンパチ始まってもおかしくない、そんな緊張感の漂う職場と化した執務室で、マルコムは今日も己の職務に励んでいたところ、トラブルは向こうからやって来た。


「マルコム君、ヴァンハイトに土地買って!」

「……はぁ?」


 溜息のような返事が漏れる。まーた何か始まったよ、とマルコムには面倒事の予感しかしなかった。

 そんな彼の心中など素知らぬ顔で、今日も胸のデカいメイドを連れてご満悦の御子様は笑顔で言い放つ。


「凄い穴場があるんだよねぇ、ここに目をつけてるのまだ僕だけだから、今が買いなんだ」


 うわ、詳しく聞きたくない怪しい口上が出てきたな、と心底思うが、詳細を聞かなければ、またどんな新事業が生えて来るか分かったものではない。

 ここで何も聞かない、という選択肢は会長たるマルコムには無かった。


「それは一体、どんな素晴らしい土地なんですか。金でも採れるとか?」

「惜しい。第四階層の鉱脈直通だよ」

「えっ、それってダンジョンの入口じゃあ……」


 ヴァンハイトのように大迷宮やそれに準じる規模の大きなダンジョンの付近には、管理局でも管理しきれない入口が点在している。

 その入口がある土地を所有することは、アストリアの法で禁じられてはいない。強いクランや企業の中には、竜災時のリスクを飲んででも、その場所を占有していることもある。無論、何の備えも無くその場に住めば、竜災でなくてもはぐれモンスターが入口から出て来るようなことがあれば、それだけで惨劇が起こるだろう。

 一般人には無縁な場所。そしてマルコムは天職も何もなく、己の頭脳と商才のみを頼りとする、ただの商売人に過ぎない。常識的な彼の価値観からすると、ダンジョンの入口が開いた土地を所有するなど、リスクの方が大きすぎてタダでも御免といったところである。


「だからイイんじゃあないか」


 そして、やたら自信満々に言い切る小太郎は、一般人では無かった。

 そもそもこんな呪われたガキが一体どこから湧いてきたのか……実は本物の地獄の底から何かの手違いで地上に出てきた悪魔ではないかと、マルコムは思う。つまり、アストリアの常識など、この御子様の前には通用しないのだ。


「まずさ、ウチの工房も結構大きくなってきたじゃん?」

「ええ、お陰様で」

「エレメンタル山脈で素材集めるのも限度あるし、流石にそろそろ自前で光石調達できる鉱脈とか欲しいじゃん?」

「そんな、そろそろ家を買うか、みたいな感覚で鉱山は手に入りませんが」

「それが手に入るのがダンジョンという場所じゃないか。僕らが知恵と勇気と実力で切り開いた『無限煉獄』の第四階層だよ、未開の美味しい場所を先取りするくらいのことはしないと」

「それはまぁ、仰る通りで……」


 小太郎の言い分は理解できる。光石素材を自前で賄えば、原料価格の上下や仕入れの量で頭を悩ませる必要はない。産出量によっては、他所へ販売という新たな商売が生えて来るので、それはそれで悩ましいことになりそうだが。


 ともかく、ダンジョン入口というリスクを飲めるならば、これだけで十分な利益は見込める。そして今やニューホープ農園にも黒髪教会にも、相応の戦力が整いつつある。

 ならば軍事企業のように、堂々と力でその地を抑えることも可能かもしれない。


「でもね、一番の理由は他にあるんだ」

「鉱脈に勝る本命があるとは……それは一体?」

「アルビオン大迷宮に通じている」

「アルビオン……? そんな名前の大迷宮は、アストリアには――――いや、もしかして」


 シグルーンの名門校に通っていたマルコムは、専門でなくともそこらの者よりは博識であり、アストリアの歴史も一通り修めている。

 歴史講義の中で語られた、かつてアストリアが領有を断念した、幻の大迷宮の存在を思い出した。

 遥か東の海の果てにある絶海の島にあると言われる、その大迷宮の名は『アルビオン』。


「まさか、本当に幻の大迷宮に……すでにそこの探索は始まっているのですか!?」

「いや、こっちからは通じてないから、まだ行けないかな」

「では、何故そこがアルビオンに通じていると分かるのですか」

「そりゃあ、山田君がそっから出てきたからね。今は一方通行なだけで、通じているのは間違いないから」

「ヤムダ……ああ、ヴァンハイトのヤムダゲインですか」


 マルコムもその名は知っている。すでに第四階層解放の英雄の一人として、『守護戦士』ヤムダゲインの名は知れ渡っている。今ではヴァンハイトを代表する冒険者だが……何故か最初から小太郎とヤムダゲインが懇意にしていた、という情報は密かに耳に入っている。


 そして今、小太郎が自ら「ヤムダゲインはアルビオンから来た」と言った。

 それは翻って、小太郎もまたどこから来たのか、という答えを語っていた。


「そ、それじゃあ御子様もアルビオンから……?」

「その話、詳しく聞きたい?」

「……遠慮しておきます」


 これ以上、深淵を覗くべきではないと悟ったマルコムは、ただの商売人としては実に聡明な判断であっただろう。




◇◇◇


「――――ふぅん、それで張り切って装備作ってるってワケ」

「まぁ、目立たない範囲でね」


 無職の仲間達との絆をもって冒険者パーティを続けることに決まった傍ら、アルビオンにいる僕本体は、せっせと装備製作に勤しんでいた。

 彼らの新装備を用立てするのも目的だけれど、単純にこれまでのフラストレーションも溜まっていた。アルビオンにさえいれば、素材も設備も潤沢に揃っていたのに……と思う事が何度あったことか。


 しかしそんなお悩みとも、今日でおさらば。ああ、素晴らしき我がアルビオン。初めて来た時は殺し合いしてでも脱出しようと争ったものだけれど、今では実家のような安心感である。


「それで、杏子には一つ頼みがあるんだけど」

「なになに、言ってみー?」


 特に意味も無くギューっとしてくる、この距離感。これだよこれ、やっぱ堂々とイチャイチャできるっていいよね。


「ニューホープ農園で力を貸して欲しい」

「それってコーヒー作ってるとこだよね」

「うん、アストリアでは現状、最大規模の拠点だ」


 献身的なディアナ人達によって、農園は順調に拡大し、生産力と戦力を蓄えているが……それでも足りていないところは多い。

 特に難航しているのは、エレメンタル山脈を超えてディアナ領へと至るルートの開拓だ。


 山頂の主として居座っていた大宝岩亀こそ討伐を果たしたが、単純にあの山は広大だ。道を敷くのも一苦労。というか道路敷設なんてインフラ整備の代表格、国がやるべきもので、個人でやるようなもんじゃない。

 けれど杏子の『土魔術師』としての腕前があれば、道路なんてアスファルトでも石畳でも、自由自在。伊達にヤマタノオロチ攻略でクソデカい全周囲塹壕を掘っちゃいない。


 すでにディアナの御子、アーセ氏族のレイナーレはこちらの味方へと引き込んだ。彼女が分身で自由に動ける程度に習熟できれば、ディアナへの工作活動もすぐに始めることが出来る。

 山越えのルート開拓が遅れれば、その分だけディアナでの活動にも遅れが生じる。僕としても、出来るだけ早くディアナを平定して味方勢力として利用できるようにしておきたい。


「はぁー、ようやくウチも外に出れるのかー」

「楽しみにしててよ、僕は御子様だからね、農園を挙げて歓迎するから」

「てか、転移はホントに大丈夫なん?」

「そのための準備もバッチリだから」


 山田が小鳥遊に飛ばされて出た先であった、ヴァンハイト近郊の寂れた遺跡。その場所はすでにマルコムに頼んで、農園名義で買い取ってある。

 周囲には何もない山野でしか無いけれど、少々歩けば街道に出れるので、そう僻地というほどではない。その好立地なお陰で、山田も早々にリカルド氏と出会えたワケだが。

 そのリカルド氏はゴーマに襲われていたというので、周辺の駆除も徹底的に行っている。ここは人間様の土地、ゴーマ風情には過ぎた場所、二度と近寄るんじゃねぇ。


 そうして、あの場所はすでに『無限煉獄』の妖精神社と繋がり、第四階層で確保した鉱脈から産出される光石素材を、日々送り込む中継地として活動している。

 そこに僕がアルビオンに戻ったことで、こちら側から転移が通じるよう再設定すれば……晴れて、こっちとあっちの双方向での転移が可能となったワケだ。


 転移を開通する時は、アルビオン側からどことも知れない出口を漫然と探すよりも、アストリア側からの入口を見つけた上で、そこを目掛けて転移を開通させるのが一番確実みたいだ。

 恐らく、下川、上田、野々宮さん、葉山君、とランダム転移された場所はそれぞれ異なっているはず。飛ばされた先の現地を発見できれば、今回と同じようにアルビオン側から転移を通せるようになると思うけれど……残念ながら、今でも他のクラスメイト達の行方は掴めていない。


 ともかく、これでようやく、僕は自由にアルビオンとアストリアを行き来できる転移ルートを確保することが出来たワケだ。

 本当にどうしようも無くなった時、みんな連れてアルビオンに避難する、という選択肢がとれるだけで、かなり気楽になるよ。やっぱり、常に逃げ道は確保しておかないとね。


「これからはアルビオンの機能もフル稼働で戦力を整えられる。腕がなるね」

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― 新着の感想 ―
>実は本物の地獄の底から何かの手違いで地上に出てきた悪魔ではないかと ククク...ひどい言われようだな まぁ事実だからしょうがないけど 実際コイツ邪神の使徒ですからね。 契約はキチンと守るとか、ウィ…
何故かここで改めて、クラスメイトが減ってしまったをだな、と思ってしまった
アルビオンの機能無しでここまで経済に食い込んでるの凄すぎる... ここからアルビオンの機能全開とか鬼に金棒どころじゃねーだろ。ワクワクするね。
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