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呪術師は勇者になれない  作者: 菱影代理
第5章:悪魔竜
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第504話 ヒーラーの役目(1)

「新人冒険者の基本は、自給自足だ」


 第一階層を回っただけなので、大した額にはならなかったなけなしの報酬を握りしめ、僕らはシルヴァ行きつけの大衆食堂へとやって来た。

 そこで僕は本日の収穫物を広げながら、まだ新人の多いメンバーに簡単なレクチャーもしていく。


「ではハピナさんに問題です。コレは何でしょうか」

「はい! 薬草です!」

「ではコレは?」

「それも薬草です!」

「コッチは?」

「それも薬草? なのです!」

「はい皆さん、これが姉貴や兄貴に頼り切って、基本的な採取素材の名前すら覚えてない、ランク3冒険者の姿です」

「ええぇー、全部同じじゃないですかぁ」

「違う、よく見ろ!」


 と、僕は同じような緑の草葉を、一種類ずつ懇切丁寧に説明してやった。


「ううぅ……ホントにみんな、こんなの分かって摘んでるのですかぁ?」

「じゃあシルヴァ、これ何か分かる?」

「……天日草」

「トーナ、これは」

「そぁ……キュワァ……」

「ほらな、シルヴァはこう見えて冒険者の基礎はみっちり積んでるし、トーナは学生としてしっかり勉強して覚えているんだよ」

「トーナちゃんはホントに正解してたのですか!?」

「してんだよ! どうせお前は採取クエやる度に姉貴から、コレと同じモノを採ってきてね、って現物見せられてからやってたんだろうが!」

「ど、どうしてソレを!?」

「ヒーラーが薬草知識も無くてどうすんだよ!」

「ぴぃぇええええ……」


 と、ハピナの至らないところをひとしきり突いた後、話を戻す。


「冒険者は体が資本。戦う以上、負傷は避けられないけれど、それを癒すために、薬なり魔法なり、回復手段は必須だ。けれど、そう都合よく『治癒術士』はパーティにいないし、ポーションも高額だ」


 治癒魔法の存在するこの世界では、医者と同等かそれ以上に治癒術士など、治癒魔法の使い手は扱いが良い。冒険者を始めるような治癒魔法使いは割とレアな部類である。

 だって治癒魔法は冒険者だけでなく、老若男女、貴賤の別なく、人間誰もが必要とするものだ。冒険者としてダンジョンの最前線に出張るより、病院のような施設に常駐してくれている方が、多くの人にとって都合がいい。

 病院、治療院、教会、と治癒魔法を受けられる医療施設はアストリアには様々あるのだが、どこであっても腕の良い治癒魔法使いは重宝される。


 駆け出しの冒険者なら、負傷して戻って来ればギルド周辺でその手の患者をメインにしている、リーズナブルな価格帯の治癒魔法を提供する医療施設を利用することが多い。

 だが、それもあくまで即金で何とか払える価格設定というだけで、毎日お世話になってればすぐに破産するだろう。故に、ここのお世話になるのは、薬草一枚で何とかなるようなカスリ傷ではなく、明日の探索に支障が出るレベルの大怪我をした時に限る。


 そんな治癒魔法のお世話になるよりは安価で済むのが、低価格のポーションや傷薬、各種解毒薬などの医薬品だ。

 勿論、これらも決して安い金額ではない。効果が高ければお値段も比例する。特に古代の純正品である本物ポーションなんて、店頭にすら並ばない。

 業界最安値を謳う最低価格帯のポーションでさえ、あまりに常用していては、これもまたすぐに赤字となってしまう。


 なので新人時代は無理せず怪我もせず、というのが一番なのだが……そもそも弱いのが新人。ゴーマ相手に後れをとってもおかしくない腕前が普通なので、戦って怪我するなというのも無理な話。まずは命があるだけ儲けもの。生き残っていれば上等だ。


「だから薬は自前で用意できるのが一番。勿論、素人調合は危ないから、薬師に作ってもらう方がいい。素材持ち込みで作ってもらえば、店売り品より安く、効果のあるものを仕入れることも可能――――だから、薬草採取もある程度、目利きできて、自分達で使う分くらいは、探索のついでで確保できると良い」

「な、なるほどぉ……」

「そしてウチには、調合の出来るメンバーがすでにいる」

「……ぁい」


 錬成が出来れば調合も出来る。というか、トーナは学校で薬学科に属しているのだ。

 知識と器用さがあれば、大した魔法が使えずとも魔法薬の調合は可能。自らの魔法を封じる製法は無理でも、素材そのものが魔力を持ち、様々な組み合わせや加工によって魔法効果を高める薬効式は作れる。


 魔力の才が乏しい彼女にとっては、他に選択肢も無かったことだろう。

 けれど半端な攻撃魔法が使えるよりも、薬品調合の知識と技術がある方が、このパーティではよほど役に立つ。


「薬はトーナが作ってくれる。そのための素材をみんなでしっかり集めるように」

「はーい」


 と、ハピナが呑気な返事をしているが、ここまでは前提の話である。


「ここからが本題だ。まず、ハピナにはランク3に相応しいヒーラーになってもらう。ソロ活動で少しは成長したようだけど、肝心のいざって時に仲間を即座に癒せる祈祷やスキルは、習得できたのか?」

「あっ……それは……」


 できてるワケないよなぁ? もしそんな便利な治癒スキルを習得できていれば、何かと生傷が絶えないウラガを率先して回復しているからね。

 でも今日の探索において、ウラガが負ったダメージは全て、肉体による自然回復で癒していた。


 ウラガの体は生身と巨人化の半々なので、魔力がある限りはかなりの早さで傷が癒える。肉体の再生にも魔力が使用されるよう、呪印は設計してあるし。HP自動回復のパッシブスキルみたいなものだ。

 さらにハピナの『豊穣祈願』で自然治癒力が強化されれば、ウラガはポーションいらずの立派な肉盾である。


 だから多少の出血を強いられても、回復サポートは要らないのだが……今日がパーティ初のハピナは、ウラガの自動回復性能など知っているはずがない。

 ゴーヴ戦士とノーガードでやり合って斬られた時など、ハピナに回復手段があれば絶対に使ったはずなのだ。

 そういう回復チャンスは幾度もあったにも関わらず、ハピナのやったことは、精々が『豊穣祈願』が途切れないようにしていたくらい。


 つまりヒーラーとしては、『大地賛歌』が全滅した時から、まるで成長していないのだ。


「だ、だってぇ……」

「便利な即効性の治癒の祈祷を授けてくれない、神様が悪いの?」

「うううぅ……ハピナが悪いのですぅ……」


 そうだよなぁ、我々のような凡愚に天職を授けて下さる神様が悪い、などとは口が裂けたって言えないよなぁ!

 天職の力は絶大だが、発現するスキルは天からの授かりもの。新しい力、欲しい力があるならば、自らそれを掴みに行かねばならない。たとえスキルが発現しなくとも、天職を持っている時点で才能は保証されているのだ。すでに十分過ぎるほど恵まれている。


「『豊穣祈願』が元々は農耕用だってことは、ハピナが一番理解してることだろ。この祈祷を伸ばすことそのものは良いけど、コレだけに回復を頼っている内は、あの頃と何も変わらない」

「でもぉ、ハピナだって、治癒魔法はずーっと勉強しているのです……」


 それはそうだろう。何も努力していない、とは僕も言わないさ。

 ハピナが初歩の『微回復レッサーヒール』だけでも習得しようと練習してるとこ見たことあるし、昔からやっていたことも、姉貴から聞いている。だが残念ながら、その努力は今をもっても実っていない。


 ハピナは魔力量は結構あるし、『灯火トーチ』など生活レベルの魔法なんかも幾つか習得している。なので全く魔法の才能が無い、というワケではないのだが……それでも『微回復レッサーヒール』さえ未だ習得できずにいるのは、治癒魔法に関しては才能無し、ということに他ならない。なまじ半端に才能ある分、こういうのは余計に悔しいだろう。


 そういう気持ち、僕も少しは分かるよ。絶対こっち方面の能力だろうと思ってスキルツリーを伸ばした結果、一番欲しいスキルが別の系統だったことをビルド完成寸前で知った時とか。こういうコトがあるから、事前に攻略情報仕入れたくなっちゃうんだよね。


「その努力は認めるけど、残念ながら僕らも『勇星十字団ブレイブクロス』も、それが実を結ぶまで待ってはいられない。パーティ組んでダンジョン潜ってる以上、今すぐ実戦レベルで回復をこなしてくれないと」

「それが出来れば、こんなに悩んでいないですよっ!」

「そんなハピナのために、新しい装備を用意したんだ」


 テレレッテレー、とばかりに都合よく新装備を取り出してやる。

 一見すると、コンパクトな元折れ式の擲弾発射機グレネートランチャー。ストックはなく、グリップに太い筒がくっついたような、シンプルな形状だ。

 けれど中身はここ最近の研究成果を詰め込んだ、立派な魔法武器である。


「コイツは『メディカノン』。簡単に言えば、ポーションをぶっ放すブラスターだ」


 元々、このテの発射機は『エアランチャー』として実用化しており、僕も実戦で使っている。なので発射機としての性能は実に堅実なモノ。

 そこを回復用に特化させたのが、この『メディカノン』である。

 デザインも回復用らしく、白と緑のツートンカラーにしておいた。


 本来、弾を装填するためのシリンダーは、液状のポーションを入れるためのボトルになっている。エアーウォーターガンみたいな感じ。

 ただ流石にポーションをそのまま水鉄砲みたいに撃ち出すワケではない。


 コレの肝はハピナの魔力を使う前提で、そこそこの魔力消費によって、内部に刻んだ薬効強化系の術式で効果を高めつつ、複数の発射方式に対応させていること。

 基本は単体用に、圧縮した球状で撃ち出す。他にシャワーのような拡散型や、霧状の散布型などなど、状況に応じて思い通りの発射ができるようにしておいた。


 勿論、霧状にすれば効果は薄まるし、圧縮すれば高まる。撃ち出した量の分だけ、装填したポーションも減る。

 けれど、ボトルに入れる薬液を変更すれば、解毒薬や各種の状態異常回復にも対応ができる。


 使い方を任意である程度の変更が効くのは、治癒魔法を使うのと似たような感じだ。ハピナには、いつか本物の治癒魔法か、それに準ずる治癒系祈祷を覚えた時に、それをどう実戦で上手く扱うか、という感覚をポーション発射式の『メディカノン』で今の内から養うことが出来るのだ。

 将来を見越したヒーラーの練習にもなるし、即戦力の回復能力も発揮できる、一石二鳥の魔法武器。ただし本体の僕が設計開発した一点モノのオーダーメイド、お値段は自分でもちょっと考えたくない。

 頼むぞハピナ、お値段以上それ以上ってとこ、ちゃんと見せてくれよ。


「わぁーっ、やっぱりコタローは何でもできるのですぅ!」

「何でも出来るからって、何でも与えられると思うなよ」

「施しに感謝いたします。善行を積む貴方に、地母神のご加護がありますように」

「これは施しじゃなくて貸しだから、勘違いしないでよね」

「それって……どれくらいになるのです……?」

「聞かない方がいいよ」


 僕の解答に、新しい玩具を与えられた子供の顔から、落とした瞬間破産が確定するお高い骨董品を受け取った顔つきに代わりながら、ハピナはメディカノンを手にした。


「予備の弾倉、もといボトルは2本分だ」


 ボトルはおおよそ500ミリペットボトルサイズ。それでいて薬液を保存し、戦闘にも耐えられる頑丈設計となれば、実質的な重量はタンブラーのような重さとなる。なので予備は2本、装填分も含めれば、1.5リットル分もの重量となるので、ハピナにこれ以上持たせるのは、探索に支障をきたす。

 とは言え、トーナも補充用のボトルは持たせているから、弾切れすることは無いだろう。というか、この面子で弾切れするくらい治癒しまくる状況なら、死ぬ気で逃げの一択だけど。


「ダンジョンから帰ったら、予備の分は必ずトーナに預けること。装填してあるのは、空じゃない限りはそのままにしといた方がいいかな。世の中、何が起こるか分からないからね」


 メディカノンで使うポーションの製作も、トーナに一任している。勿論、レシピは信頼と実績のリポーション。

 彼女の腕前と簡易錬成陣があれば、問題なく作れる。材料も大半は浅い階層で入手できる採取素材中心。パーティ内だけで賄えるようにもしておいたのだ。


 とは言え、いざという時のための命綱として、お高いポーションボトルも一本は用意してあるけど。コレに頼るような危機に陥らないよう、このパーティでは気をつけたい。


「それと最後に、メディカノンを使うにあたって大事なことを説明しておく」

「はい!」

「使う時は、メディーック! と叫ぶように」




 ◇◇◇


「メディーック!!」


 今日も元気にハピナの特に意味はない回復絶叫が轟く。

 狼型モンスターの群れに集られて満身創痍と化していたウラガだったが、ハピナの放ったメディカノンの一撃によって、急速に傷が再生。あっという間に傷口が塞がり出血が止まる……だけではない。呪印を通して魔力がチャージされ、さらには短時間かつ僅かながらも、身体能力と治癒力の強化も付与された。


 勿論、リポーションにそんな追加効果など無い。メディカノンでどれだけ圧縮して撃ち出そうが、元の効果を超えることは決して無い……無いのだが、破格のバフ効果が付与されているのは、ハピナの祈祷によるものだ。


『青天快気』:母なる大地の神へ捧げる祈祷。傷病の治癒は、古来より人々が祈った原初の願いが一つ。傷付き倒れ、大病に伏した、その時にこそ失われたものの大きさを知る。在りし日に青空の下を駆け抜けた健やかなる姿を、地母神の御子が祈る。


 なんとハピナのヤツ、ちょっとメディカノンでヒーラーの真似事をし始めた途端に、この治癒系祈祷を習得したのだ。

 流石はリザも一目で地母神の御子と認める加護の厚さと言うべきか。地母神様、これ以上甘やかさないでもらえます?


 あまりにも都合よく欲しい効果の新祈祷をピンポイントで授かったハピナには、嫉妬交じりの感情も湧くものの、あるモノは何でも使うのが僕のポリシーであり、ルインヒルデ様の教え、教義でもある。地母神様に感謝の気持ちを捧げて、ありがたく祈祷の恩恵に僕らは預かっている真っ最中であった。


「メディーック! シャワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 さながら日曜朝の魔法少女が必殺魔法を放つかの如き、可愛いアニメ声で気合の入った技名シャウトを無意味に響かせつつ、ハピナが全体回復の霧状散布を行う。

 ああぁー魔力が体に沁みるんじゃあ……と、分身の僕でも心地よさを感じる、治癒促進と魔力回復効果がパーティ全員に広がってゆく。


 本当に凄い効果だ。一体、リポーションの元の効果の何倍まで強化されているのやら。

 まずリポーションに『豊穣祈願』をかけるだけでも、治癒力増大の効果が出ている。そこからさらに『青天快気』を重ねれば、それ以上の治癒力増大のみならず、回復させたい対象のみに効果を及ぼす、魔法的な選択効果まで発揮されるのだ。

 恐らく、メディカノンで放つのはリポーションではなく、ハピナの治癒祈祷、という扱いに変わっているのだと思われる。だから自分が祈った相手にだけ、回復効果が届く。

 これで『青天快気』が無ければ、ハピナはウラガに噛みつく狼ごと回復させたことになっていただろう。


 お陰でピンチと見れば何も考えずに回復ぶっ放せるお手軽ヒーラーと化している。そんなイージーモードでええんか、と思うものの……今はイージーで良かったと心底実感したね。


 今回は流石に遭遇した敵の数が多すぎた。あのシルヴァでさえ、物量に押されて多少の手傷を負っていた。分身の僕も我が身を盾にトーナを守って奮戦だ。

 正直、ハピナがヒーラーとして開花してくれて助かった。メディカノンと祈祷の回復サポートが無ければ、ここで退却を余儀なくされるほどの消耗はしていただろう。

 しかし手厚い回復のお陰で、僕らは結構な規模の群れを、何とか撃退することに成功したのだった。


 散々に群れの仲間を殺されてから、ようやく僕らを割りに合わない獲物と判断し、狼共は森の奥へと退いて行った。


「みんな、お疲れ様」

「はふぅ……何とかなったのですぅ……」

「ちくしょう、ガブガブ嚙みやがって。うえっ、犬臭ぇ……」

「全員、無事だな」

「ぁい……」


 ひとまず、僕らは休息に入る。こういう時、疲れ知らずの屍人形は見張りに立ち続けられるから便利だよね。ジョン君いつもありがとう。君も立派に『ジョブレス・オブリージュ』の仲間だよ。


「一息ついたら、すぐここを離れよう。この森は随分と荒れてるようだ」

「ああ、これほどの群れが出たのは、初めて見る……」


 僕の懸念に、シルヴァが同意する。

 ここは第二階層の一角。外れの方のエリアで、例によって狩場としての人気は無い。単に収穫が見込めないからであって、階層の割りにやたら強力なモンスターが湧くわけではない。つまり、このエリアも第二階層では標準的な難易度、というか危険度の場所である。


 にも関わらず、すでにランク3相当の実力がある我らが『ジョブレス・オブリージュ』が苦戦を強いられるとは……


「よし、場所を変えよう」

「……いいのか?」

「勿論。異変の調査なんて、藪を突くような真似をする気はないね」


 気にならないと言えば嘘になるが、今の僕にはレムと呪物奪還という大仕事が待ち構えている。『ジョブレス・オブリージュ』はそれを成功させるための別動隊。任務そっちのけで、勝手に壮大な冒険を始められては困るのだ。


 でも僕の言う事を素直に聞いてくれる素晴らしい仲間達のお陰で、調査は順調。清浄殿への潜入ルートもおおよそ見えてきている。

 こっちの探索が楽しいってのも本当だけど、そろそろ詰めに入るべきだろう。




 ◇◇◇ 


 さて、いよいよ奪還作戦の決行前日である。仕込みは上々、準備も万端。おまけに、『勇者』蒼真悠斗との協力関係も築けて、万々歳だ。勿論、蒼真君に対する信頼なんて無いけれど、呪術師絶対殺すマンとして襲ってこないだけ遥かにマシな関係性。


 明日の奪還作戦の成否によって今後の僕の運命も変わって来るのだが……そんな事情は『ジョブレス・オブリージュ』の面々には、全く与り知らぬこと。

 想定外の大失敗かまして、僕が死んで分身消えたらゴメンね。でもみんなはもう、冒険者として僕がいなくてもやっていけるだけの実力とチームワークは身についたと思うから。


「みんな、明日はよろしくね」

「なにか……あるのか?」

「やることはいつもと同じさ。僕が決めた場所を探索して、モンスターがいれば倒す。特別なことは何も――――いや、明日はハピナにはメンバーから外れてもらう」

「ふぇええっ!? なっ、なんでですかっ!」


 僕の急な追放宣言に、上機嫌に果実酒を煽っていたハピナが噴き出す勢いで叫んだ。

 正直、ちょっと飛沫が顔にかかった。でもこれから真面目にお願いすることになるから、余計な説教はいれないことにする。


「安心しろ、別に仲間外れにしようってんじゃないから。ハピナには一つ頼みたいことがあるんだ」

「頼み事、ですか?」

「明日の朝一でシグルーン大聖堂に行って欲しい」

「ふんふん、それで?」

「朝の礼拝に参加しろ。早めに終わっても帰るなよ。そうだなぁ……午前中いっぱいは礼拝堂のある聖堂にいてくれ。そのまま祈っててもいいし、観光がてら見て回ってもいい」

「任せるですよ、ハピナは教会の出ですからね。礼拝堂で一日過ごすなんて当たり前なのです!」


 大した頼み事ではない内容に自信をもって、ハピナはそう言い放つ。

 本当に、静かにお祈りするだけで終わればいいけどね。きっと明日の大聖堂は修羅場になるから。

 折角、大当たりの治癒祈祷を授かったんだ。その力で、せめて一人でも多くの人々を救ってくれ。

 これから僕が引き起こす騒動の被害者達をね。ついでに『勇星十字団ブレイブクロス』入団の成果の一つとして、加えるといいだろう。


「ただし、メディカノンを忘れるなよ。予備ボトルもありったけ渡しておくから、全部背負っていけ。必ず、ダンジョン探索に挑むフル装備で行け」

「えっ、朝の礼拝するだけ……ですよね?」

「装備が無いと、死ぬほど後悔することになるぞ」

「ふえっ、ええぇ……」


 僕の意味不明な指示に、ハピナは理由を問いただそうとしてきたが、頑として口は割らない。

 お前みたいのに僕の企みを明かしていたら、情報漏洩どころか垂れ流しになるだろ。


 けど、流石のハピナも明日になれば僕の指示の意味を、嫌でも理解することになる。果たして、その時にどう思うか――――

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― 新着の感想 ―
ハピナ可愛い
ハピナの課題補助という名目で、この世界での初心冒険者の心得でしたね。 やはり身体は資本。戦闘等はスルーで目的物取得のみゲット即帰還がベストとは、開放派の人らとの一幕でも言ってましたね。 治療方法が重用…
ワクワク。
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