第七話 迷の枠
ギルドを後にした俺とカイは、受付嬢から渡された地図を片手に王都を抜け、クエストの目的地である**『ヤタの迷い森』**へ向かって歩いていた。
「なあ、セプト。」
隣を歩くカイが不意に口を開く。
「俺たちさ、魔力量は高いって言われたよな?」
「そうだな。」
「それがどうした?」
カイは腕を組みながら首をかしげる。
「魔法って、どうやって覚えるんだ?」
「……。」
俺は思わず足を止めそうになった。
「確かに。」
「ギルドで魔力量とか属性とかは教えてもらったけど、肝心の魔法の使い方は聞いてないな。」
「師匠でも探すのかな?」
「それとも独学か?」
「受付で聞いておけばよかったな。」
そんな他愛もない話をしながら歩いているうちに、目の前には深い森が広がっていた。
「ここがヤタの迷い森か。」
昔、絵本で読んだ記憶がある。
自由奔放な王女ヤタが、追いかけてきた兵士をこの森で何度も迷わせたという話だった気がする。
「さて、薬草探すか。」
そう言った直後だった。
ガサッ。
茂みの奥から誰かが歩いてくる。
現れたのは、一人の男だった。
紫色の髪。
上半身は裸で、その上から甚平を羽織っている。
膝丈まである半ズボン。
気だるそうな表情でこちらへ歩いてくる姿は、とても強そうには見えなかった。
男は百メートルほど離れた場所で立ち止まり、面倒くさそうに口を開く。
「よう。」
「おめーら、ここで何してる。」
カイが答える。
「クエストだ。」
「あぁ?」
男は眉をひそめた。
「クエスト?」
その視線が俺たちをゆっくり見回す。
(こんな弱そうな奴らがか……。)
小さく何かを呟いたが、距離があって聞き取れない。
そして再び口を開いた。
「お前ら……初心者か?」
突然の質問だった。
俺は少しだけ警戒する。
初対面の相手だ。
何となく探られている気がした。
だが、嘘をつく理由もない。
「ああ、そうだ。」
男は俺をじっと見つめた。
「……そうか。」
そう呟いた次の瞬間だった。
男の姿が消えた。
「……え?」
視界から完全に消えた。
そう思った瞬間。
**ドゴッ!!**
強烈な衝撃がみぞおちを貫く。
「ぐっ……!」
息が止まる。
その場に膝をつき、胃の中の物を吐き出しそうになる。
「がはっ……!」
何が起きた。
速すぎる。
俺の目では全く見えなかった。
「お前は信用できないな。」
男はいつの間にか俺の目の前へ立っていた。
まるで最初からそこにいたかのように。
カイは数秒遅れて状況を理解する。
「おい!!」
「何してんだよ!!」
怒鳴りながら男へ詰め寄る。
男は平然としていた。
「何って。」
「こいつの魔力量、尋常じゃねぇ。」
「初心者とは思えねぇ。」
俺は腹を押さえながら立ち上がる。
「だから……初心者だって言ってるだろ。」
男は俺を見つめる。
数秒。
何も言わない。
そして突然、目を丸くした。
「……え?」
「マジか?」
「いや、待て。」
「本当に初心者なのか?」
「だからさっきからそう言ってる。」
俺は少しイラつきながら答えた。
男は頭を抱える。
「うわぁ……。」
「やっちまった。」
「完全に俺の勘違いじゃねぇか。」
深々と頭を下げる。
「悪い。」
「本当に悪かった。」
「魔力量が異常だったから、初心者って言葉を疑っちまった。」
俺はまだ腹が痛かった。
「謝るくらいなら最初から殴るなよ……。」
「その通りだ。」
男は苦笑するしかなかった。
「詫びはする。」
「何か手伝わせてくれ。」
そう言われたカイは少し考えたあと、口を開く。
「じゃあ薬草採取、手伝ってくれ。」
「俺たちだけじゃ時間かかりそうだったし。」
「それくらいなら任せろ。」
男はあっさり承諾する。
俺は気になっていたことを尋ねた。
「そういえば、お前名前は?」
「ああ。」
男は軽く右手を上げた。
「俺はカナリ。」
「呼び捨てでいい。」
「俺はセプト。」
「カイだ。」
三人は軽く握手を交わす。
……正直、さっき殴られたばかりだから俺はあまり握り返す気になれなかったけど。
「じゃあ始めるか。」
「日が暮れる前に終わらせようぜ。」
こうして俺たちは、奇妙な出会いを果たしたまま、一日限りの共同作業を始めるのだった。
そういえば、キャラごとの詳細書いてなかったですね。
じゃあ最初はセプトでいきますか。
セプト
親を早いうちからなくした少年で、ミヨというおばさんに助けられ、育てられる。そのミヨおばさんにたまに、座禅や精神統一をさせられ、自分も定期的にやるようになった。絵本が大好きだったため、本を読んだりするのが意外と特異な少年である。たまに、中二病なシーンがあったりするが本人はそれを痛いとはたいして思っていない。
カイ
別の村から馬車に乗った少年で、過去にいろんな黒歴史がある。例えば、好きな子に対して「俺の家来ない?今日両親いないんだよね」と話しかけ、その子に「カイ君ってもともと両親いないじゃん」と笑われ、心に深い傷を負ってしまった。人間で、それ以降、大学デビューならぬ王都デビューを飾った少年。




