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Found Number  作者: 寝火
新参
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16/17

第十五話 イケていない



修行期間二日目。


セプトは一人で王都の大通りを歩いていた。


カイはどこかへ消えた。


ルシルも本屋へ向かったらしい。


ミルトも朝から姿が見えない。


結果として。


自分だけが取り残されたような状態だった。


「さて。」


「どうするかな。」


魔法の練習。


剣の練習。


どちらも必要だろう。


だが。


何から始めればいいのか分からない。


フェンサー戦では運よく勝てた。


しかし、あれは実力ではない。


相手の隙を見つけただけだ。


次も同じように勝てる保証はどこにもない。


「強くなりたいんだけどな。」


そう呟きながら歩いていると。


後ろから声が聞こえた。


「君。」


「ものすごくもったいないね。」


「ん?」


振り返る。


そこには一人の男が立っていた。


黒髪。


整った顔立ち。


年齢は二十代くらい。


白を基調とした服装。


腰には片手剣。


やけに姿勢がいい。


というより。


無駄にキメている。


「……誰だ?」


男は少しだけショックを受けた顔をした。


「その反応は傷付くな。」


「僕は結構有名なんだけど。」


「知らない。」


「そうか。」


男は残念そうに肩を落とした。


だが次の瞬間には立ち直る。


早い。


「それより。」


男はセプトを指差した。


「君。」


「イケてない。」


「は?」


唐突だった。


「髪型。」


「歩き方。」


「姿勢。」


「服装。」


「全部イケてない。」


「初対面だぞお前。」


セプトは思わず突っ込む。


だが男は真剣だった。


本気で言っている。


「もったいない。」


「実にもったいない。」


「君は素材は悪くないのに。」


「全部台無しだ。」


「なんの話だよ……。」


セプトは若干引いていた。


だが。


男はまだ終わらない。


「それだけじゃない。」


「君の魔力。」


「それもイケてない。」


その瞬間。


セプトの表情が変わった。


魔力。


その話になると少し気になる。


男は続けた。


「流れが乱雑。」


「無駄が多い。」


「偏りもある。」


「見ていて気持ち悪い。」


「そこまで言うか?」


「言う。」


即答だった。


セプトは呆れる。


だが同時に思った。


この男。


何か見えている。


自分には分からない何かを。


「……分かるのか?」


男は笑った。


「もちろん。」


「僕は剣士だからね。」


「剣士と魔力に何の関係があるんだ。」


「大ありさ。」


そう言った瞬間だった。


男が腰の剣を抜く。


セプトは反射的に身構えた。


だが。


男は何もしない。


ただ剣を持っただけ。


それだけだった。


しかし。


次の瞬間。


違和感が走る。


男の姿が妙に綺麗だった。


隙がない。


立ち方。


呼吸。


視線。


全てが自然なのに。


全てが完成されている。


「なんだ……これ。」


男は微笑んだ。


「イケてるだろう?」


「いや、そういう問題じゃない。」


セプトは思わず答える。


だが。


確かに凄かった。


理屈は分からない。


なのに目を離せない。


男は剣を収めた。


「魔力も同じさ。」


「綺麗な流れには無駄がない。」


「無駄がないから強い。」


「なるほど……。」


初めて少しだけ納得した。


男は満足そうに頷く。


「よし。」


「決めた。」


「何をだ?」


「僕が君を鍛える。」


「は?」


セプトは固まる。


男は親指で自分を指した。


「僕ほどイケてる師匠はいない。」


「いや頼んでない。」


「遠慮しなくていい。」


「大丈夫だ。」


「ついてきたまえ」


どうやら話が通じないらしい。


セプトは本気で帰ろうかと思った。


だが。


男は急に真面目な顔になった。


「君。」


「フェンサーを倒しただろう。」


セプトが目を見開く。


「なんで知ってる。」


「聞いた。」


「誰から。」


「秘密。」


男は笑う。


そして続けた。


「君は面白い。」


フェンサー戦で行った。


核への短剣。


囮。


観察。


考察。


全部見透かされているようだった。


「君は剣士向きじゃない。」


「え?」


「だが、剣を持たないのも勿体ない。」


男はそう言った。


「頭で戦う人間には。」


「魔力を応用した戦い方が必要だ。」


セプトは少しだけ考える。


正直。


怪しい。


かなり怪しい。


だが。


実力があるのは分かる。


それに。


今の自分には教えてくれる相手がいない。


「……。」


男はニコニコしていた。


断られる可能性を一切考えていない顔だった。


腹が立つ。


少しだけ。


本当に少しだけ。


「一つ聞く。」


「なんだい?」


「強いのか?」


男は笑った。


自信満々に。


そして。


近くにあった噴水を指差す。


「見ていて。」


そう言って剣を抜く。


一閃。


たったそれだけ。


何も起きなかった。


そう思った。


だが数秒後。


噴水の水が左右に割れた。


まるで見えない壁が通ったように。


「……。」


セプトは言葉を失う。


男は満足そうに頷いた。


「イケてるだろう?」


「そこは認める。」


初めてだった。


セプトが素直に認めたのは。


男は嬉しそうに笑う。


「では改めて。」


「僕はレイヴァン。」


「レイヴァン・クロス。」


そう名乗る。


そして。


セプトへ手を差し出した。


「君のそのイケてない魔力。」


「僕がイケてる魔力に変えてあげよう。」


セプトは数秒迷った。


だが。


結局その手を取る。


「正直、気に食わないが、よろしく頼む。」


こうして。


セプトの修行が始まった。


そして彼はまだ知らない。


この男の教え方が。


想像以上に面倒くさいことを。


修行が始まろうとしてますね。私は、正直常に面白くないと、本が読めないドパガキ脳なので、自分の中で面白いだろうなというイベントを詰めまくって物語を構成しています。

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