第十三話 魔導書と眼鏡の女
フェンサー討伐の報告を終えたその日。
パーティー『伸残』はしばらくの間、各自でレベルを上げることになった。
目標レベルは10。
その頃。
ルシルは王都の東通りを歩いていた。
「うーん……。」
特に目的地はない。
だが一つだけ決めていることがあった。
魔法を覚える。
受付嬢の説明を聞いてからというもの、頭の中はそればかりだった。
魔力があっても使えなければ意味がない。
だったらまずは知識だ。
そう考えたルシルは王都でも有名な書店へ足を運んでいた。
店内には天井まで届く本棚。
歴史書。
冒険譚。
地図。
魔物図鑑。
ありとあらゆる本が並んでいる。
「すご……。」
思わず声が漏れた。
ルシルの故郷では見たことのない光景だった。
ルシルは目を輝かせながら店内を歩き回る。
そして。
奥の魔法書コーナーで立ち止まった。
「魔法入門……。」
「初めての魔力操作……。」
「魔法適性診断……。」
どれも面白そうだ。
だが。
どれを選べばいいのか分からない。
「難しいなぁ……。片っ端から読んでみようかな?」
そう呟いた時だった。
隣から声が聞こえた。
「その本はおすすめしませんよ。」
「へ?」
振り返る。
そこには眼鏡をかけた女性が立っていた。
銀色に近い長髪。
整った顔立ち。
年齢は二十代くらいだろうか。
落ち着いた雰囲気を纏っている。
「えっと……。」
「失礼しました。」
女性は丁寧に頭を下げた。
「ですが、その本は初心者向けと書いてありますが内容が少々古いのです。」
「そうなんですか?」
「はい。」
女性は本を一冊抜き取る。
「こちらの方が分かりやすいかと。」
ルシルは受け取った本を見る。
『魔力制御基礎理論』
タイトルだけで難しそうだった。
「えー……。」
思わず顔が引きつる。
女性は少しだけ笑った。
「内容は簡単ですよ。」
「本当に?」
「本当です。」
「なんか怪しい。」
「心外ですね。」
そんなやり取りをしているうちに。
気付けば二人は本の話で盛り上がっていた。
魔法の話。
冒険者の話。
王都の話。
気付けば一時間以上が経過していた。
「あっ。」
ルシルが時計を見る。
「もうこんな時間。」
「お付き合いいただきありがとうございました。」
女性は微笑む。
「いえ、私も楽しかったですよ。」
その女性はもしよければと話を続ける。
「魔法に興味がおありなら。」
「少し教えて差し上げましょうか?」
ルシルは即答した。
「お願いします!」
女性は眼鏡を押し上げる。
そして穏やかに名乗った。
「セリスです。」
「しばらくの間、よろしくお願いいたします。」
「私はルシル。こちらこそお願いします。師匠!!」
少し驚いた顔をした後、セリスは照れたような顔をした。
「し、師匠はやめてください。恥ずかしいです。」
ルシルは意地悪そうな顔をした。
「セリス師匠!!!おねがいします。!!!」
周りの人に聞こえるくらいの声でルシルはセリスを読んだ。
セリスはかぁぁっと顔が赤くなった。
小声でルシルに向かって言った。
「ば、バカ、早くここを出ますよ。」
そういいルシルの手を引いて書店を急いで出る。
書店を出て、20分近く離れたところのギルドが運営する訓練場にやってきた。
ルシルとセリスはさっそく修行を始めるのであった。
「ルシルさっきはよくもやってくれましたね。少し厳しい授業にしますからね。」
セリスはぷんぷんと怒っていたが、それすらも愛らしいといわんばかりにルシルは見つめていた。
「ごめんって、師匠~。」
「あ、反省してないでしょ。」
はぁ。とあきれたようなため息をした後、セリスが魔法に関して、基礎知識をルシルに教える。
「まず、魔法についてです。」
ルシルがまじめに話を聞き始める。
「魔法というのは、属性をつかさどる竜から受け継がれたといわれています。ですが、これはあくまで"魔法"に関してはです。」
ルシルが疑問を投げかける。
「"魔法"に関しては?どういうこと?」
「質問はすべて聞いてからすること。それについても今から話そうとしてるんですから。」
ルシルが申し訳なさそうに。はい。といった。
セリスがコホンと咳をした後に気を取り直して説明を始める。
「先ほどの続きから、人類はもともと魔方陣というものを研究によって手に入れていました。」
「ですが、魔法と魔方陣は根本からして違っていたんです。」
「魔法は無詠唱で自分の魔力を使用、その場で自分の出したい魔法を自由に創造し具現化するもの。」
「一方、魔方陣は自分の魔力を使用して、決まった形状、決まった能力の魔法が発動される。」
「ここまではなんとなくわかりましたか?」
ルシルは自信をもってうなずく。
「そうだ、魔法も魔方陣も自分の魔力を使わないといけないんですか?」
ルシルが疑問を投げつける。
「そうですね。ですが例外もあります。その一つが魔獣使いです。」
「契約内容次第では、魔獣の魔力を使用できます。」
「もう一つは、特殊体質であることですね。これはほとんどの人類がそれに当てはまらないので、気にしないで大丈夫だと思います。」
興味ありげにルシルはセリスに尋ねる。
「へぇー。あ、じゃあさ魔法と魔方陣ってどっちの方が強いの?」
少し悩んだようなしぐさを見せて、セリスがこたえる。
「そもそも、魔法は詠唱と無詠唱で二分されているんですよ。」
「それを考慮に入れると、威力の強さの順で上から、詠唱付き魔方陣、魔方陣単体、詠唱付き魔法、無詠唱魔法ですかね。」
「最も、無詠唱魔法以外は戦闘向きではないですね。」
ルシルが疑問に思う。
「なんで?魔方陣とかで、罠とか這って敵ひっかけてバシバシたたいたりすれば強いんじゃないの?」
セリスが微笑みながら答える。
「そうですね、あなたの実力で敵を罠にかけれるのなら、その作戦はいいかもしれませんけど。まだ、あなたは魔法すら使えないんですよ?」
ルシルはギク!となる。
「師匠なら、どうやったら魔法は使えるようになりますか?」
「基礎となることは、ある程度教えましたし実践といきますか。」
とセリスが言うと、説明をしながらセリスは手から水の球体を出し始める。
「まずは、体の中に魔力があると意識してください。魔力は体に流れる血管と変わりません。」
ルシルが言われたとおりに自分の体に意識を向け集中する。
「う~ん、ふんぬぬぬ。」
「ルシルさん力を抜いてください。」
ルシルが力を抜き、はーと息を吐いた瞬間、魔力の流れが活発化する。
「わかった。」
セリスが目を広げ、驚いた。
(すごい、魔力に気づくのが速い。)
「そうしたら、その魔力を一点に集中させて、頭で形を作ってください。」
「その通りに集めた魔力を伸ばす感じです。属性も形状もあなたに任せるので、やってみてください。」
ルシルは矢を意識して作り始める。
雷を選んだルシルは、矢の完成直前でバチバチと魔力が拡散される。
「くっそー、もう少しだったのに。」
驚きを隠せないセリスがルシルを褒める。
「すごいですよ。初めて、具現化させるのにこんなにもできるとは。」
でもとセリスが続ける。
「でも、これが無意識に作れて、即座に戦闘に使えるようにならなければいけませんから、まだまだ上達までは時間がかかりますね。」
こうして、ルシルはセリスと名乗るメガネの女性と魔法を学ぶことになる。
主人公たちのパーティーの本名です。
セプティウス・レインハート(セプト)
カイゼル・ガルディア(カイ)
ミルティア・ヴァルハイト(ミルト)
ルシリア・エルフェイン(ルシル)




