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第四章 怪物
「あいつを信用するな。」
兄貴は酒を飲みながら言った。
「確かに娘は可愛がっとる。」
「じゃがな。」
兄貴は煙草を灰皿へ押し付ける。
「二十年前、敵組を一晩で潰した。」
「警察も手が出せんかった。」
「笑いながら撃っていたらしい。」
俺は黙って聞く。
「サチ子だけは知らん。」
「先生の本当の姿を。」
その夜。
黒崎組。
サチ子は夕食を作っていた。
「先生、今日は肉じゃがです。」
組長は新聞を閉じる。
「うまそうじゃ。」
「ありがとうございます。」
二人で食卓を囲む。
まるで普通の親子だった。
食事を終えると組長は縁側へ出る。
空を見上げる。
そこへ若頭が近付いた。
「浜崎組が動いてます。」
「ほう。」
「潰しますか。」
組長は静かに首を横へ振る。
「まだじゃ。」
「サチ子がおる。」
「家で血の臭いはさせたくない。」
その言葉を、サチ子は障子の向こうで聞いていた。
先生は優しい。
でも先生は人を殺す。
その二つが、彼女の心を少しずつ苦しめていた。




