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第三章 古本屋
黒崎組との話し合いから一週間。
俺は兄貴の使いで古本屋へ来ていた。
目的の専門書を探していると、奥の棚で見覚えのある横顔を見つける。
サチ子だった。
彼女は夢中で一冊の文庫本を読んでいる。
「本、好きなんだな。」
突然声を掛けられ、サチ子は肩を震わせた。
「あ……。」
「敵同士だから逃げるかと思った。」
「……ここでは争わないでしょう?」
少しだけ笑う。
その笑顔は初めて見た時より自然だった。
「先生が、本だけは何冊読んでもいいって言ってくれたんです。」
「先生?」
「私は字も読めませんでした。」
「でも先生が毎日教えてくれました。」
「算数も国語も。」
「学校へ行けない日は先生が授業をしてくれました。」
俺は驚いた。
組長が教科書を開いて勉強を教える姿など想像できなかった。
「先生は言うんです。」
『人を騙す奴ほど勉強しとる。だから、お前も学べ。』
「それが先生の口癖でした。」
その時だけ、彼女は心から嬉しそうに笑った。




