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32話 反撃

8月20日0530 東かがわ防衛陣地 第2線


紀伊3尉から

衝撃的な事実を知らされる。


中国軍はロシアと連携して

攻撃を行っている。


大阪は日本の大都市だ。

日本全土を制圧するのは

中国軍も不可能だろうが

一時的にせよ占領する

事は可能だろう。


しかし、同時に

無謀ともいえる

強襲上陸だ。


つい昨日の追加の

敵の援軍が

たどり着いたばかりであり


補給線は恐らく

大ダメージを負っているはずだ。


我々の防衛線にも

目くらましの攻撃を

行い拘束し、


その上で大阪に潜ませていた

工作員と共同して

強襲を仕掛けられた。


これでは自衛隊側の

動員は難しい。


「紀伊3尉、我々は

どうすればいいのですか?

目の前に敵がいる以上

我々は大阪には向かえません」


「目の前の敵に対処するしか

できません」


「大阪はどうなりますか?」


「すでに四国からの上陸を

食い止める為に部隊から

人員を引き抜いています。」


「大阪湾は内海で

陸からの対艦兵器を持ってくるには

時間がかかるでしょう」


「当然、敵側に損害がでるでしょうが

向こうの指揮官がそれを考慮するとは

今までの戦いから思えませんね」


確かにそうだ。

数が少ない自衛隊で犠牲を顧みない

強硬突入をされると押し込まれてしまう。


「日本海側の中国海軍にも

動きがあるようですしそちらも

警戒しなければなりません」


「水際を突破されたら

厳しいかと思います」


霞2曹が口を開いた。


「今ここで大阪の事を

話しても仕方がないでしょう。

どの道今ここから我々が

大阪に向かうのは不可能

なんですから」


「それよりも

目の前の敵の対処について

話しましょう」


「……そうですね」


釈然としないが

仕方ないだろう

今の我々は目の前の敵に

対処するしかない。


紀伊3尉が

地図を開く。


我々の今の位置を

指でなぞった。


「ご覧の通り我々は

後退を余儀なくされました。

ですがこれは敵が縦に大きく

突出した形になります」


「よって我々はこの

突出した部分の敵の退路を

遮断し包囲殲滅を図ります」


紀伊3尉は指で平野部を指す。

平野部は3方向を山で囲まれ

北側は海なので地上部隊は

逃げ場がない。



「敵は部隊を展開こそしていますが

囲む形が出来ているので

不利になります。」


「包囲する敵の数は

どれくらいですかね?」


私が紀伊3尉に

尋ねる。


「およそ、6000~8000人だと

見積もられています」


「我々はこの方面だと

5000くらいですね

援護にくる部隊はいるかも

しれませんが」



「ドローンを展開されると

制空権が取りづらくなりますから

敵が防御を固める前に殲滅します」


「敵は上陸後すぐに大規模攻勢を仕掛けたので

恐らくは疲弊しています。

味方の援護があったとはいえ

3時間程で攻勢が終わっている。」


なるほど、確かにそうかもしれない。

敵も人間だ、


当然疲れる、我々の様に。


それならば休ませずすぐに

仕掛けるのはいい判断なのかも

しれない。


数的不利だ。

この懸念は国力が違う以上

ずっと付きまとう。


だから別の面で有利な部分を

作るしかなかった。


出来なければただ死ぬだけ

になってしまう



「作戦開始は0700

味方の突撃支援射撃後

防御陣地から前進を開始します」



私はグッと手を握る。


状況は悪い。


だが、戦う事しか

今の我々には許されていなかった。


8月20日0600 東かがわ防衛陣地 第2線


突出した敵の包囲殲滅の任を

受けて我々は準備を始める。


銃口の手入れ。

ろくに食事もないので

乾パンを齧る。


暖かい食事など

もう何日も

食べていない。


食べる余裕もない程

戦況は激しく動き

緊迫している。


生きている限りは

戦い続けなければ

ならない。


だが、必ず勝てる

保証もない。


日本を守りたいと

いう気持ちと。


家族の未来を守らなければ

ならないという責任感で

どうにか心を現実に

つなぎとめている。


まだ、やれる。


まだ、やれる


まだ、やれる。


悲しいほど空虚な

心の声で必死に

自分を支え続けた。



8月20日0659 東かがわ防衛陣地 第2線


我々は車両に乗り込む。


腕時計を何度も

確認する。


何度目か分からないが、

突撃までの時間は

緊張感がある。


地獄の入り口だと分かっているからだ。

わかっているからだ。


2…1…0…


突撃支援射撃が

始まり迫撃砲や

特科の砲撃が雨の様に

降り前方を瓦礫の海に

変えていく。


敵からも反撃する様に

迫撃砲が飛んでいる

ようだが、まだ展開しきれていない

のか数が少ない。


オレンジの光の打ち合いが

戦況を物語り

地面が揺れる。


敵はまだ攻撃を行ったばかりの

防御展開は出来ていない

様に思えた。


弾などの物資の輸送も

間に合っていないのだろう。


5分ほどで敵からの

反撃は完全に沈黙した


間違いなく有利な

戦況だと言える。


「小隊、前進します!

いいですか、今回は領土の奪還が

目的ではありません!

敵を撤退させてはダメです

ここで殲滅します」


我々は息を飲みうなずいた。


もし、敵が第一線を攻めた時、

我々、普通科を包囲殲滅していた場合、

迅速な反撃する事が出来なかった。


敵を殲滅できない攻撃は、

逆に攻撃側が不利になる

可能性があるのだ。


今回は敵を殲滅できる

絶好の機会であると

言えた。


高機動車で向かい、

移動できるところまでは

東進する。


途中で味方の支援射撃で

道路が途切れている所で

下車し、急いで展開し、

制圧を始める。


埃っぽい匂いがして、

それと共に焦げ臭い香りと

悲鳴の様な声が聞こえていた。


辺りは白と茶色の煙で

視界が制限され

どうなっているかは

近くに行くまでは

よく分からない


辺りは建物の

瓦礫だらけで、どこに

敵がいるかもわからない。


瓦礫の下には何人か

敵の死体が転がっており、

突撃支援射撃で随分と

死んでいる様だった。


味方の部隊が次々と

到着し、制圧を始めていく。


やがて各地から

銃の撃ち合いの音が

聞こえた。


敵方であろう方面からの

銃声はまばらであり

混乱している事が

窺えた。


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