19話 アグレッサー部隊
8月19日0230 海上
漁船は四国の対岸へ向けて
進み続ける。
波川船長によると
およそ90分程で着く
との事だ。
対岸に明かりは
見えないので
どうなっているかは
わからない。
「しかし、漁船で
いくにしても
機雷などの心配は
ないんでしょうか?」
私が紀伊3尉に聞いた。
「機雷等を海に蒔く
時間なかったかと
思います。」
「問題は航空戦力ですね。
地形の制約を受けないので
対艦兵器や爆撃機を含む
攻撃がきた場合は我々は
何も出来ません」
紀伊3尉が
言い終わらないうちに
轟音と共に
目の前の空が
真っ赤に染まった
「何が起こっているんですか!」
私が紀伊3尉に問うた。
「恐らくは航空戦力同士の
交戦です!!」
「上陸作戦にあたり
航空自衛隊からも
支援が出ています!!」
「もし、制空権を確保
できなければ我々はいつ
上から攻撃を受けるか分からない
状況で戦わなければなりません」
紀伊3尉が言う状況は
最悪の状況だった。
地下施設の時でもそうだったが
我々地上部隊は航空戦力に対して
ほとんど有効打を持っていない。
数で負けているうえに
上からも横からも攻撃を受けては
奪還するどころではないのだ。
その時、
回転するローター音が
聞こえた。
まずい。
直感した。
Zー19。
中国軍の偵察、攻撃ヘリだ。
機銃の装填音が
聞こえた。
「波川船長!
前方に攻撃ヘリ!
左に舵を!」
波川船長は紀伊3尉に
言われた通り
舵を切る。
私達のいた地点の海に
銃弾がまばらに
散っていった。
だが状況は何も
変わっていない。
ヘリは旋回能力に
優れる。
攻撃手段を持たない
船などいい的でしかない。
もうダメかと思ったその時
急速に近づく機体が
あった。
独特な迷彩を施した
戦闘機が旋回を続け
ヘリの後ろを取り
次々とZ-19を落としていく。
「紀伊3尉!!!
あれは!!!」
「アグレッサー部隊!!!
そうか…教導群まで
来てくれたのか…!!!」
アグレッサー部隊。
正式名称は
「航空自衛隊 飛行教導群」
仮想敵を務める部隊であり
「自衛隊最大の敵」
と呼ばれるほどの練度を誇る。
日本最強の航空部隊であり
世界的に見ても評価の
高い部隊である。
攻撃ヘリが
我々の船のすぐ
真横に落ち
火を噴いていた
炎が闇を照らした。
我々はそのまま
直進を続け
まもなく
港が見えるところまで
来ていた
8月19日0330 海上
中国軍のヘリからの攻撃が
あったものの味方の航空戦力の
活躍もあり生き延びた。
四国の対岸
宇多津港
我々はいよいよ着岸できる
ところまで来ていた。
ババババババ
既に何人かの味方が
上陸し戦闘を始めている
らしく銃声が各地
から聞こえていた。
あちこちで突発的な
光も見えた。
「すでに戦闘が始まっているようです!
念のため姿勢を低くして下さい!!
上陸後はすぐに遮蔽物に身を隠しましょう!
地上だけではなく上にも注意してください!」
「暗いですがライトは使わないで!
やむを得ない場合も最低限で赤で遮光を!
各自、暗視装置の点検をしておいてください!
上陸したら会話は小声で最小限で
主に手信号で合図をしましょう!」
紀伊3尉が次々と
小隊に向けて指示を飛ばす。
刻一刻と漁船が港へと
近づいていく。
緊迫感はどんどん
重くなっていく。
「波川船長!
我々が船から降りたすぐに
港を離れて下さい!
ありがとうございました!」
紀伊3尉がお礼を述べると
私も波川船長にお礼を言った。
武器も何も持っていない状態で
危険な作戦に同行し
我々を四国まで送り届けてくれた。
感謝しても足りないくらいだ。
波川船長は
操舵室から軽く手を振り上げて
返してくれた。
船体に軽く衝撃が走り
船が着岸した事を
確認する。
小隊は鉄帽に取り付けられた
暗視装置を目に装着し
紀伊3尉が手信号で合図をして
次々と上陸する。
なるべく姿勢を
低くして
遮蔽物であるコンテナに向けて
走り抜けていく。
顔のすぐ横を
銃弾が通り抜けていく。
敵に向けて
銃の引き金を引き続ける。
前進を続け我々は
どうにか我々は遮蔽物で
あるコンテナに
身を隠す事ができた
後続の味方部隊が
次々と到着し
敵部隊を押し始める。
守っている敵の部隊は
それほど多くない様に
見えた。
「前進と援護射撃で
交互に前に出て
少しずつラインを上げていきます」
「敵兵がいる場合は
遮蔽物に隠れながら応戦して
下さい」
紀伊3尉が命令を伝える。
身を潜めていたコンテナの
近くで迫撃砲が落ちてきて
爆発が起きる。
濃厚な血と火薬の
そして肉が焼かれる匂いが
潮風と共に運ばれてくる。
全体の状況を
把握する術を持たない
現場の兵士の我々には
今この状況が勝っているのか
負けているのかすらわからない。
紀伊三尉を信じて
ただ敵を倒し進む事しか
できなかった。
読んでいただいてありがとうございます!
リアクション、レビュー、感想、5☆評価、ブックマークよろしくお願いします!




