転入生に頼みたい!
更新が遅くなりました!
日曜日は鼎が来ることを想定し、貴之と桐華ちゃんを早朝から家に呼んで二人の空間を見事脱した。
結果、鼎は大きく落ち込んで泣きそうになっていたところに、桐華ちゃんが俺に体を寄せてきたことが大ダメージを与えた追い返すことに成功した。
逃げたことにはならないが、一本取ってやった訳だ。
そして今日は月曜日。
土日を挟んでの登校日。
俺は桐華ちゃんに電話で、
『先輩と行きたいっす。ダメっすか?』
と言われ、鼎じゃないだけマシと思い二人で登校した。
そして校内で噂となっていた俺の浮気情報は消え、今度はモテ男情報が出回って収集つかなくなっていた。
貴之に相談したら、「それは放置しようぜ!」と、俺が放置される結果となった。
浮気よりはマシだと思い放置し、教室に入ろうとしたところで飛びついてきた鼎を逆に吹き飛ばして席について一段落したのがーー今だ。
「ーーおはようみんな」
教室に入ってきた、うちの担任教師の舛添。
OLなんかが似合いそうな普通の三十路前のお姉さんといったところの見た目の担任だ。
舛添は生徒が全員揃っていることを確認すると、手を合わせて突然微笑んだ。
俺と貴之は、舛添が突然何も言わずに微笑んだのがツボにハマり、笑いを堪えるので必死になる。
「みんな、転入生を紹介するわねーー入ってきて」
「ーーお、おはようございます」
教室に入ってきた転入生は、言い難そうに日本語で挨拶をするとペコリと頭を下げた。
腰まである金髪ストレート、くりっとした碧眼、そして何より白人美少女と認定するに相応しい色の白さ。
クラスメイトの男達(貴之除く)は、転入生が白人美少女だったことがよっぽど驚きだったのか、昭和アニメのリアクションばりに目をハートにして飛び出させている。
「ささきべ……ナーシャ、です。よ、よろしく、お願い……します」
「はい、篠木部ナーシャちゃんです。日本に来てまだ一週間しか経っていないから、日本語とか教えてあげてね? じゃあえーと……あ! 朝日君の隣空いてるからそこに座ってもらおうかしら」
「あそこ、ですか? は、はい」
おいおい、俺の了解なしかよ舛添。
白人美少女が隣なんて滅多にないことだから嬉しいけど、日本語を教えてあげることなんてできないぞ。
人の了解なしに、勝手に俺の横へ座ることとなった転入生は、恥ずかしそうに隣の席に座ると頭を下げてくれた。
俺も自然と頭を下げる。
「……えーと、よろしく?」
「よろしく。ナーシャでオッケーなんで」
「……」
ーー舛添先生様! この女は猫被ってます!!
まさかの転入生は、猫を被った日本語を普通に話せるムカつく美少女だった。
★
「しょぎょ、むぎょう、の……わかりま、せん?」
「諸行無常だろ?」
「……普通に読んでしまったら私の外国人設定無駄になるんですけど? 作者に外国人設定貫け言われてるから」
「……」
誰だよ作者って、てか何で俺にだけ日本語をべらべら話すんだよ。
ムカつくが、面白い性格なのは間違いない。
でもやっぱりーー俺だけなのがムカつく。
「はい、ナーシャさんありがとう。えーと、じゃあ貴之君お願い」
「俺!? え……どこ?」
「もう! ちゃんと聞いてないと!」
「……ねえねえ、朝日。あれって朝日の仲良い子?」
勝手に呼び捨てですか……。
「そうだけど、何で?」
「へえー。ううん、全然朝日と性格違うなって思って」
「まあ、そりゃな。俺と同じ性格が二人居ても、つまらないだろ?」
「ライトノベルにしたらただたんにウザい二人になるよね」
「ウザい言うなよ、お前こそムカつくキャラだろ」
転入生に容赦ない一言を返すと、数秒見つめられてからフッと恐ろしい笑みを向けられた。
背中にゾッとするものを感じたが、転入生は丁度終業のチャイムが鳴ると同時に教科書を閉じて席を立った。
舛添が「終わりまーす」と言い、俺も席を立つ。
すると、既に廊下へ出ていた転入生が俺を手招きしてくる。
また変なのに捕まったな、俺。
自分の運の悪さを再実感し、ため息を吐いてから転入生の元へ向かう。
鼎に告白されてから、運の悪さはどん底まで落ちて更には限界を超えて未知の領域にいる。
今更運の悪さをどうこう言ったところで変わらない。
転入生は、俺が廊下へ出ると手を引いて、他のクラスメイト達が出て来る前に階段を上り始める。
引っ張られる俺は、一緒になって階段を上がるしかなく、最終的には屋上まで連れて来られてしまった。
「何だよ転入生」
「ナーシャって呼んで良いよ、むしろそう呼んでよ。話があるの」
「……話? 何だよナーシャ」
「実はね、私はアメリカで育ったけど父子家庭で、離婚した母親の顔と住んでるかもしれないところしか、知らないの」
突然何の話かと思い身構えていたが、なんだそんなことか。
俺は察して、ナーシャにそれ以上語らせない。
屋上の自販機で少ないお金を叩いてリンゴジュースを買ってあげ、渡して俺は自分用に買った缶コーヒーを片手にベンチに腰掛ける。
「母親探しを手伝えば良いのか?」
「理解が早くてびっくり。凄いね朝日」
「いや、普通に分かるって。だがーー」
そう、だがーーしかし。
手伝う代わりにこちらもある条件は出させてもらう。
人に何かを頼むなら、相手の頼みも聞くのが日本人の当たり前と教えてやろう。
「手伝う代わりにお前も俺のに手伝え。良いな?」
「内容を教えて? 付き合って欲しいとか、一発ピーさせて欲しいとか以外なら聞くけど」
「おいおい、俺に性欲なんて物は無いぞ? そうじゃなくて、ストーカー野郎から守って欲しい」
俺が真剣な表情で、手伝う代償としてよ頼みを言うと、ナーシャはリンゴジュースを盛大に吹いた。
分からなくもないが、美少女が吹くのはマズイだろ?
「……な、何それ? ストーカーされてるの?」
「されてるよバリバリ。後輩が毎日のように俺に纏わりついて離れないし、ところ構わず何度振っても告白してくるから逃げたいんだよ。でも逃げ切れねーんだよ」
「ええ……朝日、大丈夫? 夢と現実の区別はつけないと……」
「ごめん、夢なら逆に嬉しい話だ。現実にまで持ち込みたくない案件だし」
俺が否定すると、ナーシャは横に腰掛けてから顔を覗き込んでくる。
……やっぱり、整った綺麗な顔をしているな。
「へえ、良いよ。手伝ってあげる」
「マジで?」
「ただしい……」
「何だよ」
「ーー朝日、私と一緒に学校では基本居てくれない? 友達作りたくないから、あんたがその盾で」
★
「貴之。一人を好む人間とは」
「誰のことだそりゃ」
「ナーシャが、友達作りたくないから、俺に友達作らなくて良いよう盾になれって言ってきた」
貴之に休み時間のことを話すと、首を傾げた。
ーーそれもそうだ。
陽キャラの貴之には、ぼっちなど考えられないからだ。
俺でも、親友の一人が居てストーカーが居てヤクザの娘がいる。
面子としては親友だけがまだまともだが、それでも色々とおかしいが。
「ーー無理ですね、それは」
「鼎、お前また来やがってーー」
「な、なんで席を立つんですか!?」
「……ランナウェエエエエイ!!」
突然の鼎の登場に、体が勝手に逃げるモードへ入っていた。
鼎を置いてダッシュで教室から出ると、
「ーーきゃあっ!」
「いってえ! ……ナーシャ! 大丈夫か!?」
「な、なに?」
トイレ帰りのナーシャとぶつかった。
ナーシャはぶつかりはしたものの、たまたま抱き止めた俺の胸の中で驚いていた。
「ご、こめん」
「あ、慌てて……何してるの?」
「せーんぱい! 不意打ちからの付き合ってくださーい!」
「だーかーらー!?」
今は説明をしている暇もない。
鼎が俺の前に居ることは、つまりそういうことである。
今から鬼ごっこの始まりである。
ナーシャを離し、俺は鼎と取っ組み合いになる。
すると、横でパタリと倒れる音がした。
「朝日……え、らい……です……」
「(カタコトってことは演技か……)ナーシャ!?」
ナーシャは現状況を説明なしに把握して、鼎をストーカーと判断してわざと倒れたふりをしたのだ。
演技は迫真で、俺しか分かっていない様子。
俺はナーシャをおんぶし、保健室へと走る。
逃げれるーーナーシャのおかげで逃げられる。
「朝日、こんな感じで良いの?」
「何お前ーー尊敬!」
ナーシャは俺におぶられながら、くすくすと笑った。
こうなれば、母親探しとぼっち計画(仮)をしっかりも手伝おうーー
そう思いながら、仮病のナーシャを保健室に寝かせて二限目をサボった。
付き添い人として(養護教諭が来るまで)、ぼっち計画の協力者として、俺は側に居なければいけなかった。
そして……。
今日を境に、鼎との校内での接触率が激減するとは、この時の俺はまだ知らない。
新キャラのナーシャが、朝日の一番の理解者で協力者です。
面白いとか、新キャラ白人美少女好みや! と、思っていただけましたら、是非評価等よろしくお願いします!
していただけますととても嬉しいです。




