三:行動 先に話すか、先に聞くか
遠距離になった彼女と、半年ぶりに会う。
駅で顔を見た瞬間、言葉が溢れた。
――久しぶり。あのさ、仕事がさ――
止まらない。
会えなかった半年分を、一気に埋めるみたいに。
気づけば、ずっと自分が話していた。
彼女が、小さく息をつく。
――わかった。わかったから、ちょっと落ち着いて。
言葉が止まる。
――私の話も、聞いてよ。
自分のことばっかりじゃん。
少し、言い返す。
いや、だって久しぶりだしさ
(何が悪いんだよ)
被せるように言ってきた。
――私が、どんな気持ちで来たかも、考えてよ。
何か言おうとして、言葉が詰まる。
彼女が視線を落とす。
――はぁ……なんか、冷めた。
短く言って、
――帰るね。
背中が、遠ざかる。
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もし、違う順番だったら。
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遠距離の彼女と、半年ぶりに会う。
駅で顔を見た瞬間、言葉が出かける。
――久しぶり。あのさ――
そこで、止まる。
……半年分、伝えたいのは、自分だけじゃない。
一歩引く。
元気してた?
彼女が、少し驚いた顔をする。
そして、話し始める。
――うん、あのね……
ゆっくり、でも止まらない。
嬉しかったこと。しんどかったこと。会えなかった時間。
頷きながら、聞く。
相槌を打つ。
たまに笑う。
気づけば、時間が過ぎている。
彼女が、ふっと息をつく。
――……聞いてくれて、ありがとう。
少しだけ間があって、
――あなたは、どうだった?
やっと、自分の番。
今度は、ちゃんと届く気がする。
話し終えると、
――ね、久しぶりだし、ちょっといいご飯行かない?まだ、話したいし。
彼女が笑う。
うん。行こっか。
並んで、歩き出す。
同じ会話でも、
順番ひとつで、まるで違う。
先に話すか。
それとも先に聞けるか。
あなたは、どっちを選ぶ?
次話は明日朝7時に投稿します。




