第5話 実食! 天聖石⁉
※第5話は
天聖石の使用方法に関する描写と、
料理・戦闘の両方を含む回になります。
石をどうやって使うのか――
その答えが明らかになります。
無事夜スライムを捕獲して、ドロップアイテムである天聖石を手に入れたが、肝心の使用方法が不明だったため、カサドルさんに聞いたところ、天聖石を食べることで効果を現すというとんでもない代物だった。
カサドルさんの話では
「その石はな、見た目も質感も石そのものだが、刃物をあてると斬ることが出来るそうだ、そうして食べやすい大きさにしてから、口に入れてよく噛むと良いと言っていたな、本当かどうかは知らないが……どうした? 」
という衝撃の事実を聞かされて俺たちは文字通り石のように固まってしまったのだった
そして時刻は夜明け前、しばらく思考がフリーズしたのちに我に返った俺は
「い、いかん、あまりの衝撃で固まってしまった」
といって改めて天聖石をながめる、どこからどう見てもただの石にしか見えない
「これをどうやって食えと……」
俺のボヤキにリリアはフォローを入れる
「気を確かに勇者様、もしかしたら食べてみたら美味しいのかもしれませんわよ? 」
「そ、そうですよ、見た目は石かもしれませんけど、食べてみたら甘かったりとか……」
と言ったらカサドルさんが
「いや、聴いた話だと伝承では味は生のままだと不味くて食べられないらしい、不味いというよりは味がしないと知り合いの歴史学者は言っていたな」
という話を聞いて益々テンションが下がる
「ん? カサドルさんは食べた事は無いんですよね、どうして味の事を歴史学者さんは知っていたんですか? 」
という疑問を俺は口にすると
「それに、伝承とはいえ、本当に不味いかどうかなんて一体、どうやって証明したんですの? 」
と言うリリアのもっともな疑問
「そうだそうだー、詳細な味なんて実際に食べないと判りませんよお」
とミナも煽ると、カサドルさんが新たな情報を出してきた
「ああ、だから知り合いの歴史学者は、以前の発掘調査の際に偶然発見した天聖石レベル1を興味本位で食べてみたそうだ、刃物で切れることは半分に切り分けようとして判明したらしい」
え、普通の人が使用しても効果が無いのに? 随分アグレッシブな歴史学者だな
「で、どうだったんですか? 」
と言う俺の問いに
「さっきも言ったが、そのままでは無味無臭で旨くはないそうだ、で焼いて食べてみたら」
「食べてみたら? 」
「食感はあるが、旨みも味も無いホウレン草のようだと言っていたな」
という容赦のない答えがカサドルさんの口から出てきた
「どうしよう、俺は石なんて食った事無いから、どう調理したら良いのか解らん」
「私も、天聖石の効果には興味はありますけど、これはちょっと……」
と、そのときミナは手を上げた
「あのお、もし失敗しても大丈夫と言うのであれば、私が調理してみましょうか? 」
たしかに、現状としてウチのパーティーで料理が上手なミナならば、任せても良いと思う
「どうでしょう勇者様、ここはミナに任せてみては」
リリアもミナの料理の腕に期待しているようだ
「分かった、じゃあミナ野営地に戻ったら早速調理の方を頼む、まず1個試しに使ってみて、ダメだったら他の手を考えよう」
こうしてミナは天聖石を材料に料理を作るという難題に挑戦する事になった
「と、引き受けたものの、どうしましょうか」
持ってきていた調理道具を用意して、材料である天聖石レベル1を見ながら腕を組み、ミナは考えた、どうやったら無味無臭な材料を美味しく調理できるのか、カサドルさんの話で判明しているのは、刃物で切る事は出来るが、そのままの状態ではとても食べることが出来ない、そして加熱するとホウレン草のような食感はあるが、味がしないのでやはり食べられない、という事
「まずは食べやすい大きさに切り分けてみましょう」
そう言ってミナは調理器具をまずクリアの魔法で綺麗にしてから、小型のまな板を
出してその上に天聖石を置くと、ナイフで切ろうと石に刃をあてる、すると最初はカチリと金属の音がしたがそのまま力を入れて刃を入れるとストンッとすんなり斬ることが出来た、
「本当に斬れた……よし」
その後、天聖石を一口大の大きさに切り分けた後、ミナは焚火に焼き台を設置して焚火の火力を上げるために薪を足しておき、昨晩使用した鍋を出してその鍋を焼き台に設置、
「次にニンジンやジャガイモ、玉ねぎなどの野菜を下処理をした後に適当に切って鍋に入れて予め加熱しておこう、そうすれば野菜から出てくる水分も使えるし」
その間にミナはまだ残っていた干し肉を切り分けて野菜に火が通ったころを見計らって干し肉を入れて水を足す
「そろそろかな……」
野菜から出た水分と足した水で鍋の中が3分の1程度満たされたら、干し肉も煮たことで戻っていく、そして干し肉が戻って柔らかくなった頃に切り分けた天聖石を投入、塩を少々とまだ残っていたスープベースを入れて全体的に火が通るまで煮た後に、鍋を少しずらして焚火の火力を少し落とし、鍋に蓋をしてしばらく煮込む、時々蓋を開けてあくを取り除いて様子を観つつ、味が全体にしみこむまでコトコトと煮込んでいく
「大丈夫かな、任せては見たけど、ミナだって不安だろうに」
と、俺は心配するがリリアは
「大丈夫ですよミナの料理が上手いのは昨晩証明していたでしょう? 信じましょう」
そうして薄暗い明け方の空が明るくなってきたころ
「うん、いい感じに煮込まれてる、後は味見をして味の調整を……うん」
ミナは最後に少しだけ味の調整をして鍋に蓋をして、また少し煮込み、再度味見をする
「ん、よし! これで完成です! 」
そういって俺を呼んできた、ミナは器に鍋の具材とスープを入れるそして俺に渡すと
「ミナ特製、天聖石の煮込みスープです! さあ、どうぞ」
といって木のスプーンを渡してきた、俺は恐る恐る、器に盛り付けられたスープをながめる
「あれ? 天聖石のような石が見当たらない? 」
俺がそう言うとミナは
「そうなんです、あの石は煮込むとスープの中に溶けていったんです、だから焼いた時とは違う食感になると思います」
と言ってきた、なるほど、調理方法で形が変わる性質があるのか、でも肝心なのは味だよな
と思い、スプーンで具材と一緒にスープをすくい、先ず匂いを嗅いでみる
「……嫌な臭いはしないな、むしろ昨日食べたスープのような美味しそうな匂いだ」
そしてそれを口の中へ、するとどうだろう、野菜は煮込まれているのでジャガイモや玉ねぎは口の中で溶けていくように消える、ニンジンも噛めばほろほろと崩れて甘い味が口に広がる、肉の食感も良い、そして肝心のスープは
「うん……美味しい、ミナ! これは凄く美味しいよ! 」
最初に聞いた印象で酷い味が広がってしまうのではと思っていたが、そんなことは全くの杞憂だった、狩りの後で緊張した後だったせいもあり空腹が更にスープを食べるスピードを加速させていく
「ミナ、お替わりをもらえるかな」
「はい、いっぱい食べて下さいね」
気が付くと全て平らげてしまった、と天から声が頭に響く
「天聖石レベル1の効果により上限値及びレベルが1アップします、現在のレベルは8980レベルです」
おお、ちゃんと効果が出てる、やはり天聖石はレベルの上限値とレベルを上げるのは確かなようだ、だとすると毎度レベルが下がるかもしれない俺に使うのはどうなんだろう、こんな効果があるのならばいっそ……
「勇者様、どうかなさいましたか? 」
スープをすべて平らげてボーっとしていた俺をミナが不思議そうな顔で眺める
「いや、何でもない……このスープとてもおいしかったよ」
「えへへ、そうですか? ありがとうございます」
「あら、そんなに美味しいのでしたらワタクシも食べてみたかったですわ」
と言うリリアの言葉に
「じゃあ、朝食は天聖石を2個使って同じスープを作りましょうか? 」
と言うミナの提案に俺は
「うん、それは良い、俺はもう食べたから二人の分を作って食べるといいよ、じゃあこれ、天聖石を2個渡しておくね」
と言って闇スライムからドロップした天聖石レベル1の石を2個ミナに渡して、俺は早朝のトレーニングを始めることにした、と言っても現世にいた時に欠かさずやっていたラジオ体操とこっちに来てから始めた剣の素振りなのだが
「さーて、美味しい料理をまた作るぞー! 」
とミナは張り切って天聖石の煮込みスープを作り始めた
「まあ、ミナったら張り切っていますわね」
とリリアも嬉しそうだ、そして俺がトレーニングを終えて戻ると、二人は既に
ミナの作ったスープを食べ終えていた
「ああ、なんて素晴らしいスープなのでしょう、王宮の料理に勝るとも劣らない素晴らしいものですわ」
と、ミナの料理を絶賛している一方のミナは
「うん、ちゃんと具材の美味しさがうまくかみ合ってる、これは他の料理にも使えそう」
と次なるメニューへの意欲を出していた
「やっぱり、料理は世界を越えるんだなあ……」
と妙に納得してしまった俺だった
食事も終えて野営地の撤収に掛かり、出発の準備が整った頃、カサドルさんも荷物を纏めてやって来た、これから森を出るためにまたカサドルさんに案内をしてもおらう事になる
「おお、みんな揃っているな、じゃあ来た時と同じルートで森を出るからついてきてくれ」
そう言って大きな荷物袋を背負ったカサドルさんの後を俺たちはついていく
日が一番高くなるころ、俺たちは森の外縁部付近にまでたどり着いた
「あと少しで、森を抜けますわね」
リリアはそう言って周りを見渡す、今日も晴れているので視界は良好である
「ああ、そうだな」
そういって前に進もうとしたその時、先頭にいたカサドルさんが
「まて、何か変な声が聞こえる」
そういって俺たちを止めた
「どうしたんですか? 」
ミナはカサドルさんに聞くも
「静かに、獣とは違う何かが迫ってきている」
という言葉に俺は一気に周囲の警戒を強めた、さっきまでは何とも無かったはずだが、何か嫌な気配が近づいている、確かにカサドルさんの言う通り、野生生物とかではなさそうだ
俺は剣を構えて警戒する、すると物陰から何かが飛んできた、俺はとっさに飛んできた物体に剣を振る、するとその飛んできた物体は簡素な造りの矢だった、辺りを見回すと、そこに居たのはゴブリンの集団だった、よく見ると弓矢を持ったゴブリンもいる
「リリア、結界を張ってミナとカサドルさんを守ってくれ」
俺の言葉にリリアは素早く魔法を唱えて結界を張る
「カサドル様、ミナさん、私から離れないように」
「わかった」
「わかりました、リリア様」
と、ミナの言葉にリリアはフフッと笑い
「ミナさん、私達は仲間なのですから呼び捨てで構いませんよ? 」
「は、はい、分かりましたリリア……さん」
「さん付けも不要ですわ」
「あああ、ごめんなさい……リリア、お願いします」
「ええ、私にお任せください」
俺も、そろそろ呼び方を変えてもらうか
「俺の事も勇者様じゃなくてユウマって呼んでくれ様付けもいらないぞ? 」
「分かりましたわ、ではユウマ、攻撃はお任せいたします」
「あの、頑張ってくださいねユウマ」
二人の言葉に気持ちが昂る
「おう、任せておけ」
俺は、そういって素早く目の前にいたゴブリンを一気に3匹切り捨てると、振り向きざまに剣を背後から襲い掛かってきたゴブリンに突き刺し引き抜く、そして遠方にいた弓矢を持ったゴブリンに向けて手をかざし
「アイスアロー」
と氷の矢を連続で放ち、弓矢ゴブリンの身体を氷の矢で射貫いていく、そしてまた素早く移動して結界に近づこうとしていたゴブリンの集団をアイスアローで牽制しつつ剣が届く距離まで来たら横一文字に一気に斬り相手の棍棒もろとも切り裂いてゴブリンを真っ二つにしていく、広範囲の魔法も使いたかったがまだ森の中だ、誤爆は避けないと
「ユウマ、あれを! 」
リリアの声で振り返ると少し図体の大きいゴブリンが現れた、コイツがこの集団のリーダーか、俺は剣を構え直して一気に間合いを詰める
ゴブリンリーダーは雄叫びを上げて石斧を振りかぶる
「ウガアアアアアアッ! 」
という雄叫びと共に石斧を振り下ろすが、俺は難なくそれを避けるとヤツの懐にはいって剣をわき腹に突き刺しそのままえぐるように振り上げた
「ギャアアアアア! 」
振り上げた剣は奴の腕も切り裂き、悲鳴を上げて石斧を落とす、だが
「グオオオオオオッ」
最後の一撃とばかりに奴は俺につかみかかろうと手を伸ばしたが、その手が届くことは無かった
「オークよりもしぶといとか、どうなってんだよ、だが! 」
俺は掴みかかる奴のその手も切り落とし、素早く構え直して奴の心臓目掛けて剣を突き刺した、ゴブリンリーダーはこれで絶命した、俺はまだゴブリンが居ないか辺りを移動しながら見回すが、もうそのような気配も無かった。
「ふう、これでもう大丈夫だろ」
俺は結界を張っているリリアの元へ向かい
「もう大丈夫だ、周囲に敵は居ないよ」
そう言うとリリアは安堵して結界の魔法を解いた
「さあ、カサドル様、村へ戻りましょう」
リリアの声にミナも頷く
「いやあ、助かった、まさかゴブリンが襲って来るとはな、しかしこれは報告しておいた方がよさそうだな、森の奥にゴブリンの巣があるやもしれん」
カサドルさんの言葉に俺も同意する
「ああ、それは冒険者ギルドに報告して対策を立ててもらおう、兎も角、村に帰ろう」
こうして俺たちは最後にアクシデントがあったものの、
無事に村に戻って来たのだった
第5話までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は天聖石の使い方と、その可能性を描きました。
ただし、
これはまだ“入口”に過ぎません。
次話からは、
この力がもたらす選択と代償が、
よりはっきりと形になっていきます。
よろしければ、引き続きお付き合いください。




