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第4話 狩猟開始! 夜スライムと天聖石

※第4話は

夜の森での狩猟、罠を用いた捕獲描写が中心となります。

派手な戦闘よりも、準備と知識を活かした行動を描いた回です。

「さあ、これから狩りの時間だ」


 俺とリリア、そして新しく仲間になったミナの3人は、夜の森に発生すると言われている、夜スライムというモンスターを捕獲もしくは倒して、このモンスターからドロップすると言われている天聖石を手に入れるために、ミナさんの紹介で知り合った猟師のカサドルさんの案内で、夜スライムが今晩発生するであろう場所の周辺に罠を仕掛けて夜が来るのを待って、カサドルさんが貸してくれた野営地にキャンプを張り、待機していた


「本当に表れるんでしょうか」


リリアは不安を口にするがミナは


「大丈夫です、カサドルさんは夜スライムの狩猟で失敗した事は無いそうなので、必ず捕まえることが出来ますよ」


ミナは自信満々にそう答える


「まあ、その道の達人に聞くってのは、こういう未知の分野では有効だからな、しかし発生時にどの程度の数が出てくるのかは知りたかったな、結局カサドルさんも夜スライムの発生個体数に関してはハッキリ言ってなかったからな」


 しかし日が落ちてから、カサドルさんが発生個体数をハッキリ言わない理由も、なんとなくわかる……暗くなるにつれて周囲が徐々に見通しが悪くなってきた、こう視界が悪いと、たとえ発生した気配が分かったとしても、元々透明な体のスライムだから視認性が極端に低下する為にウッカリ見逃す可能性が高くなることは明らかだ、となると待ち伏せて罠にかかってから仕留めるという作戦はかなり有効だと思う


「カサドルさんの話だと深夜に夜スライムが出てくるんだっけ? 」


俺はミナに聞くと


「あ、はい、夜になったばかりだと、まだ出てこないそうです、夜が深くなって月明かりが輝く頃に出現するみたいです」


じゃあ、まだしばらく時間はあるのか


「よし、今のうちに飯にしよう! 」


俺がそう言うと


「あっ、じゃあ今回は私が料理を作りますね、材料も家から持ってきたので美味しい料理を期待してくださいね」


 ミナはそう言ってテントの中の荷物から食材と携帯用の調理器具を取って来ると、野菜の下準備を始める


「じゃあ私はテントの周りの安全確保の為に結界を張っておくわ」


 リリアはそう言ってなにやら荷物から数本金属製のトーチを取り出すと呪文を唱え始めた、するとトーチから淡い光が発生した、そのトーチをテントの傍の地面に刺していく、普段はカバーがついているその根本は鋭くとがっているので、女性でも簡単に地面に突き刺すことが出来るようだ


「勇者様、あと数本トーチを刺して結界を完成させますので、その間ミナの護衛をお願いできますか? 」


「リリアは大丈夫なのか? 」


「ご心配なく、私にはこれがありますので」


そう言ってリリアは加護の強化呪文を唱えるとリリアの身体が一瞬淡く発光して消える


「ダメージ軽減の魔法か、じゃあそっちは任せた……間違っても俺たちが仕掛けた罠に引っ掛かるなよ? 」


「そんなへマは致しませんわ、安心してくださいまし、料理が出来る前には戻ってきますわ」


そう言ってリリアはテントから離れた


「さて、辺りを見回してみるか」


 俺は調理の邪魔にならないようにしながら、ミナから離れないように周囲を見回す、夜なのでキャンプの焚火から少し離れた場所はやはり見にくい、だが周囲に嫌な気配は無い、とりあえずは大丈夫なようだ


しばらくすると、リリアが戻って来た、それを見てミナが声をかける


「あ、おかえりなさい、リリア様」


「おかえり、リリア」


「ええ、只今戻りましたわ、勇者様の方はどうですか」


「こっちの周辺には、今のところ危険な気配は感じない、リリアの結界もあるのだから大丈夫だろう」


と、なにやら良いにおいが漂ってきた


「リリア様、勇者様、料理が出来ましたので、食事にしましょう」


 とミナが言ってきたのでミナの所に行くと、少し大きめのナベが焚火を使った焼き台の上に乗っていた


「今回は道具も調理器具も限られていたので鍋料理を作ってみました」


 そう言って鍋の蓋を開けると中には、ひと口大に切った野菜や肉、そしてキノコなどがスープと一緒に煮込まれていた


「おお、これは美味そうだな」


「スープなのに具沢山ですのね」


 俺たちがそう言うとミナは笑顔でナベの物をスープレードルで木の器に取り分けていく


「ミナ特製の野菜たっぷり具沢山スープです、熱いので気を付けて召し上がってくださいね」


「おお、でもスープって煮込みとか結構時間が掛かるんじゃなかったか」


俺の疑問にミナは笑顔で答える


「はい、確かにそうです、だからあらかじめスープのもとになるベースをこの保温ビンに入れておいて持ってきたんです、後は切った材料と一緒に加熱調理するだけなんですよ」


「なるほど、そういう方法もあるのか、流石に料理が得意と言うだけの事はある」


 そういって渡されたスープをスプーンですくい、野菜と一緒に口に運ぶが、熱い……息を吹きかけて熱を冷まして、再び口の中へ


「うまい! このスープ、短時間で煮込んだとは思えない、野菜もしっかり火通っているし……うん、肉も旨い! 」


俺がそう言って食べていると、リリアも


「本当に美味しいですわ、お肉も火は通っているのに固くなっていないし、玉ねぎもとろけるような食感と甘みがあって美味しいですわ」


 こうして、ミナが作った料理で温まった後、俺たちは交代で外を見張る事にした……通常野営する場合は、交代で一人が焚火の火を絶やさない様にしながら周囲を警戒するのは当たり前なのだが、3人パーティーとはいえミナは非戦闘員の為、リリアと2人で交代して見張る事になった


 そして最初は俺が見張りとして周囲を警戒する事になった……出来ればリリアと交代する前に夜スライムを見つけられると良いのだが、まだ真夜中には時間があるので、ひたすら焚火の火を絶やさないように薪の補充と警戒に努めた


「天気が晴れてよかった、カサドルさんの話じゃあ雨天曇天では夜スライムは発生しないらしいからなあ」


 そんな事を呟きながら周囲を警戒しつつ火の番をしていると、森の奥の方から足音が聞こえた、音のする方角を警戒しながら様子を窺うと、現れたのは猟師のカサドルさんだった


「よお、守備の方はどうだ? 」


「カサドルさん……脅かさないでくださいよ」


「ははは、いやあスマンスマン、ちょっと様子を見に周辺を見回っていたのでな、ついでに寄ってみたんだ」


カサドルさんは当初の予定通り俺たちが野営している地点から少し離れた場所で野営をしていたのだ


「こちらは特に何もありませんよ、所でどうしたんですか? まだ夜スライムの発生まで時間が有ったと思ったんですが」


俺がそう言うと


「まあ、そうなんだが、お前さんにこれを見てもらおうと思ってな」


 そう言ってカサドルさんは腰のベルトポーチから子供のこぶし大の石を取り出して見せた、何の変哲もない石ころだが片側の側面に大きく数字の1が彫り込まれていた


「これはひょっとして天聖石ですか? 」


俺はそう言うとカサドルさんは


「よく知っているな……そうだ、そのレプリカだよ、知り合いの石工職人に依頼して形や寸法、重量や風合いも全く同じに作ってもらったよ、まあレプリカ元である本物の天聖石はその石工職人に預けてあるがね」


 そう言ってカサドルさんは天聖石レベル1のレプリカを俺に持たせてくれた、彫り込まれた数字と天聖石と言う情報が無ければ見た目は数字が掘られた只の石だ


「本当に見た目はただの石なんですね、でも何故わざわざこんなレプリカを作ったんですか? 」


俺のその質問にカサドルさんは


「まあ、確かにそう思うのが普通だろうな、だがこの天聖石は面白い特徴があってな、そこに興味を惹かれたんだ」


「それは、どういう特徴なんですか?」


「うむ、これは知り合いの遺跡調査をやっている歴史学者が言っていたんだが、天聖石というモノは同じレベルの石は皆、同形で同じ重さ、同じ風合いなんだそうだ、レベルの違いによる大きさの違いはあるが同じレベルの天聖石で違う形や重さの石は存在しないんだそうだ」


 この話に俺は驚いた、つまりこのレプリカの石の特徴を覚えておけば天聖石の真贋が可能になるという事になる


「すごいですわね、天聖石にそのような特徴があるなんて知りませんでしたわ」


「流石カサドルさんは天聖石の事に詳しいですね」


 不意に聞こえたその声に後ろを振り向くと、テントの中で仮眠を取っていたはずのリリアとミナが、いつの間にか俺の後ろにいて俺が手に持っているカサドルさんの天聖石のレプリカを興味深く観察している


「二人とも、いつの間に起きてきたんだ? 」


と言う俺の問いにリリアは


「テントの傍で話し声が聞こえたら気になって眠れませんわよ」


「それに、こういう情報は早く共有した方が良いと思いませんか? 」


とリリアに続いてミナも答える、確かに声が大きかったかもしれない


「なるほど、まあ、確かにその通りだな、カサドルさん二人にこの石を持たせても」


「ああ、構わんよ、元々教えるつもりだったからな」


 そう言ってカサドルさんの了承を得た俺たちは天聖石のレプリカを観察し、メモを取った、俺が絵に描いておこうと筆記具を出そうとしたら、リリアが


「そんな手間のかかることしなくても魔法で羊皮紙に転写できますわよ? ほら、こんなふうに」


 そう言って天聖石のレプリカをもって呪文を唱えると、さっき見ていた天聖石レベル1の絵が羊皮紙に書き込まれていた


「ほお、面白い魔法を使うなあ、それならその天聖石のレプリカはお前さんたちに譲ってやろうか? 」


と言うカサドルさん


「良いんですか? カサドルさんが石工職人さんに依頼して作ってもらったものでしょう? 」


と俺が言うとカサドルさんは笑いながら


「なあに大丈夫だ、天聖石のレプリカなら予備でもう一個持っているから遠慮するな」


と言うので、俺はその厚意を有り難く受け取る事にした


「じゃあな、そろそろ持ち場に戻るから、お互い頑張ろうな」


「はい、必ず夜スライムを狩りましょう」


 カサドルさんが元の野営地へ戻ってしばらく経った、いよいよ深夜に差し掛かる頃、俺はリリアと交代して仮眠を取っていた、そろそろリリアと交代の時間になると思い、早めに起きてテント内で支度をしていた所にリリアが外からテントに声をかけてきた


「勇者様、起きて下さいまし、夜スライムが現れましたわ! 」


 俺はすぐさまテントを飛び出し、リリアと共に罠の設置場所へ向かう、すると俺が仕掛けておいた野ウサギ捕獲用の罠に何かが掛かっていた、だが中の生物が激しく暴れて今にも罠が壊れそうになっている


「まずいリリア、罠が壊れそうだ! 」


と俺が言うとリリアは


「お任せ下さいまし! 」


とすぐに外衣の中からスクロールを取り出して広げて、罠のほうを指さし


「スタン! 」


 と唱えると罠の中にいた物体はビクンッと跳ねた後、動かなくなったので俺は罠の蓋を外して中身を取り出すと、そこから無色透明のバレーボールぐらいの大きさのスライムが出てきた


「コイツが……夜スライムか」


 と直ぐに辺りに仕掛けてあった落とし穴にドサドサッっと何かが落ちる音が立て続けに聞こえる


「あら、落し穴にも掛かったようですわね」


 そう言ってリリアは移動して結界魔法の応用で次々と穴を結界で蓋をする、と落し穴の近くにあった茂みからガサガサッと物音がしたかと思ったらすぐに静かになった


「まだ1匹いたのか、しかしどうやら逃げられたみたいだな」


「そうみたいですわね、カサドルさんの所は大丈夫なんでしょうか? 」


「カサドルさんのことだから、大丈夫だとは思うが、先ずは捕まえた奴と落し穴に落ちた夜スライムを処理しておくか」


 そういって俺たちは罠に掛かった夜スライムを処理していく、すると石が出てきた、俺はそれをもって観察する、カサドルさんが持ってきた天聖石のレプリカと瓜二つ、まったく同じ形の石があった


「これが本物の天聖石か」


「でも、これってどうやって使うんでしょうか」


 リリアの疑問ももっともだ、俺たちはこの天聖石がどういった効果をもたらすかは知っていても、どうやって使うかは知らない……そう言えば、神もその辺については説明してなかったな、頭上に掲げれば効果が表れるのか? そう思い天聖石を手に取り、その手を天に掲げる、だが、辺りは静かなままだ


「何も、起きませんわね」


リリアは首を傾げる


「いったい、どういうことだ? 」


 これでは天聖石を入手出来ても使い方がわからなければ、効果など確かめようもない


「いや、カサドルさんなら、何か知っているかもしれないな」


俺の案にリリアも頷く


「そうですわね、それにカサドルさまがご存じなくとも、知り合いの歴史学者ならご存知かもしれませんわ」


確かにリリアの言う通りだ


「この辺の夜スライムはもう居ないようだし、今からカサドルさんの居る野営地へ向かうぞ」


 俺はキャンプで寝ていたミナを起こして三人でカサドルさんの野営地へ向かった

「おお、お前さんら、夜スライムの方は無事狩れたのかい? 」


「はい、やっぱり何匹か取り逃がしてしまいましたが、一応目標としていた数は確保できました……所でカサドルさん、それは何ですか? 」


俺はカサドルさんがやっている作業を聞いてみた


「ああ、これかい? こいつはスライムの皮を干してギルドに買い取ってもらうための下処理さ」


 そう言ってカサドルさんは捕獲できた夜スライムを手際よく解体して内臓を捨てて、透明な皮を網にはさんで干すための四角い金網に夜スライムの皮を挟んで重ねていくと、まとめて袋に入れていた


「ギルドってひょっとして冒険者ギルドですか? 」


俺がそう聞くとカサドルさんは


「いいや違う、冒険者ギルドではなく狩猟ギルドだよ、俺は別にモンスターとの戦闘に強いワケではないしなあ、森に入って獣やこういった捕獲できるモンスターを罠で捕獲して、素材や肉を納めるんだよ」


なるほど、そうやって得たお金で生活をしているのか


「お前さん方、冒険者ギルドへは登録は済ませたのか? 」


その質問にはリリアが答えた


「ええ、私と勇者様は王都で手続きを済ませていましたが、ミナはこの村にある冒険者ギルドの支部で登録を致しましたの」


「ほお、ミナはあの村を出るのか、外は危険も多いから気を付けるんだぞ」


とカサドルさんはミナに声をかける、昔からよく知っていたんだろうなあ


「はい、ありがとうございます」


「ところで、お前さん方、何か聞きたい事があったんじゃなかったのか? 」


 とカサドルさんに聞かれて、俺は天聖石の使用方法について質問した、もって天に掲げても何も起きなかったと説明するとカサドルさんは


「何だ、そんな事か、使用方法なら知っているぞ、天聖石の事を知り合いの歴史学者から聞いた時に一緒にその使用方法も聞いたからな」


と答える、俺はカサドルさんに


「そうなんですね、で……その方法とは何なんですか? 」


と聞くと、とんでもない答えが返ってきた


「なに簡単だよ、その天聖石を食べるんだよ、そうして体内に入った天聖石は効果を発揮する、ただ、普通の人間が食べても効果はないから試したことは無いけどな」


その言葉に俺たちは唖然とした


「なんだって? 」


「天聖石を……」


「食べちゃうんですか? 」


呆然とする俺たちを見てさらに追撃が来た


「その石はな、見た目も質感も石そのものだが、刃物をあてると斬ることが出来るそうだ、そうして食べやすい大きさにしてから、口に入れてよく噛むと良いと言っていたな、本当かどうかは知らないが……どうした? 」


カサドルさんの話に文字通り石のように固まった俺たちは、天聖石をどうやって食べるのかという新たな問題にぶつかったのであった


第4話までお読みいただき、ありがとうございます。

今回は夜スライムの狩猟と、天聖石に関する新情報を中心に描きました。


天聖石の「使い方」については、

まだまだ分からないことだらけです。


次話では、

この情報がどう活かされていくのか、

そして森で感じた“違和感”が少しずつ形を持ち始めます。


よろしければ、引き続きお付き合いください。

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