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異世界召喚の代償は三歳の身体と五千万円のローンでした! ~目指せ完済!スキル『我が家』で借金返済しながら成り上がります~  作者: ゆずこしょう
ダンジョンでお金稼ぎ始めます!

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初めてのお客様は白虎でした。

「……だいじょーぶ、でしゅか?」


転がっている男の人に声をかけると、ゆっくりと目が開いていく。


「き、きみは……天使……?」


「てんしじゃにゃい。まりかにょ。」


結構血が流れていたので心配していたが、話せる状態ではあるらしい。


「あら、さすが白虎族ね。身体は丈夫なのかしら。」


「からだがじょーぶ……いたい、いたい、ない?」


男の人の状態を確認するようにぐるぐる回ると、マチルダが「ふふっ」と声を漏らした。


「まりか、そんなに心配してたのね……」


(血を流している人がいたら、誰だって心配するでしょ!?)


それに今までいた世界では、ここまで怪我している人を見る方が少ないくらいだ。


「そんな顔しないの」


マチルダは私に近づくと、頭を撫でた。


知らないうちに、手にぎゅっと力が入っていて、顔も暗くなっていたみたいだ。


「安心しなさい。白虎族は獣人族の中でも強固な種族。治癒するのも早いと聞くし、そのうち良くなるわ。」


(……よかった)


ほっと胸をなでおろしてから、私は顔を上げた。


「このひと、はじめてにょ、おきゃくしゃ!!おかね、もらう!!」


思ったより大きな声が出ていたのか、マチルダは少し後ずさった。


「そ、そう……ね……確かに……だったらちょっとでも快適に過ごしてもらわないと……いけないわね?」


ダンジョンの中で、しかも魔物も来ないと言うだけで快適な気もしなくもないけど……


私のスキルを他の人にも知ってもらうためにも、


「うにゅ。このちとに、いいせいかちゅを、ぷれじぇんと、すりゅ!!」


手を広げてマチルダに伝えれば、マチルダは男の人に視線を戻した。


「そうね!今はお金も必要だし……歩く広告塔になってもらいましょう。見たところ、身なりもそれなりだし、お金は持っていそうだもの。」


別にお金を奪う気などはさらさらない……


だけどマチルダの気持ちも凄くわかる。


(この数日で……またローン増えてるもんね。)


日本円にすると、六千万近い……


(取れる時に、取れる所から、取れる分だけ取っておかないと!)


私は鼻息を荒くしながら、コクコクとうなずいた。


「まりか。私はこの人を見ておくから、あなたはトットールの所に行ってきて?あいつなら、それなりのテントを持ってると思うから。」


トットールが良いものを持っていることは不思議だけど……


(こういうのは聞かないが吉ね……)


私はマチルダに言われた通り、少し離れたところで未だに桑を振り回すトットールの元へ向かった。


***


「んっ……オレは一体……」


うっすらと目を開ける。


数週間前、パーティーメンバーとダンジョンに入ったところまで覚えている。


男所帯の中に、新しく一人加わって……


それから、少しずつ空気が変わっていった。


(あの女が入ってから……ダンジョン攻略が進まなかったんだよな……)


今思えば、女慣れしてないパーティーでも、狙ってたんだろうな……


ぼんやりと、天井を見上げていると、妙な違和感が、じわりと体に広がった。


(……?)


ゆっくりと意識が浮かび上がる。


(……痛く、ない?)


あれだけの傷を負っていたはずなのに、身体が妙に軽い。


体を少し起こしてみると、ふと腹のあたりに重みを感じる。


(攻撃を受けた時の重さとは違う気が……)


視線を落とすと――


小さな子供がすやすやと寝息をたてながら眠っていた。


「……?」


(だ、誰だ!?この子は……)


一人で状況を理解できずにいると――


ふいに、視界が明るくなった。


「まぶしっ……」


思わず目を細める。


「あら、目が覚めたのね。良かったわ。」


すぐ目の前に、エルフの男……


(いや……女、か……?)


がいた。


「こ、ここは……一体……?」


布が擦れるような音が、耳のすぐそばで聞こえた。


女はオレのすぐ近くに腰を下ろすと、小さな子供を揺さぶる。


「まりか、起きなさい!お客さんが目を覚ましたわよ!」


「ん……客?」


オレは怪我をしたことでダンジョンに置き去りにされたはずだ。


(一人で歩けるような状態ではなかったはず……)


「んっ……んぅ……おきゃくしゃ、よかた……すぅー、すぅー……」


「あら、今日はもうダメそうね。」


女は子供の頭を撫でる。


「感謝しなさいよ?あなた、まりかのお陰で助かったんだからぁ!」


(ちょっと声が低いような……やっぱり……いや、考えるのはやめよう……)


「と、言ってもあなたは大事なお客様なんだけどねぇ!」


そう言ってウインクをすると、まりかと言う子供を抱き上げた。


「今日はこのままゆっくり休んでちょうだい。明日また話しましょ」


「ちょ、待ってくれ……外は危険なはず……だ……」


言い終わる前に、マチルダはくるりと背を向けた。


「大丈夫よぉ。この中は安全だからぁ。」


そう軽く言い残すと、そのままテントの外へと出ていった。


「一体……何がどうなっているんだ……。」


頭を抱えて考えるが、血を沢山失っていたせいか、思考がうまくまとまらない。


ふと、自分の腕に視線を落とす。


(……傷が……ない?)


確かに深く裂けていたはずの傷は、跡形もなく消えていた。


恐る恐る体を動かしてみても、痛みはほとんど感じない。


(ありえない……あの状態から、こんな短時間で……?治癒魔法でも簡単には治せない傷だぞ!?)


混乱したまま周囲を見渡すと、簡素ではあるが、しっかりとした作りのテントの内側が目に入った。


寝やすいようにか、小さなろうそくがゆらゆらと揺れている。


(……ここは、安全……なのか……?)


さっきの女の言葉が、頭の中で何度も繰り返される。


「この中は安全だからぁ」


その言葉に、わずかに張り詰めていた意識が緩んだ。


まだ全てを信じたわけじゃないが――


(あいつらよりは信用できるな……)


オレは、ゆっくりと息を吐いた。


瞼が少しずつ下がってくる。


(……少しだけ……休むか……)


そう思った瞬間――


意識は、再び深い闇へと沈んでいった。

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