ダンジョンでお金稼ぎ、始めます(戦闘はしません)
「おあよぉごじゃましゅ……」
翌朝――
いつのまにか寝てしまっていた私は、ピヨピヨと鳴く小鳥のさえずりで目が覚めた。
「まりか、おはよう!起きたのね。」
昨日、桜と話をしたところまでは覚えていたが、それ以降の記憶がない。
(すぐ眠くなっちゃったから大丈夫だと思うけど……)
どこから取り出したのか、犬小屋の前にはテーブルや椅子がきれいに並べられている。
しかもその上には――
「おいちしょ~なにおい……」
パンやベーコンエッグが湯気を立てていた。
「でしょ~。そろそろできあがるから、椅子に座って待っていてちょうだい。」
鼻歌交じりに料理するマチルダを見ていると、ここがダンジョンということを忘れてしまいそうだ。
(と、言っても私のスキルの中だけどね……)
~♪~♪
「ふふ♪ まさか、ダンジョンの中で料理することになるとは思ってなかったんだけどね~。持ってきておいて正解だったわ~。」
マチルダの鼻歌につられたのか、トットールがテントから顔を出した。
「まりか、おはよう。マチルダも……」
「全く私はついでなわけ~?まぁ、いいけど~……」
……
「えっ!?て、てんと!?」
「そろそろご飯できるから、あなたも早くテントを片付けちゃいなさいよ~」
どうやらテントで間違いなかったようだ。
っていうか……まさかテントがあるなんて……
(これが普通なの!?)
目の前で起きていることに驚いていると、コトンとスープカップが置かれた。
「熱いから、やけどに気を付けてね。」
「あ、ありがちょ。」
(うん……テントのことはあとで考えよ……)
私はスープカップを手に取ると、ふぅ~ふぅ~と湯気を飛ばした。
「いただきまちゅ」
「は~い!めしあがれ~!!」
マチルダからの返答を聞くと、ゆっくりカップに口をつけた。
「おいちぃ~……」
「でしょ~?空間魔法はありがたいことに時間を止めることができるのよ~。だから鮮度もそのままってわけ。おかげでおいしいものはおいしいまま食べることができるのよ~!」
流石空間魔法……
(なんでもありなのね……)
といっても、このスキルだってローンを除けばそれなりにいいスキルだ。
うるさい狐がついてくるけど、そこは大型犬と思えば我慢できるし……
(住居だって作れるわけだしね。)
ちまちまとスープを飲んでいる手がぴたりと止まった。
住居……
視線だけを動かして、テーブルや椅子、そしてテントを見る。
(宿屋を作ってからスタートしなくてもいいんじゃない!?)
今の私じゃ戦って素材集めをするのは難しい。
それどころか、このまま外に出てもダンジョンから出られるかすらわからない。
「しょ、しょーだ!!」
(だったら……)
私はガタンと椅子から立ち上がった。
私の声に、トットールとマチルダが反応する。
「どうしたの!?急に立ち上がって……」
「何かあったのか?」
「とと、まちりゅだ!しゃくしぇん、へんこうにょ!」
「作戦?」
トットールは首を傾げ、マチルダは「そんなのあったかしら~」とのほほんとした声で返す。
どうやら、二人の中では宿屋を開店するというのが作戦の中には入っていなかったらしい。
「やどやにょ!や・ど・や!」
「あぁ~宿屋のことねぇ~。」
マチルダは軽くうなずくが、トットールはまだ状況を理解しきれていないのか、眉をひそめた。
「宿屋の話しか。」
「だが……材料も設備も足りていないだろう?今の状態で宿屋をやるのは――」
「ちがうにょ!」
思わず声を被せる。
「やどや、じゃにゃいにょ!」
「……?」
二人の視線が私に集まる。
私はテントを指差して、ぐっと胸を張った。
「きゃんぷじょにょ!!」
「……キャンプ場?」
「そうにょ!」
こくこくと何度も頷く。
「だんじょんのなか、だけど……ここはあんぜんでちょ!」
「ねりゅとこありゅ。ごはんもちゅくれりゅ。」
「だんじょんで、ゆっくりやしゅめりゅ!ぼうけんしゃには、とてもだいじだとおもうにょ!」
指折り数えながら、必死に言葉を並べる。
「だったら……とまるとこ、かせばいいにょ!」
一瞬の沈黙。
そして――
「……なるほどな」
トットールが小さく息を吐いた。
「宿屋を作る前に、“泊まれる場所”として運用する……ということか」
「そういうことねぇ~」
「しょゆこと!!」
私は二人に笑顔を向けると、大きくうなずいた。
ダンジョンであの魔物に出会ったとき、トットールとマチルダは驚いていた。
恐らくここにはいない魔物が出てきているということなのだろう。
それに、他の冒険者が全然いなかったのは……
(負傷して動けないか……あの魔物にやられたか、どっちかな気がするのよね。)
だったら、ここに来た冒険者を助けながら、キャンプ場を始める。
そして――
「ちゅよい、ぼうけんしゃ、みちゅけたりゃ、いっしょに、たたかってもらうにょ!」
「なるほどな……確かに、それなら理にかなっている。」
「元々パーティーは三人以上で組む人が多いしねぇ~。ここで強い冒険者を探す……ありかもしれないわね!」
トットールとマチルダは二人で視線を合わせると、こくりとうなずいた。
「できれば前衛職が来てくれるといいんだがな……」
(確かに……パラディンみたいな盾職いてくれると勝てそうだよね……私じゃ盾にもなれないし……)
こうして――まりかのダンジョンキャンプ場計画が動き出した。
もちろん、このときはまだ。
色々と問題が山積みだということに――
誰も気づいていなかった。
「で……?キャンプ場はいいけど、この中にどうやってお客さんを呼ぶの?」
「あっ……そりぇは……こりぇかりゃ、かんがえましゅ……」




