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異世界召喚の代償は三歳の身体と五千万円のローンでした! ~目指せ完済!スキル『我が家』で借金返済しながら成り上がります~  作者: ゆずこしょう
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追い詰められたらスキルが発動しました。

「で、でちた……!?」


辺りを見渡すと、目の前にいたはずの大きな魔物はいなくなり、さわさわと桜の木が揺れている。


そして、目の前には――


小さな犬小屋がポツンと建っていた。


(ここは――スキルの中……)


じゃあ……


「しぇ、しぇいこう!?や、やった。びゃく……しぇいこうちた!!」


「ええい、うるさい。そんなに言われなくても聞こえているわ!」


ぴょんぴょんと跳ねて喜んでいると、白夜がゴホンと咳払いをした。


「おい、まりか……それよりも二人のことはいいのか?」


二人……


(……あ)


白夜の言葉で、一気に現実に引き戻される。


生命の危機だったこともあって、すっかり頭の中から抜け落ちていた。


「とと……まちりゅだ……?」


もう一度、きょろきょろと辺りを見渡す。


(二人も一緒に来れたかな……)


一瞬、二人の姿が見えなかったことで、胸がドクンと波打った。


(やっぱり……ダメだった……?)


そう思っていれば、白夜が顎をクイッと持ち上げて、とある方向を指した。


トテトテと歩いていく。


そこには――


呆然と立ち尽くす二人の姿があった。


「いた……」


ホッと息を吐く。


「よかった……」


さわさわと桜の花びらが舞い、二人の肩にひらりと落ちる。


「こ、ここは……一体……」


「苦しかったはずなのに……」


私は二人に近づくと、マチルダの服の裾をくいっと引っ張った。


「まちりゅだ……とと……?」


二人の視線が、ゆっくりとこちらに向いた。


呆然としていた表情が、ほんの少しだけ揺れる。


「「まりか!」」


二人は私の名前を呼ぶと、ギュッと抱きしめた。


「無事だったのね!!」


「よかった。」


二人の声に涙が浮かぶ。


(……助けられてよかった)


それからしばらくして、マチルダが声をかけてきた。


「それで……?ここは一体どこなの?」


私はマチルダを見上げると、その言葉を待っていたとでもいうように、にっこりと笑った。


「ふふ……ここはにぇ……まりかにょ、すちりゅのにゃかよ!」


「「す、すちる!?」」


二人の声が重なる。


「そうにょ!にゃんかちゅかえたの!!」


ふふんと胸を張って答えると、白夜が「我のおかげだろうが……」と呟きながら、足先をなめている。


「びゃく、うるちゃ!」


「ふん、お前に言われたくない!」


「おみゃえじゃにゃい!まりかにょ!」


「はぁ~!お前でもいいだろうが!」


「おみゃえじゃにゃい!ま・り・か!」


白夜と言い合っていると、トットールたちがぽかんと口を開けてこちらを見る。


「あれ……白夜って……」


「ポシェットだったよな……」


二人の視線は、私の隣にいる白夜へと向けられていた。


(そっか……この姿、初めてだもんね……)


「ふん。あれは仮初の姿よ。本当はこっちが本物だ。」


「かりしょめ……?ちがう、いしぇかいだと、あのしゅがたにしかにゃれないだけ、でちょ!」


「ええい!さっきからうるさいぞ!」


白夜が唾を飛ばしながらガミガミと叫ぶ。


「うるちゃいにょは、そっち!」


小さい指で白夜を指さすと、ぱくりと私の指に噛り付いた。


「いちゃい!」


「ふん、お前がわるいのだ。」


「もう……何やってるのよ、二人とも」


マチルダが呆れたようにため息をついた。


「それよりも、ここについて教えてちょうだい。」


「……で……ここは安全なの?安全じゃないの?」


見た感じ安全そうには見えるが、何も知らないマチルダたちが不安を感じるのも無理はない。


私はマチルダの言葉にうなずくと、そのまま話を続けた。


「うん!ここは、まりかにょ、すちりゅにょ、なかにゃのよ!」


「だかりゃ、まもにょもこにゃい。あんぜんにょ!」


胸を張って答えると、白夜がふんと鼻を鳴らした。


「といっても、犬小屋と桜の木しかないがな。」


「びゃく、だまっちぇて!」


「ふん……まあいい。安全なのは事実だ」


白夜はそう言いながらも、じっと私を見た。


「まあ、ここにいる間は……だけどな……」


「……どういうこと?」


マチルダが眉をひそめる。


白夜は少しだけ間を置いてから、肩をすくめた。


「外に出れば、話は別だということだ。」


「え……?」


「ここは守られている。だが外は違う。さっきの魔物が消えた保証などどこにもない。」


白夜の言葉を聞いた瞬間、胸の奥がすっと冷える。


「しょーゆーこと……」


さっきまでの安心が、ゆっくりと剥がれていく。


「確信は無いが、そういうことだ……」


私はどこか得意げな白夜を、じっと見上げた。


(……なんか腹立つ)


白夜と視線がぶつかったまま、しばしの沈黙が落ちる。


どちらも引く気はない。


そんな空気の中、マチルダが言いにくそうに口を開いた。


「……あの、二人?いえ、一人と一匹ね」


「話の途中で悪いんだけど、一つ聞いてもいいかしら?」


マチルダに視線を向けると、白夜をちらりと見た。


「まちりゅだ、どちたにょ?」


「その……そちらの偉そうな狐は、何者なのかしら?白夜って言ってたけど……私の知ってる白夜は、まりかのポシェットなのよねぇ。」


「……」


「偉そうは余計だ!!マチルダ、お前も我に対して失礼だぞ!!」


「ご、ごめんなさいね?でも、私たち初対面よね?」


マチルダは不思議そうに首を傾げた。


それもそのはずだ。


会ったことがあるのは、ポシェットとしての白夜だけなのだから……


しかし白夜はそれに気づいていないのか、ガミガミと言い返す。


「初対面!?そんなわけないだろうが。お前だけじゃなく、トットールだって我のことを知っているはずだ。」


「なっ?トットール。」


肯定を求めるように、トットールへ視線を送る白夜。


だが――


「いや、俺も初めて会うぞ?」


その一言で、白夜の自信が音を立てて崩れた。


「……っ」


吹き出しそうになるのを、もう止められない。


「ぷぷぷ……ははははははははは!!びゃく、だれもしらにゃ……えらしょーなきちゅね……うけりゅぅ~!!」


「なっ、なっ……」


白夜の顔がみるみる赤く染まっていく。


「なんだってぇぇぇ~~!!」


私は涙を拭いながら、白夜を見上げた。


「ぷぷっ……えらしょーにゃきちゅね……」


まだちょっと、笑いが止まらなかった。


「笑うなぁぁぁ~!!我は高貴な狐なのだぁぁぁ!!」


先ほどまでの陰鬱とした空気は、もうどこにもない。


――けれど。


その外では、まだ何も終わってはいなかった。

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