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異世界召喚の代償は三歳の身体と五千万円のローンでした! ~目指せ完済!スキル『我が家』で借金返済しながら成り上がります~  作者: ゆずこしょう
どうやら嫌な予感が的中したようです。

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どうやら嫌な予感が的中したようです。

「マチルダ。」


「えぇ、わかってるわ。」


マチルダは私を抱き上げると、急いで後ろに下がった。


「にゃ、にゃに!?」


「今は、これ以上ここにいるのは危険ってこと。」


その間も、ドスン、ドスンと何かが近づいてくる音が聞こえる。


「一旦ここを離れよう……」


離れるって……


(せっかく来たのに!?)


「みしゅりりゅは……!?」


思わず声を上げると、マチルダとトットールが一瞬だけ言葉に詰まった。


「今はそれどころじゃないわ!」


「この気配……明らかにおかしい。」


二人の声は、先ほどまでとは違って低く、張り詰めている。


ドスン――


ドスン――


地面が揺れる。


確実に、こちらへ来ている。


「マチルダ!!」


「わかってる!!」


いつになく真剣な二人の声に、思わずギュッと目をつぶった。


その瞬間、パチン――


マチルダが指を鳴らした。


「あら……おかしいわね。」


パチン


もう一度指を鳴らす。


しかし、何度指を鳴らしても――


景色は、変わらない。


「……っ、なんで……!?どういうこと!?」


マチルダの声が、わずかに揺れた。


「どうした……」


「転移が、使えないのよ。」


「……なに?」


トットールの声が低く沈む。


ドスン――


ドスン――


その間も、どんどんと近づいてくる大きな音に、緊迫感が漂っていた。


「……もしかして、魔法が使えなくなっているのか……!?」


「まほうがちゅかえにゃい……!?」


さっきの戦いぶりからして、魔法が使えなくても問題はない気がするけど……


二人の慌て方を見るに、かなりの強敵ということなのだろうか……


(それにしても……なんでこんなに二人は苦しそうなのかな……)


二人を見ると、さっきよりも顔色が悪くなっている。


呼吸も浅い。


「……っ、まずいわね……」


マチルダが、肩で息をしながら呟いた。


「瘴気の濃度が……一気に上がってる……!いつの間にか纏っていた強化魔法が消えてるわ……」


「このレベルは……長くは持たん……」


トットールも額に汗を滲ませる。


さっきから何度も出てくる瘴気という言葉……


「しょんにゃに、ちゅらい?」


不思議そうに二人を見ると、


「……は?」


トットールが、信じられないものを見るような顔でこちらを見た。


「まりか……本気で言っているのか……?」


「え……?」


(そんな変なこと言ったかな?)


私にとってはいつもと変わらない空気。


いや、日本の方がもっと空気が悪かったような気さえする。


「……っ、普通なら……」


マチルダが、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。


「立っているのも……やっとよ……」


その言葉通り、マチルダの膝がわずかに揺れた。


トットールも、壁に手をついて体を支えている。


(え……そんなに……?)


でも、二人を見ても嘘をついているようには思えない。


(何とかできないかな……)


ドスン――


ドスン――


物々しい足音がすぐ側まで迫る。


「おい、マチルダ。お前はまりかを連れて外に避難しろ!いそげ!!」


「でも、そしたらあんたどうするのよ!!剣もまともに使えないくせに。残るなら私が残るわ!」


(えっ……意外……)


マチルダが使えるからてっきり使えると思っていたけど……


トットールをよく見ると、杖は持っているが剣は持っていなかった。


「……っ、言い争ってる場合じゃないだろ!癪だが、お前の方がまりかを守れる確率は高い!」


トットールが歯を食いしばる。


「今は一人でも生き残る確率を上げるべきだ!」


「そうかもしれないけど……」


魔法が使えない状態で戦えるのはマチルダ一人。


(ととの言うこともわかるけど……できれば三人で戻りたいな……)


「三人一緒じゃないと……」


マチルダが言い返そうとした瞬間――


ドンッ――!!


洞窟の奥から、今までとは比べ物にならない衝撃が響いた。


地面が唸り、空気が骨まで届くほどに震えた。


「――来る!!早く逃げろー!!」


トットールが叫んだ、その瞬間。


キラリと何かが光った。


カァン…カァン


足音と一緒に、岩に何かがぶつかる音が響き渡る。


(耳が……)


金属がぶつかるような嫌な音に、思わず耳を塞いだ。


その瞬間――


奥から何かが飛んできた。息をする間もなく、頬を風が掠める。


「まりか!!」


トットールがこちらに向かって叫んだ。


「にゃ、にゃに!?」


気づくと、斧の刃が目と鼻の先で壁に突き刺さっていた。


(危なっ……)


まだ揺れている刃を見て、目を見開いた。


カタ……カタ……


壁に突き刺さった斧が、ゆっくりと震えている。


「……っ」


マチルダは私をさらに強く抱き締めた。


心臓の音が早くなっているのがわかる。


トットールも、目を細めて奥を睨んだまま動かない。


(ちょっとズレてたら死んでたじゃん……ってか、あそこから投げたの!?)


トットールが睨んでいる方へ視線を向けると、今度は二つの赤い何かがきらりと光った。


「にゃ、にゃにか……ひかった!!」


「く、来るぞ!!早く逃げろ。」


(あれ……絶対やばいじゃん)


その敵は魔物とも少し違う、人のような形をしていた。


目は赤く、頭には大きな黒い角が2本。


先程出てきた牛のような魔物とはひと味違う。


「ととも、逃げる!!」


思わず叫ぶ。


でも――


「……っ、無理だ……!」


トットールの声が低く響いた。


「この距離じゃ、間に合わん……!」


ドスン――


ドスン――


それは、もうすぐそこまで来ていた。


赤い目が、はっきりとこちらを捉える。


そして、まるで獲物を見つけたように、ニヤリと笑った。


「……っ」


マチルダの手に力が入る。


そこには先ほどまでのおちゃらけた雰囲気は一切感じられない。


――やばい。


(ここで死ぬのは絶対嫌だ!!)


《白夜、なんか方法ないの!?》


私は頭の中で白夜に声をかけた。


《なんか……と言われてもな……》


なんでこいつはこんなにのんびりしているのか。


なんならあくびまでしている……


《ふぁぁぁ~……もしかすると、今ならあれが使えるんじゃないか?》


《……あれ……?》


《あぁ、あれだ……使えば、お前“だけ”は助かる》


「え……!?」


(私だけ……?)


その言葉に、白夜が何を言いたいのかわかった気がした。


背後では――


ドスン――


ドスン――


ウォォォオオオオオ!!


耳をつんざくような咆哮が、ダンジョンを震わせた。


「……っ!やるしかないわね……」


マチルダは身体を震わせながら、腰に刺さっている剣を取り出す。


トットールも、耐えるように歯を食いしばりながら、杖を手に持った。


「そうだな……」


そんな二人を見て、白夜の言葉が頭の中で響いた。


(……私だけ、助かる?)


「そんにゃにょ、じぇったいいや!!」


私はぎゅっと、服を掴んだ。


二人は私を家族だと言ってくれた。


(……ここで逃げたら、きっと一生後悔する!!)


ぽつり、とこぼれる。


「いっちょがいい……」


小さな声。


でも、自分でも驚くくらい、はっきりしていた。


《……ほう》


《ならばやってみろ。》


私は震える手で白夜を掴み、がま口を開いた。


しかし――


何も起こらない。


「っ……にゃんで……!!」


焦って、もう一度、開く。


それでも――何も起きない。


背後で、


ドスン――


ドスン――


「ぐっ……!」


トットールの声が、くぐもって聞こえた。


見ると、膝が崩れかけている。


「とと!!」


時間が、ない。


《ふん……》


《焦るな》


《焦るに決まってるでしょ!!時間がないのよ!!》


声が裏返る。


視界の端で、赤い瞳がトットールを捉える。


そしてニヤリと笑うと、拳を振り上げた。


《お願い……動いて……!!》


指に力を込める。


それでも――反応はない。


《……仕方がない。俺にはこれしかできないがな》


――ドクン。


頭の奥が、強く脈打った。


(……あ……)


魔力を使ったときの感覚が、頭の中に蘇る。


(……これだ……!!)


私は大きく息を吸った。


(――間に合って!)


「スキル“我が家”起動!!」


次の瞬間――


私たちを囲むように、大きな陣が弾けるように浮かび上がった。

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