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異世界召喚の代償は三歳の身体と五千万円のローンでした! ~目指せ完済!スキル『我が家』で借金返済しながら成り上がります~  作者: ゆずこしょう
どうやら嫌な予感が的中したようです。

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このエルフ……見た目に違わずの体育会系のようです。

「それじゃあ、ミスリル探しに出発よぉ~!」


「……」


「あらぁ~、元気ないわねぇ。初めての冒険なんだし、もっと楽しまないとぉ~。」


マチルダは私の後ろに回り込むと、無理やり右手を上にあげた。


「サンッハイッ!!」


「おぉ~……」


なんでこの人こんなに元気なんだろう。


(こっちはそれどころじゃないのに……)


宿屋を始めようと思い立ったのはいい。


思い立ったのはいいが……


(全然前に進まない……)


しかし、そんな私の気持ちなど知らないマチルダは、隣で遠足前の子供のようにはしゃいでいた。


「声が小さーい!はい、もう一度!!」


「おぉ~!!」


さっきよりも大きい声で返事をすれば、納得したのか満面の笑みでうなずいた。


「うんうん、いいじゃない!」


(いや、全く良くないけどね!?)


ミスリルと聞くだけで絶対レア度が高そうだし……犬小屋も改築しないといけないし……


考えないといけないことは多いのだ。


「まりか。気持ちで負けちゃダメよ?人生楽しんだ者勝ちなんだから!」


「こんじょーりょん……」


小さい声で呟くと、マチルダにも聞こえていたのか首を傾げた。


「ん?“こんじょーりょん”??」


「にゃんでもにゃい……」


「ふふ……その“こんじょーりょん”が何か知らないけど、大抵のことは力でねじ伏せられるから安心しなさい!!」


トットールに視線を移せば、同じ考えなのか、「そうだな。」と、うなずいている。


「……のーきんだ」


無意識に出た言葉を急いで飲み込む。


見た目は綺麗なエルフなのに、二人とも考え方は体育会系だった。


(知的エルフを想像してたのに……)


「まっ、何とかなるから大丈夫、大丈夫!!」


(大丈夫じゃねぇーよ!!)


こちとら、三歳のぷりちーな幼女なんだぞ!?


ナイフすら持てず、魔法を使えば意識なくなるし……


「ちゅ、んでる……」


「詰んでない、詰んでない~!!私たちに会ったことで、得なら詰んでるけどねぇ~。」


(いや、詰んでるって言葉は通じるんかい!!)


私は、ぷぅっと頬を膨らませてマチルダを睨むと、今度はマチルダが人差し指で私の頬を押した。


ぷきゅ~


頬から空気が抜けていく。


「ふふっ。その顔も可愛いけど、まりかは笑ってる方が可愛いわよ。じゃ、気を取り直していきましょうか。」


マチルダは私を抱き上げると、パチンと指を鳴らす。


その瞬間――


光が弾けたかと思えば、目の前の景色が一変していた。


「えっ!?どこ……!?」


町の賑やかな空気は消え、代わりに漂ってくるのは湿った土や苔のにおい。


冷たい風が頬を撫で、目の前には薄暗い石の壁が広がっていた。


遠くから、ぽちゃん、ぽちゃんと水の滴る音が聞こえてくる。


「ふふ。驚いた?これでも一応、元冒険者なのよ~。だからこのくらい朝飯前よ~!」


どうやらここはどこかの洞窟らしい。


「しゅ、ごい。」


「ふん、このくらい俺も使える。」


マチルダが褒められたことが気に障ったのか、トットールは機嫌悪そうに一言吐き捨てた。


「さっ、ここから私たちはただの保護者に徹するわ。」


マチルダは私を地面に降ろすと、小さなランプを一つ持たせた。


「戦い方は教えてあげる。魔物の名前もね。でも素材は自分で採取しないといけないんだから、まりかが頑張るのよ。」


マチルダの言葉がスタートとでもいうように、ポチャンと水滴が落ちた。


重苦しい空気にごくりと唾を飲み込む。


(大丈夫なのかな……)


なかなか足を進めることができずにいると、背中に手が置かれた。


「まりか、お前なら大丈夫だ。俺たちもついている。何かあったらすぐに助けに入るから安心して進むといい。」


「とと……」


私は持っていたランプをギュッと握りしめると、一歩足を踏み出した。


***


びちゃん、ぴちゃん――


ダンジョンの中を進んでいくと、空気が少しずつ重くなっていく。


「結構すごいわね……」


「そうだな。やはり、魔災が始まっているということか……。」


魔災……


――そういえば、以前トットールが言っていた。


(確か、魔物の災厄だっけ。瘴気が濃くなって魔王が生まれるとかってやつか……)


ふと、二人の顔を見上げると、マチルダもトットールも薄く笑ってはいるものの、その目は笑っていなかった。


マチルダの横顔に、一筋の汗が伝う。


(大丈夫かな……)


二人の顔がランプの明かりでゆらゆらと揺れる。


「そうみたいね……」


「それに、ここまで冒険者にすれ違わなかったのも気になる。」


「そうなのよね。ここはミスリルが採れるダンジョン。その中でも比較的魔物も弱くて人気なのに……」


二人の言葉に、嫌な予感がどんどん強くなる。


「それより、まりか。」


何事もなかったかのように、軽い口調で続けた。


「犬小屋を改造するには何の素材が必要なの?もしかしたらここで揃うかもしれないわよ?」


確かに、これだけの洞窟だ。


重苦しい雰囲気もあるし、鉱石しかないということはないだろう。


私は少し考えてから、必要な素材を二人に伝えた。


「ん~っと……もしゅ、しゅらいむのねーえきぃ、ほーんらびとのけがわ、すぷりゃうとのもくへんがひちゅよ~にょ。」


「……」


「それは……あなた……」


二人は顔を見合わせ、それからゆっくりと私を見下ろした。


「もちかちて、ちゅよい?」


やっぱり強くて倒すのが大変なモンスターってことだろうか。


(……だったら、三歳で倒せた私ってすごいんじゃないかしら)


「まりか、いったいたおちぇたのにょ!すごいでちょ!」


ふふんと得意げにマチルダを見ると、マチルダは目を見開いた。


「いや、逆よ!その辺にいくらでもいるモンスターじゃない!!」


「ぎゃぐ……?」


ランプの明かりに照らされたマチルダが、ふふっと肩を震わせた。


「ギャグじゃなくて~、逆ね!ぎゃ・く!弱いモンスターってこと!恐らく……この世界で一番弱いモンスターたちよ。」


「まぁ、素材がわかったところで――」


マチルダは、ふっと周囲を見渡した。


「ここには、いないんだけどね。」


「……え?」


マチルダの声がトットールのように低くなった。


「トット。」


「あぁ、わかってる。」


(……なんか、おかしい)


さっきまでとは違う、重たい空気。


息を吸うたびに、胸の奥がざらつくような感覚。


「とと……?まちりゅだ?」


二人は腰に刺している細い剣を取り出した。


「やっぱり、ちょっと苦しいわね。」


「そうだな。この空気、久しぶりだ。」


トットールの視線が、ゆっくりと私の方に向いた。


「まりかは苦しくないか……」


「くりゅちぃ?」


こてんと首を傾げると、二人は顔を見合わせる。


「いや、大丈夫ならいい。」


「そうね……あなたは私たちの後ろに隠れていなさい。」


その時――


ギロリ、と。


暗闇の奥で、赤い瞳が輝いた。


それは、明らかに“弱いモンスター”のものじゃなかった。

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