※強大な敵に齧り付く
S級立入禁忌エリア「蟲蔵」
常識ある者ならどんなに蛮勇を誇る者でも入ることを考えすらしない地獄のような場所。
エネミーの楽園。
人など居ない筈である場所であるそこに十五人の人間が向かっていた。
先頭に立つのは
小柄で目深にかかるフードのついたボロボロのローブを着て肉切り包丁を枯れ枝のような細い右手に構えた怪しいを通り越して殺人鬼や明らかに狂気に陥った人種にしか見えない人間と、対称的に横にも縦にも常識外の大きさの体に全身鎧を着てその体程の大きさの盾と鉄塊のように見える無骨な斧を持つ人間。
次に続くのは、というより先頭と殿の間の人間たちは一人の人間を守るように十人おり、前の二人のようなインパクトはないがいずれも街を歩けば誰もが振り返る種類の違う美男美女である。
装備も見るからに一級品であり、守られている人間の女神のような美しさと品のいい言動からお忍びできているお貴族様とその私設軍のように見える。間違っても冒険者には見えない。
そんな集団の殿を務めるのはこれまでのメンバーと打って変った平凡男二人。
どちらも不細工でもみすぼらしい訳でもなく装備も一級品なのに地味。
片方が柔和な顔つきでもう片方は強面という差はあるが前の人間たちと地味の一括りに入れられる程度の差異でしかない。心なしか影すら薄くなっているようにも思える。
さて、そんな個性的な集団は今蟲蔵である洞窟の前に立っていた。
真ん中の一人を守っている十人のうちの一人が手に携えていた杖を掲げる。
「我が神に捧げる。」
囁くようなその言葉が紡がれると同時に集団全体に虹色の光が降り注ぐ。
やがて光は消え、一見集団には何の変化もないように見える。
しかしこれで準備は整ったのだろう。
先頭に立っていた大柄の方の人間が先陣をきって洞窟内へ侵入を試みた。
小柄の方は一歩下がって詠唱を開始している。
途端に大量の虫達が洞窟の中から湧き出し、集団へ襲い掛かる。
まるで大波のようにすら見える圧倒的な数の暴力。しかしこの集団にそれに怯えている者は一人もいなかった。大柄の人間はその巨体から想像できないスピードで左手に持つ盾を構える。
同時に盾の周りに半透明の壁が現れて洞窟から溢れてきた虫をすべて食い止める。
「反撃の烽火は」
大柄の人間の頭を覆うヘルムから凛とした涼やかな女の声が漏れた。
同時に大柄の人間は右手に持った斧を振り上げる。
「鮮烈にあげるべし。」
そして盾の前の地面にたたきつけた。
叩き付けられた地面から火柱が幾重にも現れ、虫達を焼き殺す。
虫達の耳障りな悲鳴が響き渡る。しかしまだ終わっていない。
この程度で攻略されるような場所であるなら、ここは禁忌とされていない。
煌々と燃える炎の中には、焼け焦げた同朋の屍を越えてこちらにこようとする虫達の無限とも思える群れが蠢ている。最上級ともいえる炎属性の武器による全体攻撃を受けてなおその歩みを衰えることなく。
そこで小柄な人間の詠唱が完了した。
「第一秘蹟、弐改。」
辛酸を嘗め尽くし、老いさらばえた男のような低く渋い声が唱える。
そして右手に持った肉切り包丁をためらいなく左腕振り下ろした。
「っぎィ…ぁ、『聖霊召喚、」
小柄な人間の左腕の肘から先がとんでいく。彼は激痛を無視しながら高らかに唱え上げる。
「堕ちた女神の娘』
彼の絞り出すような声が文句を謳いあげると同時に切り飛んだ彼の左腕が不自然に膨張した。
ぼこぼこと悪性腫瘍のように腕の面影もなくなったかつて腕であったその肉塊は大きくなって人一倍程の大きさになった時、肉塊から四対の黒い翼が現れて肉塊を包み込む。
瞬いた次の瞬間翼は大きく広がり肉塊は一人の美しい戦乙女になっていた。
突撃槍を構えた彼女は召喚主の意図をくみ取って洞窟へ突撃する。
聖なる者であり、魔の力も持っている。
そんな上位種の攻撃には先ほどの炎に耐えた虫達も耐えきらずに消し飛んでいく。
一見洞窟の入り口の敵は一掃出来たかのように見える。
しかし集団はまだ中に入らない。
まだ残っているのだ、最難関の敵が。
暗い洞窟内から現れた五匹の敵。
人間と虫を混ぜ合わせた出来の悪い合成獣のような敵達。
一匹一匹が尋常ではない力を持ち、更に連携もしてくる。
先ほどの聖霊によって短時間ながら雑魚のPOPは防げているが、本来ならこれにさらに無限に湧いてくる雑魚敵(弱くはない)も加わる。まさに絶望としか言えない状況に見える。
しかし集団の誰も焦りはしていなかった。彼らの態度は最初から変わっていない。
このエリアを攻略しに来た冒険者であり、幾多のエネミーを屠ってきた狩人達。
何も恐れることはない。
自分達は狩る側で、奴らは狩られる側だ。
自分の得物を構えながら彼らは戦闘を開始する。
戦闘描写が糞なのは仕様です()。
十五人の正体、一体何者なんだ(棒読み)
※切り落とした腕はあとでスタッフが作りなおしました




