(サブタイトルは齧られました)
持ち直したケテルから話を聞いたところ、どうやら最近虫蔵に人間が頻繁にやってきている。
今まで通りの雑魚なら適当な者を相手の何倍もの数で押し潰せば問題なかったのだが、どうやら今までにない強力な個体らしく、それをまともに相手取ることが出来るのはリグレッサを含む蟲倉の有力者達だけらしい。
要約するとこんな話であった。
強力な個体が私の知り合いでないことを切に願っている。
手伝おうか、なんて頭の片隅にそんな思いが浮かんだが、リグレッサ以外あまり虫達と親交がない私達が加勢の為にと外に出てうっかり虫達と敵対して戦い始めるなど目も当てられない状況が起こり得る。
結局私たちは家の中でやることもなくぼーっとしておくというのが現状出来る手段なのではないだろうか。
……しかしいい加減時間が余り過ぎて退屈で死にそうだ(トランプはもう飽きた)。
そうだ、ボードゲームしよう。
ある人は言った(おそらくイギリス人)。
外に出られないような寒い日に
ロシア人はウォッカを飲んだり勉強したりする。
そしてドイツ人はボードゲームに興じる。
…ボードゲームの多くがドイツ製と考えれば少なくとも後半は合っている内容だ。
そして酒飲みでも勤勉家でもない(勉強することがないとも言うが)私達がやることも後半だ。
先ほどまでやっていたダウトもいいが、あれは三人でやるにはちときつい。
ここで私がかつて大嵌りし、廃人メーカーと呼ばれた神ゲーの出番である。
そう、その名もCivilizati…
「ただいまー」
思ったより早く帰ってきた!?
いや、別にこのゲームは二人から五人までいけるけれども、ルール説明もいれたら結構な時間もかかってしまうし…うぐぐ、仕方がない、今回は諦めよう。
「おかえり、思ったより早かったな」
ケテルもそう思ったのか意外そうな顔で言った。
リグレッサは溜息をつきながら肩を鳴らす。
「奴さん、うちらが出て行ったらすぐ撤収しよるんや…。学習能力あるんはええことや思うけど、せやったらそもそも攻めてくんなと言いたいわー…。ホンマ何考えとるんやろか」
はぁ…と溜息をつきながら体のあちこち(人間体以外のところも勿論やっている。見ていて割と気持ち悪い)をバキゴキ言わせる姿はなんともいえない仕事帰りのお父さんを見ているような居た堪れない気持ちになる。お疲れ様です。
しかしリグレッサは一体どれくらいの強さなのだろうか。
ちょっと…いやすごく気になる。
「いっその事外に適当な罠こしらえてしまえばいいんじゃないでしょうか?」
さらっと何を言っているんだラティ。
そんな、そんなこと言われたら…作りたくなってしまうじゃないか!
今までは屋内だったからできなかったあんな罠やこんな罠だって作れちゃうんだよ?
テンション上がる!
「そうやねー…罠とか正直めんどいけどこんな状況が続くのも嫌やしさぱっとやるか」
…まぁ私この家から出る気ないですけど。
いやー虫だらけの中歩く気全く出ないね、可能な限り避けたいね!
というか引き籠りたい、全力で…。
「しかしこうも家の中で遊んでばかりだと体が鈍ってきてそうだな…」
ケテルが首をバキボキならしながら言った。
激しく同意するが、やけに好戦的な発言である。こんな奴だったろうか。
「馬鹿蜥蜴と同意見なのは癪ですが、そうなのです…久し振りにぱっと暴れたいのです!」
どうやらラティまでもアップを始めたようである。
引き籠りは人を好戦的にする…フラストレーションでもたまるのだろうか?
斯く言う私もなんとかしたい。何とかしたい(チラッチラ)
リグレッサの方をちらちら見てみる。
……半目になっていらっしゃる。
「自分らなぁ…手伝って、なんて言えへんけどさぁ…」
そして言葉よりも雄弁な溜息をついた。
まぁやりたくもない戦闘に駆り出された後に戦闘したいです安○先生とか言われたら誰だってそうなるだろう。私なら軽く怒る。しかしこっちも切実である。
(自分が)平穏に暮らすためには暴力は必要なのです。
「……そんな目で見ても無理なもんは無理や。大人しくここで待っとき…」
そうリグレッサが言いかけた時だった。
地面が揺れた。屋敷の外から轟音が聞こえる。それも一度ではない、複数回だ。
屋敷の外の轟音の発生源らしき方向を向いてしばらく難しい顔をしたリグレッサの目が驚愕で見開かれた。
「うそやろ……?こんな短時間にそんな所まで入れる訳が……」
茫然と呟いた後、はっと何かに気付いた顔で顎に手をやって考え始めた。
何が何だかわからないが…某襲撃者がそう間も置かず襲撃してきたのではないだろうか。
それも結構事態は深刻なようだ。面倒そうではなく緊急事態に対する焦りがリグレッサの顔にありありと出ている上にその発言。…大変嫌な予感がする。
「そうか、あれは撤退してたんやない…幻影か!せやったら奴らがやることは……」
「たぶん考え通りっすよー」
ギチギチと音を鳴らしながら悔しそうに呻くリグレッサの言葉に割り込んでそんな声が響いた。
咄嗟に刀を抜いて声の方向を見る。
そこにいたのは世界観に合わぬ桃色の魔法少女。姿に合わぬ荘厳な杖を手に鮮やかな笑みを浮かべている。その影からずるりと更に人が現れる。
くたびれたトレンチコートを着たアルビノらしい青年とこれぞ正統派美少女剣士といった感じの金髪碧眼の騎士。彼らがリグレッサが最近手を焼いている襲撃者なのだろうか?
正直キラキラしいと吐き捨てたくなるくらいに美形だ。
「あんたらの連携は少々きっついんでね…それなら一匹ずつ仕留めたらいいんじゃないかな、とね」
そう二ィっと悪役風に嗤いながら言う姿は魔法少女のような見た目とは著しく乖離しているというか、何か夢をぶち壊されたような気分になる。……というか何か見たことある姿なような。
そう、あの人間離れした美貌。あれは…
「というわけで、ささっとやらせていただきまー……!?」
魔法少女と目が合う。
そう、何か見たことのある顔。VRMMO内でよく見たような……あれ?
「あ――――!?」
こちらを指さし大声を上げる魔法少女。
そういえばマルチエリアでこんなんとしょっちゅうすれ違っていたような。
勿論ぼっち、ソロの私と違って彼女は大抵PTを組んでいたのだが…もしかして、彼女もこちらの世界に来ていたのだろうか。いやもしかしなくてもこの反応はそういうことなんでは?
「あんた、サヨじゃんか!やっぱりこっちに来てたんだ?」
嬉しそうにそう言ってくる彼女に言葉を返したいが……うん。
突き刺さるような視線を三人分感じる。視線の主は勿論言わずもがなだ。
彼女の発言で他二人も私に気付く。面識はないと思っていたがどうやらあちら方は私の事を知っているらしく驚愕した後仄かに破顔している。突き刺さるような視線が更に鋭くなったような。
やめて!これ以上修羅場にしないで!
ここまで確信と期待を込めた目と再会(?)を喜ばれると他人デースなんてしらばっくれ難い。
誰か助けてくれ。
「……知り合い、か?」
ケテルが何とも言えない顔をして聞いてきた。
こちらを責めるというより戸惑った口調に何故かこちらが申し訳ない気持ちになる。
知り合いといえば知り合いだけども……うん。
「どういうことか、説明してくれる?」
こちらは強い口調で尋ねてくる。
腰に手をあててギチギチと威嚇されると、とりあえず謝りたくなる。
いや正直私も混乱しているんだよ?まさか同類がいるとは思わないし、説明しように何処から言えばいいのか。というか正直ここまで会ったこと喜ばれるほど彼らと仲良くしていた記憶がないというかそもそも名前すらこっちは知らない。
「……何これ修羅場?」
いつからいたのか、神出鬼没に現れたザインに突っ込む暇すらない。
一体私はどうすればいいんだ……。
更新遅れて本当に申し訳ないと思っています(土下座)
いい加減サブタイトルのネタが思いつかなくなりました。




