ヤンデレに齧られそうデス
あっさりと捕まえた中二男をこれまたあっさりと奪還されてしまった訳だが、まぁ現実というのはそう甘いものではないので致し方なしであろう。もう一度捕まえられる気がしないのはきっと気のせい。
さて、中二男はいなくなったがアンジュは未だここにいる。
迎えに来たとか病んだ感じで言われるというちょっとした人生の山場を迎えている気がする。多分これも気のせい。
「…逃げられた。いえ、これは見逃された?そもそも彼女は一体…」
アンジュは笑顔を消して呆然と二人が消えた空間を見ている。
アンジュのみならず馬鹿男とラティも殆ど同じ状態だ。
少女のことを知っているザインは勿論、サブカル漬けでまだ先程起きた出来事を理解出来る私もなんとか冷静でいられたが、普通あんな超常現象が起きれば彼らのように茫然自失になるのは当然だろう。
「て訳でだ、アンネージュ嬢。とてもじゃないがお前の所じゃあいつ等からサヨを守れるとは思えない。お引き取り願おうか?」
そんなアンジュにザインはそう告げた。
アンジュの所どころかチートがバックにいる時点でどこにいても同じだと思うけどね。エンカウントしたら即死するようなどこぞかのマゾゲーレベルの糞仕様に全私が絶望した!
( ´・ω・`)クソゲー
でもザインのようにあのチート少女もそう簡単に中二男を手助け出来ないのかもしれないからそこを突けばワンチャンあるかもしれない。
…でも正直中二男への恨みはもう大分薄まってるからあんなバグみたいな奴に喧嘩売ってまであいつに関わる気はないんだよね。
やっぱり復讐は何も生み出さないんだよ。
初心に戻って平穏に生きることだけ考えよう。
「…そう、ですね。アレにも対応出来るようになってから出直すことに致しましょう。」
なんか考えている間に
アンジュに退いてもらうことに成功したようだ。
しかし出直すと言っているから再来の可能性が。
…面倒だ。
私は静かに暮らすと再び固く決意したのに。
フラグの塊とは光臨際関わりたくないよ。
例えそれが可愛い女の子の皮を被っていても!
「サヨさん。」
な、なんだいアンジュ。
何かフラグ立てる気なのかな?断固拒否するよ?
そんな幻想私(の仲間)がぶち壊す(と信じている)よ?
冗談はさておき本当何を言い残すつもりなのかな。
「どうか知っておいて下さい。
私は貴女の幸せを願っています。
私は貴女を…愛しています。」
だから。
自分の為に自分の思う貴女の幸せを作ってみせる。
そう、アンジュはのたまって去っていった。
…私の為ではなく、アンジュの為と言う所に
何か根深いものを感じる。
ヤンデレ怖い。
「…そこはかとなく怖気の走る台詞なのです。」
ぶるりと自分を抱きしめながらラティは言った。
奇遇だね、私も感じたよ…ゾクゾクしたよ。
私の精神衛生上悪いからもう来ないで欲しい。
ノーモア変人。ギブミー平穏。
災厄の元はケテルとラティでお腹いっぱいです。
「さて、ザイン。さぱっとこんな不吉で不毛な場所から家を移動させて下さい。ハリー!」
ここのドラゴンの心臓はまだコンプしていないが一刻も早く立ち去るべきだと私のシックスなセンスが囁いている。要するに勘とも言う。
そんな私をザインはじっと見てくる。
表情がわかれば恐らく呆れたような顔をしていそうな沈黙具合だ。勿論なんとなくそう思っただけだが。
言いたいことがあるなら言って欲しいのだが。
ただでさえ表情から読み取ることが出来ないのに黙られてしまってはなんとも気まずい気分になる。
「…ところでサヨ、先程から精霊のことザインって呼んでいるが…もしかして精霊の名前、ザインなのか?」
目をぱちくりさせながらケテルは言った。
正確には名前でなく偽名なのだが間違ってない。
というか今更すぎる突っ込みではないだろうか?
「偽名だが一応ルプス・ザインと名乗っている。」
頷きながらザインがいう。
…そういえばドイツ語で狼のことをルプスと言うがもしかしてザインは私と同じ世界の住人?
さすがにそれは勘ぐりすぎか。
「ザイン、ザインか…。やっぱり精霊の方が言い慣れているから、ザインって呼ぶと違和感があるな。」
うーんと唸りながらケテルは言った。
しかし私としては精霊とか中二単語よりザインの方がまだましで宜しいと思う。あとこんなのを精霊扱いしたら本物に悪いと思う。
まあ実力は確かに精霊みたいだけども。
なあなあで精霊と呼んでいたがこれからはきっちりと名前(偽名なのだが)で呼ぶべきそうすべき。
「ザイン、ザイン…ザインザインザイン…。」
覚えようとしているのか、ザインを見ながらケテルはぶつぶつ呟いている。確かに覚えるには声に出すというのが妥当な手段ではあるが、人前では慎むべきじゃないか?
ラティが箱詰めされたGを見るような目で見ているよ。
私は微笑ましいと思っているけれど客観的に見ると気狂いか不審者にしか見えない。
そしてそんなケテルに見られているザインは頭部の傾斜具合から床あたりを見て腕を組んでいる。
床を見ているというより目を伏せて考え込んでいるのだろうか?
「…ん、転移候補が絞れた。」
しばらくして、頷きながらそう言った。
私の要望に応えて家を移動させてくれるらしい。
やったね、ケテルちゃん!猶予が出来たよ!
何の猶予かって?…ヤンデレ再来のだよ。
「場所の要望とかあるか?」
取り入れるとは限らないが。
そう前置きしてからザインは聞いてきた。
私は美味しい食料とそれなりの強さの修行相手…あと強いて言うなら平穏に過ごせそうな所がいいな。
まぁ住めば都と言うし特筆するほどの条件はない。
「…俺はサヨがいるならどこでもいい。」
「お姉様がいる場所が理想郷なのです!」
ほぼ同時に二人が言った。
やはり案外相性がいいのではないか?こいつら。
しかし私がいればどこでもいいとか、そんなに私が好きか?ラブなのか?あ、サーセン調子乗り過ぎました。
「…………。」
何ともいえない感じでザインが見てきている気がする。
私も正直どこでもいいから統合すると、特に要望はないということになる。ザインなら一番いい場所選んでくれると信じているからね!(威圧)
「…苦情は受け付けないからな。」
よっしゃあ!
待ちに待った引っ越しキタコレ!
テンション上がるわー、やっべーわー。
まだ見ぬ新天地には一体どんな心臓があるんだろう。
ここみたいな何の面白みもない所じゃないといいのだが。




