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そして私は今日もドラゴンの心臓を齧る  作者: ヨハン@小熊
ep2:第二章(タイトル未定)
38/50

取り敢えず齧らせろ

ギャグ漫画を読んだことはあるだろうか。

木端微塵に爆発四散したはずの人間が、次のページでは全くの無傷でしれっと立っていたり

物理法則を無視した摩訶不思議な動きをしたり

…色々と常識では有り得ないような数々。

勿論そんなことを言ったら若者が好む漫画などの大抵の娯楽はそういう要素があるが、ギャグ漫画ではそれが顕著である(少なくとも私はそう感じている)と思う。

まぁ、まずは現状を説明しよう。

仲が良くなるどころか日に日に口論が激しくなっていく馬鹿男とラティは今日も脇目も振らず元気に喧嘩している。

そして私もそれをいつも通り静観している。

ここまでは最近当たり前になりつつある日常だ。

そして私の隣にはやっと現れた精霊が喧嘩をぼんやりと眺めている。まぁ、これもまだいいとしよう。

ちらりと下を見る。

そこには縛られた、気絶している中二男がいる。

…三行で纏めるなら


何時も通り二人が喧嘩

中二男参☆上

二人に殴られて中二男ノックアウト←今ココ


勿論中二男とはあの私を瀕死にしやがったあの男である。精霊からも本人認定されたしまず間違いないだろう。

そして問題の彼のノックアウトのされ方なのだが…

協力して?死力を尽くして?

…そうではないことは前述の三行でお分かりかと思う。

思い出すのもはばかれる情けないやられっぷりだが、二人の喧嘩の終着点は未だ見えず特にやることもないので、思い返す。


「なぁ、お前さっき俺ごと敵を倒そうとしなかったか?いや、むしろ狙ってそうしようとしたよな?」

「なんだっていい!奴にとどめを刺すチャンスだ!と思ったのでつい手が滑っただけなのですよ。」

「ほう、明らかな殺意を込めた攻撃を手が滑ったと。」

「そう言ってるのですよ。その耳は飾りなのですか?」

始まった。

私は遠い目をしながら、巻き込まれないように自然と同化して背景になるぐらい影を薄くする。

馬鹿男とラティの恒例になりつつある口喧嘩を生暖かい目で見守るのが一番賢い対応だと思うんだ。

今の所巻き込まれたことはないが、巻き込まれたら碌な事にならないと私のゴーストが囁いている。

そうして今日も見守っていたのだが。

「……っ!」

前にも感じたことのある、怖気の走る感覚。

間違いない、中二男の気配。

私は臨戦態勢をとって、周囲を警戒する。

精霊は、いない。修行などしていない私の実力はあの時と殆ど変わらない。ラティは現時点では足手まといだ。

殆ど積んでいると言っていい状態。

それでもなんとかしないと、奴は今どこに…!?

「…ぜ、は……っくそ!」

馬鹿男とラティに関して私と対称になるような所にある叢から奴は現れた。予想以上の近さに驚くより自分の間抜けさに舌打ちする。これでは前と本当に一緒ではないか。

馬鹿男とラティは未だ中二男に気付いていない。

中二男は手負いのように見えるが基本戦闘力は段違いだ。到底勝てる相手ではない。

二人に声を掛けてなんとか逃げないと…!

相手が手負いならば逃げ切ることは不可能ではない筈!

しかし私が動くより相手の方が早かった。

中二男は私達に気付く。

中二男は二人に近付いていって、そして…

「「邪魔するな!!」」

二人に殴られて漫画のように吹っ飛んでいった。

錐揉み回転しながらその体は宙に浮かび、そしてメキャっとアレな音を立てて頭から地面に着地した。

どうやら首が有り得ない方向に曲がることはなかったようだが、中二男は倒れたまま動かなかった。

ぴくりともしないその姿に目もくれず馬鹿男とラティは口論を再開した。いや、そもそも殴る時すらお互いから目を離していなかった。

やっぱり案外仲良しなんじゃないか、こいつら。

もしかして犬も喰わないと噂の痴話喧嘩という奴なのか?

「…何の茶番だコレは。」

後ろから聞こえたそんな声に振り返れば、待ち望んでいた陽炎のようなその姿を目にとらえた。

なんというか本当に役立たずになってきていないだろうか、精霊よ。いっそアドバイザーに転職した方がまだ仕事するような気がするよ。職務怠慢で私なら首にするけど。

とりあえず気絶した中二男をさっさと縛り上げておくことにした。亀甲縛りで。しかしイケメンの亀甲縛りが想像以上にアレでつい赤面してしまった。イケメン爆発しろ。


そして今に至る。

どうしてこうなった。

確かに何やら手負いのようではあったが、まるで雑魚のようにあっさりと倒されるとは…拍子抜けというかなんというか、ちょっと情けない。

修行イベントもなく新キャラが増えただけであっさりとやられるとは昨今の雑魚ボスでもいないと思う。

とりあえず殺意を抑えきれなかったので前のお返しに噛みついてやったがぴくりともしなかった。

…本当にあのチートみたいな強さの男なのだろうか、これは。偽物と言われた方が納得出来るぞ。

「まあ、なんだ。当分の危機の元を拘束することに成功したのだから結果的に良いと思うぞ?おそらく。」

なんとも微妙なフォローありがとう。

しかし最後に多分とか恐らくとか濁す表現使うと逆に不安が増すから止めて欲しい、切実に。

こんな呆気ないというか情けない決着は誰も予想しなかったし望んでいなかっただろう。

カット、やり直しを請求する!と叫びたい。

やり直したら全滅が目に見えているけども。

「すごく納得が出来ません…。」

手段を選べる相手ではない(筈だ)から、勝てばいいと思っていたがやはりどうしても微妙な気分だ。

チート使ってゲームをクリアしたような?

ルールの隙間を突いて試合に勝ったみたいな?

…なんか釈然としない。

「存外熱い女なんだな、お前は。」

クスクス笑いながら言われた。むかつく。

実際に自分でもそんな感じがして反論出来ないから余計に腹が立つ。一発ぶちかましてやりたい。

まぁ勝てない喧嘩ふっかける気はさらさらないが。

こっそり心の復讐ノートに追加しておこう。

…で、いつになったら二人の喧嘩は終わるんだ?

中二男が出てくるまでに10分以上、中二男が出てきてからも10分以上は経っていると思うのだが…。

よく飽きないものだ。

「…いつになったら終わるんだ、アレ。」

いい加減飽きたのかぼそりと精霊が呟いた。

それは私も知りたい。いつになったら終わるんだ。

置いて帰ろうかなー、帰り道も知ってるんだし。

中二男連れて精霊と先に家に帰るとしようか。

よいしょと中二男の足を掴む。

え?抱える?

そんなことしてやる義理は欠片もないし。

ずりずりとそのまま引きずる。うつ伏せで行きたい所を仰向けで引っ張ってやっているのに感謝して欲しい。

…うつ伏せで引き摺ったらこのうざいぐらいのイケメンがAPP3ぐらいにならないかな?

インスマス面になればまだ付き合いやすい気がする。

その前にSANチェック入りそうだが。

まぁやらないけどね。某背後が怖いし。「おい、その状態で走ったら引っ張ってるそれが大変なことに…って今石に頭強打していたぞ!?」

いや、早く家に帰りたいですしおすし。

石で頭強打してもこいつなら大丈夫だろう。

あー大きな石だ飛び越えないとーしまった引きずってる中二男に当たってしまったー私ったらうっかりねーうっかりだから仕方ないよねー(棒読み)

「いや、それうっかりじゃなくて故意…。」

( ∩゜Д゜)アーアーキコエナーイ

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