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そして私は今日もドラゴンの心臓を齧る  作者: ヨハン@小熊
ep2:第二章(タイトル未定)
37/50

一緒に齧る人が増えました

「『死神は遠くへ、私はここへ』」

死亡対策をしてラティと対峙する。

ラティは固まっている上に顔面蒼白だ。馬鹿男も邪魔してくるので適当に縛って放っておいている。装備の点検も良し。これでダメージが抜けない程度の火力なら私なら生身でも耐えきれる程度、最悪生身でも微々たるダメージしか喰らわないということになる。希望としてはそれなりの火力を持っていて欲しいのだが…。

「こちらの準備は整いました。いつでもどうぞ。」

促してもラティは動かない。

馬鹿男が、俺が代わりにとかなんとかほざいているが無視だ、無視。ドラゴンハンターという職業(?)が名前通りドラゴンを倒すことに特化しているというのなら、ドラゴンである馬鹿男ではラティの実力を計るには適していないと思われる。あと紙防御の馬鹿男では色々危険過ぎるだろう。

「お姉様、危険過ぎます。ワタクシの実力が知りたいのでしたら別にこんな方法でなくとも…。」

ラティが慌てながら言ってくる。

しかしより詳しいデータ取るにはこれが一番だと思う。

危険と言うが即死は回避出来るのだら問題ない。

そう伝えているはずなのだが…

「ラティ、問題ありません。掛かってきなさい。」

目を見てそう言えば、震えながら頷いてくれた。

最後まで意地を通した馬鹿男と違って素直である。

覚悟を決めたらしいラティは短剣を構えて深呼吸する。

「ーーー行きます。」

キッとこちらを見据えてそう言ったと思えば、こちらへ一気に突進してきた。一直線にこちらへ向かう速度は遅い。

明らかに手を抜いている。少々気分が悪いな。

軽く避けられる攻撃だが、今回は甘んじて受ける。

首を狙わない、足を狙った攻撃。必殺より相手の行動を阻害することに主眼を置いているのか、相手が人間の私だからそうしているのかわからない。

短剣は私の足に突き立てられそうになり…弾かれた。

「……え?」

目を見開いて信じられないという顔をするラティ。

残念ながら彼女の攻撃は私にダメージを与えることは叶わなかったようだ。このように、相手に攻撃されれば基本的に攻撃を受けた側は何らかのアクション(のけぞり、後退、吹き飛びなど)を取ることが多いが、その攻撃が攻撃を受けた側の防御より下回る時攻撃が弾かれるのである。防具による恩恵があるとはいえ、攻撃すら通らないとは…そういうものかもしれないが、これが全力というなら少し期待外れと言わざるを得ない。

「すみません、お姉様…少々舐めていたようです。」

表情を引き締め、再び短剣を構えるラティ。

本気になって貰えたようで何よりだ。

こう真剣に対峙していると気分が高揚してくる。

特に自分が圧倒的に優位と思い込んでいる時は。

「そう、本気でやればこうならない、と?」

笑いかけながら言ってやる。

そんなナマクラで私に傷をつけれると?と言いたげに。

そんな挑発にも乗らず、ラティは静かに私を見る。

観察しているのか、隙を窺っているのか、はたまた攻撃のシミュレーションをしているのか。

数刻過ぎた。

「お姉様、この刃が御身に届いた暁には。」

ふとラティは思いついたように口にする。

心理戦か?何を言おうとしているんだ。

「……撫で撫でして下さい。」

え?

呆然とした私に先程より遥かに早い速度でラティが迫ってくる。やはり先程のは手抜きだったのか、と頭の隅で考えながら呆然として隙だらけの体を一瞬で臨戦態勢に整える。精神攻撃は天晴れだが、その隙を突くだけの早さがラティには圧倒的に足りない。狙いは変わらず足。順当な所かな。

そしてその攻撃は…

「…まぁ、及第点ですね。」

弾かれず、私にダメージを与えることに成功した。

ノーガードに本気で攻撃してダメージが与えられなかったら問答無用でお帰り願うつもりだったが、これならいいだろう。

…たとえダメージ量が1でも。

「…届かなかった、のですか?」

しかし一見先程と変わらずダメージを受けていないかのように見える私をラティは茫然とした顔で見る。

恐らく本当に彼女の本気で攻撃をしたのだろう。今の私なら初期のダンジョンの殆どのエネミーのダメージを受けないのだからまぁ妥当な所ではないだろうか。

「いいえ、確かに貴方の一撃はこの身に届きましたよ。」

見事です、と微笑んで伝える。

そして微かに切れている肌の傷を見せれば、ラティは茫然としていた顔を徐々に輝かせる。

そして笑って頭を撫でてやって、一件落着だ。…凄く幸せそうな顔だ。ふにゃふにゃした笑顔というのはこういうものを言うのだろうか。そして意外とふわふわした髪は撫で心地がいい。

ささっと怪我も回復魔法をかけて治しておく。この程度のダメージで回復魔法を使うのはもったいないが、ラティが気にしたら悪いし。…あと怪我の所を見る馬鹿男の顔が怖い。

「じゃあ、帰りますか。」

自分の世界に飛び立っているラティに苦笑しながら馬鹿男の所に行って、むすっとした顔に何を言おうか考える。そもそも何故そんな顔をするのか皆目見当がつかないのだが。

うーん、と悩んでいたら向うから口を開いてくれた。

「あんま…危険なこと、すんなよ。」

凄く心配したんだぞ。

そう消えそうな声で付け足して馬鹿男は顔を俯かせて歩きだした。

…やばい、可愛いなおい。撫でまわしたくなる可愛さだ、よしよし撫でてやろう!

「ふふ、心配してくれてありがとう。」

なでなで~っと頭を撫でると、ちょ、とか何か言ってきたが抵抗せず大人しく撫でられている。

うちの馬鹿男ペット本当可愛いわ、プライスレス。

「むむむ、あの爬虫類許さない…。」

何か不穏な言葉が聞こえたが気にしないでおこう。


「では、ラティーシャさんも一緒に行動することになりました。」

紹介するまでもないのだが、こういうものはやることに意味があるので一応やっておく。通例って大事だよね。

「はい、お姉さま!よろしくお願いしますなのです!」

…馬鹿男とも仲良くするんだよ?言っても拒否されそうだからあえて言わないけど。そして明らかに無視された馬鹿男の不機嫌指数は鰻登りだ。既に色々と問題がありすぎてこの子を置くという決断は早まったかな、と思いつつある。…時間が解決してくれると信じている。

「お姉さま、ワタクシのことはラティでいいのですよ?」

本人から愛称呼びの許可でた!…ここは答えるのが大和撫子らしいのかな?

しかし人を呼び捨てにするのは大和撫子らしくないからなぁ…馬鹿男は除く。

「では、ラティさんと。」

微笑みながら言えば凄く幸せそうな顔でコクコクと頭を縦に振っている。

どうやらこれでいいらしい。うわ、なんか馬鹿男がまたしかめっ面してる!

「ケテル、どうかしたの?」

聞いてもふいっと顔を逸らしてしまう。

…難しいお年頃なんだな、馬鹿男も。うちの弟も一時期こうだったけど思春期の男の子は皆こうなるんだな。そう思うと微笑ましい反応なのかもしれない。

「お姉様の言葉を無視するなんて…いえ、所詮は獣だ。人の言葉も解さんのだろう、なのです。」

ラティが黒い!

イエイエ、私ハ今何モ聞キマセンデシタヨー。

気にしたら負けだと思うんだ。

「んだと?」

ああ、馬鹿男が不良口調に…。

イエイエ(ry)

なんでだろうね、空がすごく青いや。

「ごめんなさいなのですよ。獣如きに人間の高等言語が理解できる筈がなかったのですね。なまじ言葉を話すから思い違いをしていたのです。」

「弱い犬ほどよく吠える…昔の偉人のいうことは本当に的を得ているな。なるほどこれも弱すぎる自分を強く見せようと誇示する行為なのだろうか。いっそ哀れだよ。」

「なんでも力任せでやる人間を脳筋と言うのですよ。本当に強い者は戦うわずして勝つ。それを成し得るのが知恵であり知略であり…言葉なのですよ。」

「成程、それは然り。だけどその強者にはもう一つ付け足すべきじゃないか?敵を増やさないこと、とな。むやみやたらと敵を増やす人間なんて愚行の極みだと思わないか?」

……私は、背景だ。


こんな二人だが案外戦う相性は悪くないらしい。

高い火力の馬鹿男が敵の注意を引きつけてその間にラティが止めを刺す。もしかしたら一見仲が悪いように見えるが、見た目程仲が悪いわけではないのかも…

「鈍重な動きなのです。欠伸が出てしまいそうになるのですよ。そんな動きでよく敵に当てられますね?」

「お前も一撃があまりにも軽いな。お前だけなら敵一匹倒すのにどれぐらい時間がかかるんだか。」

前言撤回。仲悪いな、おい。

何にせよ一緒にご飯を食べる人が増えるのは…ちょっと、嬉しいかもしれない。


胃に穴が空きそうだけど。

体調を崩してしまったのとネタ枯渇でちょっと更新遅れてしまうかも、なのです。

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